2013/12/31

始める一歩と終わるデザイン




「まずは始めろ」といった言説がある。ベンチャーの人たちの間では「リーンスタートアップ」のように、スモールスタートで始めながら仮説検証を踏まえて修正し、ニーズを把握しながら展開させていくようなこともまさにその一つだろう。普段の仕事でも、起業家や経営者に話を伺っていつも出る言葉の一つには「まず始めろ」といったものがある。

たしかに、何かを始めること、一歩を踏みしめることを評価することは私も大筋では賛成だし、やらない後悔よりも実践したことを通じて得られる経験は何事にも代えがたい。

しかし、始めたものが永続するということはなく、ほとんどの行為には終わりがあることに対して、果たしてどれだけの人が意識的になっているだろうか。もちろん、始める前から終わる時のことを知ることはできない。始めたことがきっかけで、自分が思ってもみなかった方向にシフトしたり、当初の予定から離れたことになることもしばしばあるだろう。起業もそうだし、プロジェクトや団体など、何かを立ち上げたり始めることが起きる影響は少なからずある。ようは、その結果生まれたものを踏まえつつ、ある程度の節目や区切りがついた時に、しっかりと終わりを迎えさせることができるかどうか、ということだ。

サービスであれば、技術の進歩といった時代の移り変わりによって、ユーザーにとっての役目を終えたものをたたむ準備をしたり、ある一定の目標に向かって走りだしたプロジェクトは、目標を達成したことをきっかけにきちんと終わりを迎えさせられるかどうかだ。

「終わりよければすべてよし」という言葉があるように、どんな終わり方をしたかをきちんと見届けることが大切だと最近感じる事が多い。後腐れなくしっかりと相手との関係に対してきれいにするという意味では、恋愛でも同じことが言えるだろう。始めたものの責任を、しっかりと全うするためにも、「終わるデザイン」をきちんと考えることに意識的にならなければいけない。

これは、けじめとも言われるようなものかもしれない。もちろん、終わるデザインをどう考えるは人それぞれかもしれない。ある意味、個人それぞれの美学にも関わってくるだろうが、僕はできれば大事にしていきたい。

今年あったイベントでも、象徴的なものがあった。あるイベントで、2003年から続く活動が10年を迎える中、10年という節目を踏まえてどう考えるかというトークのイベントだ。その中で、いまや全国的にも広がりを見せた活動を運営されている方が、「事務局は少しづつ縮小していて、最終的には事務局も無くしてWikipediaだけで動けるようなものになれたらと思う」といったことを言われていた。つまり、もともとの活動の概念が広がり、誰もが当たり前に広がってきた中で事務局として機能を集中させて活動するのではなく、活動の経緯や思いなどをアーカイブし、そして理念に共感した人はだれでも参加できるオープンソース型の活動として、事務局的組織から脱却したいということだった。10年を迎え、活動が全国に広がってくる中、組織としての有用性の判断の中で無くすことを決定したのだろう。

運営事務局を残すことが目的ではなく、本来の目的としてある程度達成したら、その組織があり続ける理由もない。特に、会社でなくNPOやキャンペーン的な活動であればなおのことだろう。こうした判断をできることが素晴らしいと思う。目的と手段をきちんと持ち、本来持っていた目的が達成されたならばきれいに終わりを迎えさせる。仮にその事務局の活動自体が終わっても、活動によって広がった考えは、さまざまなところに残っている。その息吹を感じた次の世代が、また新しい活動を始めるきっかけとなればよいのだ。

10年以上も継続している賞やイベントなんかは、時に形骸化を招いているものも多い。もちろん中身をしっかりと吟味し、時代の変化に対応するような意識を持ったものであれば別だ。しかし、権威だけが肥大し、内実と外身が乖離してしまうようでは意味がない。本来あるべき讃えられるものやイベントの冠として意義のあるゴール設定になっているのかどうかが、その賞やイベントを名誉なものとして保ちつづけることであり、その矜持を持つことこそが求められるものでもあるべきだ。

2013年という年自体が、そうしたさまざまな活動が節目を迎える年でもあった。インターネットが誕生して20年、携帯が普及し、デジタルの活動の認知が高まり、SNSやブログなどが登場したことで、この10年という中でさまざまな出来事が飛躍的に広がってきた。

このブログは、2013年大晦日に書いている。もちろん、2013年から2014年になっても前と何も変わらないし、同じようにまた朝日が上って日が沈むだけかもしれない。しかし、多くの人は2013年を総括し、新たな夜明けとともに2014年を迎え、新しい気持ちで次の行動へと移そうとしている。そういう意味でも、年月というのも一つの節目でありけじめをつけやすいものかもしれない。心機一転、始めの一歩を迎えると同時に、それまでの振り返りをしつつ締めるところは締める、そんな気持ちが働いているのだろう。

2013年は、私自身のことを列挙すると長くなるので割愛するが、さまざまな社会の動きの中で、自分自身の立ち位置を作る年でもあった気がする。同時に、個人だけでなく、チームや組織の重要性も改めて感じた一年でもあった。2014年は、その動きを踏まえながら転換の年になるかもしれない。2014年には、30歳を迎える年でもある。30歳というのも一つの節目。自分自身としての身の振り方も、見つめなおす年なのかもしれない。

同時に、2013年は多くの諸先輩方が故人となった年でもあった。まだ逝くには早すぎた年齢の方々ばかりだった。私自身がまだお会いしたことなく、いつかお会いしてそのお考えを伺いたいと思った人たちも多かった。身近な方で、素晴らしい活躍をされた方々も多かった。もうお会いする機会がなくなることを知るたびに、彼らから何を引き継げたのかを考えている。彼らがまだやり残したこと、そして伝えたかったことを残った私たちが考え、そして次につなげていくようにしていかなければいけない。そして、彼らが安心して見届けられる様になった時、きちんとその終わりを迎えさせるためのデザインをしていくことも考えないといけない。

時代というのは、常に創造と破壊の繰り返しだ。新しいものが常に生まれ続けていくからこそ、時代が作られていく。しかし、時代を作る人も世代が交代されていく。かつて時代を作った人も、常に時代を作る人間にはなれない。次の作り手に対してバトンに渡すべきだ。そのバトンをきれいに渡し、自分の身をきれいに引くデザインができるかどうか。引き際の美学こそ、かつての日本人は持っていたはずだ。そして、バトンを受けたものは、きちんとそのバトンをゴールまで辿り着けさせるための努力をしていかないといけない。それこそが、バトンを継いだものの責任でもあるのだ。

国や社会も、常に前進し成長していくだけがすべてではない。ダウンサイジングしていくべきものを真っ向から受け入れ、急降下ではなく軟着陸していくためのデザインが求められている。数年後、そして数十年後を見越しながら、そうした中長期的視点の中でどう終わらせるためのデザインをしていくかは、成長や拡大とは違った視点でものを見ていかなくてはいけない。もちろん、新しい息吹や活動も同時に動き出している。その新しい動きを疎阻害させないためにも、一つの時代に対して区切りをつけ、次の時代への仕組みのアップデートをすることが求められているということを、きちんと認められるようにならなければいけない。

始める一歩だけではなく、終わるデザインにこそ今こそ目を向けるべきなのではないか。これを2014年を考える一つの考えということを記して、2013年を締めたい。




2013/12/24

Creative Labに参加して感じた、思考実験を行うためのアイディアソンに必要なこと

11月1日2日に行われた、Tokyo Designers Week内で企画されたCreative Labの様子が動画がアップされたようです。



Creative labは、来場者参加型の企画で、テーマに合わせたアイディアを作り出す、いわばアイディアソンみたいなもの。参加者は「公共空間を楽しくするデザイン」「世界の問題を身近に感じるデザイン」「新しい学びのカタチ」というテーマに沿ってグループ分けを行ない、各グループ毎に最終的に5分間のプレゼンを行う、というものでした。



ゲストで茂木健一郎さんや猪子寿之さん、前田紘典さん、僕という並びなのですが、茂木さんと猪子さんはMITのセッションが終わってからの参加なので、後半のプレゼンのみの参加で、僕と前田さんはセッションの通しで参加していました。

各グループ毎にファシリテーターがおり、ゲストは最後の講評時にコメントをする、というものだったのですが、せっかくなのでグループワークの間ずっと各テーブルをまわりながら、それぞれのグループに対してコメントしたり質問をしてみたりしながら過ごしていました。ちなみに、イベント自体は2日間の開催で、一日毎に参加者、司会、ファシリテーターは1日目と2日目で入れ替えだったのですが、ゲストだけは通しの参加だったので3テーマ4グループの12グループが2日間、合計24グループに対してコメントなどをする、というなかなかハードな参加となりました。

各グループともに、初めて顔を合わす人たち同士が、時間をかけてアイディアを練る場だったのですが、やはり面白いアイディアとそうでないアイディアに別れるもので、2日間で多くのグループの内容を聞いて感じたことを踏まえつつ、アイデアを出す場で重要な要素についてまとめてみたいと思います。



・思ったことを、まずは言ってみる
当たり前かもしれませんが、会話を続けることがこうした場では大切です。また、「相手の発言を否定しない」にもつながりますが、自分がなんとなく当たり前だと思っていることやふと口にしたことから議論が発展したり思いがけないヒントがでてくるかもしれません。アイデアを出す場は、なんでもいいから思ったことを言っている、まずはそこからです。

・メモ代わりに目の前の模造紙やふせんに書いてみる
こうしたワークショップでは、模造紙やふせんを使ってワークすることが多いのですが、普段ワークショップに慣れていない人からしたらふせんや模造紙の使い方がいまいちよく分からないのも事実です。もちろん、使い方などは最初に指示されたりするのですが、書いていいよと言われても初めての人はなかなか手が動きにくかったりします。場によって多少変わるかもしれませんが、思ったことを言ってみると同じくらい、思ったこと発言したことをメモに残すというのは重要なことです。そうしないと、議論が発展した時に前の発言を振り返ったり、ふせんに各人のアイデアを書き込んだものを、あとで再整理したりすることができなくなるかもしれません。

口を動かすと同時に手を動かし、発言したこと思ったこと、思考の断片をふせんやメモに書いていくこと。そして、最も重要なものは書いたものをみんなにもシェアすることです。そうすることで、議論が発展しやすくなります。

・相手の発言を否定しない
アイデアを出す場は、いわば思考実験の場です。そこでは、正しいとか正しくないといったことはありません。とことんアイデアを出し、そして、誰かが発言した内容が自分と似てることから自分の話が発展したり、相手の発言をうけて閃いたアイデアがでてくるかもしれません。そのためには、相手の発言を否定するのではなく「なるほど、そういう考えもあるな」とまずは受け止めることが大事です。

・相手の話に乗っかってみる
議論を発展させるためには、相手を否定しないだけではなく、相手の話に乗っかってみることも大いにありです。「それのアイデアだったら、もっとこうすると良くなるかも」「それがありなら、こっちもありじゃね?」などなど、話を広げていくことでアイデアが思いがけない方向におき、予想しなかった形になるかもしれません。どんな意見もありだと思い、発展させるよう心がけることが、こうした場では大切だったりします。

・そもそも論(WHY)を考えてみる
ファシリテーターにも必要かもしれませんが、議論の中で「これが問題だ、ボトルネックだ」といった内容が出た時、その問題が生まれた原因を考えたり、なぜそれが発生するのか、無意識的に行動していることみんなが常識だと思っているものを疑う意識、つまりWHYを考えることから、本質的な課題が見えてくることがあるかもしれません。場合によっては、そのボトルネックを解消することが、素晴らしいイノベーションや新しいアイデアの種になりうるのだから。

・現実論はしない
WHYを考えるときにも通じますが、現実論が議論の時にネックになることがしばしばあります。アイデアを出したはいいが、そのアイデアが本当に意味があるかどうかという話の中で、法律の問題や現実の仕組みの話をしがちな人がいます。もちろん、ビジネスモデルとして考える時はそれは必要な要素ですが、この短い時間で法律について議論する暇はないので、ここでは現実論は極力しないほうがよいと思います。アイデアを生み出すことが求められている場なので、思考実験だと思って色んな枠やしがらみを取っ払った発想を持って話をしてみましょう。

・その場をできるだけ楽しむ
いろんなことを言いましたが、一番大事なものはこれです。仕事でもない場ですし、数時間をお初な人たちと一緒に場を共有し、最後にアウトプットしなければいけない場だからこそ、その場をめいいっぱい楽しみ、色んな刺激や発想を見出す場だと思うことが一番です。その場にいることが楽しく感じられないのならば、せっかくのいいアイデアも出てきません。「それもありだね!じゃあこれはどう?」みたいな感じで、アイデアのキャッチボールをする楽しみを見出すことが、なによりも大切な意識なのではないでしょうか。


正しいことは正しくない、という意識を持つこと
こんなところでしょうか。もちろん、最終的にプレゼンされたアイデアを実現しようと思うのならば、ターゲットを精査したり、マネタイズを考えたり予算や技術論の話をしなければいけませんが、それは次のフェーズ。日ごろ自分が思っている不満や不思議だと思っていること、これってもう少しこうしたら良くなるのでは、といった普段の感覚を解放する場だと考え、思考を柔軟にする実験の場として捉えましょう。

