2013/04/22

神保町を中心とした「リアル編集」を仕掛けていくEDITORY



神保町という街は、いつ足を運んでも面白い。戦争や空襲などの被害も少なく、東京の街としての歴史が積み重なっている場所です。街には出版社も多く、「本の街」として、古書店や専門書を長年取り扱っている本屋も多く知られています。と思えば、近くを見れば明治大学や専修大学、ちょっと足を運べば御茶ノ水や水道橋、湯島や東大がある本郷にも行けたりと、大学や学校も多く集中しています。若い人たちが集うということで、飲食店も多く、神保町といえばカレーと言われるくらいです。

しかし、そうした神保町も、東京という大きな都市の中で見れば、西は渋谷や新宿と言った都市に囲まれ、東は盛り上がりを見せる秋葉原や浅草、スカイツリーがある墨田区といった場所あるなか、神保町近辺というのは、目立ったランドマークもなく、東京の中の空洞とも言えるような場所に思えます。そこでは、昔のものが残ったまま、現代に生きる時間軸を超えた何かがそこにあるとずっと感じていました。

以前には、編集者の仲俣暁生さんのご紹介でマガジン航にて、神保町にあるe読書ラボの取材もさせていただきました。(記事はこちら)「新しい読書体験を模索する「e読書ラボ」

古い本の街というイメージから一転して、電子書籍の実験的なことなど、今の時代に沿った試みをされたりと、掘っていけば掘っていくほどに面白いことを見つけることができるだけのポテンシャルがそこにありました。神保町に足を運ぶたびに、様々な発見などがあり、こうした街自体の面白さを、どう今の時代にあうように「編集」していこうか、ずっと考えていました。

そうしたときに、いつも色々と企画などを一緒にしている渋谷にあるco-baを運営しているツクルバの中村くんから、神保町に新しくワークスペースを作るから手伝ってほしい、というお誘いを受けました。行ってみたら、神保町のまさにど真ん中にあるテナントビルで、ビルの一角をワークスペースとしてリノベーションするとのことだった。

「都市や土地の文脈やストーリーをいかに今の時代に活きるように編集するか」といった思いを持っていたこともあり、神保町という街が何か面白くできるのではないか、ということで、EDITORY神保町の運営ディレクターとして参画することになりました。

日本仕事百貨に掲載したコミュニティマネージャーの求人に、立ち上げにも関わっているメンバーでの思いを書かせていただきました。(記事はこちら)「神保町にウズをつくる « 生きるように働く人の仕事探し「日本仕事百貨」

こちらの記事をきっかけに100名以上もの人たちから応募をいただき、人と人とを繋ぐための仕事をしたいという思いや、神保町を面白くしたいと考えていましたなど、神保町でコミュニティを作ることの期待感やワクワク感を多くの人たちが持っていたんだなと感じました。渋谷とも違い、様々な人たちが集う場所のイメージがあまりないであろう神保町。若い人たちがいるイメージがないからこそ、これまでの歴史や文化を今の時代にうまく継承するポテンシャルを持っています。

単純なワークスペースではなく、神保町という街をフィールドにした一つの拠点として、オフラインやオンラインによる多種多様で他世代が交差するコミュニティを形成し、そこから新しく地域に根ざした活動やプロジェクトが始動する場所になれたらと思います。

これから1年後、3年後といった過程を経て、EDITORYがどうなっていくか、神保町という街がどうなっていくか。新しい動きの胎動を感じる場所として、これからがとても楽しみです。今まで神保町にあまり足を運んだことがない人にこそ、EDITORYに足を運んでもらえたらと思います。

4月29日にオープンするEDITORY。25日には関係者やメディアの方々向けのオープニングパーティ、26日から28日の3日間は、神保町という街を切り口に、編集や広告、建築といった分野をもとにしたプレオープニングトークセッションと交流会を企画しています。

