2013/07/23

ネット選挙運動をきっかけに見直す、公職選挙法とコミュニケーションのあり方 −−普段の生活に政治文化を醸成していこう

*この記事は、「ネット選挙運動をきっかけに見直す、公職選挙法とコミュニケーションのあり方 (ハフィントン・ポスト)」の記事を加筆修正したものです。


7月21日に投開票が行なわれた参議院選挙。今回の選挙から、インターネットを活用した選挙運動が実施され、各政党・候補者がそれぞれに試行錯誤の中、取り組みを始めた。

NHKニュース(ネット選挙 候補者の9割が活用)でもあるように、候補者の9割がアカウントを作成して情報発信として活用した。TwitterやFacebookなどを使った発信があった中、今回大きく注目されたのがLINEだ。ユーザーローカルの調査(各政党のソーシャルメディア活用度調査を発表。ネット選挙解禁で政党のLINE利用が活発化)でも、各政党ともにLINEアカウントのフレンド数は多い。LINEはプッシュメディアとして手元にメッセージが送られるため、必然的に見る機会が増す。なんとなく政党の情報が欲しいと考えている有権者からしても、LINEで政党のフレンドになっておこうと考えた結果だろう。

TwitterやFacebookでは友達の投稿数も多く、政党や議員の投稿を確実に見てもらえる仕組みはなく、またLike数やフォロワー数が得票に結びつく保証もない。 TwitterやFacebookをコミュニケーションツールの1つとして認識し、 真摯に有権者と対話し政策をブラッシュアップするためにそれぞれのメディアに応じた運用ルールを作っていかなければいけない。

有権者にも問われる政治意識

ネット選挙が解禁しても、どうやって政治の情報を入手すればいいのかを有権者は改めて考えたのではないだろうか。

産経ニュース(【参院選】ネット選挙、有権者冷ややか 「参考にした」わずか1割)によると、ネットの情報を参考にした人は1割程度しかおらず、ネットに流通している情報も有権者の投票行動に結びつくほどにはなっていない。

もちろん有権者側の課題も多い。たとえ情報が"得られる"環境にあっても、情報を"得よう"という意識になっていなければ意味は無い。選挙が始まっても、政策や立候補者の情報、現職であれば過去の実績、新人であれば現職との違いなどを比較しなければいけないが、これまでがそうした環境では無かった。ネット選挙になったからと言っても、すぐに能動的に政治の情報を得ようと意識が変わるとは言えない。

SNSやウェブサイトは「プルメディア」とも呼ばれ、Googleなどで検索しサイトにたどり着いたり、SNS内の投稿をクリックするなど、ある程度能動的な意識を持った人が情報にたどり着く仕組みだ。どんなにネットが発達しようにも、Googleの検索バーに入れる単語を思いつかなければ意味はないし、自身の興味のあるアカウントしかフォローしなければ、必然的に興味のある情報が集中する。そうしたネットの特性を考えた上で、情報設計を行なわなければいけない。

各種メディアが情報を分かりやすく届けようとしたり、政策と政党のマッチングサービスもいくつも出てきた。次は、そうしたメディアやサービスに触れる機会をどのように作り出すか。そのためには、政党や候補者側の努力ではなく家庭や教育の現場などで私たち自身で政治について話す場を日々設けることだ。これは、選挙権を持っていない未成年にも有効だ。20歳になった瞬間から政治について勉強するのではなく、20歳になる前から社会について議論していく場を大人は設けていく責任がある。

政治の世界におけるコミュニケーションデザインの再構築が必要

「選挙」と「政治」は違う。「選挙」でいかに当選しようと「政治」の現場で成果をしっかりと出せなければ意味がない。逆に、「政治」の現場でしっかりと活動をしていても、それが評価されるものであったり、きちんと成果を伝える努力をしていかなければ「選挙」では勝てないのだ。

そのため、選挙期間のみならず普段の政治活動にもネットを活用することで信頼を築きあげなければいけない。政治家が有権者の声を聞き、受け答えをしてくれるという実感と信用を得ること。同時に、有権者側もきちんと政策立案などで活動をしている議員を評価し、応援し可視化する責任を持つこと。選挙の投票だけが政治参加ではなく、普段の政治の時にこそ、何かしらの形で参加していかなければいけない。 政党や候補者と有権者が、ネットとリアルで相補関係を作るコミュニケーションデザインの再構築が今後の大きな課題だ。まだまだネット選挙運動は始まったばかりだ。これでネット選挙に対して評価を下すのは時期尚早と言える。これからの数年をかけてともに作り上げていくものだと認識してもらいたい。

今回の選挙の評価できる点として、有権者側から積極的に選挙運動に参加する動きがでてきたことだ。様々な個人が、誰を応援するという声明をSNSやブログに書くなどの動きが起きた。有権者側から政治に参加する意識を高め、選挙を促す行為が起きてくることで、政策議論や対話の場が出てくるのではないだろうか。そのためには、選挙の時のみならず、普段の時から、政治に参加するための場作りや意見を交わし合う文化を醸成していかなければいけない。

もちろん、ネガティブキャンペーンの問題もあるだろう。統計的にネガティブキャンペーンをすれば全体としての投票率も下がると言われている。足の引っ張り合いは、短期的な視点では仮に良くても、長期的な視点ではマイナスの効果を生み出す。ネガティブキャンペーンを行うということは、それはブーメランのように自身や応援している候補者に返ってくるということを忘れてはいけない。

普段の生活に政治文化を

改めて、今回のネット選挙運動をきっかけに公職選挙法の抜本的な改革の必要性を痛感しただろう。「選挙期間」と「政治期間」という区分け自体が、もはや通用しなくなっている。選挙期間と政治期間を撤廃し一体化することで、新人候補にも大きなチャンスがでてくる。期日前投票に対する認識も高まってきたため、選挙期間ではなく投票期間、そして最終日を投開票日とし、政治と選挙の壁を無くしていくことを筆者は考える。本来であれば一体化しておくべきな「政治期間」と「選挙期間」が別れている仕組みを見直し、普段の政治の状況を評価する場として選挙が機能するものになってもらいたい。他にも細かな箇所での修正はいくつも挙げられる。ぜひ、みなさんと公職選挙法そもそもを見直す場を継続的に設けていきたい。

次の世代に対する政治教育含めた情報環境を作ることは必須条件だ。今回の選挙は、政治家のみならず私たち有権者自身も成長し、行動することでしか社会は変えられないと実感した選挙かもしれない。こうした反省と学びをもとに、次の選挙や日々の政治への見方を見直し、社会のために何ができるのかを考えていきたい。普段の中にどう政治文化を作っていくか。ネット選挙だけではなく、ネット政治を作る取り組みはまだまだ始まったばかりかもしれない。



2013/07/22

参議院議員選挙の結果をうけて

2013年7月21日に行なわれた参議院議員通常選挙。結果としては、前回の衆議院選で与党となった自民党が65議席を獲得した結果となった。

今回の選挙の結果は、どんな結果であってもそれが民主主義の世界で決まったことに対しては一定の正当性があるため、受け入れなければいけない。それぞれ候補者として立候補した方々には賛辞の言葉を述べたい。当選した議員は、これからの6年間を、しっかりと有権者のための政策を立案し、しっかりと形にしていく政治活動を行なって欲しい。