Creative labの動画の中で、茂木健一郎さんが「いい人にはイノベーションは起こせない」といった言葉や、MIT副所長の石井裕さんの「正しいことは間違ってる。イレギュラーなものの発想で、考えること」といったことは、イノベーションは新しいものを生み出す源泉として、現実を否定してみるといった思考実験や、正しいということはすでに認められている、もしくはある程度予想できるようなものであるという考えをもち、現実にないものを考えてみることから、次の時代のヒントが生まれてくるのではないでしょうか。

そうした意味では、今回のCreative Labo参加者のアイディアを出すことの意識や思考実験の場に対する差が見られたのではと思います。例えば、満員電車を解消することを考えるときに、「満員電車をいかに楽しく」と考えるか、「そもそもとして、満員電車がなぜ発生するのか」といったことを考えるだけで、思考のベクトルは変わってきます。議論の途中で、僕があえて「公共空間って、そもそもなんなんだろうね?公共の反対を考えてみよう」と投げかけたことで、議論に幅ができたグループもありました。(そのチームは、最終的に喫煙スペースに関してのアイデアを発表しました)

時間も、13時スタートでオリエンが始まり、14時から19時終わりと、約4時間近い議論の時間がありました。なので、最初のメンバーとの議論として、思いっきり突拍子もないことを言いながら、そこからじょじょにブラッシュアップしていって、最後のプレゼンで形に持っていく、という時間配分も意識することだと思います。

参加者の発言を促すためにも、ファシリテーターはうまく相槌なり発言者の言葉に対して「それってどういうこと?」「そう思ったきっかけは?」など、うまく発言した人の内容を飛躍させたりすることで、議論や思考の幅を広げることができると思います。そうした意味でも、ファシリテーターの役割も大きく占めています。今回のCreative Labでは、ファシリテーターに対しての事前の共有や意識のすりあわせをする時間があまりなかったように思えたので、そこがもう少し事前にやりとりができたら、もっと良いものになったのではと思います。


アウトプットではなく、過程にこそ意味がある
少し話が逸れるかもしれませんが、ニューヨーク大学教授のクレイ・シャーキー氏が、あるキーノートプレゼンでこんな発言をしました。



”Hackathon doesn't make output.〜Social capital develop.〜Understanding problems”
「ハッカソンは、アウトプットを生み出す場じゃない。参加したメンバーとの関係性を深め、そこで提示された問題を深く理解することだ」
ハッカソンは、ハックとマラソンを合わせた言葉で、あるアイデアやテーマに関してのプロトタイプ作りや共同作業を行うイベント。最低でも1日から数日かけて行われるイベントで、時に実際にプログラミングをする前に、アイデアソンのようにアイデアを話し合い、ソリューションを導き出すための時間があったりします。

そんなハッカソンに対してクレイ・シャーキー氏が語っている内容は、今回のCreative Labにも通じるものがあります。つまり、その場で話されたことや最終的にプレゼンをしたアイデアそのものではなく、ある一定期間メンバーと思考をフル回転させながら議論し、アイデアを生み出してブラッシュアップしていくその過程にこそ意味があるのです。正直な話、実際に形になるだけの斬新なアイディアが、会って数時間で議論したメンバー同士では生まれにくいことがほとんどかもしれません。猪子さんが、動画で「社員と常に会話したり議論しながら、アイディアに対して研ぎしましていく。同じ人と長時間議論することで、行間が生まれ、新しい方法を見出すことがある」といったことを話しているように、ある程度気心がしている人同士で、本音で言い合ったりふとしたことがきっかけでソリューションを見出すこともあります。

グループで議論したことがきっかけで、メンバー同士が出会って数時間後には互いにある程度の本音で議論する関係性が築けることで、その後に一緒に会社を作ったり、何か別のプロジェクトを作る時のメンバーになったりすることがあるかもしれません。StartupWeekendのような場では、そこで出会った人たちと、プレゼンした内容を本当に事業化しようとイベントが終わったあとも議論し、さらなるブラッシュアップをして起業する人たちもいるほどです。

テーマとして設定されている問題に対して真剣に取り組むことで、問題をさらに深く理解することができます。今回であれば、「公共空間って?」「学びってなんだろう?」「世界との関係ってどうなるんだろう?」といった問題に対して考えるきっかけになったと思います。こうした場を通じてさまざまな問題をより身近な意識となることで、普段の生活においても何かのきっかけでふと考えてみたり、より深い考察ができるようになるかもしれません。イベントに参加して、最後にプレゼンして終わりではなく、こうしたワークショップの場を通じて経験したプロセスにこそ意味があり、そして何か次につながるものを見出すことが最も大切なことなのです。


思考実験をする場の重要性は、増してくる
閉塞感や新しいものを生み出すことが求められている今の時代、こうした思考実験をして議論する場の重要性は増してきているように思えます。今回Tokyo Designers Week内で参加型のイベントとして開催されたCreative Laboは、誰もが参加し、日ごろ思っている考えをシェアしたりするところから新しいデザインの種が生まれてくるきっかけを作ることを目的にしたという意味では、これも一つのデザインの実験の場だったかなと思います。来年は、もっと盛り上がっていけるようなものなればいいなと思うと同時に、また何かしらお手伝いしたいですね。

ワークショップという場やファシリテーターという役割の重要性自体も、考えをシェアしたりアイデアをだす場が増えてきていると同時に求められているのではないでしょうか。参加者の意見を吸い上げ、議論を発展させたりそれまでになかった形を生み出すサポートをするファシリテーターという存在も含めて、思考実験の場というものの場の重要性も含めて、今後考えていかなければいけないものではないでしょうか。

2013/12/10

出会いから2年半。友人であるグッドパッチのつっちーが、新しい一歩を踏み始めた。



今日CNETで記事を書いたが、友人である土屋尚史氏が、デジタルガレージから資金調達をしました。

UI設計に特化したグッドパッチ、デジタルガレージから1億円を調達 - CNET Japan http://japan.cnet.com/news/business/35041091/

土屋氏、いや、ここではいつも呼んでるつっちーと書きたいと思います。ここからは、つっちーとの出会いなど個人的な経緯や感想の内容です。


そもそもの出会いは、2011年6月に僕がアメリカを旅してた時のこと。サンフランシスコにいた時に、現地で活躍している日本人や日本人起業家に会いにいきたいと思って目についたのが、ウェブデザインやマーケティングを手掛けているbtraxでした。当時は、日本でもスタートアップが盛り上がりを見せており、サンフランシスコやシリコンバレーで起きているスタートアップの動きなどをブログで発信していたりしていて、面白そうだなと思っていました。そこで、思い立ったら吉日ということで、btrax社に訪問(しかも突アポ!)で行き、最初は受付の人しかその日はおらず、連絡するから、ということで追い返されました。次の日、いぜん連絡もなかったけど暇だったので懲りずに再度訪問!

その時に、当時インターンをしていたつっちーと遭遇しました。ただ、いかんせん中身がよくわからない若造が、しかも突アポで一度追い返されたのにまた来たということで、つっちーたちは「なんか、変なやつが来た」と思ったのか、早々に追い返そうかなと思っていたそうです(笑)。そこで、自己紹介兼ねて色々と話をすると、当時運営していた84ismのことをつっちーが知ってて、そこから日本のスタートアップのことやベンチャーのことで一気に話が弾み、ちょうどbtraxがイベントをもうすぐやるということで、インタビューをさせてもらうことになったのが始まりでした。その時のインタビューはこちら。

日本とSan Franciscoをつなぐ、btraxさんにお邪魔して日本人インターンの方に話を聞いてきた@サンフランシスコ / ハチヨンイズム http://84ism.jp/13436



そのあとは、意気投合してサンフランシスコにあるコワーキングスペースでinstagramなどが誕生した「Dogpatch labs」(現在は、サンフランシスコから移転)やTwitterを案内してもらったりして、「今度日本に帰ったら、一緒にコワーキングスペース作ろうぜ!」と盛り上がりました。

その後、2011年9月11日にNYにいたいという思いから6月からアメリカやカナダの各地を一人でうろうろとする旅も終え、9月末に帰国した時、つっちーがちょうどGoodpatchを立ち上げた時でした。(ちなみに、Goodpatchの名前の由来は、案内してもらったDogpatch labsを由来にしているそうです)その後、僕自身がもともとHUBを知っていて、HUBを東京で作りたいという思いを持って、そのためにアメリカ各地のコワーキングスペースやスタートアップを取材したりしていました。アメリカのさまざまなカルチャーを学んで帰国したこともあり、つっちーと一緒に、HUB Tokyoを立ち上げよう!ということで、始めはGoodpatchの一事業として進めることとなりました。同じ時期に、HUBを作りたいという思いから帰国していた槌屋詩野さんや片口美保子さんとも出会い、2011年の12月くらいから、みんなで一緒に事業を作っていこうということでMTGをしたりワークショップをやったりと、それぞれの思いを共有しながらHUBを作っていこうという動きとなりました。

さまざまな人との出会いや別れ、驚きや発見、HUBを作るという思いに共感した人たちとのつながりなど、色々なことが続きながらHUBを進めていくための議論を重ねてきました。それぞれの考えている方向性についてなど、まさに腹を割って時に涙を流すこともありました。その中で、つっちーは共同創業者と別路を迎え、一人でGoodpatchという事業を進めるにあたり、事業に集中し新しいステージに動いていこうという決断をしました。僕も編集者、ジャーナリストとしての活動や、ちょうどネット選挙解禁に向けた動きがこのタイミングだからこそやらなければいけない!という切実な思いからOne Voice Campaignを立ち上げるなどし、HUBを作るために離職までした詩野さんと片口さんが選任で取り組み、僕たちはサポートに回るような体制を迎え、各人それぞれの歩むべき道を突き進んでいきました。HUB Tokyoは、その後詩野さん片口さんを含めた素晴らしいチームが、アントレプレナーを生み出す世界に誇るグローバルコミュニティを作り上げ、設立から1年が過ぎようとしています。それぞれの道を歩みつつも、互いに腹を割って議論した仲間として、陰ながら今も時折HUBには足を運んだりしています。

帰国してすぐにStartupDating(現、THE BRIDGE)やCNET Japanで記事を書くライターとして活動するようになった僕は、改めてつっちーと、同じITスタートアップ界隈の中でのそれぞれの立場の中で活動することとなりました。2012年の春から約1年半弱、つっちーとの出会いを含めるとちょうど2年半。その後、つっちーは一人から今では20人を超える社員を抱えるくらいの企業へと成長させました。今回の調達に関してTHE BRIDGEのインタビューで、つっちはこう語っています。「設立当初は受注を増やすのに苦労しましたが、昨年6月に江口さんに書いてもらった記事によって、Gunosy のデザインをグッドパッチが担当していると広く知れ渡り、それ以来、受けきれないくらいの仕事が舞い込むようになりました。」

ここで言う記事とは、僕が書いたGunosyリニューアルの記事のことです。

[インタビュー]情報の新しい流れをつくりたい–東大のエンジニア集団が立ち上げた次世代マガジンサービスGunosy - THE BRIDGE http://thebridge.jp/2012/06/interview_gunosy

これは、つっちーがGoodpatchを立ち上げてすぐに「面白い大学院生が面白いサービス作ったんだけど、UIがもったいなら手伝ってる」という話を聞いたことがきっかけでした。その後、Gunosyの関くんとも別のイベントで会い、話が盛り上がったことがきっかけで、ぜひ話を聞かせて欲しいということで当時はほとんどGunosyについて書かれている記事が皆無だった時に、Gunosy立ち上げからサービスに対する思い、今後について話を伺い、記事にしました。おかげさまで、記事は多くの人たちに読まれ、記事のおかげか、Gunosyもユーザー数が1万人以上になり、つっちーにもGunosyのサービスリニューアルに携わったことがきっかけで仕事が舞い込んだ、という意味では、僕が書いた記事が何かしたらの意味をなしたのかなと思います。しかし、たしかに僕は記事を書いたかもしれませんが、それはたまたまの結果論であり、その前提にはつっちーがシリコンバレーで関くんと出会い、Goodpatchを立ち上げてGunosyのデザインを引き受け素晴らしいデザインへと仕上げたことです。そして、たまたまサンフランシスコで僕とつっちーが出会ったことが、偶然つながった結果なのです。その結果を作ったのは、他でもないつっちーやGunosyのメンバーの人たちの行動力や実力があったからこそだと僕は思います。

人の運命やきっかけは、何が起きるか分かりません。しかし、人との一期一会の出会いの中で、懸命にコミュニケーションしたことが1年後、2年後、いや10年後に意味をなすことは大いにありえます。大事なのは、その中で生まれる人との出会いやつながりをしっかりと大事にしていくことです。それは、常に一緒にいろとかソーシャル上で日々コミュニケーションしたり相手の行動をチェックする、ということでありません。腹を割り、互いに持っている考えを真に共有することで、後は相手がどんなことをやっているかよりも、どんな思いでそれに取り組んでいるか、ということを尊重することだと思います。実際、つっちーとは、サンフランシスコで一度会っただけなのに、東京に帰国したら一緒に事業やっていこう!と意気投合したりしたのも、サンフランシスコという場所で互いに持っている思いを腹を割って共有したからこそであり、そしてその後に実際に事業に向けて手を動かし、結果的に別路になっても、それまでの共有体験があるからこそ、離れていても仲間であるということだけをもとに応援し、やりとりをしてきただけなのです。