ぜひ、お時間ある方は、プレイベントに足を運んでいただき、EDITORYの雰囲気を感じてもらえたらと思います。同時に、もっとこうしたら面白くなるんじゃないか、ここを拠点にこんな企画やイベントをしたい、という方々からもコメントやメッセージをお待ちしてます。下北沢にあるB&Bとも、同じ本の場所としつつも、向こうは書店、こちらはワークスペース、下北沢と神保町という違った側面があるので、色々と連携できるかなと勝手に思っています。

EDITORY神保町のFacebookページでも、最新の情報を発信していますので、ぜひチェックしてみてください。また、29日のオープンからゴールデンウィーク中は、いつでも見学できて無料のフリーコワーキングウィークにしていますので、ゴールデンウィークという比較的時間があるときに、EDITORYを見学しに来てみてください。

EDITORY 神保町 プレオープニングトークイベント

■お申込みは以下よりお願い致します。
お申込みフォームはこちらから。

開催日時:
2013年4月26日(金) 20:00-22:00
27日(土) 19:00-21:00
28日(日) 19:00-21:00
※17:00から内覧可能ですので、是非早めにお越しください。
※1時間前から開場致します。
※日によって開催時間が異なります。ご注意ください。

場所:EDITORY 神保町
東京都千代田区神田神保町2丁目12-3 安富ビル4F
東京メトロ半蔵門線「神保町駅」 都営三田線/都営新宿線「神保町駅」A4出口 より徒歩1分
参加費用:2000円 1d+軽食をご用意しております。

イベント内容:
【1日目】
26日(金)20:00-22:00 (19:00~OPEN, 22:00~懇親会)
テーマ「編集と神保町 これからの都市と出版の関係」
出演:仲俣暁生さん × 江口晋太朗

仲俣暁生 / 編集者
1964年生まれ。東京都出身。フリー編集者。文筆家。「マガジン航」編集人。
『WIRED日本版』、『季刊・本とコンピュータ』などの編集者を経験。『 文化系トークラジオLife』のサブパーソナリティなども務める。著者に『再起動せよと雑誌はいう』、編著『ブックビジネス2.0』、『編集進化論』など多数。
http://www.dotbook.jp/magazine-k/

【2日目】
27日(土)19:00-21:00 (18:00~OPEN, 21:00~懇親会)
テーマ「編集のこれまでとこれから アナログからデジタルを横断するメディアのあり方」
出演:河尻亨一さん × 江口晋太朗

河尻亨一 / Kawajiri Kouichi
銀河ライター主宰 / 元「広告批評」編集長 / 東北芸術工科大学客員教授
1974年生まれ、大阪市出身。早稲田大学政治経済学部卒業。雑誌「広告批評」在籍中には、広告を中心にファッションや映画、写真、漫画、ウェブ、デザイン、エコなど多様なカルチャー領域とメディア、社会事象を横断する様々な特集企画を手がけ、約700人に及ぶ世界のクリエイター、タレントにインタビューする。現在は雑誌・書籍・ウェブサイトの編集執筆から、企業の戦略立案、イベントの企画・司会まで、「編集」「ジャーナリズム」「広告」の垣根を超えた活動を行う。
twitter @kawajiring

【3日目】
28日(日)19:00-21:00 (18:00~OPEN, 21:00~懇親会)
テーマ「都市・建築と生活者のあいだを編集すること」
出演:mosaki × 中村真広 × 江口晋太朗

mosaki
2004年から活動をはじめた田中元子(ライター、クリエイティブファシリテーター)と大西正紀(編集者、建築家)から成るクリエイティブユニット。「建築・デザイン・アートの世界と一般の人とを結ぶ役割を見付けたい」という思いのもと、編集、執筆、企画、デザイン、体操?等を行う。
http://www.mosaki.com/

■お申込みは以下よりお願い致します。
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2013/04/21

みんなの声で社会は変わる−One Voice Campaignで実現したネット選挙解禁

2013年4月19日、ついに、参議院本会議にてネット選挙運動の解禁を含めた公職選挙法の改正法案が通過し、この夏の参議院選挙を目処にネット選挙運動の解禁が実現することができました。