こうした現実を受け入れつつも、これからも数年、これからの未来を私たちはどう考えていかなければいけないのかを思案していく必要がある。

かつて、民主党が政権と取った09年の政権交代から数年での自民党への政権交代。東日本大震災もあり、民主党への政権運営能力に対してはたしかに多くの反省すべき点が多かったことは否めない。それは、民主党自体がいくつもの党が寄せ集まってできた党であり一枚岩でなかったこと、今の民主党になってからの若手議員が多くはなかったこと、そしてしっかりと党内のコミュニケーションが統制されてなかったことなどあるだろう。しっかりとしたチームビルディングができてなかったことは、企業において考えても経営状況として良くない対応が見受けられたからだ。

09年の政権交代以前の自民党における長期政権は、それまでの高度経済成長期においては、ある程度の経済成長の見通しがあった上での長期戦略に意味があったかもしれないが、
これからは10年後に何が起きるかも分からない。だからこそ、10年20年計画を立てつつも、それらを完遂するために躍起になるのではなく、随時修正をかけていきながら開発していく発想も求められるのかもしれない。そのためには、それまで官や公のみが担ってきたものを、民や私と協働する共創的社会を作りだしていかなければいけない。

その中で、多様なライフスタイル多様な生き方をしている人たちを認識し、しっかりと受け止め、彼らの立場を尊重するための多様な社会のあり方を模索しながら、市民からの意見を集約して判断し、実行していく政治家や政党を作っていかなければいけない。

今回の結果を受けて、民主党自体の抜本的な改革が必要だ。いわゆるな旧来的な左翼などではなく、新しいリベラルな存在の人たちによって民主党を構成させる必要があるのかもしれない。民主党が終わったという意見が一部あるかもしれない。しかし、ここから新しい政党を作っていこうと思うほうがハードゲームだ。新しいリベラルを作っていくためには、既存の民主党を中から壊していく存在が必要かもしれない。かつての自民党において小泉純一郎氏が掲げたように、「民主党をぶっこわして、新しい民主党を作っていく」若い存在により、革新と民主主義を掲げる政党の存在がなければ、現状の与党自由民主党の勢力がひたすら続いていくものとなる。それでいいと思う人が多いのならばそれが民意かもしれないが、やはりアンチテーゼとなる存在がしっかりと機能し、バランスの取れた環境を作ることは、政策をブラッシュアップしていくという意味において有権者にとっては自民党側にとって意味があることだ。

時代を生きていくためには、強いものでも賢いものでもなく、変化に対応していく人たちというダーウィンの言葉にもあるように、未来が誰にも予想されない時代だからこそ、変化に柔軟に対応しながら、長期的グランド・デザインを作り上げ、そのためにどういった施策が必要なのかを継続的に思考していくことだ。

今回の選挙では、シングルイシューを強く掲げた候補が当選したかもしれない。しかし、政治家として当選することと実際に国会の中においての政策立案能力はまた違う。しっかりと国会で役割を果しているか、有権者自身が政治家を日々ウォッチし続けなければいけない。議員の評価は、マニフェストという公約ではなく、その中での実績をしっかりと評価していかなけばいけない。そのためにも、国会にて真面目に活動している政治家に対して、私たち自身もきちんと評価をする仕組みを作っていかなければいけない。そうでなければ、政治家自身も日々のモチベーションを保つことはとても難しい。改めて、政治は政治家のものではなく、私たち有権者が作っていくという意識を持たなければいけない。

国会議員は、国のあり方や社会のあり方を調整し、形にしていく存在だ。私たち有権者が、政治のあり方がどうあるべきかを考える必要がある。今までが、政治の話などを家庭や学校で話すことがタブーとされた時代だったかもしれないが、政治はもっと身近な、地域の問題からでも政治に触れることはできる。自分がどうしたいか、どういった社会でありたいかを考える。その中で、結果として政策や法律に対して意識を持てるようになる。そのための、政治に対する情報環境を再設計するための仕組みや教育改革を行なわなければいけない。

今回から始まったネットを活用した選挙運動では、結局はポピュリズムの増幅装置でしかないと決めつけるのは時期尚早だ。政治や選挙の世界にインターネットがしっかりと根付くのはまだまだ時間がかかるかもしれない。これからに向けて、今回のネット選挙によって生まれた良い効果をきちんと分析することが大事だ。実際に、投票先をネット上で公開する人も一部にいた。政治に中立中庸であるべきというものではなく、しっかりと応援する政治家を個人として応援する姿勢を取ることは、政治家本人にとっても大きな力だし、有権者側にとっても1つの指標になる。もちろん、誰々が入れたから自分もというものではなく、そうした情報はすべて判断材料の1つという認識の中で、自分が誰に入れるのかとしっかりと考えなければいけない。選挙や政治や、政治家のものでははなく、有権者である私たちのものだ。選挙運動も、私たち自身がどんなことでもいいので自分の意見を発信していくことだ。有権者ができることは今回の改正で大幅にできた。その中で、私たちがどんな行動をするのか。一緒に考えていかなければいけない。同時に、改めて公職選挙法自体の抜本的な見直しが必要だ。今回の選挙をうけてそれぞれが色んな思いや矛盾を考えたかもしれない。その中で、どういった公職選挙法がいいのか。有権者にとって真の意味にふさわしい選挙のルールを作っていかなければいけない。

そして、結果もそうだが選挙期間中の様々なポジティブ、ネガティブな動きが見受けられたが、こうした現状を作っているのは有権者である私たちだ。あらゆる形で私たち有権者の意識が反映されるのが選挙だ。ネット選挙が解禁したからダメになったという言説はロジックとして少しおかしいものがある。ネット選挙は1つのハードとしての存在だが、そのハードをしっかりと使いこなすためにはソフトの部分が重要だ。結果として、選挙はソフトの部分が反映される世界。ルールが変わったならばそのルールの中で戦うことに対してルールを責めてはいけない。

もちろん、結果に対して思うところはあるかもしれない。しかし、過去は変えられないかもしれないが、未来は変えることはできる。未来を変えていくという希望を持って行動する以外に選択肢はない。どんなに絶望的だと思っていても、社会で生きていく限り目を逸らすわけにはいかない。

当たり前だが、今回の選挙で何かが大きく変わったわけじゃない。今回の選挙運動や選挙のことだけでネットの可能性を閉ざすのではなく、日頃の政治活動にもネットをしっかりと活用してもらいたい。日々の活動の1つ1つが未来につながり、しっかりと議員としての成果を可視化し、未来の候補者は、候補者としての信頼性を持ちうるだけの成果のストックができるのだから。

引き続き、国政以外にも地方選なども選挙が控えている。選挙のたびに、自分がなぜその人に入れたか、どうして入れたかということを、それぞれの個人の判断意識でいいから考え、入れたことに対して納得を持って投票出来るようにして欲しい。そのための情報を、常日頃から少しづつとっていくための情報環境が必要だ。