実際、つっちーが秋葉原にオフィスを構えてからは、オフィス移転や一周年パーティ以外ではほとんどつっちーとは会っていませんし、TwitterやFacebook上でも時折コミュニケーションを交わすくらいでした。しかし、なんとなく活躍の声は風の便りでうかがい知れるし、僕の活動もつっちーは会った時に話をしたりとなんとなく知っていたみたいでした。そんなもんです。けど、そんなもんでも、分かり合えるものはあると思うんです。

もちろん、だからといってGoodpatchに肩入れしようとしてるわけではありません。一メディアの人間としての職業の矜持は持った上で話をし、仕事の話以外では友人であり仲間として接しています。もちろん、彼もそのことは理解していることでしょう。友人であるからこそ、ビジネスとプライベートはきっちりと分けなければいけません。

創業してからの苦難は、どんなに友人であってもその苦労や苦難は計り知ることはできませんし、それは絶対に分かることはできません。しかし、成果を出したことに対しては公平に評価をし、応援していくことは大事です。改めて、今回のニュースは、つっちーの、そしてGoodpatchとしての新しいステージへと歩もうとする一つの結節点になるのだと個人的に思います。今後の活動や新しいサービスも含めて、友人が活躍してくれることを陰ながら応援していければと思います。

こうして、仲間が活躍するのを見ることで、自分も頑張らなきゃとという発破をかけながら、次は自分の番だと思いながら、日々歩んでいこうと改めて決心しました。

2013/12/04

「僕らが描くこの国のカタチ2014」というテーマで、元日スペシャル「ニッポンのジレンマ」に出演します



(写真は、2013年元日スペシャルのもの)

元日放送予定の、NHKEテレの討論番組「ニッポンのジレンマ」(http://www.nhk.or.jp/jirenma/)に登壇することとなりました。

テーマは「僕らが描くこの国のカタチ2014」

ネット選挙解禁の動きやオープンガバメントといった動きに携わってきている中、国や社会のあり方をどう考えていくか、そして、前回のテーマで「新TOKYO論」ということが話され、これからの東京も含めた都市のあり方や未来、暮らし方や生き方について議論するような場ともつながっていくのかなと思います。

自分自身のテーマとしても、どのように社会の仕組みをアップデートしていくか、という大きなテーマの中で、テクノロジーもデザインも、メディアもスタートアップも、さまざまものを融合させ、新しい価値やこれからの社会にとって必要なものをこれからも作っていきたいと思っています。

そんなことが、話せたらなと思っています。収録はこれからですが、なにかこんなこと話してほしい、という人とかいれば、ぜひ、コメントください。

また、登壇者も豪華で、ビジネス、テクノロジー視点では、Wantedlyの仲さんやChange.orgの絵美、はあちゅうさんに家入さんというメンツ。そんでもって学者、研究者側では、『中国化する日本』の與那覇先生や『永続敗戦論』の白井先生、先崎先生に施先生、そして建築家の藤村さんと、お会いしてみたかった方々との一緒のテーブルということで、どんな話ができるか楽しみです。

お時間ある人は、ぜひ視聴してもらえると嬉しいです。


NHK 新世代が解く!ニッポンのジレンマ http://www.nhk.or.jp/jirenma/form_ga.html

概要
恒例の元日SP!
「僕らが描く この国のカタチ2014」

恒例となった元日の大討論。今回は2時間半にわたり、
70年代以降生まれのジレンマ世代の論客が「この国のかたち」を考える。
「内向き」「保守化」など、大人たちが貼ったレッテルなんて、大きな勘違い!
ジレンマ世代は、この国が抱えた様々な問題を、これまでにない発想で書き換えようとしている。
僕たちの前に広がる、新たな未来地図。 徹底討論で、その姿が浮かび上がってくる。


ゲストパネラー
◇家入一真(起業家・投資家・クリエイター /1978年生まれ)
◇伊藤春香(会社員・週末作家 /1986年生まれ)
◇江口晋太朗(編集者・ジャーナリスト /1984年生まれ)
◇白井聡(文化学園大学助教 /1977年生まれ)
◇施 光恒(九州大学大学院比較社会文化研究院准教授 /1971年生まれ)
◇先崎彰容(東日本国際大学准教授 /1975年生まれ)
◇仲 暁子(ウォンテッドリー株式会社代表取締役CEO /1984年生まれ)
◇ハリス鈴木絵美(Change.org 日本代表 /1983年生まれ)
◇藤村 龍至(建築家・ソーシャルアーキテクト /1976年生まれ)
◇與那覇 潤(日本史研究者・愛知県立大学准教授 /1979年生まれ)


M C
◆古市 憲寿(社会学者 1985年生まれ)
◆青井 実 (NHKアナウンサー 1981年生まれ)
◆橋本奈穂子(NHKアナウンサー 1980年生まれ)






21世紀型の都市が持つべき7つの戦略とCivic Hackerへのマインドシフト

この記事は、Civic Tech (シビックテック)をテーマにした、「Civic Tech Advent Calendar」企画の3日目のための記事です。他の記事はhttp://qiita.com/advent-calendar/2013/civictechの一覧から見れるようになっており、日ごとに記事が増えていく予定です。

(この記事は、Qiitaに書いたブログ21世紀型の都市が持つべき7つの戦略とCivic Hackerへのマインドシフトに加筆修正したものです)





21世紀型の都市が持つべき7つの戦略
Advent Calenderということなので、色んな視点からCivic Techについてみなさんと書き紡いでいければと思っています。

海外でCivic Techに関連したウェブメディアとして、Goverment Technologyというサイトがあります。海外のCivic Techの事例やオープンデータの動き、オープンガバメントの事例など、さまざまなものが紹介されたりしています。その中で、Code for AmericaのAbhi Nemani氏(co-director)が10月に寄稿したものがありました。詳細は、原文を読んでもらえればと思うのですが、「7 Tactics for 21st-Century Cities(21世紀型の都市が持つべき7つの戦略)」と題した内容でした。5年目を迎えるCode for Americaが活動してきた中で、これまで10以上の自治体と関わりながら、地域課題と向き合ってきた彼らが考える、これからの都市のあり方についての提言、といった内容でした。

見出しを中心に紹介しつつ、内容についてのコメントをしていきながら、ブログを書いていってみたいと思います。


1. CREATE A SPACE TO EXPERIMENT. (実験ができる空間を作れ)
さまざまな人が集まる場所でトライ・アンド・エラーをし、そこから新しいチャレンジをしていくための場所が、都市には必要です。東京を例にすると、都市の余白が存在せず、ほとんどの人はお店やカフェといった既成の場所に収まりがちです。しかし、公園といった誰の所有でもない公共的な場所を通じて、色んな人が集える場所があることから、新しいものは生まれるのかもしれません。そういう意味では、東京はあまりにニューヨークなどと比べてふらっと立ち寄れる公園はたしかに少ない。ちょっとした憩いの空間や、多用な人たちが集まれる場所から、クリエイティブなものは生まれてくるのではないでしょうか。

2. USE GOOD DATA FOR BETTER DECISIONS.(最適な決定のために、良いデータを使おう)
オープンガバメントの流れの中には、オープンデータも含まれています。オープンデータとは、広く公開し誰でも自由に使えるようにし、営利非営利問わずに使えるデータのことを指します。気象データや人口統計などの統計情報、行政期間が保有する地理空間情報や防災・減災情報などの公共データを、利用しやすい形で公開することがまさにそれでしょう。

そうした膨大なデータが、行政府の中には多く眠っています。そうしたデータを有効活用することで、ビジネス創発が見込まれるという研究発表も生まれています。しかし、ビジネスだけではなく、普段の生活においてデータを活用することで生活が豊かになったりすることも大切な視点です。さらには、行政府の政治的判断においても、こうした統計データを活用し、より効率的で効果の高い行政判断をすることが求められます。

地域の資源を活用し、市民や民間企業主導で地域の問題を解決していくボトムアップ型の社会を目指すためにも、どのようにデータを活用するのかを市民や民間企業自らが見出すことで、より地域を良くする判断材料として、データを使うことを前提とした社会にしていくことだと考えられます。

3. DESIGN FOR/WITH CITIZENS.(市民のために、市民とともにデザインすること)
イギリス政府は、オープンデータの活用としても有名ですが、同時にデザインの視点でも有名な国です。その中でも、「サービスデザイン」という視点が求められています。サービスデザインとは、製品やサービス単体だけに注力するのではなく、サービス全体のデザイン設計を行ない、デザイナーがクリエイティブとイノベイティブを組み合わせていき、デザインシンキングなどのデザインの手法を取り入れながら、ユーザー視点からサービスを便利で欲しいと思うものにすることです。さらに、企業や行政府も、ユーザー視点での便利だけではなく、利益を出す仕組みを構築し多くの価値を生み出す方法と考えられています。(サービスデザインの具体的な話は、『THIS IS SERVICE DESIGN THINKING. Basics - Tools - Cases ー 領域横断的アプローチによるビジネスモデルの設計』に詳しい)

実際、イギリスではサービスデザインを使った教育の質向上や糖尿病や失業減少のためのプロジェクトがあり、イギリス政府は、すべてのデジタルサービスをサービスデザインにもとづいたマニュアルの基準を満たすべきという指針を発表するような動きも見せています。(詳細はGovernment Digital Service Design Principlesを参照)どんなサービスも、それを使う人の視点にたち、よりよいユーザ体験を作ることが求められています。そして、それは公共サービスであっても同様です。そのためにも、サービスの設計段階からさまざまなUXの手法を通じたサービス設計を行うことが、企業だけでなく行政府も考えないといけない時代になっているのだと思います。

4. DON’T BE AN ISLAND.(ガラパゴス化に陥るな!)
インターネットも含めて、いまや世界のさまざまな都市や地域が情報インフラによってネットワーク化されています。また、日本も含めて行政府はどこもベースの仕組みは同じであり、効率化を求める意味でもできるだけ仕組みはシェアしながら、細部をローカライズする意識を持つことが大切なのではと思います。

実は、自治体で一つの事例を作ればオープンマインドになれば一気にヨコ展開できる可能性が大きいとも言えます。だからこそ、オープンマインドをもち、できるだけ隣の自治体の良い所や仕組みを共有することで、よりスピーディに仕組みをアップデートすることができるのです。だからこそ、自治体はガラパゴス化するのではなく、ベースの仕組みやノウハウをもっと共有し、その余ったリソースの上で、ローカライズや独自の課題解決などのユニークさに力を入れるべきなのです。


5. TAP INTO THE COMMUNITY’S CAPACITY.(コミュニティの力を借りよう)
ライフスタイルの多様化などによって、もはや行政府だけですべてを賄うことができない時代となっています。私たち市民は、これまでは行政府にお任せにしていればなんとか地域の問題解決ができたかもしれませんが、そうは言えない時代とも言えます。そして、そのことは私たち市民が自覚するだけではなく、行政府の中の人たちも、自分たちですべてを賄おうという意識から脱却しなければいけません。

往々にして、行政府の人たちはマジメな人たちが多く、そして使命感や責任感に駆られています。私もかつて公務員でしたが、公務員の多くはそうした意識を持った人は少なくありません。しかし、その責任感から、なかなか助けを求めることが苦手だったりして、すべてを抱え込もうとしがちです。そうした重荷を開放し、一緒になって地域の解決のために働きかけようとするマインドシフトが大事だったります。

強いリーダーシップを持って行政府を担おうとするのではなく、広く市民の力を借りながら、市民の力を120%引き出すようなファシリテーターのような役割が、政治家や自治体の人たちにも求められています。そして、最後の形の仕上げや決定を行い、協働意識を持って地域を良くしていく。そうした、コミュニティの力を借りながら動くことが大切なのです。


6. BIAS TOWARD OPEN.(オープンであることを受け入れること)
これまで、行政府がどのように動いているのかが見えづらいものでした。しかし、これからの時代に対応した変革を作っていくためには、オープンイノベーションを促進していかなければいけません。そのためには、オープンにできるものは積極的にオープンにし、そしてデジタルをベースにデータ活用を前提とした社会へと移行することが大切です。そのために、何をオープンにしていくかという「オープンポリシー」をしっかりと制定し、市民に対して納得のいく仕組みづくりをすることによって、協働を図ることができます。そして、オープンデータ化を促進したオープンガバメントであることが当たり前な意識になるように、動いていくことが必要なのです。


7. TAKE TECH SERIOUSLY.(テクノロジーについて真剣に考え、活用していくこと)
これまで、テクノロジーやIT業界などの一部のものしか必要のないものだと考えてきました。しかし、PCが普及し、そしてスマートフォンが一般化してきている現在、そして5年後には今以上に一般化する社会を迎えているいま、もはや「テクノロジー」という言葉自体が誰もがテクノロジーだと気づかないくらいに当たり前なものとなってきます。

同時に、テクノロジーは一つのツールであり、手段なのです。そして、ツールを良くも悪くも使うのは、私たち次第なのです。一般化したものがどのように使われるか、それは、その地域やその国自体の民度が問われているとも言えると私は思います。

だからこそ、「テクノロジー」という言葉やツールを敬遠するのではなく、使うことを前提とした社会であると認識し、どういう風に活用し社会に活かしていくかを誰もが考えていくことが大切なのです。これこそが、まさにCivic Techの本質であり、改めてテクノロジーというものではなく、私たちの暮らしや地域、そして社会や国全体に対して、どのようにテクノロジーを使っていくのかを、真剣に考えていく時代なのです。