1年前の2012年3月、「ネット選挙の解禁を目指す活動をしないか」と友人らと話をし、そこから色々な人たちの協力や支援があり、One Voice Campaignが2012年5月のGW明けにスタートしたことでこうして形になったことは、とても感慨深いものがあります。

当時は、オバマの大統領の第二期に向けた選挙やアラブの春、occupy wall streetなどが盛り上がりを見せていた時で、そうした活動の多くがソーシャルメディアなどを通じて市民が声をあげ、自分たちの社会を自分たちで作らなくちゃという思いを持ち、様々な活動を通して社会に訴えかけている動きが活発な時期でもありました。

日本でも東日本大震災を経験し、TwitterやFacebookでのソーシャルメディアによる情報発信だけでなく、誰もが小さなことからでも情報を編集して被災地への情報整理やアクション、募金の活動やデザインなどを通じたクリエイティブによる節電の呼びかけや企業と民間とが協働してデータをマッシュアップした取り組みなど、多くの個人や団体が試行錯誤しながら活動をしていた時期でもありました。

そうした活動は、政府や行政、大企業などのトップダウン型から、個人同士のネットワークの広がりによる集合知による活動など、一人一人の行動が大きな声や力になることを実感し始めてきた時でもありました。

何か行動しないといけない。世界で様々な動きが起きている中、インターネットがもっと日々の生活や社会にとって大きな意味を持つものに違いない。自分たちの社会を、自分たちの声や行動が届く社会にしないといけない。

そうした思いで最初の数人のメンバーで集まり、MTGを始めました。そこから次第に活動の具体的な目標を設定しました。そして、それまで政治的な活動は往々にして”政治オタク”な人たちばかりが集まりがちになり広く多くの人たちに届かずに終わってしまうものではなく、少しでも多くの人たちに注目され活動が広がるために、今の時代にあった動き方をしなければいけないという考えを持っていました。そこで、コピーライターやウェブデザイナー、エンジニアや映像作家、PR、メディア関係の人たちに声をかけ、しかもその多くが、自分たちと同世代の20代半ばから後半の人たちによって主に活動を牽引することになりました。

そしてついに、「No Voice→One Voice その一声で、政治は変わる。」というキャッチフレーズのもと、一人一人の思いや行動が社会を変えると信じられられる社会にする、そうしたきっかけを作るためのネット選挙運動の解禁を目指すこととして、動き始めました。



サイトを公開してからも、メンバーもそれぞれ普段は仕事を持ちながらも深夜にオンラインで集まり、色々なアイデアやアクション、そしてそれを具体的に落としこみ、実行といった一連の流れも、Facebookやメールなどのツールを使い日夜議論をおこない、一日一日で改善や次の行動へとつながるスピードを増して動いていました。こうした動きができたのも、みんなが胸の中に持っていた「何か社会を変えていかなきゃ」という思いがあったからこそだと思います。その動きは、まさにソーシャルメディアによる加速度的な動きに呼応するかのように、様々な人たちによる集合知とアクションによってできてきたものであり、まさに日本におけるソーシャルムーブメントと呼べるほどのものになってきました。

当時は、ネット選挙という言葉はほとんど話題にもなっていませんでした。それこそ、ネット投票と間違う人も多くいました。そもそも日本の公職選挙法のことや、選挙にインターネットを使った選挙活動をしてはいけないということ自体を、知る人すら少ない状況でした。もっと言えば、これだけインターネットが使われているのに禁止されているっていうこと自体がおかしい、という単純なおかしさを話題にしているだけで、誰も変えようと動いている人は多くはありませんでした。

しかし、だからと言ってそのまま放置していても何も変わりません。誰かが声をあげ、行動しないと何も変わらない。だからこそ、One Voice Campaignとしての活動の意義は大いにあると感じていました。インターネットを政治の世界における市民権を持たせること、もっとインターネットによるネットワークを使い、世界中の人達の声を可視化し、行動を促進することで社会が変わっていくんだ、ということを思って活動してきました。未来を考える上で、民間だけでなく政治や行政を巻き込み、色々な業界を超えた人たちが一緒になって考えていくことで何かが変わっていくという思いが、多くの人たちの支援や協力を呼び、多くの人たちが自分の得意分野や自分の活動領域の中でできることを行動してきたことで、One Voice Campaignの活動は様々な広がりを見せ始め、多くの人たちの注目を浴びるようになってきました。