投票は、政治家を決める1つの結節行為だ。しかし、政治に参加できるのは投票だけではない。身近な行政問題に対して声をあげたり街づくり会議などに参加し意見を発することからでも政治は始まる。そうした行為の1つ1つが社会を変える動きになりうるのだ。

今回のネット選挙も踏まえて、改めて政治の世界全般のコミュニケーションデザインを見直さなければいけない。瞬間的な盛り上がりではなく、継続的なコミュニケーションのあり方を見直すことだ。日々の政治活動の1つ1つ、リアルとネットを踏めえた有権者とのコミュニケーション含めたやりとりを作り、政策に対する意見をともに考え、対話をしていくためのコミュニティを作っていくこと。それでしか、政治は変えられないし、まだまだ変えることができる可能性は残っている。そのためには、若い人たちからの議員をだす必要性がある。未来に対して希望と思いを持ち、それでいて新しいテクノロジーや技術に明るく、積極的に取り入れようとする前のめりな姿勢を持つこと。先生と呼ばれているのではなく、地道に様々な可能性を吟味し、泥臭く様々な分野の人たちとコミュニケーションを取っていく存在にならなければいけない。そこから、未来に希望を持っていきたい。その中で、入れたいと思う人を見出し、若い世代も含めた、本当に未来を考えて行動する人をしっかりと応援していかなければいけない。

今後、ITの分野がまだまだ成長を図れる可能性を持っている中、今回の結果でIT業界へ精通する人が減り、またNPOや教育の分野に対しての人材が減ったことに対しては打開策を見出さなければいけない。日本のデジタル化を推進する上で、ITの力や多様性をもった人たちに対する認知やアプローチは必要だ。オープンデータやオープンガバメントのような、政治行政からの一方的なものではなく、市民からの積極的な参加を促す仕掛けを作るためにも、コミュニケーションの分野やデジタルの分野において精通している人材が政治の世界に入らなければ、今後の未来の可能性の1つを無くしてしまう。

今回与党になった自民党に対しても、賛成するところと反対するところもある。野党である民主党でも、賛成と反対がある、個々の政策に関しては、各党それぞれの意見もあるだろうし、各論毎に是々非々で考える必要がある。私個人としては中国や韓国などとのアジア圏における経済圏を作り出し、その中でアメリカとも協働できるものを見出す。原発も最終的に撤廃していくべきだが、そのための段階的なステップを踏み、確実なKPIをもとに段階的な撤廃を目指すことが現実的だ。TPPに関しては、まだまだ議論の余地があるが現状として議論がされつくされていない中での採択では、あまり良い結果を生まないのではないだろうか。

ネット選挙の価値は、地方にこそチャンスはあると考えている。政治家や候補者と有権者との距離が近く、リアルとしての接点をネットが補てんする、現実の拡張されたリアルの延長線としてのフィールドとして機能し、継続したコミュニケーションを行なっていくことだ。地方では千葉や横浜、福井の鯖江などでオープンデータに関してなど、様々なケーススタディが起こっている様子をしっかりと成功事例とし、全国に広めていく可能性は大いに秘めている。地方から変えていくことで、日本は良くなっていくだろう。

東京も、オリンピック誘致もそうだが、様々な分野において世界におけるプレゼンス不足は否めない。そのために必要なコミュニケーションデザインのための役職を作るのもありだ。例えばCCO(Chief Communication Officer)の設置。これは従来の広報やPRというような狭義ではなく、組織内のコミュニケーション体制や情報管理、市民から意見を集約し、そして市民参加を促すためのコミュニティ作りを行えるという広い意味でのコミュニケーションを担うCCOという存在だ。若しくは、NY同様にデジタルへの強化を強め、デジタルの分野におけるイノベーションを創発するCDO(Chif Digital Officer)の設置も大いに可能性を秘めている。事実、NYのCDOは私と同世代のレイチェル女史が担っており、NYのデジタル化の推進によって、様々なベンチャー企業もNYに集約し日々新たな動きを起こしている。こうした分野には、やはり私たちくらいの年代の若手を抜擢し、多様な世代にアプローチして、市民からの意見やを集め、市民の活動を支援しいてく立場として東京自体の活性化や全国それぞれの自治体の次のフェーズにいくために必要な存在かもしれない。

様々な局面において、日本の政治行政はアップデートを図っていかなければいけない。次の時代、これからの時代に対応するためには、未来を見据え、その中でこれからすべきことを導き出し、アクションプランを考え、少しづつ実行していくことが必要だ。旧来の思考のフレームを一度外し、新たな視点を持って政治行政を作っていかなければいけない。

これまで、昨年の衆議院選や今回の参議院選挙などで、10代の若い人たち、20代の同世代の人たちの政治に対する意識を持とうとアプローチするムーブメントが起きてきた。やっと、若い人たちから政治への活動が盛り上がってきた昨今において、こうした動きを止めてはいけない。これまでの動きを一時のブームにしてはいけない。未来を担うこれからの世代や、政治や社会に対して希望を持てるようにすること。未来に対して積極的に声をあげ、意見を持てる社会にしていかなければいけないのだ。

そのためには、ネットの世界だけではなく、リアルの世界における対話を充実させ、多様な人たちと意見を交わし、自身の考えをブラッシュアップしていく必要がある。そこには、意識の高い人たちだけが集まっても意味はない。あらゆる人たちが同じラウンドテーブルに座り、相手の意見をまずは聞き、そこから自身の意見と相手の意見とを交わしていく。それは、ディベートで相手の意見を負かすことでも、自身の意見を相手に押し付けるようなものではない。互いの意見の違いを認識し、認め、そこから妥協点を見出すために何ができるか、互いの意見とは違った考えや発想はないか、そこから新しいソリューションやイノベーションが起きるものないかを模索することが大事だ。

次は、2015年の統一地方選挙や、次の衆議院選、参議院選挙が1つのマイルストーンかもしれない。それまでに、今回の反省点や改善ポイントを洗い出し、そこから次への新たなステップを、私は踏んでいきたい。


2013/07/19

上原にあるNo12 Galleryで、デザイナーやイラストレーターらによる「投票へ行こう」をテーマにした『投票 / VOTE』展が21日まで開催



参議院選挙の投票日が21日を迎える中、投票率を少しでもあげようと、今日、7月19日(金)から21日(日曜)までグラフィックデザイナーやイラストレーターらが「投票へ行こう」をテーマにした『投票 / VOTE』展を行なっています。

場所は、上原にあるNo 12 Gallery。たまたま渋谷に行く予定があったので、そのついでにのぞいてきました。

同展には、大原大次郎、Noritake、三上数馬、小辻雅史、田中貴志、373、藤川コウ、中村穣二、峯崎ノリテル、守矢努、長谷川有里、STOMACHACHE、上山悠二、鈴木裕之、宇賀田直人、高木耕一郎、竹内俊太郎、神山隆二、東海林巨樹、RESTAURANT 、横須賀拓らが参加。それぞれのフィールドで活躍している方々が、今回の選挙をうけて急きょ開催しよう、ということになったそうです。

