2014/08/31

英国イノベーションの歴史から、日本の次のイノベーションの道を探る

色んなところでクリエイティブやイノベーションが謳われているものの、そうしたものは突然の思いつきやひらめきで生まれるのではなく、自分自身の見聞や経験といった過去の蓄積や社会がもつ歴史と密接に関わっていることは往々にしてあります。すでにあるもの、過去にあったものを違う視点に置き換えたり、現在のニーズやウォンツを研究してくる中で、そこに新しい視点やアイデアを持ち込むことによって生まれてきたりします。

天才的な大発明よりも、そうした積み重ねられたコンテクストを理解したり、視点を替えたり、あえて破ったりしている、ということが重要だったりします。歴史や伝統といった視点からみると、日本はアメリカよりもイギリスのイノベーションの歴史を調べたほうがいいのでは、ということで、仕事の関係もあってイギリスのことについて最近調べてみたら、面白い取り組みがなされていました。

Great British Innovation Vote http://www.topbritishinnovations.org/ という、2013年3月に行われたキャンペーンで、過去100年間でイギリス発祥で起きたイノベーションに対して、あなたが好きなもの、重要なものを投票する、というキャンペーンが行われ、その結果発表がリストアップされていました。中をみると、イギリス発祥、イギリス生まれなイノベーションの事例が、実は自分が知らなかっただけでかなりのものがあり、しかも色んな物事の基盤や基礎を作ったものが多い印象を受けました。

せっかくなので、いくつかリストアップしてみたいと思います。まずは、上位入賞のものから。

1位:Universal Machine
(発明者)アラン・チューリング - Wikipedia http://goo.gl/anUw8
チューリングマシンで「アルゴリズム」と「計算」の概念を定式化し、計算機科学の発展に大きな影響を及ぼし、コンピュータの誕生に重要な役割を果たした。

2位:Mini(BMC) http://goo.gl/nUPm
イギリスブリティッシュモーターコーポレーションが生んだ大衆車。自動車としての必要最小限を形にした設計は、登場当時(1959年)革命的とまで言われた。

3位:X-ray crystallography technique 
(発明者)ローレンス・ブラッグ - Wikipedia http://goo.gl/6X0Hmw
X線結晶学。物理学者。現代結晶学の創始者の一人。X線回析を用いて物質の構造を研究。父であるヘンリーブラッグとともにノーベル物理学賞を受賞。X線結晶学の研究に従事。結晶によるX線回析についての法則「ブラッグの法則」を発表してX線回析による構造解析に理論的な基礎を与える。結晶格子で回析したX線ビームから結晶内の原子の配置を計算することができ、さまざまな結晶分析が可能となる。

4位:Discovery of Pulsars 
(発見者:存命、オックスフォード大学客員教授、元イギリス天文学会会長、英国物理学会会長)ジョスリン・ベル・バーネル - Wikipedia http://goo.gl/YSuLYR
イギリスの女性天体物理学。1967年、アントニー・ヒユーイッシュとともにパルサーを発見。パルサーとは、パルス状の可視光線、電波、X線を発生する天体の総称。電波望遠鏡の観測データの中に規則的に変化する電波信号を発見し、それが高速で回転する中性子星「CP 1919」が電波源であることがわかった。超新星爆発後に残った中性子星がパルサーの正体であると考えられている。

5位:Mallard
LNERクラスA4蒸気機関車4468 マラード - Wikipedia http://goo.gl/uGzmp
ナンバー4468マラードは、London and North Eastern Railwayの蒸気機関車。ナイジェル・グリズリー卿による設計。風洞実験を利用して設計された空気力学的に優れた車体をもち、時速160km以上の速度で走る。マラード号は、時速203kmという蒸気機関車の世界最高速度記録ももつ。(1938年7月3日に樹立)。その後、この世界最高記録が蒸気機関車によって破られたことはない。現在のギネス認定世界記録。

というのが、今回のGreat British Innovation Voteの上位で、上位に入賞しなかったけれども、いくつか面白かった事例もご紹介。

◉World Wide Webの開発
(開発者)ティム・バーナーズ=リー http://goo.gl/NAlL
イギリスの計算機科学者。WWWを考案し、ハイパーテキストシステムを実装・開発した人。URL、HTTP、HTMLの最初の設計者。

◉コンコルドの開発 http://goo.gl/ZV9X

◉ARMアーキテクチャの開発 http://goo.gl/CXzNK
ARM Ltdにより開発されている、現在のスマホや組み込み機器や低電力アプリケーション向けに用いられている32ビット、64ビットRISC CPUのアーキテクチャ(市場の75%を占める。携帯電話、メディアプレイヤー、携帯型ゲーム、電卓、ハードディスクルータなど)。1983年にエイコーンコンピュータ(イギリス)によって設計が開始された。Appleのベースにもなっている。

◉DNAシークエンシングの手法の開発 http://goo.gl/Z7q8
開発者 ウォーター・ギルバード(アメリカ)とフレデリック・サンガー(イギリス http://goo.gl/VrcjsB
DNAを構成するヌクレオチドの結合順序を決定すること。DNAシークエンシングは遺伝子情報を解析するための基本手段。フレデリック・サンガーは、2013年現在で、ノーベル化学賞を二度受賞した唯一の人物。