活動に際しては、賛同の声のためのインタビューをさせていただいた著名人や有識者の方々、そしてネット選挙や日本の未来を考え行動したいと思っている人たちの様々な意見や支援により、様々なメディアにも取材をしていただき「ネット選挙」自体の認知も高まり、こうした世論の盛り上がりによって、国会議員へネット選挙の盛り上がりを伝えるアプローチをすることができました。

議員会館のシンポジウムでは、毎回数百人以上の方々に参加いただき、登壇していただいた国会議員や有識者たちに対して、ネット選挙実現の思いを届けることもできました。忙しい合間をぬってご参加していただいたみなさんには、大変感謝したいと思います。ご参加していただいた方々の行動1つ1つが、ネット選挙運動解禁実現に向けた1つのアクションに間違いありません。

そうしたみんなの声や行動の1つ一つが積み重なった結果、2012年の衆議院選挙で誕生した自民党の安倍内閣はネット選挙の重要性を説き、みんなの行動によってネット選挙実現への大きな後押しをすることができました。One Voice Campaignを含めた、様々な人たちの行動の結果が、こうしてネット選挙実現へと向かわせたのです。


第一回のシンポジウムの様子

約1年間の活動と解禁の実現は、私たちだけの活動では決して実現できなかったものだったと思います。Facebookのいいね!やTwitterのツイート、ブログでのOne Voice Campaignについての紹介、衆議院選挙では様々な団体が声をあげ投票率の向上や政治参加を促すための活動、日本でも盛り上がりを見せるChange.orgなどの市民の声の可視化やアクション促進という世界的な動き、高校生や大学生などのブログ記事や未成年の模擬選挙キャンペーンなどの動きなど、様々な要因によって世論が確実に盛り上がって来ました。今回のネット選挙運動の解禁は、まさにそうした関わった方々すべての活動によって実現できたものなのです。私たちの動きは、そのほんの小さなきっかけの波紋だったのかもしれません。けれども、波紋は次第に大きな波を作り、そして大波へとつながることを、今回の一連の活動によって私たち自身で示せたのです。

けれども、今回のネット選挙運動の解禁を含めた公職選挙法の改正法案は、必ずしもすべてではありません。報道でもあるように、第三者のメールの利用は制限されています。そもそもとして、有権者を含めた一般の人を“第三者”と表記する、現在の公職選挙法の軸が政治家にあること自体がおかしいという考えを持っています。法律は、私たち市民の生活を円滑のするためのもの。つまり有権者を軸に考えられるべきものであるはずなのに、公職選挙法は政治家を軸に構築されています。公職選挙法以外もそうですが、法律を使うべき人は誰なのか、何のためにあるのか、という抜本的な改革が必要だと私は感じます。ウェブサービスを作る人たちの中の言葉で表現するならば、UX(ユーザ体験)として、法律を使うユーザである有権者にとって意味のあるものでなければいけません。ユーザである有権者にとって、真に必要な仕組みとはなにか。そのために、時代に見合った法律の改正をしていくことが、政治の現場には必要なのです。

形はどうあれネット選挙は解禁することになりました。しかし、それで終わりではありません。解禁はスタートでしかないのです。選挙において、私たちが優秀な政治家を選ばなければ意味はありません。選挙以外でも、私たちの意見を様々な手段で発し、政治の現場に届けることが大事なのです。インターネットをこれからももっと活用することで、私たちの表現の幅は大きく変わります。その中で、受け身ではなく私たち自身が声をあげ、表現をし、政治の現場に声を届ける活動をしなくてはいけません。政治に対してどのような意識を持つか。まさに、私たち自身が問われてきているのです。