インターネットによる選挙運動が行なわれるようになった今回の参議院選挙。ネットを使って政党、候補者、そして有権者側からも様々な手法を使って選挙運動を運動を行ったり、選挙を盛り上げたり投票へ行こうと促す活動が盛んになってきました。2011年の震災以降、ソーシャルメディアなどを通じて、クリエーターやエンジニアなど、様々な人たちも自発的に政治に参加する動きがおきてくるようになりました。

今回の展示は、ギリギリでの開催ながらも、デザインやクリエイティブに携わっている人たちもこうして声をあげ、政治に参加する動きがこうして展示なりで動きをし始めたことに対して評価できるものだと思っています。

個人的な意見としては、せっかくのポスターやデザインを、もっと多くの人たちに見てもらうような仕掛けでもよかったのでは、と思っています。Gallery展という従来と同じような動きではなく、ウェブにそれぞれがアップして、統一したハッシュタグなりCGM的にみんなが「投票へ行こう」をテーマにしたデザインを投稿できるような、Tumblrなどに投げられるような仕組みにすることで、それらをSNSで発信することでより多くの人たちに見てもらえる仕掛けができたのかな、と思っています。

けれども、試行錯誤しつつももっと多くのデザイナーが社会問題に対して声をあげ、活動することに対して賛成しています。デザインの力は、人を魅了し、時に人を行動に移したり意識を変えたり感動させられるだけの力を持っています。ぜひ、デザインの力をもっと社会に活かすような取り組みをしていってもらいたいと思います。

もちろん、僕自身も何かお手伝いできるものがあればしたいなと思います。

『投票 / VOTE』展は、上原にあるNo 12 Gallery でやっています。最寄りは駒場東大前駅です。

今回の展示、Vineでも撮影してみました。最近、instagramの動画撮影やVineにはまってるんですが、手軽に撮影できてアップできる仕掛けは、色々と使いようがある気がします。実験してみたいと思います。




参考記事
「投票へいこう」がテーマのポスター展、大原大次郎、Noritake、STOMACHACHEら参加 -art-designニュース:CINRA.NET http://www.cinra.net/news/2013/07/11/123615.php



2013/07/18

【レポート】6/21 OpenCUイベント−−身の回りの問題に気づき、小さなアクションを起こすことが大きな一歩となる



少し前の話題ですが、6月21日にロフトワークが主宰するOpenCUというワークショップイベント「身の周りの気づきをアクションに変える 〜ソーシャルムーブメントの実践者と学ぶパブリックシフト」を行ないました。

これは、6月27日に出版させていただいた(イベント時は出版前)拙著『パブリックシフト』の中身に沿いつつ、身近な社会問題を解決するために一般の人たちが周りの問題に意識を向け、そこから解決策を見出すためのワークショップを行いたいという思いから開催へと至りました。

ゲストには、ハフィントン・ポスト日本版編集長の松浦茂樹さん、オンライン署名サービスのChange.org日本代表のハリス鈴木絵美さんをお呼びしました。

「身近な問題に意識を向け、小さなものでもアクションを起こす」
「アクションを起こすためのデザイン思考フレームワークで体感する」

という軸のもと、社会の問題を「自分ごと」化し、小さなアクションへと目を向けるためのイベントにしたい、というのがイベントのゴールでした。

そのため、ゲストのお二人をお呼びしているものの、ゲストが話をしトークセッションを行うというよくあるようなイベントの内容は冒頭の40分程度で終わり、その後のワークショップに1時間以上もの時間を割く時間構成しました。

One Voice Campaign、そしてパブリックシフト

とは言うものの、まずは今回のワークの呼び水となるために、私と絵美さん松浦さんでそれぞれ話をしました。

photo by OpenCU CC BY 2.0

まずは、私の話ですが、ネット選挙解禁に向けた活動に取り組んでいたOne Voice Campaignに至った個人の経緯や、One Voice Campaignを通じて、One Voice Campaignの活動では主にSNSで共感を集め、多くの人たちの賛同などを通じて大きな活動へと広がった経緯を話しました。その後、ネット選挙の先にある、オープンデータやオープンガバメントなどの話をし、社会の担い手は政治行政側からの一方的なものではなく、私たち市民が担っていく社会になっていく時代がくる、そのために今回のようなイベントを企画し、市民の側から社会問題に対して意識を向け、小さなアクションから始めることで社会は変わっていくのだ、というお話をさせていただきました。このあたりの話は、『パブリックシフト』にて色々と触れておりますので、ご一読いただければと思います。

「変えたい」を形にするために必要な3つの要素

次に、Change.org日本代表のハリス鈴木絵美さんより、Change.orgの説明や実際に成功したキャンペーンの話、そしてキャンペーンを考える時に必要なポイントについて話をしていただきました。

photo by OpenCU CC BY 2.0

Change.orgは、すでに世界3500万人以上のユーザが集まり、日々数百件以上ものキャンペーンが世界で立ち上がっています。日本でも、W杯における男女サッカーにおける処遇の違いの是正キャンペーンが立ち上がりニュースとなったり、ドイツの関税に押収されたバイオリニストのバイオリンの返却のためのキャンペーンなど、すでにいくつもの成功事例が出てきています。

キャンペーンを立ち上げる際に気をつけるヒントとして、絵美さんは3つのポイントを説明しました。
①Crisitunity 
ピンチの時こそ、注目が浴びているから変化を起こせる大きな機会であること
②目標の具体性 
大臣や法律を変えるという大きな目標ではなく、すぐにできる小さなアクションから始めること
③Theory of Change 
変化を起こすためのロジックを作ること。例えば、変えたい事例と同様の事例を探し、その事例をもとに変化を促すなどを指す。

こうしたヒントをもとに、日々Change.orgではいくつものキャンペーンが起きている。「変えたい」思いを形にするという、Change.orgの哲学を感じさせる話でした。

読み手と書き手で作り上げる言論空間

最後に、ハフィントン・ポスト日本版編集長の松浦茂樹さんより、ハフィントン・ポストの成り立ちやメディアとしてのあり方について話をしてもらった。

photo by OpenCU CC BY 2.0

ハフィントン・ポストは、アリアナ・ハフィントン氏が2005年に創設したメディアだ。事実報道は、各種メディアサイトからのアグリゲートをもとに記事にし、編集部が独自に取材をする独自記事や、寄稿していただくブロガーなどの記事によってなりたっています。(私も、ハフィントン・ポストで記事を書いています。次書かなきゃ…

また、ハフィントン・ポストの特徴的なものとして、コメント機能の充実だ。誹謗中傷などのものなどを除き、基本的には誰でもコメントを書くことができ、そのコメントで議論されたことがきっかけでさらに次の記事が投稿されるという、ボトムアップ型のメディアと言えます。