さまざまなITスタートアップが生まれてきている中、日本でも今後はCivic Startup、Civic Entrepreneursが生まれてくるような仕組みづくりをしていくことが、必要なのではないでしょうか。

Civic Hackerへとマインドシフトすること
Civic Tech を使う人たちのことを、Civic Hacker(シビックハッカー)とも呼ばれています。しかし、「Hacker」という名前がついていますが、必ずしもコードやプログラミングができる必要性もないと、私は思います。

ツールをどのように活用していくかを考えるアイディアを持っていたり、よりそのツールが使われやすいようにデザインしたり、サービス設計を行うサービスデザインの視点を持ったデザイナーも、ある意味でCivic Hackerと呼べると思います。

そして、ガバメントと呼ばれる言葉は、もともとは行政府は私たち市民が作った仕組みであり、私たちの権利を拡張した仕組みであると考えるとすると、私たちそのものが仕組みを作る存在とも言えます。つまり、ガバメントという言葉の中には、「セルフガバメント(自治)」という言葉が内包されているとも言えるのです。

そして、地域や社会というのは、自分も含めたさまざまな人たちと協働していくことが求められるものでもあります。つまり、Civic Hackerという存在は、私たち自身で、私たち同士で地域に対して働きかけることが大事なのです。そのためには、DIWO(Do It With Others)やDIO(Do It Ourself)の精神、つまり、協働の精神を持ち、クリエイティブな考えの中で、社会に対してアップデートしていくように働きかけることなのかもしれません。

根底にあるのは、私たちがどのように暮らしていき、どのように地域に対して行動していくかを持つようなマインドを持つかなのです。そうした意味では、21世紀型の都市づくりにおいては、いかに協働の精神を持つかというマインドシフトが求められてる時代とも言えるのかもしれません。






2013/11/18

ウェブマガジン「マチノコト」を立ち上げて2ヶ月が経ったことやイベント登壇、最近考えていることなど

以前、社会を私たちごと化するために。まちづくり・コミュニティデザインをテーマにしたウェブマガジン「マチノコト」をリリースしました という記事の通り、マチノコトというメディアで日々、全国各地の地域づくりの取り組みなどを紹介しています。毎日、全国のローカルのメディアを調査したり、実際に地域で活動しているNPOや個人の方々からの情報をもとに編集し、コミュニティデザインの事例や活動の詳細、行政などと活動している最新の動きについての記事を書いています。



そんな中、ソトコトの2013年12月号が「コミュニティデザイン術」という特集で、studio-Lの山崎亮さんやリトルトーキョーの中村健太さんなど、コミュニティデザインやまちのプロデュースを行っている人たちについての話が紹介されていました。そのソトコトで毎号掲載されているコーナーのひとつ、「まちのプロデューサー論」で、「マチノコト」が紹介されており、マチノコトの編集を担当している僕とモリくんとが、マチノコトを作った経緯やまちづくりに対して二人が考えていること、そしてマチノコトの編集で大事にしていることについて話をさせていただきました。

ソトコトのテーマもコミュニティデザインですし、マチノコトとすごくリンクしていると思うので、近くの書店で見かけたら読んでみてください。




また、発行人である横尾さんと僕とのインタビューが、greenz.jpにて掲載されました。

行政が横展開できる情報発信を!横尾俊成さん&江口晋太朗さんに聞くウェブマガジン「マチノコト」が目指すこと [政治のつかいかた] | greenz.jp グリーンズ

こちらは、当初立ち上げたスタンバイからマチノコトへとシフトした理由や、マチノコトに対する二人の思いについて書かれています。僕自身の話としても、ネット選挙解禁の活動のOne Voice Campaignからのマチノコト、そして、Code for Japanの立ち上げといった活動など、「地域と主体性をもった自治意識、そして市民と行政との協働の可能性とこれから」という今の僕のテーマについても話をさせていただきました。

江口 「政治をもっと身近に」というときに、国や世界といった大きなものごとを考えてしまいがちですが、それだと概念的ではなかなかイメージが沸きません。そこで大事になるのが、目の前のことに目を向けることだと思うんです。
道端にゴミが落ちていたり、標識が壊れていたり地元の子育て問題を考えたりといったところから、社会や政治との関わり方が見えてきます。また、そうした課題があることを認識するだけではなく、課題を課題だと広く共有することも一つの政治参加です。例えば、ひとつのツイートで、オピニオンが広がっていくこともありえます。
小さくてもいいから、具体的なアクションを積み重ねていくことでしか、社会は良くならない。そのためには、自身の住んでいる地域や暮らしを見つめなおすことが大切です。(グリーンズインタビューより抜粋)


地域づくりには、個人や民間だけでなく政治や行政も大きく関わってきます。そうした上で、マチノコトでできること、Code for Japanでできること、そして、僕個人としてできることなどを、これから模索していければと思っています。

「テクノロジー」は一つのツールであり、それをどのように使うかを考えることが大切となってきます。そして、情報もただ情報としてあるだけでなく、情報が情報としてきちんと伝わるための場作りや情報のインターフェイス、そしてそれらをトータルで考えるUXといった「デザイン」の側面からも、社会全体を考えなければいけません。政治や行政の問題だけでなく、広い意味でのソーシャルデザインを考える意味でも、今後ますますテクノロジーとの関わりも必要となってきます。

こうした、テクノロジーとデザイン、ソーシャルといったそれぞれの面を、メディアや編集といういったコンテキストを作りコンテンツの場を提供する動きが、これから自分としても本格的になっていくのではないかと考えています。また、都心や地方といったくくりではなく、「地域」というそれぞれが持つ文脈をいかし、これからの時代に再構築する、という意味で、地域や社会全体をアップデートすることが求められてきています。こうした、「アップデート」という意識を持ちながら、さまざまな企画や提案などをしていきたいと考えています。



そして、先のグリーンズの取材の流れの中で、先日行なわれたgreen drinks Tokyoにて、横尾さんと「政治のつかいかた」というテーマでお話させていただきました。横尾さんの著書『「社会を変える」のはじめかた 』、そして拙著『社会をパブリックシフトするために』などの話を踏まえつつ、マチノコトについてや、これからどう私たちが政治について関わりを持っていくか、といったことについてお話させていただきました。

マチノコト » green drinks Tokyo「政治のつかいかた」にマチノコトの2人がゲストで登壇しました

政治と考えると、とかく選挙とか政局みたいなものだと考えがちですが、しかし実は政治というのは私たちの日常にあるものだと私は考えています。政治家は、私たちの社会の仕組みを作る代理人です。つまり、政治家を選ぶという主権をもち、社会をどのようにしていくかを左右しているのは私たちなのです。だからこそ、自分たちが居心地の良い地域を作るかどうかは、私たちが日頃から地域をどうしていきたいかを考えることなのです。そのために、社会をどう「私たちごと」していくか。そのためのマインドシフトを起こすことが大切なのだと考えています。

他人任せではなく、自分たちで作るという意識、そのために社会をDIYしていく精神、その先にあるDIWOという協働の精神を持つことが、これから求められていると考えています。







【イベント】新しい働き方について考えるTOKYO WORK DEISIN WEEKのプログラム「U-30の働き方」に登壇します #twdw2013

ここ数年、「新しい働き方」というものが議論されたりしています。そもそも、なにをもって「新しい」のでしょうか。よく言われているのは終身雇用制が崩壊し、経済も低迷化してくるなかで、またインターネットなどの登場などにとって社会インフラが変化し、それにともない働き方や生き方などが見直されようとしている、と言われています。

そうした中で、「働き方」について、改めて考えるような動きに対して、どう私たちが向きあえばいいのだろうか。

そもそも、「働く」とはなんなのか。僕は、働くの先にある「生き方」について、もっと模索していきたい。働くというのも、突き詰めていけば「生き方」の一つの手段でもある。それにともない、会社員という肩書や個人事業、起業といった手法自体にも特定の人達だけのものではなく、誰もが選択することができるような時代の中で、会社員とフリーランスを分けること自体にも意味がなくなってくるのではないかと思うのです。

会社員から個人事業、そしてまた会社員となったり、起業してそこから会社員となったり、またそこから起業したりなど、いわゆる大企業とフリーランスという二項対立と考えてられているもの自体も意味をなさなくなるのではないか。その人がどう生き、どう暮らしたいかという観点において、もっと色んな視点やあり方があることを認識し、働くということになんか正解なんかなくて、社会全体がもっと流動性を高めてもいいのではないか、と思うわけです。

だからこそ、「働き方」の議論の先の「生き方」の議論を僕はもっとしたい、そんなことを最近は考えています。



さて、そんな中、いいかげん「働き方」関連のイベントってどうなんだろうね、と思っている時に、11月20日から26日の間、渋谷のヒカリエなどで開催される「TOKYO WORK DESIGN WEEK 2013」(以下、TWDW)のプログラムである「U-30 の働き方」に登壇することとなりました。先日には、こんな感じで東急沿線の中吊りにも広告を出すくらいの大々的なイベントになっています。

TWDWでは、「新しい働き方」や「未来の会社」にまつわるアイデアやヒントを交換して、多様な交わりから新しい未来をつくっていく、ひらかれた場、というのがコンセプトだそうです。20日から始まるさまざまなセッションでは、行政や企業・NPO・個人で活躍する30組以上の人たちがトークセッションをしたりワークショップをしたりするイベント、だそうです。働き方系のイベントが一過性のもので終わるのか、それとも、生き方を模索するものとなるのか。参加者がどういったモチベーションで参加しようとしているのかが気になったりします。よければ、ぜひヒアリングさせてください。

僕は、11月23日(土)の夕方から、「U-30 の働き方」というセッションに登壇するのですが、人生やはり30歳というのは一つの節目だったりします。結婚をする同世代も増え、会社員であれば会社員5年目くらいから部下や大きなプロジェクトを任されるようになってきたりと、人生の岐路や今後の方向性として、転職したり起業したりという挑戦をするタイミングでもあったりします。僕自身、会社員となったことはないですが、23歳から大学進学という変わった経歴の中、その後大学在学中からなんやかんやで活動してきたりしたら今のような感じで、色々とやらせてもらっているのですが、僕自身がどんな思いで日々行動しているのか、みたいなものが話せればいいかなと思うと同時に、30歳以降についてどう考えているか、過去、現在、そして未来をどう見据えて行動しているのかについて、話せればいいかな、と思っています。

興味のある方、なんか働き方とか生き方とかについて考えている人、とりあえず江口の話を聞いてみたい、という人はぜひ参加してみてください。ゲストや参加者を含めたワークショップみたいなコンテンツも用意しているみたいです。

イベント参加はこちら:U-30の働き方 | Peatix

以下、イベント概要です。
詳細
■新しい働き方を実践している同世代と「新しい働き方」について考えよう!!

「新しい働き方」
最近コワーキングスペース、ノマドワーカーという言葉とともに、新しい働き方という言葉もよく耳にするようになりました。
しかし「新しい働き方」という言葉.なんとなく意味は理解しているけど、実際どんな働き方をしている人が新しい働き方といわれているのでしょうか?
そんなぼんやりとした「新しい働き方」を、実際に新しい働き方をしているU-30世代をゲストスピーカーに迎え、TWDWでもテーマになっている
「新しい働き方って、そもそもどんな働き方?」をテーマにトークセッションをします。
今の働き方を変えたいと思っている方にはヒントが盛りだくさんのトークセッションになること間違いなしの会。
この機会に自分にとっての「働き方」を改めてみんなで考えてみませんか?
また会場には「U-30の仕事への想い」というテーマで、U-30世代の様々な職種の方の仕事への想いをパネルで展示します。
人生の中でもかなりの時間を占める仕事をしている時間。この時間をどういった想いで過ごしているのか?
いろいろな人の想いを見るだけでも、刺激を受ける内容となっておりますので、こちらも是非ご覧になってください!
-----------◯イベント概要◯------------
【日時】2013年11月23日(土) 
19:00〜 受付開始 
19:30〜 一部 「新しい働き方って、どんな働き方?」 トークセッション
20:50〜 二部 「自分にとっての働く、仕事って?」 グループワーク 
21:30 閉場
21:30〜 懇親会
【場所】渋谷電源カフェ beez
東京都渋谷区渋谷2-22-14 渋谷二丁目ビル 7F
【チケット代金】一般¥2,000 ※懇親会参加希望の方は+1000円
キャンセルにつきましては、払い戻しができませんのでご注意ください。
※21:30に会終了後、懇親会を行えることになりました。
軽食、ドリンクをご用意いたしますので、参加希望の方は受付時に懇親会参加費1000円も合わせてお支払いいただきますようよろしくお願いいたします。
【定員】先着40名
【ゲストスピーカー】
田村 篤史 (京都移住計画代表)
http://kyoto-iju.com/
江口 晋太朗 (編集者、ジャーナリスト)
http://eguchishintaro.blogspot.jp/
松本 健太郎 (エンジニア、作家)
https://www.facebook.com/daidora10000
松浦 伸也 (ヤッチャバ事務局統括)
https://www.facebook.com/yacchaba
【ご注意事項】
※本プログラムはネットライブ配信は行いません。
※本チケットでは、トークプログラムや仕事体験など他プログラムにはご参加頂けません。
※開始&終了時刻は、当日の都合により、延長などで変更になることもございます。
※本イベントは成人の方、未成年の方共にご入場頂けます。
※お席は全席「自由席」になります。お手荷物・貴重品等はお客様ご自身で管理をお願い致します。
※開催されるイベント内で新聞、テレビ、ラジオ、雑誌等が参加者を撮影、取材し、それを報道のために使用することがあります。
【問い合わせ先】
aane.pino@gmail.com