◉ターボジェットエンジンの開発
フランク・ホイットル - Wikipedia http://goo.gl/dQZhg
ターボジェットエンジン開発装置は第二次世界大戦でも用いられ、その後の飛行機輸送技術に大きな影響を及ぼす。

◉MRIスキャナーの開発、MRI(核磁気共鳴画像法)の発見
ポール・ラウターバー(アメリカ)とピーター・マンスフィールド(イギリス)にノーベル生理学・医学賞が与えられる。

などが挙げられていました。また、これから期待されているイノベーションという項目もあり、それらはみると最先端な研究事例や、今まさに僕らが触れているものに含まれているものでもありました。

◉Raspberry Pi http://goo.gl/uUz7k
(Raspberry Pi発展の基礎に、ARMSアーキテクチャの開発に関わったエイコーン社によるARMプロセッサが搭載されている)

◉Organ printer
3Dプリンタによる臓器プリント。


などなど、医療から航空技術、工学、物理学などなど、さまざまな分野の最先端をイギリスが作り上げていたことが分かりました。

研究の分野では、ある一つの分野を追求し、その先に見つけた真理や原則といったルールや規則を見出すこともあります。技術的な視点だと、それまでなかったプロダクトやサービスを開発することもイノベーションです。人文社会学的な視点だと、人はさまざまなルールを作ったり変えたりする力があり、それはコンピュータではできないものです。同時に、常識やルール、慣習を変えるためには、そのルールがどう作らえ、どういった歴史をたどりながら運用されてきたか、そして時にそのルールを破るような視点を持つことが必要です。その根底にあるのは、人のニーズに対して愚直に応えること、もっとこうあるために何が必要か、と考える意識かもしれません。バラバラだったものを定式化し、形あるものにすること、形あるものを根底から壊し再構築する方法だったりします。

イノベーションは、その言葉の意味には、一つの現象ではなく変えた先の未来、変えた先の世界もその言葉に内包しているのではと思います。つまり、イノベーションが起きたことによって、元に戻ることを拒否したくなるだけの力、人の行動や習慣、価値観を後戻りにできないほどアイデアを普及させることなのかもしれません。ここにあげたどれもが、もはやなかった世界には戻れないことにおそらく気づいていると思います。

イノベーションを創発するヒントとして、やはり過去を振り返ることの重要性を考えたとき、海の向こうであるイギリスは、これだけのイノベーションを起こしていることを多くの市民が自覚し、次の新しい道を作る人達も、こうした事例や出来事を参照しながら次の道を作ろうとしていると思います。日本から新しいイノベーションを生み出すために、では、これまで日本はどういったイノベーションを起こしてきたのか。過去100年間のイノベーションの事例を調べてみることに、次の未来に対する道へのヒントがあるのかもしれない、と、イギリスを調べてて感じるものがありました。

未来は過去の積み重ねであり、そして「伝統から革新」を生み出すためにも、日本のこれまでのイノベーションの事例を体系立ててまとめたら、すごく価値があるのではないだろうか。興味が有る人は、一緒にやってみませんか?






2014/08/18

ALSの認知向上や寄付を促すALS Ice Bucket Challenge #IceBucketChallenge にチャレンジしました

いま世界で広がっているALS Ice Bucket Challenge #IceBucketChallenge
http://www.alsa.org/
に、School Withの太田くんから指名をいただきまして、僕も挑戦したいと思います。

このチャレンジは、筋萎縮性側索硬化症(きんいしゅくせいそくさくこうかしょう)、通称ALSの認知度向上、治療法発見や寄付促進をサポートするためのキャンペーン活動です。極めて進行が速く、半数ほどが発症後3年から5年で呼吸筋麻痺により死亡するとされる難病で、治癒のための有効な治療法は確立されていない現状なのです。

前の人から指名を受けた人は、24時間以内に氷水を被る or 寄付をする という選択をしなければいけません。氷水を被る人は、次にチャレンジする人を3人指名することが出来ます。

ALSに関しての日本語での詳しい情報はこちら:http://www.nanbyou.or.jp/entry/52
寄付を含む今回の活動の詳しい情報はこちら:http://www.alsa.org/ Facebookページはこちら: https://www.facebook.com/alsassociation

海外のセレブは、氷水をかぶりつつ寄付もするというノブレス・オブリージュを全うしているということで、僕もそれに倣って寄付をしつつ、氷水を被って次のチャレンジの人にバトンを渡したいと思います。

次のチャレンジは、IT業界から元ミクシィ社長の Yusuke Asakura さん、メディア業界からバイラル企画ということでハフィントン・ポスト日本版の編集長の Shigeki Matsuura さん、NPO業界からは、寄付活動ということで JustGivingの Daigo Sato さんにチャレンジしてもらえたらと思います。

海外から始まったバイラル企画ですが、日本にも広がってきたということで、できたばかりの虎ノ門ヒルズの前で撮影しました。自分が被る氷水の氷を自分で割って準備するというパプニングもありつつ、夏の暑さを吹っ飛ばす企画でした。このキャンペーンを通して、少しでもALSの認知向上や寄付が集まり、難病解決につながることを祈っています。



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