これまでの事実報道中心の情報発信ではなく、コメントやブロガーによる寄稿などを通じ読み手と書き手が双方向に対話をし、そこから新しい議論を生み出すというソーシャルメディア時代のメディアのあり方を模索している媒体だと話しました。そのため、編集部からの記事などは読者からのコメントなどを誘発するような書き方となっている。その特徴的な例として小平市の住民投票が不成立 「35%の人々の声はどうなるのか」の意見も などのようなものが挙げられます。小平市の話は、それまでニッチな話題だとみなされていたものが、書き手が呼び水となりそこから議論が深まった事例と言えます。こうした、読み手と書き手が、ともに社会問題について議論する言論プラットフォームとしての存在だと話してくれました。

photo by OpenCU CC BY 2.0

Change.orgもハフィントン・ポストも、ともにプラットフォーム型としての形を示しており、市民の側からの問題提起や意見によって社会問題を可視化し、そこから解決策や議論を深めていく、まさにボトムアップ型の社会に必要なサービスやメディアと言えるかもしれません。『パブリックシフト』の中においても、こうしたボトムアップ型の社会の到来に向けて、私たち市民が政治や社会を担っていく、そのための意識をどう向けていくかが課題だと書かせてもらったこととリンクしてきます。


普段、意識をしない問題の解決策を考える

トーク終了後は、参加者によるワークショップを行ないました。ワークショップの手順として、今回はまずは自身が日頃感じている身近な問題を2から3つほど紙に書いていただきました。その後、参加者が書いた紙を一覧し、参加者全員がどういった問題を持っているのかを可視化しました。



問題意識を共有した後、一覧された問題の中から、関心のある問題(共感するもの)と、関心があまりない問題(問題かもしれないが、自分にとってはまだあまり身近に感じられないもの)の2つを直感で選んでいただく作業をしてもらいました。

そして、ここが今回のワークショップのポイントなのですが、今回は「関心のあまりない問題」をみなさんで議論する、という流れに設計しました。

よくあるワークショップだと、往々にして自身が興味や意識のある問題に対するグループを作りがちですが、既知の問題は収束地点をグループの参加者の多くが把握しており、予想外な解決策などが出にくくなっている、という問題もはらんでいます。また、そうした状態は日頃の生活の意識を変えるような体験になることはとても少なく、期待や予想を超えるような体験になりにくい傾向があります。そのため、今回のワークショップでは普段自分がなかなか意識しない、もしくは普段関心を抱かないような問題に対して、常識などの枠を外した状態で解決策を考えてもらい、それによって普段の生活の視点の幅を広げてもらおう、という試みでした。

photo by OpenCUCC BY 2.0

5グループに分かれていただき、基本的にどのグループも自分があまり問題意識を持っていない議題に分かれていただき、今までにない新しい解決策を見つけてください、ということでワークがスタートしました。参加者も、今回のワークの中身をこの場の直前で知り、始めは自分に興味のあるものを話すつもりでいたのか戸惑う人もいましたが、始めると意外と参加者も今まで考えたことがなかった問題に対して真剣に考えるようになってきました。もちろん、私やゲストも時折グループに参加して議論などに対するヒントやアイデアを促し、より効果的に解決策を見出す手助けをする役割をしていました。

おかげで、各グループとも思ってもみないような面白いアイデアで議論が次第に盛り上がってきました。もちろん、 今回のワークの内容が本当の意味での解決策になるかどうかはわかりませんが、普段意識しない問題を考える30分によって、日頃の生活の意識ががらっと変わってもらうことが大事だと考えています。



ワークの時間が終わり、各グループともにチームで出したアイデアをもとにした解決策について、ショートプレゼンを行なっていただきました。
・チーム名
・解決方法の名前
・キーワード
・ターゲット
・解決に必要な要素
・アクション
・達成イメージ
などの項目を埋めていただき、話し合った課題と、それに対する解決策を話していただきました。

最初はなかなかアイデアがでなかったチームも、最後の最後でアイデアを見出し、予想外の解決方法でプレゼンの時には参加者から笑いや拍手をもらうなどしていました。全グループごとに、僕やゲストの絵美さんや松浦さんも、それぞれのチームに対してアイデアの良さや解決策の切り口の面白さについてコメントをしていただきました。

多様な生き方の人たちが集まり、新しい何かを生む場を作っていく

今回のワークは、冒頭のイベントの目的でも述べたように、ボトムアップ型の社会のための1つの場のあり方だったのではと考えます。

これまでのゲストや偉い人がしゃべり、「解決方法はこうです!」と答えを決めて言うのではなく、みんなと一緒になって問題解決を考え、時には思考のフレームを外し、新しい発想でアイデアを生み出し、そこから新しいソリューションを提示しイノベーションが創発する可能性の場を導き出す。そうした場に、それぞれに活動をしている方々がファシリテーターとして議論を促し、参加者に対して思考の新しいタネを生み出すようにすること。それによって、自分が考える方法とは違った新しい解決策が出てきやすくなってきます。それをもとにさらにみんなで議論を重ねていくという、まさにこれからの時代におけるファシリテーターの役割に重要性も認識したワークショップでもありました。

多様な生き方をしている人たち同士が集い、そこから新しい”何か”を生み出す場を作っていくこと。そうした場を今後も実践していきたいと考えると同時に、ぜひ多くの人たちも、こうした場を通じて様々なアイデアのタネを生む機会を作ってもらえたらと思います。

僕個人でもよければ、全国どこでもお話やワークショップのお手伝いをさせていただければと思います。ゲストとして参加していただいたChange.orgの絵美さん、ハフィントン・ポストの松浦さんも、ありがとうございました。引き続きよろしくお願いいたします。




2013/07/17

【企画】8/3に日本酒と屋形船で夏の風物詩を楽しむ


昨年のちょうど海の日に、渋谷にあるfactoryというカフェで「海の日!渋谷で浴衣で夏祭り!」というイベントを企画しました。

 日本各地の名産品を取り扱っている企業やサービス事業者を呼び、浴衣を来た若い人たちで夏を感じるイベントとして、200人や300人以上の人たちに来てもらい、大変多くの人たちに喜んでいただきました。

普段、なかなか浴衣や日本の伝統文化を感じる機会はあまり多くはありません。けれども、若い人たちの中には、日本の文化を感じる機会が身近にないだけで、興味や意識を持っている人たちは、たくさんいると思います。(僕の周りにはそんな人が多いです。)

そこで、日頃からお世話になっている、日本の定期購読サービスを提供しているSAKELIFEさんと一緒に、昨年に引き続き夏祭り企画を8月3日に開催します。



今年は、日本酒を粋に楽しもうということで、屋形船に乗って美味しい日本酒を楽しもう、という企画です。かつて、84ismでも過去に2回ほど屋形船企画を実施した時も、参加者のほとんどが浴衣を来て屋形船やお酒を楽しむなど、毎回好評だった屋形船企画。

今回は、その風情のある屋形船に、SAKELIFEが厳選した夏らしい日本酒を手元に、夏の風物詩を味わおうというものです。もちろん、今回のために厳選した日本酒の説明のもと、美味しく日本酒を味わいながら、夏を満喫しよう、というものです。