【参考書籍】
近年の「働き方」議論であげられる『ワークシフト』がありますが、個人的には星海社の『僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか?』もオススメだったりします。また、起業とかビジネスを考えている人には、『DIGITAL DISRUPTION』というデジタルが起こす創造的破壊について書かれている書籍がオススメだったります。







2013/11/11

WIRED CONFERENCEの開催と、WIREDにてオープンガバメント特集記事を執筆しました


10月31日に、WIRED CONFERENCE2013が開催されました。こちらのイベントを、先日設立したCode for Japanが運営やゲスト選定などに協力して開催しました。当日は、300名以上の人たちにお越しいただき、盛況なイベントとなりました。イベントの概要やまとめは、Code for Japanのブログにて掲載されています。



また、カンファレンスに合わせて、WIREDのウェブサイトにて、「オープンガバメント」についての特集記事を書かせていただきました。読者に、オープンガバメントとは何かを考えてもらうために、オープンガバメントに関わる取り組みをされている3名の政治家を取材しました。

未来の政治家のあり方とは? 港区議、横尾俊成が描く市民をエンパワーメントする力 « WIRED.jp http://wired.jp/2013/10/16/toshinari-yokoo/

これからの政治に必要な対話の場とは? 横浜市議、伊藤大貴が実践する未来のまちづくり « WIRED.jp http://wired.jp/2013/10/18/hirotaka-itoh/

オープン化の先にある社会とは? 熊谷俊人千葉市長が見据える未来の都市とガヴァメント « WIRED.jp http://wired.jp/2013/10/28/kumagai-toshihito/

3名それぞれ、港区議、横浜市議、そして千葉市長と、レイヤーの違うそれぞれの立場において、おのおのが実践している取り組みを紹介しながら、オープンガバメントが持つ「透明性」「参加性」「協働性」という3つの軸を中心とした活動を浮き彫りにしたようなものとなっています。

そもそも、オープンガバメントというものが明確に定義されていない状況の中で、オープンガバメントはこれだ!と言いたいのではなく、政治家や議員とひとくくりにされている人たちであっても、それぞれの立場やポジションによって、考えていることや行動すること、実行することは違うことを知り、そして、どういったレイヤーの人たちがどのような判断を行っているのかを感じることが大切です。そして、それらを踏まえて上で、私たち市民もどのように行動すればいいのか、自分が住んでいる地域やコミュニティについて、どう自分が関わっていくのかを考えることが大切なのです。

港区の横尾さんは、自身の区内の有権者の一人ひとりと顔を合わせながら、距離の近いやりとりを通じて声を拾いながら地域と密着した活動をしています。横浜市議の伊藤さんは、横浜市というある程度広いエリアで活動している中、自身が地域に開いた存在として、地域の人たちの声をできるだけ集めるプラットフォームのような立ち振舞をしながら、地域全体をどのようにしていくかを考えています。千葉市長の熊谷さんは、市長という市全体の判断を預かる身として、市の長期的なビジョンを持ちながら、市役所という大きな組織をどのように改革していき、市の20年後30年後を見据えていくかを考えながら行動しています。そうした、それぞれの見ているスコープの違いなどを、記事でもうまく書き分けられたと思っています。なので、ぜひ3つの記事を連続して読むことで、よりその違いが明確に読み解くことができます。

政治家それぞれにはそれぞれの役割があり、その中でできること、やらなければいけないこと、そして未来をどのように考えて行動するかを意識しながら日々を過ごしています。「オープンガバメント」という言葉そのものよりも、それぞれの政治家が、どのようにしてこれからの社会を良くしていこうと考えているか、そして、そこに市民との対話を通じて、試行錯誤しながら取り組んでいる姿がそこにあります。立場が違っていても、誰が偉いということはありません。多様な動き方の中で、それぞれがやらなければならないことを考え、判断し、行動しているのです。

オープンガバメント、「開かれた政府」と呼ばれているものの、その内実は上から何か与えられるものではなく、私たち市民がどのように暮らし、どのように未来の社会を考えて行動し、そして政治をどのように使っていくかを考えることです。そこに、公共財となる公共データやガバメントデータなどを活用し、より豊かな暮らしとなるようなツールやサービスを、私たち自身の手で作って行かなければなりません。データがオープン化されることは手段であり、その前提としてはオープンガバメントの考えである行政と市民や民間との協働、そのための私たち自身のマインドシフトを起こすことが大事なのです。このあたりは、拙著『パブリックシフト』で書いていることとリンクしてきます。

同時に、政治家は市民との対話を通じ、ファシリテーター的な役割を通じて議論やアイデアを吸い上げ、実践していく存在にならなければなりません。政治家や行政府は、そのインフラや基盤作りといった、私たちがすべきことを代理で行っているという機能を忘れてはいけません。自分たちの暮らし、自分たちの生活をどのようにしていくか。一人ひとりが考え、行動する社会にこれからなっていく一つのヒントとして、今回のオープンガバメント特集記事や、こうした一連の活動が参考になればと思います。

カンファレンスも終了し、日本で次第に盛り上がっているオープンガバメントという考えに対して、もっと情報や世界で起きているオープンガバメントの潮流を調べてみたいなと思っています。ちょうど、江原さんがクラウドファンディングサービス「CAMPFIRE」で出しているプロジェクト「シリコンバレーに次ぐNYで今最もホットなスタートアップへの1ヶ月単独突撃取材」のように、NYやサンフランシスコ、ロンドンやエストニアなどのヨーロッパ全体で、どういったオープンガバメント政策が取られているのかを1ヶ月や2ヶ月くらいかけて取材するのはありかなと考えています。特に、オープンデータの活用などはヨーロッパがけっこう先進的な取り組みもやっていますし、きちんと取材して、書籍でまとめるというのもありなんじゃないかと思っています。企画、作ってみようかな。誰か協力してくれる人いれば、ぜひやりましょう!

また、Code for Japanの活動に興味のある方、また、Open Knowledge Foundation Japanでも、月一での勉強会なども開催しています。それ以外でも、オープンデータの活用だけでなく、どのようにオープンガバメントを取り組んでいくか、行政と市民とのコミュニケーションをデザインすべきか、といったことについても、ぜひ一緒に考えていければと思いますので、気軽に僕に連絡ください。


【関連書籍】







ダイヤモンドの自衛隊記事と、自分の生き方

少し前ですが、縁あってダイヤモンド・オンラインで、かつて所属していた自衛隊の部隊について書かせていただきました。

「領土を守る」とき、何が起こるのか 西部方面普通科連隊元隊員の証言|どう中国と付き合うか 反日暴動から1年、平和友好条約締結から35年|ダイヤモンド・オンライン http://diamond.jp/articles/-/43705

内容は、日中関係に関する連載の一記事で、僕以外の書き手の方々は、防衛省の方や日中関係の専門家などが記事を書いています。そうした中、現場で勤務していた隊員としての証言ということで、たまたま別の仕事でご紹介いただいたダイヤモンド・オンラインの編集部の方からお話がきて、書くこととなりました。実際に自衛隊が動くということがどういったことか、また、現場で勤務している人たちの考え方や思考について、経験したことをもとに書いてほしい、ということでした。かつて所属していた部隊が、自衛隊の中でもたまたま特殊な場所でもあったため、その部隊のことも踏まえながら書いています。

自衛隊という存在自体は知っていても、実際にどういう仕事をしているのかを知る機会ってなかなかありませんし、いろんな方々がそれぞれに固定概念を持っていこともしばしばあります。けれども、記事の中にも書いていますが、自衛隊に所属している人もただの人で、たまたま自衛隊という職場に入った人も多いのが現実です。もちろん、書いた内容は書ける範囲の中でしか書けないため、詳細などは省いています。また、文字数の関係などから端折っている部分もありますが、大きな狙いや伝えたいことは、自衛隊に所属している人が、どのような思いで過ごしているのか、ということを知ってもらいたいというものですので、そのあたりはご了承いただければと思います。

こんな記事を書いていますが、もともと自衛隊は就職の滑り止めで入ったというのが正直な話です。もっと言えば、高校時代はほとんど学校に通っておらず、うろうろしてばかりでした。公立の進学校に通っていたのですが、周りが勉強ばかりしていることに対して違和感を覚え、大学行くくらいから早く働きたいなと考えていました。その中で、なんとなくですが社会の役に立てる仕事がいいな(高校生なのに自分の人生をまったく考えていない典型的なダメ人間ですね)というある意味で安直な考えから、警察や消防に入ろうと決意し、すべり止めというか公務員試験を勉強してる時にそこで始めて自衛隊の試験の存在を知り、願書を出してみたら試験に合格した、という流れなのです。


そもそも、どういう組織なのかとかあまり調べずに入ったので、当初は全然よく分からないまま未知の領域に放り投げられたような感じでした。けれども、最初に入る前期教育隊での生活を通じて、また面白い同期と過ごしながらまずは目の前で自分が求められていることを懸命にやろう、同期たちには負けたくないという負けず嫌い根性も発揮して、前期教育時代には筆記試験や体力試験、服務面や射撃試験やその他総合面の判断の結果、西普連という部隊に配属になった、という経緯でした。


時代の流れの中で、ちょうど東ティモールのPKO派遣やイラクへの派遣などがまさに行なわれる時に所属していたこともあり、そこで始めて「社会」と「自分」という動きを明確に感じることが今の自分の大きな出来事でもありました。それまで、漠然と「社会とは〜」みたいなことを考えていたのが、世界的にも大きな規模で動く社会情勢の当事者として自分が立った時に、始めて自分がどのように社会にとって意味のある存在なのか、ということを考えるようになったのです。災害派遣やイラク派遣、そして自分がいた部隊の特性上、日々の過酷な訓練の中で見出す自衛隊というものの存在の意義などを深く考える中、本当に自分が世の中において意味のある存在なのか、自分はどのように社会に役に立てる人間になれるのだろうかと考えた結果、自分の実力の無さ、そして始めてそこで自分の無知を知り、「考えるということ」「学ぶということ」の重要性を認識したのです。


そこで、自衛隊を辞め、裸一貫で何もない自分としてリセットした上で、大学という場所で勉学を学び、そしてそこから社会の中における自分と社会の関係を見つめなおし、どう生きていくのかを決めていきたいという思いで約半年くらいの短い時間の中で、予備校に通い中学校レベルの知識だったのをセンター受験までできるようにがむしゃらに勉強し、そして東京の大学に進学することができ、そしていまに至る流れへとなっていくのです。東京に来てからの流れは、最近ではインタビューなどでも話をしていますが、このあたりの詳細もいつかブログに書きたいと思います。


そうした意味で、自衛隊に入ったあとにそこで経験したことや考えたことがきっかけで、今の自分の生き方を決める大きな原体験を経験することができたのは大きなことでした。だからこそ、こうして書く機会があったこのタイミングで、色々と当時のことを振り返りながらしっかりと書こうと決めて書かせてもらいました。おそらく、初めてこうしてきちんと自衛隊のことについて書きましたし、書いたことでいろんな方からもコメントやメッセージをいただきました。自分の経験を通じて、自衛隊のことなどを考えるきっかけに少しでもなったのからいいな、と思っています。


やはり、自分がかつて所属していた職場というのは今でも愛着がありますし、今もなお働いている同期や先輩、後輩たちにはリスペクトしています。日々、黙々と任務をこなしている人たちがいるということ、自分たちが普段意識しないところで国や社会について考え、行動している人たちが陰でいるということを知ってももらいたいですね。


社会の中で、自分が生きているという実感を持つことって、なかなかありません。それが、会社に入ったり結婚したり選挙に行ったり自分で会社を作ったりすることで、初めて社会というものの存在、国というもののあり方などを考えるようになってくると思います。僕は、本当にたまたま自衛隊という一つの職場に入ったことがきっかけで、社会と自分との関係性を肌で感じ、そして、自分がどう社会にとって意味のある行動をすることができるのか、ということを考えるようになりました。


この、ちょうど22歳での自衛隊を辞めた時から大学受験、そして進学という時期において、自分という存在は、ある種の断絶が起きていると考えています。それまで生きてきた経験がまったく通じない、場合によっては社会に必要な知識やスキル、考え方というものをまさにゼロから積み重ねてくその第一歩の時期でした。つまり、22歳のから、僕の人生が始まったといっても過言ではありません。今の自分を構築している考え方や知識のほとんどは、この数年で培ったり経験したものです。考えてみれば、自分の人生において人生がほとんどつながっていない状態があるということは、ある意味で生まれ変わったものと同義です。過去の友人やつながりがほとんどないからこそ、自分が見聞きするものすべてが新鮮に感じられ、研ぎ澄まされた感覚と好奇心から、すべてを吸収しようと行動するようになっていたのでした。


今の自分の大きな生き方は、「社会をいかに良くし、アップデートさせる仕組み作りをするか」がテーマです。その中において、テクノロジーやデザイン、メディアといったさまざまなツールや場を通じて、それらを複合的に、有機的に、そして立体的に組み合わせながら、新しい価値観や未来の社会にとって必要となりうる原石を作り出すか、ということを実験したり方向性を示したりという意識を持って歩んでいます。