これまで、政治や行政は変わらないものだと考えられてきました。しかし、活動によって変わるということを示すことができました。これは、私たち自身にとっての大きな成功体験として持たつべきものだと思います。世の中は変わるもの、社会は変えていけるものだという思いを持ち、社会に対する意識を向けていかないといけません。社会を作るのは政治家ではなく、私たちなのですから。社会を良くするのは私たちというパブリック(公)に対する意識を、今こそシフトしていくことが求められているのです。

これからの社会は、まだまだいくつもの課題が山積みです。こうした問題を解決するための、1つのきっかけにOne Voice Campaignの活動に意味があったと言えるものになれたら、幸いだと思います。

One Voice Campaignとしての運動は、ネット選挙運動の解禁を目指して動いたという点において、1つの目標を達成しました。そのため、活動としてはこれで一旦中締めとさせていただきます。One Voice Campaignに中心に関わった人たちも、それぞれの立場やフィールドで、それぞれが考える政治に関する活動を引き続きおこなっていきます。

そして、共に声をあげ行動してくださったみなさん、本当にありがとうございました。同時に、ぜひみなさんも自分自身が思う問題に対して、まずはまわりの人たちに話すだけでも構いませんので、小さなことからでもいいので自分の意見を発し、共感してくれた人たちと一緒に行動することで、社会は変わっていくのだと思います。

One Voice Campaignの活動が、少しでも多くの人たちの勇気や自信につながることを願っています。みなさんそれぞれの「One Voice」を発信してみてください。

その一言で政治は変わる、その一言で社会は変わるから。

本当の民主主義と日本の未来は、みなさんの声で、はじまります。

社会に対する意識をシフトさせていきましょう。日本の未来、これからの社会を作るのは、私たちなのですから。


One Voice Campaign 江口晋太朗

2013/04/08

経済産業省にできたスペース「PERCH OFFICE」−省庁や企業の中で起きるコワーキング文化


2月の話ですが、打ち合わせで霞ヶ関にある経済産業省に行った時、打ち合わせ場所として通されたのが、経済産業省の中に1月末にできた「PERCH OFFICE」というところでした。

「なんだろ?」と思ったら、誰でも利用できるフリースペースで、経産省の中の人たちが利用できるスペースのようでした。民間企業だと、コミュニティスペースなどと言われるような場所だと思います。しかし、今まで省庁ではこうしたスペースは皆無で、基本的に自分のデスクでの作業、もしくかっちりと密閉された会議室や打ち合わせスペース、資料室などしか建物内にはないのが現状でした。

経産省の省庁の人たちが自前で持ってきた書籍をもってシェアライブラリーになっていたり。できたばかりなのでまだ書籍は少なめ。

民間では、色々な施策を通して、働き方の見直しや情報共有のクラウド化、オンラインMTGなど、様々な取り組みを通して、今の時代に最適な環境を作ろうと日々努力しています。省庁自体もこれからの時代の働き方に合わせた建物を作っていかないといけない、と中の人も考えているようです。もちろん、省庁内では機密事項などの問題があり、外部の人が簡単に出入りできるスペースを作ることも難しい。そこで、ペーパーレス化による省エネを推奨している部内関係各所が、まずは経産省の中の書類をペーパーレス化を実践しています。USBメモリーなどの外部ディスクを使用せずに、イントラネットを利用してDocを共有できる仕組みを構築。省庁内の人は自前のIDカードを利用してノートパソコンからIDカードを読み取りログインすることで、瞬時に自身のデータをパソコン内に取り込むことができるようになりました。同時に、職員それぞれにPHSを持参することでいつでもどこでも省庁にいれば連絡をつける体制をとることで、より集中した作業や打ち合わせや外出、資料室などで資料を探しているときでも、急な対応時に自身のデスクに戻ることなくその場で作業できる環境を構築しているというものなのです。