屋形船は、古くは平安時代からその原型が存在し、当時は貴族の遊びにも利用されていたそうです。河川が整備された江戸時代以降は、大名や商人などの花見や月見、花火などを興じる場所として、広く市民に親しまれていたそうです。今では少し特別な存在と思われるようになった浴衣も、かつては当たり前に着こなし、当たり前のように屋形船を楽しんでいた昔の人たちとは言わないものの、もっとそうした文化を身近に、当たり前なものとすることを、もっと経験していくべきなのでは、と考えています。

ぜひ、8月3日(土)に屋形船に乗って、日本酒を楽しんでみませんか。時間帯は17時スタートで20時終了。

概要は以下の通りです。
(申し込みはこちら)
「SAKELIFE × 屋形船」夏の夜の大人の嗜み〜舟と浴衣と日本酒と〜 | PeaTiX 

【概要】
◆日時:8月3日(土)17:30出港(集合16:45 集合時間厳守
◆集合場所:新木場駅前ロータリー集合
(有楽町線orりんかい線新木場駅 渋谷から約30分)
◆参加人数:50人
◆参加費:7500円(乗船代・飲食・日本酒込)
*船の都合により、7月21日(日)までの事前募集とキャンセル不可となります。

◆ドレスコード
日本の夏を感じる企画となっています。
強制ではありませんが、ぜひ、浴衣を着て屋形船と日本酒を楽しんでもらえたらと思います。
◆注意事項
・屋形船は多少の揺れがあります。また、日本酒などの飲食(ソフトドリンクもあります)のため、船酔いなどにはご注意をお願いいたします。
・食べ物などの簡単な持ち込みは可能ですが、日本酒などはSAKELIFEにてご用意いたしますので、お気軽にご参加ください。
船が出港いたしますので、集合時間厳守でお願いいたします。
【タイムスケジュール】
集合:16:45
乗車:17:30
乾杯 17:45 
・乾杯酒とイベント趣旨説明
・夏らしい、日本酒の味わい方や今回の企画のために厳選した日本酒について説明
・歓談時間
中締め:19:30
解散:20:00

主催:SAKELIFE 協力:TOKYObeta

申し込みは以下からお願いいたします。

2013/07/04

ネット選挙の先にあるWebと政治の新たなる関係性を築くために−−パーソナルデモクラシーフォーラム報告会とCode For Japan

先日、エンジニアtypeにて特集記事を書きました。ネット選挙がきっかけとなり、Webと政治との関係性がどう変化していくかという内容で、これからのエンジニアが関わるべきことについて、Change.orgOpen Knowledge Foundation Japan(OKFJ)を取材し、記事としました。


・ネット選挙解禁がもたらす、Webと政治の新しい可能性-Change.orgハリス・鈴木絵美さんに聞く - エンジニアtype http://engineer.typemag.jp/article/net-election

・政府も注目するオープンデータは、エンジニアにとって新たなビジネスチャンスの宝庫になる – OKFJに聞いた - エンジニアtype http://engineer.typemag.jp/article/opendata_okfj

ネット選挙に対する言説で、未だネット選挙の是非論やネット選挙で投票率が上がるかというものや、誹謗中傷、なりすましといった政党本位、議員本位な情報ばかりがでてきたものに対して、違った角度から記事を書けたら、という思いがありました。

拙著『パブリックシフト』で書かせていただいた内容も、ネット選挙の詳細よりも、ネット選挙が実現したことによる未来について考えて、そして少しでも行動に移していこうというメッセージを軸に執筆しました。その著書の中でも、Cnahge.orgやOKFJについてご紹介しており、今回の特集記事では、著書の中で書ききれなかったものを補足する形になったかもしれません。

記事の中でも言及していますが、インターネットの登場により社会を変えようと取り組む人たちの行動が可視化されるようになりました。また、自分の意見を発信し、それに共感した人たちと一緒に行動に移すだけの環境が整ってきました。環境面においての変化が起きている今、次は私たちの意識やマインドというソフトの部分を変えていくフェーズにきていると言えるのかもしれません。

Webと政治行政の分野の距離が近くなり、政治行政の足りない部分を民間が積極的に補う動きは、今後ますます加速してくるでしょう。同時に、オープンデータの取材や著書の中でも書きましたが、情報をただ公開するのではなく、積極的に利活用していくことが大事になってきます。

TEDの動画で、ベス・ノヴェック氏のプレゼンの「もっとオープンソースの政府を 」というものも、まさにオープンデータを用いての市民による積極的な政治参加が起こす未来について語っています。



ホワイトハウスの前副CTOで、オープンガバメントを推進してきたベス・ノヴェック氏のプレゼンは、行政の中だけが頑張っても社会は変わらず、いかにして市民の小さな参加の積み重ねで社会が変わっていくのか、ということを考えさせられる動画です。

こうしたこれからの未来を作る取り組みの1つとして、エンジニアを役所の現場に派遣し、行政のサービスの改善を図っていく活動として「Code For America」があります。公共サービスを優秀なITエンジニアが改善し、自治体が抱えている課題を解決するサービスをアプリを開発したりします。普段の、民間企業として持っている技術を、うまく社会に還元する場を提供する仕組みとして、注目を浴びています。



ジェニファー・パルカ氏の「コーディングでより良い政府を作る」のTED動画で、その思いや考えを知ることができます。情報爆発の時代の今、情報をきちんと情報として届けるためには、行政サービスであってもUXの概念を組み入れてサービスを作らなければなりません。そうした意味で、民間企業や技術者が持つ知恵や知識やスキルを用いることは、社会全体の公益につながるものです。

こうした取り組みを、日本でも実施していこうとする動きが起きつつあります。先日行われた「Code For Japan準備室」ミートアップでは、Code For Japan立ち上げをしようとしているメンバーが声を上げ、さらにイベントでは、6月6日と7日に開催された「パーソナル・デモクラシー・フォーラム」の様子も交えながら話がなされました。


パーソナルデモクラシーフォーラムでは、Code For Americaのみならず、Change.orgやOpen Knowledge Foundationなど、市民参加型の社会を作るために必要な様々な分野の人たちが集まるフォーラムです。市民参加を促すサービスやテクノロジーのことを、「Civic Technology」とも呼ばれ、Gov2.0やオープンデータ、オープンガバメントなどを包括した、新しい分野を築こうとしている世界の最先端の人たちが集まって議論をしています。

イベントの中では、ニューヨーク市が財務状況を可視化する「Check book NYC」をオープンソースするという話や、ホワイトハウスがソフトウェア開発のための共有サービスであるGithubにアカウントを作成し、ホワイトハウスのサービスをオープンソース化している、というような講演がなされました。他にも上がったフォーラムのトピック例として、以下のようなものがありました。

・キャンペーンをするものの心得
・テック業界が抱える男女格差問題
・大統領選挙におけるビックデータ活用
・オンライン署名がもたらす次世代型『人』中心のムーブメントについて
・プログラミング教育の重要性
・フォー・プロフィット・シビック・テック・スタートアップ企業がいかに矛盾しないか
・政治の世界が知っておくべきテック業界
・アフリカ、ウクライナ、ドイツなどを含むグローバルなシビック・テック・トレンド
・プライバシーとサイバーセキュリティ
・ウェブでバイラルを起こすための秘訣とは
・医療分野でのテクノロジー・ビックデータ活用