すべてが遅咲き、遅いスタートな自分にとって、今から何かの専門家になろうとしても勝てるわけもない、という意味では日々劣等感を持って過ごしています。なぜから、周りを見れば自分よりも優秀な人間なんて山ほどいるのだから。だからこそ、自分しかできない新しいポジションや動き方を作るために、ある種のジェネラリスト的な動き方になっているのかもしれません。あらゆる分野を知り、本質を掴んだ上でどう再構築するか。さまざまな分野のプロフェッショナルな人たちの一挙手一投足を見ながら、良いものを貪欲に盗んでいこうという気概を持ってやっています。


肩書なども表現も、なかなか難しいものだとは思っていますが、コンテンツやコミュニティ、大きな意味では社会全体を編集し、再構築したり再定義する、というようなことだと思っています。だからこそ、そうした専門家やスペシャリスト、才能を持った人たちとともに、いかにこれからの社会を作り上げ、誰もがよりよい生活や暮らしを送ることができるのか、を探求していきたい、ただそれだけなのです。自分がどんな仕事やどんなポジションになろうとも、あまり関係ありません。大事なのは、いかに周りの人たちや社会がより良いものになっているかという飽くなき探究心だけなのです。だからこそ、必要であれば自分が前にも出るし、後ろに下がってマネージメントなことも、雑用もすべてやれる。誰もが率先してやらないこと、でもそれは必要なことや存在があるのであれば、僕は喜んでそこに行きましょう。


今の活動でも、政治や行政の人たちとコミュニケーションをし、仕組みから変えていこうとするプレイヤーは多くはありません。しかし、誰かがやらないといけないのです。テクノロジーとデザインをどう組み合わせるか、テクノロジーやデザインを、どうソーシャルデザインに組み込んでいくかなどを、領域を横断しながらそれぞれの良いものを引き出し、組み合わせることこそが、僕なりの編集でもあるし、それが社会にとって価値のあるものだと信じています。行為すべては手段であり、アウトプットの方法も時と場合によって変わっていくものです。だからこそ、今自分がいる領域からすぐに違った領域へと行動することもできるし、イノベーションを起こそうと動くことが大切だと常に考えています。自分の足元や中途半端なポジションやプライドなんかを持つことよりも、いかに自分が活かせる場を作るかのほうが大事なのです。


問題解決の手助けをし、そしてこれからの未来を一緒に考えていく仲間とともに日々を過ごしていく。そんなことが、やっと少しづつできていけるようになってきました。東京に来て6年くらいがたち、やっと物事や社会について少しづつ知ってきたような気がします。6年前には友だち一人、何も知識も経験のなかった若造が、こうして色々な活動ができるもの、これまでお世話になったみなさんのおかげでもあります。これまでの出会いに感謝しつつ、これからもともに頑張っていきましょう。


また、今回のダイヤモンド・オンラインの記事の機会を作ってくださった方にも、色々とこれまでを振り返りながら書かせてもらうことができました。ありがとうございます。こうした自衛隊話というのは、普段は防衛の専門家ではないため、機会がない限りは書くことも話すこともないかもですが、もし何か必要な方は、気軽にお声がけください。

最後に、記事内でも書いている西部方面普通科連隊のことを描いた書籍があります。杉山隆男さんというノンフィクション作家の方が書かれた本です。この本がちょうど取材されている時に僕は在籍していたので、僕の先輩や上司の名前がでてきたります。記事で興味もった人は、読むとさらに理解できるんじゃないかなと思います。



2013/10/28

メディアの多様化とジャーナリズムのこれから、そして地域に密着したハイパーローカルメディアの可能性

毎日新聞社で現在はエルサレム支局長を務めている、大治朋子氏が執筆された『アメリカ・メディア・ウォーズ ジャーナリズムの現在地 (講談社現代新書)』は、2009年から2011年まで、毎日新聞メディア面で始めた連載「ネット時代のメディア・ウォーズ 米国最前線からの報告」をもとに書き下ろされた一冊です。

オンライン・メディアがピューリッツァー賞に選ばれている現実や、新聞社の紙から電子という流れの中で、各社がどのような経営判断を行ない、紙と電子という媒体の中で再編を行っているかなど、現在のアメリカのジャーナリズム、メディアの動きが書かれた内容になっています。新しいところだと、Amazonの創始者のジェフ・ベゾス氏個人が買収したワシントン・ポスト紙についてもその動向についても触れています。

「共通するのは、従来通りの活字ジャーナリズムを維持しながら、プラスアルファの付加価値としてウェブ上の動画やグラフィックスなどマルチメディア技術を駆使し、複雑な問題を多角的な手法でわかりやすく説明して読者の理解を助けようとしている点だ」(P19)

というような、日本だとしばしば議論される「紙からオンラインへ」というものではなく、いかに紙とオンラインとを融合させ、互いの媒体のメリットデメリットを相補させるかについて書かれている内容は、日本でも今後くるであろう動きの中で抑えておきたい動きです。

オンラインでは無料で誰もが読め、しかもコピペが容易となるような現在において、記事の共有化や取材体制の再構築といったこともアメリカでは議論されており、新しい取り組みも行なわれているそうです。同時に、質の高い記事(コンテンツ)に対して、質の高い情報は無料じゃない、という情報の有用性と重要性をどのようにユーザーに考えさせるかも、日本でもまだまだ議論されるべきものなのかもしれません。

「未来の素晴らしいジャーナリズムとは、消費者が喜んで金を払うようなニュースや情報を提供し、そうやって消費者をひきつける能力を持つことで成り立つものになるだろう」(P59)

アメリカでも、ニュース閲覧有料化の重要性を訴える動きも多い。ウォールストリート・ジャーナルやフィナンシャルタイムスといった各種媒体の課金方法に至る過程などは、それぞれの経営方針やどのように読者をひきつけておく方法の違いとして、興味深く読むことができます。

紙や電子、有料化といった内容は、日本のこれからのメディアやジャーナリズムを考える上でとても参考なるようなものが多いが、個人的にも印象深かったのは、第3章の「ハイパー・ローカル戦略は生き残りのキーワードか」と第4章の「NPO化するメディア」でした。

3章は、徹底的に地元ニュースにこだわる「ハイパー・ローカル」路線を取っている新聞社の話です。国土が広いアメリカは、それぞれの地方ごとに小規模な新聞社があり、地元で起きている出来事をつぶさに報道していますが、そうしたローカル新聞も人手不足は否めず、なかなかすべてをカバーすることは難しい。そのため、大手通信社のAP通信から記事をもらい、全国の情報といった記事配信も行っています。

しかし、経営方針の展開により、AP通信が記事配信が減ってきている状況の中、地方紙が連合を組み、互いの記事の共有を図るシステム(記事内では、オハイオの事例として、「オハイオ・ニュース・オーガナイゼーション(OHNO)」について説明している)を構築し、AP通信に頼らない体制を取り始めています。シェアできる情報はシェアすることで、自分たちが専念すべき取材に精を出すことができる。また、OHNOのつながりを活用して、3ヶ月に一回の共同調査報道も行っているそうです。資金や人員もかかる大規模な調査報道を共同で行うことで、新しい形を模索しようとしているのだと感じます。

こうした、ローカルの情報をどのように発信していくのかは、これからとても重要な視点となってくると感じます。全国規模な情報は、大手のニュースサイトやSNSなどですぐに情報が広まります。事実だけであればウェブを通じたものである程度カバーできるかもしれません。しかし、内情や大規模ではないローカルなものや小さな出来事にこそ意味があることは多々あります。

グローバル化によって標準的な一般的な情報は自由になりつつある中、自分自身の足元や暮らしをどのように考えるかといった視点は、グローバルではなくローカルの情報にこそ意味が出てきます。広告的な視点で見ても、ハイパーローカルニュースはターゲットがより明確になりやすい。ウェブサイトが近年ニッチな情報にセグメントされていくように、新聞やジャーナリズムもそうしたローカルさ、もっと言えば身体性を持った情報にこそ価値がでてくるのではないでしょうか。

第4章の「NPO化するメディア」でも、まさにそのようなことが引き続き書かれています。NPOが運営するオンラインメディア「ボイス・オブ・サンディエゴ」は、「市民社会に必要な情報を届ける」といった考えのもとに「地元市民のQOL(生活の質)に関わる問題」をフォーカスした情報を発信しています。例えば、地元議会の動向や政治家の発言のファクトチェック、地元の学校の情報、自治会の動きや地元経済といった、いってみればハイパーローカルな情報が中心です。しかし、私たちの普段の生活を考えてみると分かるように、そうした地域の細かな情報にこそ意味があります。

日本では、最近だと小平市の道路建設問題などが話題となりましたが、そうした地元を二分する問題は、大手の新聞はなかなか注目しずらい。しかし、住んでいる人にとっては死活問題であり、何がどのように決定されているかをつぶさにチェックしたい思いは強い。そうしたローカルなものを追いかけるジャーナリズムが、今後より価値がでてくると、同書を読むと感じさせます。

オンラインメディアでもあるため、こうしたローカルな情報であってもグローバルに発信され、つぶさにソーシャルを通じて地域住民に協力したい人がでてきたり、Aという地域で問題になっているものは、Bという地域でも参考になったりすることも多々あるように、こうした問題を横展開させ、より大きな視点で社会問題を論じる動きも起きやすくなるかもしれません。日本において、行政同士や地域住民同士の連携がないからからこそ、こうした詳細な情報によって助けられる何かもでてきやすくなるかもしれません。

ローカルをローカルにフォーカスすることは、実はグローバルに繋がることでもあります。かつて、Think Global, Act Local.という言葉がありましたが、これからは「Think Local, Act Local, and connect Grobal」な時代と言えるのかもしれません。

民主主義においては、ジャーナリズムは切っても切れないものです。市民社会をよりよいものに機能させるためにも、新しい視点や情報をどのように受発信していくか考えなくてはいけません。同時に、そうした細やかな情報源や情報発信者に対して、ユーザーである私たち市民も、対価をどのように支払っていくかという「情報の価値」について、どう認識するかが問われてきます。

情報は無料だという発想は、いつか平凡で当たり障りのない情報しか世の中に流布しなくなります。しかし、平凡な情報が広がることによって、本来であれば知らなければいけない大事な情報が認知されないということも起こりえます。市民社会、情報社会をどのように作っていくかは、私たち一人一人が考え、行動していかなければいけないものなのです。

日本でも、こうしたジャーナリズムの再編や動きはこれからますます起きてくると考えられます。いつまでも「紙かウェブか」とか、「新聞やテレビはなくなる」といった議論ではなく、ユーザーである読者に対してどのように情報を届けるかというユーザーファーストな視点をもとに、新しい取り組みをもとに、多様でエコシステム化されたジャーナリズムを構築することが求められてくると考えます。同時に、良質なジャーナリズムをどのように作っていくか、ジャーナリズムを残していくための資金提供といったものを伝えていかなければいけないのかもしれません。

改めて、情報の価値をどのように考えていくかが問われています。その中で、ローカルを見つめることが最近多くなった気がします。



先日発売された、TOmagazine「TO」という雑誌を読みながら、自分が住む地域にちょうど考えていました。「TO」は、友人である編集者の川田洋平くんが手掛けている雑誌です。毎号東京23区の一つを特集し、独自の視点でその地域を深堀りしていくものです。

しかも、取材から編集、校了までをその区に住みながら取り組むという徹底ぶり。自身がその地に足を踏み、身体性をもって雑誌を一から作り上げているのです。ところどころに、その地域のコアが部分や匂いを感じるのも、川田くんがその地に根付きながら行動しているからだと思います。

2号である本誌は目黒区特集。私も長い間目黒区に住んでいますが、TOを読むと意外と知らないことや新しいことに気付かされることは多々ありました。そもそも、その地域に住んでいるものの、その地域のことを一体私たちはどれほど知っているのでしょうか。いわんや、日本という国自体も。

自分の足元にある地域の特色、名産、文化、歴史などなど、教科書やWikipediaでなんとなく調べることはできても、その情報を「自分ごと」にするには、自分の目で見て、耳で聞いて、手で触るような、五感を通じた体験でしか、本質を感じることはできません。

付け焼き刃の情報ではなく、自分自身で感じた情報は、他でもないその人自身の情報であり、そこにしかない価値がでてきます。TOも、編集者川田洋平という人間の五感を通じて感じた東京であり、そしてその地に根付いた中で感じたそれぞれの区の情報とも言えます。東京という、知っているようで意外と知らない、世代や住んでいる地域や職業によって多様な顔を見せる地域を感じさせる、東京を再発見する一つの「ハイパーローカルメディア」とも言えるでしょう。

TOは、1号目の足立区、そして2号の目黒区、3号目は中野区の予定です。どのように残りの23区を表現するかがとても待ち遠しくなります。雑誌としてのプロダクトデザインのレベルが高いのも特徴です。ウェブではなく、あえて雑誌を作ることの意味も、ウェブというフローなものではなく、雑誌というストックされたもので地域の良さを凝縮して届けるといった、今の時代だからこそ価値のある作りだと思います。

デジタルが当たり前だと感じているような若い世代の人たちにこそ、紙という雑誌がもつ情報の凝縮性、そしてローカルという情報を掘り下げることの魅力を感じてもらいたいですね。