打ち合わせスペースの様子。余白と透明性を高めたスペース。

そもそも、省庁内ではノートパソコン自体の使用も最近導入されたばかり。それくらい、情報の管理をしっかりとした状態にいるのです。デスクトップパソコンでしか作業できなかったときは、どんな状況であっても自身のデスクから離れることができず、また電話もデスクの固定電話から内線で呼び出しをされて対応するという現況だったそうです。

そして、最近こうしたスペースが省庁内に完成したことで、各人が支給されたノートパソコンを使い、こうしたコミュニティスペースで打ち合わせや外部の人と話す環境を作り上げているんです。

こうしたいくつもの取り組みを導入し、省庁自体も変わろうとしているように思えます。今回のようにPERCH OFFICEができることで、省庁の中でアイデアや人との出会いを作り出す余白を生む1つの施策だと考えます。

MTGルームの1つは、ちょっと一段上がったところに区切りがあるところなのですが、靴を脱いでリラックスして話せる空間にもなっていたり。

これまで、外部の人が来て打ち合わせをするのは部署内にある会議室がほとんどだったのですが、こうしたコミュニティスペースの中で打ち合わせをすることは、空間における快適さや対話の生まれやすさが変わってくると思います。他にも、省庁内部であっても、隣の部署がどういったことをやっているのかなかなか把握できていない中、こうした場所を通じてから、部署間を超えた人たちがつながりを作れる場所をもつことから、新しいものが生まれる可能性も大いにあります。

集中作業ブースもあったり。

外部からは、最近では省庁を見学した小学生や中学生たちの休憩場所にもなっているそうで、この場所に来ることで省庁の雰囲気を知ったり、見学以外の職員と出会い機会だったり普段の様子が知れるきっかけにもなります。


壁は、書き込みができるホワイトボード。ちょっとした話だったりアイデアをメモったりするのに便利です。けっこうこだわって作ってるみたいです。

変わらない、お固い、というイメージの多い省庁。けれども、こうした1つ1つの民間の動きを取り入れている様子を見ると、行政の人も色々と試行錯誤しているのだと感じます。もっと政治や行政と、民間の人たちとが気軽に交流できる場があるといいなと思うと同時に、互いのことをもっと理解しあうことで、これからの未来にとっても意味のあるものが生まれると思います。



窓際も霞ヶ関が一望できる(この日はあいにく天気が悪かったので写真映りが悪いですが)


各机や床の随所に電源も用意。省庁の人は省庁内の無線LANを通じたイントラネットが利用できるため、どこでも作業がおこなえます。

まさに、日頃「コワーキング」という文化を取材していて思っていたのは、こうした企業などの中において、他の部署同士でもつながれる場所を企業の中でつくり、ここを起点として様々なワークショップやアイデアのブレストやブラッシュアップ、他の部署や外部の人と話をしながらやりとりをする場が大事だと思うのです。「コワーキングスペース」という言葉だけを切り取ると、フリーランスや起業の人たちが中心になって使うシェアオフィスをイメージする人も多いと多いが、そもそもとして「Co-work」するということは、つまり多様なアイデアや価値観を通じて協働、共創を生み出す環境のことを指すと私は考えています。そのため、別にスペースが無理に必要とは思っていません。オンラインでもオフラインでも、場所はどこでも極論言えば構わないのです。隣の人、違った人と何か新しいものを生み出そうという意識をもち、オープンマインドによって新しい気付きを得ることから、プロジェクトやスタートアップのアイデアが生まれる環境を生み出すこと考えています。

もちろん、このスペースにはよくコワーキングの話をすると出てくるコミュニティマネージャーやホストなどはいませんが、こうした開かれた場所がある(これまでほとんどなかった)ということからすると、大きな発展だと思います。

コワーキングスペースというスペース論ではなく、コワーキングという“文化”を、様々なところで生み出されることを望んでいます。その1つの例として、経産省のPERCH OFFICEは、省庁というところがこうした取り組みを展開しているということも、小さいかもしれませんが大きな一歩だと思います。

PERCH OFFICEは、サイトなどは特になく、経産省の内部にある内部スペースなのですが、経産省に行く機会がある人は、ぜひ覗いてみてください。

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