などが語られたそうです。こうしたトピックに対して、日本も次第に取り組まなくていかなければ問題として、次第に重要性が増してくるものです。

フォーラムの中でも、オミディアネットワークから1500万ドル(約15億円)の資金を調達したChange.org に対して、Civic Technology業界としても大きな注目を浴びており、フォーラムの中でもひときわ熱気の高かったプレゼンテーションだったそうです。

こうした中、Civic Technology業界全体を推進する基盤として、スタートアップ企業や団体に対して支援を行う投資会社や中間支援組織が重要となってきます。事実、Change.orgに出資をしたオミディアネットワークしかり、Knight Foundation(ナイト財団)やSunlight Foundation(サンライト財団)などがこうしたCivic Technologyの分野の団体に対して積極的に支援をしています。ここ数年、日本で盛り上がりを見せるスタートアップとVCとの関係と同様に、Civic Technology分野のスタートアップに対して出資をおこなう団体の存在が日本でも盛り上がりを見せることは1つの鍵となると考えます。

こうした動きを、日本でも加速させていく1つのきっかけとしてネット選挙の解禁を位置づけられると同時に、東日本大震災などにおいて、ソーシャルメディアによる市民の自発的な情報発信や情報編集、エンジニアの人たちとボランティアたちが一緒になって震災の安否確認のサービスを作り上げる動きなど、すでにCivic Technologyにも近い動きを私たちは経験してきています。こうした意識を、より日常的にしていくことこそ、これからの未来を作る上で重要なものとなってきます。


先行きの見えない時代だからこそ、自分たちで社会を作っていくという意識を持っていくことが求められてきます。Code For Americaの活動を踏まえ、日本でもCode For Japanの設立がにわかに起きつつあります。日本におけるCivic Technologyの分野をしっかりと築き、Webと政治、Technologyの社会とを結びつける働きかけを、今後も行えればと思っています。

パーソナルデモクラシーの詳細は、ソーシャルカンパニーの市川さんのこちらの記事(「「パーソナル・デモクラシー・フォーラム」レポート〜市民と政治・行政をつなぐシビックテクノロジー業界の可能性」に書かれています。)

参考記事をいくつかピックアップ
【Tech】効率的に社会を良くしているCODE for AMERICAはCool! | Shinya Hayashi Now |
『Code for America』の試みがやっぱり素晴らしい | IDEA*IDEA
ニュース - コーディングでより良い政府を作る「Code for Japan」、設立準備ミーティング開催:ITpro





しなやかな社会を作るために必要な、セーフティーネットとしての「職親プロジェクト」

日々の暮らしをしていると、なかなか事件や事故、犯罪について意識することは多くはありません。しかし、日本では毎年多くの犯罪が発生しています。平成24年の警察庁の資料によると、平成23年における刑法犯(殺人や強盗、放火、強姦、暴行、傷害、窃盗、詐欺などの犯罪を指す)の認知件数は148万765件となっており、1日で約4056件、1時間だと169件、1分で2.8件という計算になります。

つまり、今この瞬間に日本中のどこかで2件から3件の何かしたらの犯罪が行なわれている、という計算になります。この中には交通事故による業務上過失致死傷罪は含まれていないため、そうした事故も含めるともっと多いに違いありません。

けれども、日本における刑法犯の件数はここ9年間減少の一途を辿っており、戦後最大の件数を記録していた平成14年に比べると48.1%も減少しています。日本は世界に比べると治安が良く、安心安全だと言われています。普段の生活において事故や犯罪を意識するほど起きていないという意味では、件数自体の数字はともかく、日本は平和な国だと言えるのかもしれません。

一度、犯罪に手を染めると負のスパイラルから抜けられない

実際に事故や事件に遭遇した人、被害にあった人にしてみれば、犯罪は大きな問題です。少しでも犯罪や事故の無い平和な地域、平和な社会を望むことに対して異論はありません。犯罪の少ない社会にし、誰もが安心して住める仕組みづくりは、政治や行政のみならず、民間の人たちとも協働すべきものです。

刑法犯の件数自体は減少しているのですが、実は再犯率は年々上昇しています。一般の刑法犯による検挙者のうち、再犯者が占める割合は97年以降上昇傾向にあり、「2012年版犯罪白書」では一般刑法犯の再犯率は43.8%と過去最悪を記録。その原因として、刑務所の出所後の不安定な生活基盤などが挙げられます。

服役出所後5年以内に刑務所に戻る率は初犯者で24.4%、入所歴が3回以上となると59.6%にまで跳ね上がります。入所回数が多いほど累積再入率は高く、特に入所回数が1回の人と2回の人との差が顕著に開いており、ほぼ半数以上もの人が5年以内に再入所し、入所と犯罪とを繰り返す負のスパイラルが起きているとしています。

つまり、一度犯罪を行った者が再チャレンジする機会が社会の中に組み込まれておらず、入所すればするほど更生の困難さを物語っていると言えます。一度刑務所に入った人は、その経歴から就職が難しく社会への居場所を作ることができず、また以前と同じような犯罪に手を染めなければならないという状況を、社会の側が作っているという意味においては、彼らは社会の中の被害者とも言えます。

今は犯罪者でなくても、いつ何が起きて犯罪者になるとも限らない世の中です。それはまさに、ぎりぎりの綱渡りをし、一度綱から落ちた人間はコンティニューが一切できない、かなりの無理ゲーな社会の仕組みと言えるでしょう。再犯率が高いということは、一度入ったら抜け出せない蟻地獄な場所を社会が作っているのです。

民間発で、入所者の受入実施を取り組む職親プロジェクト

政府も、犯罪対策閣僚会議を受けて、昨年から「再犯防止に向けた総合対策」を実施。「再犯防止対策ワーキングチーム」を結成するなどし、出所2年以内の再入率を10年間で20%以上減少させる目標を設定するなどしていますが、その実現に対してあまり具体策は見えていません。

そうした状況の中、政治行政に頼るのではなく民間から変えていこうという動きが次第に起き始めています。日本財団が推し進めている「職親(しょくしん)プロジェクト」は、関西地域に拠点を置く企業7社の協力を得て、少年院出院者や刑務所出所者の再犯防止を目指して活動を始めたプロジェクトです。このプロジェクトは、企業の社会貢献活動と連携し、元受刑者に就労機会を提供してスムーズな社会復帰を支援し、再犯率低下の実現を目指す取り組みです。すでに関西の企業では進められており、今回は関東地域での展開を視野に、企業の方々を対象した「職親プロジェクト」東京説明会が6月24日に行なわれました。