私自身も、いま地域のまちづくりやコミュニティデザインについて紹介する「マチノコト」というウェブメディアを仲間と運営しています。このメディアは、地方で取り組んでいるさまざまな動きというものは、おそらく他の地域でも参考になったり横展開できる動きが多々あるのに、行政単位や地域同士の情報が横につながっていないために、同じような動きしてる地域のノウハウや情報が共有されていないものをどうにかしたい、というのが目的の一つです。

まちづくりの手法として、コミュニティデザインがあります。そうしたコミュニティデザインの手法になりうるフレームワークや、地域のまちづくりのための武器を提供することで、よりスピーディに、より多様な地域づくりの取り組みが行えるはずだと思っています。

まちづくりには、民間や個人だけではどうしても限界があります。本来であれば、政治、行政、民間、個人といったさまざまなステークホルダーと協働していかなければいけないのです。しかし、行政が取り組んでいる動きを私たちは意外と知りません。そうした行政との協働を見出す一つの切り口として、できるだけマチノコトではそういった協働を生み出すヒントを提供できればと思っています。

地域をどう良くし、誰もが豊かな生活を送るためにも、行政ができること、民間企業ができること、そしてメディアやジャーナリズムができることといったそれぞれの役割があります。そんなことを、これから考えていきたいなと思っていた時に、ちょうどリンクするような内容の本を連続して読んでいたので、忘れないうちに書いておかないと、と思った次第です。

グローバルで情報が行き届く世界になるからこそ、自分の暮らし、自分がいる足元を見直すこと、身体性をもちいた生活に対する寄り戻しがきている時代において、ローカルをみんながそれぞれ考えていくかを、もっと話していけるといいなと思います。

131029修正
「TOmagazine」から「TO」に、本号から変更になっていたので、修正しました。初出のところだけ修正分入れて、あとのテキストは差し替えています。




2013/09/30

『社会をパブリックシフトするために 2013参院選 ネット選挙の課題と未来』を出版しました

9月30日に、『社会をパブリックシフトするために 2013参院選 ネット選挙の課題と未来』を出版しました。

これは、前著の『パブリックシフト』に続く形となっています。前著で、ネット選挙をきっかけに、社会の担い手は政治家だけではなく、私たち市民の手へと移行している時代にきている、と語りました。それを踏まえて、今回の7月に行なわれた参議院議員選挙で、実際に解禁されたネット選挙を通じ、そこで見えてきた問題点や、事前に想定されていた動きと事実を比較しつつ、今の日本に何が足りていないのか、参院選終了後、私たちは今後どのように取り組んでいくべきか、といったことを書いた内容になっています。


2013/09/24

ウェブ広告研究会が主催する、今年のWeb業界に貢献した人を表彰する「Web人」部門にノミネートされました

このたび、ウェブ広告研究会が主催している、今年のウェブ業界に貢献した人を表彰する「Web人」部門に、推薦をうけてノミネートすることになりました。

【Web関係者の、Web関係者による、Web関係者のための賞】として優れた功績を残した企業および人物を顕彰し、その労と成果を讃えることを趣旨としてしている、という趣旨と目的らしく、Web業界へ影響を与え、発展に貢献した人物(Web人)にスポットを当てた賞、だそうです。(抜粋、趣旨と目的より)

「2013Webグランプリ」と題されたアワードは、昨年までは企業のWebに関わり、企業コンテンツに貢献した「企業Webグランプリ」と、Web業界に影響を与え、発展に貢献した人にフォーカスした「Webクリエーション・アワード」があったのですが、これらを統合し、「Webグランプリ」として名前を一緒にして、新しい賞となった最初の開催だそうです。

企業のウェブに大きく関わったわけでも、ゴリゴリのウェブ業界な仕事をしているわけではないのですが、推薦の理由として、昨年ずっと活動していたネット選挙を解禁する活動の One Voice Campaign を通じ、ウェブと政治をつなぎ、ネット選挙解禁へと至る動きに関わった、ということを評価していただき、今回の推薦いただきノミネートした次第です。

ウェブがウェブの中だけに限らず、リアルな社会に影響を及ぼし、社会を少しでも良い方向に進めていくための一つのツール、インフラとして機能するための形を示していこうとする動きは、ビジネスだけではなくこれからの社会全体としても意味があることだと僕は考えていますし、そうした僕自身の思いと活動が、こうした賞にノミネートするようになったことは、とても感慨深いものがあります。

今は、ネット選挙の実現を通じてウェブと政治が少しでもつながったかなと思いつつ、その先には、ウェブを通じてみんながもっと政治に参加したり、社会を自分たちで良くしていこうとするツールとしてもっと活用してもらえたらという思いから、次の活動へと移りつつあります。

ネットやテクノロジーを通じたこれからの新しい社会のあり方として、オープンデータやオープンガバメントを推進する団体として Open Knowledge Foundation のメンバーとして参加し、また現在進めている Code for Japan といった、テクノロジーを活用して行政にイノベーションを起こし、市民参画を促すための団体の活動のメンバーであります。こうした活動は、これからの日本の社会の未来を作る一つの取り組みだと感じ、今後数年はこうした団体で関わらせていただくことになると思います。

もちろん、本業の編集者としての活動も、こうした活動がきっかけとなって仕事になったり、知見や経験をもとにした企画や提案も行っており、ネット選挙解禁の活動では書籍を出版させてもらったりイベントに登壇させていただいたりと、周りのみなさんのおかげで色々なところにださせてもらっています。また、

みなさんのこれまでの応援やご支援の一つの形として、こうした賞にノミネートさせていただいたことはとても嬉しいですし、せっかくならなにかしたらの賞をいただけると、今までの自分の活動が間違いではなかったのかな、と思えるのではないかと感じています。

今回の賞は、まずは一次審査で一般応募があり、その後一次審査で上位の人が二次審査にいき、最後にいくつかの受賞者を決定するようです。

過去の受賞者を見ると、GREEの田中さんや伊藤穣一さん、ロフトワークの林千晶さんや、坂本龍一さん、デジタルステージの平野さん、インフォバーンの小林弘人さん、昨年はLINEの舛田さんとかも受賞してたりと、豪華な面々が受賞している栄誉ある賞の末席に、名が連なれば光栄です。

今後とも、色々なところでみなさんとご一緒するかと思いますが、ウェブ業界全体を、みなさんと一緒に盛り上げていけるといいな思っております。今後とも引き続きよろしくお願いいたします。ぜひ、投票していただけると嬉しいです。投票の締切は10月7日までだそうです。

2013 Web GRAND PRiX 一般投票はこちら。(あ行の下のほうにいます)

*2013年10月27日追記
みなさんのおかげで、一次審査を無事に通過し、二次審査に選ばれました。一覧はこちら。

この二次審査では、ウェブ広告研究会の会員社の人たちの投票と審査委員の投票でウェブ人大賞が決まるので、あとは待つだけ、って感じですが、せっかくなら何か賞をもらえるといいな、と思っています。

2013/09/19

ニューヨークのデジタル都市とオープンガバメントからみる、東京の都市と行政のこれからを考える



この週末、日本では台風が日本列島を通過し、交通機関が停止したりと様々な出来事がありました。

台風といえば、ちょうど、2年前の夏に1ヶ月ほどニューヨーク(以下、NY)に滞在していた時に、東海岸では26年ぶりのハリケーン上陸に遭遇しました。日本では台風はある程度馴染みはあるが、NYは普段はハリケーンに遭遇することはあまりなく、またNYへのハリケーン直撃はほぼ初ともいっていい状態で、大型のハリケーン上陸に対して、被害や避難に対しての準備や対応がどうなるか見当が付かない様子でした。

NYのブルームバーグ市長は、上陸する数日前から浸水や洪水などの危険性のある地域で37万人に避難命令をだし、地下鉄とバス、フェリーなどは上陸前日には運休し、空港も閉鎖されるなど、事前の迅速な対応を行っていました。


ハリケーンの対応に、ソーシャルメディアやデジタルが活用

また、そうした行政の迅速な対応の中で、NY独自の動きも注目されました。避難命令の情報やハリケーンの状況を知る方法が、従来だと新聞やテレビの報道といったマスメディアに依存しており、情報のタイムラグがどうしても起きていました。しかし、自然災害はリアルタイムや速報性が問われるものです。そこで、NYは2010年から取り組んでいる市のデジタル化の一環として、市の情報のソーシャル対応やデジタル化に向けて、デジタルを活用した情報発信を行ない、ハリケーンの対策に取り組みました。

ハリケーンの現在地を把握するため、アメリカ国立気象局が集めているハリケーンのリアルタイムの位置情報をマッピングしたデータを公開。そのデータをもとにNYタイムズなどがHurricane Trackerをリリースし、現在地を用意に把握する情報を発信していました。また、NY市が発した避難命令に沿った避難地域エリアを示したマップを公開。同時に、避難場所の位置情報をオープンデータ化し、それらを誰でも自由に利用できる情報環境を作り、エンジニアがその地図情報をマッシュアップして様々な地図アプリやサービスが開発されました。

もちろん、ブルームバーグ市長の数時間おきに行なわれる記者会見もすべて生中継、もしくは録画アーカイブを行ない、市のウェブサイトや公式Twitterなどですぐに発信。また市内の様子などを公式Twitterで被害状況を発信し、その情報をもとに警察や消防とも連絡をとり救助に駆けつけるといったことを行っていました。

結果的に、ハリケーンによる被害は小さく、事前の準備が功を奏したのではないかと考えられます。同時に、現地でこれらの対応を体験し色々と学ぶものが多く、今の日本にも参考になるのではと考えました。


NYのデジタルを統括するCDOという役職

こうしたNYの迅速な対応に関して、ある役職の人物が大きく貢献しました。2011年1月に初代Chief Digital Officer(CDO)に就任した、Rachel Haot氏です。1983年生まれでほぼ筆者とも同世代の人物で、就任当時は27歳の若手をブルームバーグ市長はデジタル統括に起用し、市の情報のソーシャル化やデジタコミュニケーションに向けての取り組みの舵取りを行ないました。Rachel Haot氏はニューヨーク大学ジャーナリズム学科を卒業後、市民ジャーナリズムによるソーシャルニュースサイト「GroundReport」を設立。インターネットを活用した情報発信にまさに適任の人物であり、女性で若手を新しい部署の統括に就任したというニュースは、大きな話題を呼びました。もちろん、ハリケーンの際のデジタルを活用した情報発信は、彼女が大きく貢献しており、その様子をTwitterやウェブサイトなどで知り、その存在を知ることが出来ました。

NY市は2010年から世界のデジタル都市を牽引するべく、「NYC Digital - Digital Road Map」を作成し、新しいデジタル都市計画を進めています。インターネットが一般化され、デジタルを活用することが政治行政でも求められてる現代において、都市生活やイノベーションに対応していくためには、行政だけでなくこれまで以上の市民参加を促し、市民と協働しながら推進していかなればいけません。そこで、すべての行政・公共サービスをデジタル化し、またソーシャルメディアを通じたデジタルプラットフォームを提供し、オープン・イノベーションを通じた都市を目指す政策を実行しているのです。

これに伴い、政治行政が持つ様々な公共データをオープンデータ化し、市民の参加を促し第三者と協力しながら公共サービスのあり方を刷新していくオープンガバメントを進めているのです。オープンガバメントとは、政府行政が持つデータを公開するだけではなく、公開されたデータを第三者に自由に利用させ、外部からの発信やコンテンツを取り入れ、新しい舵取りを行う意思決定を行うことです。誰でも自由にコンテンツを作る自由を持たせ、その中からより公共サービスとして相応しいものは公式に採用し、サービスの質の向上を図っていく。そのための大きな方向性と意思決定をガバメントが持ち、プラットフォーム化された場において誰もが互いにコンテンツを作ることで、迅速かつ新しい価値提供ができる環境を作ることなのです。

そのため、オープンガバメントにはオープンイノベーションを促進し、また参加性を持たせるための仕掛け、いわゆるゲーミフィケーション的要素を作っていくことが求められるのです。ここで言うゲーミフィケーションとは、誰もがプレイヤーとして参加し、当事者意識を持ち問題解決や課題に取り組むことであり、いわば社会を自分ごと化し、参加意識を持つことを指しています。


ハッカソンや次世代IT養成など、街全体でデジタルへの取り組みを図ってる

市民の参加性を促すため、CDOのRachel氏は市主催のハッカソンを開催し、国内各地のスタートアップや開発者、デザイナーが参加する場を設けています。市の各種公共データを公開するだけではなく、そのデータを活用するアイデアをみんなで発案し、さらにプロトタイプを作る場を積極的に作っているのです。また、市主催のアプリコンテスト「NYC BigApps」やNY都市交通局が主催するサービス向上やコスト削減に役立つアプリコンテスト「MTA App Quest」など各事業部によるコンテストを行ない、データを活用したハッカソンやアプリなどのサービスを奨励・表彰し、そこから新しいスタートアップを生み出すエコシステムを作り出しているのです。

また、「NYC Generation Tech」という高校生を対象にしたサマーキャンプを地元の民間NPOが実施。夏休みを通じてアントレプレナーシップなどの講義を行ない、NYにいるスタートアップやIT企業のスタッフがメンターとして関わり、後進の育成を図るプログラムに行政も全面的にバックアップしています。また、女性のエンジニア支援のため、女子高生のためのIT起業家育成プログラム「Girls Who Code」といった活動も生まれるなど、NY全体が民間と行政が連携して次世代向けのIT起業家養成プログラムも実施しているのです。

デジタル化、IT起業支援を促進する動きとして、コーネル大学にルーズベルト島の市の所有地を提供し、コーネル大と共同してテクノロジーキャンパスの建設「APPLIED SCIENCES NYC」を進めています。つまり、ニューヨークを、シリコンバレーに匹敵する新たなテックシティにするための取り組みなのです。すでに、サンフランシスコのシリコンバレーではなく、NYを拠点にFoursquareやTumblr、BuzzFeedなどのITスタートアップが多く生まれており、西海岸とは違ったテックトレンドを生み出しています。

次世代に向けた育成も含めて、NYではテックシーン全体を盛り上げようと、NY各地にあるテック企業の紹介人材確保支援、人材育成や起業家支援を行う「We are Made in NY」という取り組みも今年の初めにスタートしました。行政と民間がコラボし、民間の創業支援や企業誘致を行ない、街全体の新たな産業振興やブランド作りに力を入れているのです。

Why We Are Made In NY from WeAreMadeInNY on Vimeo.