プロジェクトは、3月28日に始めて大阪でスタート。お好み焼きで有名な「千房」代表取締役の中川政嗣氏を筆頭に、串かつ「だるま」一門会代表取締役会長の上山勝也氏、焼肉「牛心」代表取締役社長の伊藤勝也氏、和食専門店「信濃路」代表取締役社長の西平都紀子氏、建築会社「カンサイ建装工業」代表取締役社長の草刈健太郎氏、割烹「湯木」のプラス思考代表取締役の湯木尚二氏、美容室「プログレッシブ」代表取締役黒川洋司氏、藤岡工務店代表取締役の藤岡義和氏ら8社が「職親」企業として、現在は名前を連ねています。

企業は、出所者がまだ刑務所の中にいる時に面接を行ないます。その後、面接を経て選ばれた対象者は6ヶ月以内の就労体験を行います。企業は正規雇用をできるように指導し、入所者の出所後の道を作る支援を実施していきます。

採用決定後は学習支援や更生保護施設の決定をし、対象者は先輩社員と共同生活を送り少しづつ社会への適応を図っていきます。こうした活動に対して、日本財団は法務省関係者などと連携してプロジェクト全体の推進を管理。受け入れを実施している企業に対して対象者の自立支援を促すための支援金を提供するなど、官民連携となって再犯率の減少や住みやすい社会、再チャレンジの土壌を作る仕組みづくりとして、5年間で約100名の受け入れを目標に取り組んでいきます。

もちろん、職親プロジェクトは誰もが求人ができるわけではありません。対象となる出所者は初犯者を限定としています。おそらくは、初犯と2犯の再犯率の数値の開きから、初犯者の再犯率を下げることが一番効率の高い施策だと考えた結果なのだと考えられます。また殺人や薬物、性犯罪などの重大犯も職親からは除外されます。年齢制限は設けてはいませんが、若者へのチャレンジと機会を創出するという意味で10代から20代を中心とした出所者を重視していくと考えられます。若者への成長の可能性と、出所後数十年を懸案した結果、若い人への機会提供を行うことの意味は大きく、若くして職がなく、行くあてのない人がその後に誤った道を歩むのを見るのは避けたいものです。

過去は変えられないが、未来は変えられる

「再犯防止は、国だけではなく民間もアプローチしていくべき。たまたま入所することになっただけの同じ人間を、入所したということだけで私たちが差別するような社会があっていいのだろうか。この問題は、再チャレンジができる柔軟な社会の仕組みづくりに向けた取り組みなのです」。

日本財団の笹川会長は挨拶でこう述べました。現在は、自分の過去の素性もオープンになっていく時代で、ちょっとしたことでもすぐに明らかになります。よく小説などで描かれてきたように、自分の経歴を詐称してでもなんとか職にありつけることがかつてはできたかもしれませんが、いつ素性がバレるかも分からないという恐怖に怯えながら生活を送らなければいけないという方法はあまりに持続可能性がなく、また方法論として稚拙なものでしかありません。

過去の素性を明るみにしても大丈夫な社会にするために、職親プロジェクトでは入所者の素性のみならず、入所者を企業が受け入れているという姿勢を見せていることこそ、1つの大きな取り組みだと考えられます。物事をオープンにし、それを受け入れることができる多様な社会のためにも、こうした取り組みを始めることで、少しづづ変わっていくことでしょう。

社会全体としての受け皿があるというセーフティーネットが明確化されているかどうかで、人間の安住さの違いがでてきます。政府が実施している「再犯防止に向けた総合対策」でも、「出番」と「居場所」という2つがキーワードになっています。「出番」は社会における職業などの社会参画の場であり、「居場所」は生活環境やコミュニティなど、人のつながりを作り上げる場です。

マズローの欲求5段階説でも、生理的欲求、安全の欲求である衣食住を確保し、そして所属と愛の欲求であるコミュニティ意識、職場など自身の社会における出番を作り上げる承認欲求、そして技術やコミュニティにおける居場所を確保することから自己実現の欲求を満たすことができます。人間が人間として存在し、社会の中で生きる環境を作るためには、こうした取り組みの必要性を強く感じます。「職親」という名称の通り、職場提供もそうだが、生活面での支援における更生を機会を提供し、親代わりとしてきちんと居場所を作ってあげることに意味があります。

「人は過去は変えられないけど未来は変えられる」。

千房の中川氏が語ったこの言葉は、人間の未来に対する可能性を示唆すると同時に、どんな人間であっても、未来への可能性を信じることの重要性を説いています。人間は変わることができる動物であり、未来は自身の努力によって無限に広がるものだということを改めて感じさせました。

職親プロジェクトに対するソーシャルデザイン

今後は、大阪のみならず東京でも「職親」を実施してくれる企業を募集するとのことで、実際に説明会に参加していた多くの企業関係者からも実施を検討する声が多数あがり、質疑応答や今後の活動についての熱い議論がなされました。


しかし、この職親プロジェクトはやはりニッチな活動と言わざるをえません。どんなに社会にとって重要な取り組みであっても、その重要性を社会全体に対して訴えかけることも大事です。理屈ではたしかに分かっていても、飲食店などで「元入所者です」と言われても普段通りに接することができるお客さんや他の従業員は多くはない。まだまだ、社会全体としての理解は不十分であり、そうした理解を広めることが、このプロジェクトの重要なポイントであると感じるのですが、そこに対してはあまり説明がなされませんでした。

たしかに、企業の社会貢献としての意義は大きい。しかし、企業は経営者一人のものでもありません。株主や提携先、従業員、顧客など多くのステークホルダーとの関係を作りながら事業を進めていくものです。そうした関係者の理解を得るためには、そもそもとしての入所者という存在、刑務所という存在、そして、社会全体としての再チャレンジの仕組みづくりの重要性を訴える活動が必要となります。

今回の職親プロジェクトは企業という現場レベルでの取り組みですが、ニュースや報道など社会問題としての認知を図るためには、また違ったアプローチが必要となるでしょう。それこそ、コミュニケーションデザインの観点やソーシャルデザインの観点から、こうした問題を可視化し、問題解決を図ることに対する意識と理解、そして重要性を高める運動が必要です。デザインなくして実践だけを行なっても、長期的なスパンを考えると達成すべき目的到達は難しいものがあります。受け入れ先企業の拡大を目指すのであれば、着実性と同時に、賛同を呼びかけるのに必要なポップさも取り入れていくべきでしょう。難しい問題だからこそ、一般の人達にも理解されるような伝え方を考えるべきなのではないでしょうか。

もちろん、こうした動きを民間主導で実施することの意義は大きく、個人としても応援をしていきたいプロジェクトの1つです。誰もが犯罪者になる可能性をはらんでおり、誰もが当事者になりうる可能性を持つ問題だからこそ、そうした可能性を考慮した社会設計を行うべきだと考えます。入所者も私たちと同じ人間であり、それまで向こう側のことだと思っていた問題が、もしかしたら、明日自分や家族が向こう側になる可能性だってありえます。だからこそ、向こう側とこちら側という線引をするのではなく、ともに同じ社会に生きる者として、どう受け止め、どう共存していくのかを考えることが求められているのです。

(取材協力:日本財団)

*本記事は、BLOGOSが企画する「ブロガーが見るソーシャルイノベーションのいま」からの転載です。





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