これからの都市を考えるロードマップ

こうした取り組みなど、デジタルロードマップに記載しているAccess(公衆Wi-Fiなどのネット環境の整備など)、Education(デジタル化を軸にした次世代育成など)、Open Government(政府情報の公開と積極的な官民連携による政府のプラットフォーム化)、Engagement(ハッカソンやアプリコンテストなど、市民活動を奨励させる動きなど)、Industory(産業振興や商業施設、街のブランド化など)、Next Step(中長期的な計画と、計画のアップデート)といった項目を軸に様々な施策を行ない、2013年にはさらなるロードマップのアップデートを図るなど次の展開を見せようとしています。こうした、NYの取り組みから見て取れるキーワードは、「女性」「若者」「オープン」「デジタル」「ローカル」「コミュニティ」といった要素だと感じます。就任当時、27歳という若者の、しかも女性であるRachel氏をCDOに起用したブルームバーグ氏の手腕、そしてその期待に応えるRachel氏の目を見張る活動は、まさにNYのこれからを示すい動きだと思います。こうした、新しい都市の文脈作りのために民間や若手を起用し、また行政と市民、企業が協働して新しい動きを起こしています。

日々のNYCのデジタル化の取り組みに関しては、NYC Digitalのブログで見ることができます。情報公開による「透明性」、オープンプラットフォームによる民間や市民との「協働」、そして街や都市への当事者意識を持ち、自分たちでコミュニティを作ろうとする「参加性」といった、アメリカのオバマ大統領が2009年に就任した時に掲げた「オープンガバメントの基本原則」と通じるものがあります。


求められる東京の未来のために

東京も、2020年のオリンピックが決定し、この7年をかけて世界に誇る都市として存在をアピールすることが求められています。そうしたこれからの7年、そして10年後20年後を見据えた時に、インターネットやデジタルの存在は、ますます欠かせないものとなっています。同時に、政治行政と民間とが協働し、東京全体、そして新たなロールモデルを築くことで日本全体に対しての未来の形を示すことが求められています。

そのためには、市民とともに協働し、新しいまちづくりを目指していくこと。そのための施策して、東京のデジタル化、そしてオープンデータやオープンガバメントといった、市民協働型の社会を作るための中長期的な計画を実行することが必要なのです。東京として、CDOを設置するということもありえます。しかも、そこには民間出で、さらに若い人を起用するような、これからの東京としてのあり方を示す人材を登用することです。ぜひ、そうした動きが東京都が起こしてくれることを期待しています。


【お知らせ】10月31日に、オープンガバメントに関するカンファレンスを開催します

また、こうしたオープンガバメントの動きは、次第に日本でも起きつつあります。私も活動に参加している、行政と市民をつなぎ、エンジニアを通じて政治行政のIT化やイノベーションを図ろうと取り組んでいるCode for Japanが、本格的に始動しつつあります。9月発売の雑誌『WIRED』でも、オープンガバメント特集として、Code for Americaが特集され、私もCode for Japanの動きについて記事を書かせていただきました。

さらに、これに加えて10月31日には、WIRED CONFERENCE2013が開催されます。WIREDで特集として掲載された初代ホワイトハウスCIOのヴィヴェック・クンドラ氏やCode for America インターナショナルプログラムディレクターのキャサリン・ブレイシー氏などが登壇し、講演やパネルディスカッションを行ないます。Code for Japanのメンバーなども登壇し、世界のオープンガバメントの実状、そして日本での現状とこれからどのように取り組んでいくか、といったことが話されます。ぜひ、興味がある人はご参加ください。

CONFERENCEの詳細や参加申し込みはWIRED CONFERENCE 2013 OPEN GOVERNMENT 未来の政府を考える から。


*この記事は、ハフィントン・ポスト日本版に掲載した筆者ブログ記事「ニューヨークのデジタル都市計画に見る、東京のまちづくりの未来」を、加筆修正したものです。

2013/09/14

社会を私たちごと化するために。まちづくり・コミュニティデザインをテーマにしたウェブマガジン「マチノコト」をリリースしました


9月1日の日に、コミュニティデザインマガジン「マチノコト」をリリースしました。

このサイトは、もともと防災情報マガジン「Standby」という名前でした。NPO法人スタンバイを運営する港区議会議員の横尾俊成さんが発起人となり、greenz.jp編集長のYOSHさんや友人で編集者・コンテンツディレクターのJunyaMoriくんらがアドバイザーとなって運営していました。

2011年3月におきた東日本大震災を経験した私たちは、いざというときのために備えをしておかなければいけないことを痛感しました。しかし、防災に関する情報が集まっているメディアがあまりありませんでした。そこで、防災に関する様々な情報やイベントを企画し、地震に対する備え、防災というものをより身近な問題として認識してもらうために、2012年9月1日に「Standby」はリリースされました。9月1日は防災の日であり、9月の上旬は防災週間として様々な企画やワークショップなどを行っていました。

1年近く運営してきたStandbyのメンバーは、防災に特化した情報を発信していく中で、「防災」という問題にフォーカスすることで、元々防災に興味を持った人にしか届いていないのでは、という考えになりました。もともと「防災」と強く意識して活動するものではありません。防災といった問題解決のためには、自分が住んでいる地域や、近隣に住んでいる人たちとの地域コミュニティなど、身近な問題を通じて街のことについて考え、そこから地域のことだけでなく、社会について考えるきっかけとなってきます。防災というシングルイシューではなく、政治や行政、街のことについて考えるきっかけを作ることで、そこから防災も含めた、教育や医療など様々な社会問題に目を向けやすくし、日々の暮らしに新たな気づきがでてくるのでは、といった考えに至りました。

そうした、防災だけに特化しない形にするべきではないか、といった相談を横尾さんから受け、上記にあるように地域コミュニティやまちづくり・コミュニティデザインにフォーカスしたものにしたらどうかと、Junyaくんと一緒に提案し、現在の「マチノコト」へとリニューアルすることとなりました。ありがとうございました。

リニューアルの詳しい経緯などは、発行人の横尾さんへインタビューした記事を「マチノコト」に掲載しています。そちらをご覧ください。
マチノコト » Standby、そして「マチノコト」へ。発行人・横尾俊成が語る防災とまちづくりの未来

サイトリニューアルに際しては、友人でウェブデザイナーの那須カズノリさん(MINIMAL DESIGN)にデザインしていただきました。サイトのコンセプトをきれいにデザインしてくださり、また、迅速な対応で素晴らしいサイトにリニューアルができました。

地域のコミュニティを作り、身近な問題に目を向け、そして自分たちの力で市民社会を築くための情報を発信していくこと。これは、6月に出版した『パブリックシフト』で書いたことにもつながっています。『パブリックシフト』は、ネット選挙をきっかけに政治を私たちごと化していく社会にこれからなっていく、といった内容を提示をしました。その中には、いわゆるな国政のような国レベルの「政治」ではなく、地域の問題やまちのこと、自分が住んでいる地域や暮らしをどうよくしていくかを考え、行動していくことこそが本来の「政治」であり、私たちが今すぐにできることだ、と書かせていただきました。自分が住んでいる地域の問題に気づき、そしてその問題解決のためのアイデアを考えたり、実際に行動してみたりすることから、「私たちの政治」は始まっていくのです。

だからこそ、社会をパブリックシフトしていく一つのメディアとして、「マチノコト」が考えるコンセプトや動きは、リンクしているのです。10月に発売する、横尾さんの書籍『社会を変えるのはじめかた〜僕らがほしい未来を手にする6つの方法〜』も、まさに今私たちが生きている社会を私たち自身の手でどう作っていくか、といった内容になっています。この本は、まさに『パブリックシフト』とはからずも物語がつながっているのです。そうした横尾さんと僕の考え、そして友人のJunyaくんの編集やコンテンツ作りといった動きにより、これからの社会にとって必要なアイデアや取り組みを「マチノコト」なりに編集し、届けていけるのではと思っています。

参議院選挙も終わった中で、参議院選挙での内容やそれらを踏まえた今後をどう考えていくかといった内容を書いた私の2冊目の書籍も、9月末か10月上旬に出版を予定しています。その本の中で、「これからの社会を考える5つのポイント」といった項目があるのですが、その中に、まさに「マチノコト」とリンクしたこととして「シビックプライド」を挙げています。シビックプライドとは、自身の街に愛着や誇りを持ち、日々のコミュニケーションなどを通じて街を良くしていこうとする意識を持つことです。まさに、「マチノコト」で表現したいことの一つが「シビックプライド」であり、地域のあり方を考えるコミュニティデザインをもとに、新しいまちづくりを私たちで実践していくことが求められているのです。

まだまだ始まったばかりの「マチノコト」ですが、一緒に「マチノコト」を作っていきたい編集やライターを募集してます。今後は、NPO法人スタンバイの事業の中で行政と連携した取り組みや、引き続き防災関連の取り組みなども実施していきながら事業としての法人運営も行っていきます。また、全国各地のまちづくりなどの事例もぜひ教えてください。できるだけ、「マチノコト」の中で紹介したり、一緒に企画などを作っていければと思っています。





2013/08/26

誕生日は周りの人たちに感謝をする日



本日、8月26日で29歳になりました。

20代って言えるのもあと1年かーと思いつつ、自分が過ごしてきた20代を振り返ると、色々とあったなと思いながら、あと1年を過ごしていければと思います。

先日友人と話をしていた時に、8月が誕生日の人たちは幼少期に周りがみんな夏休みで出かけてるから、気づいたら誕生日を祝われずに終わったり、二学期で登校した時に「そういえばこないだ誕生日だったねー」みたいなことを言われる経験を持ってるから、夏生まれな人たちは自分で誕生日祝いにかこつけてイベントや飲み会とかを企画する癖が多いんじゃないか、みたいなことを話をしてて、なるほどーと思ったところでした。たしかに、今までの自分を振り返ってみても、夏の自分の誕生日というものをどこか特別なものだと感じ、何かせっかくなら企画なりをしなきゃ、みたいな思いがあるなと、その話をしながら思ったところでした。

この20歳から今までを思い返すと、20代の前半は自衛隊にいて毎日訓練ばかりで過ごし、ちょうど8月の終わりのこのシーズンは訓練が最も厳しい時期でした。20歳の誕生日の時は始めてカエルやにわとりをさばいたことも、今となっては良い思い出です。21歳の誕生日は、新隊員の教官に従事していて、ちょうど新隊員向けの最後の訓練で山をひたすら登っていた時に誕生日を迎えました。毎年訓練ばっかの誕生日で寂しかったので、バックにこっそりロールケーキとコーラを忍ばせ、自分で真っ暗な山で小さく誕生日を祝いつつ、自分の教え子の子たちにもケーキとコーラを分けて、「山で飲むコーラは美味いな!」みたいな変なことをしたのを思い出しました。他にも、毎年夏のこの時期は趣向を凝らしたイベントなり企画なりを毎年なにかしらやってるなと振り返ってみても思い当たるばかりで、誕生日がどうというよりも、そうした企画をしてみんなが楽しんでもらえることが一番なのだと僕個人としては思っているのが本音です。

自衛隊の後は、自分の中で世の中や社会の仕組みを知り、本当に自分がどう生きていくのかを考えたいと思い、自衛隊を辞めて受験をし、大学に入学して東京に出てきました。大学に入ったのは23歳で、周りの同級生の多くは就職したり大学4年生だらけ。高校の時の友人とは、みんな進学して自分だけ就職の道を選んだためほとんど連絡をすることもなく、自衛隊時代の同期とも違った道を選んだため連絡をすることもなく、友人もツテも何もないまま東京に来て、今7年目に突入しています。

今までに色々な方々と公私ともどもやりとりもらっていますが、東京に来て知り合ったみなさんとの出会いが、今の僕を作っていると言っても過言ではないと思います。元自衛官で大学生という変な肩書な時からの出会いの人たちもいれば、Twitterなどを通じて出会った方々、Ustreamなどの映像や配信で出会った方々、編集やライター、メディア関係者として出会った方々、NPOや社会起業の文脈で出会った方々、政治や行政などの文脈で出会った方々などなど、他にも多くの人たちとの出会いを過ごさせていただきましたが、それぞれに立場は違えと、思いや情熱を持って日々過ごしている人たちと、一緒に仕事をしたり遊んだりすることで、今の自分がすべてができてきていると思っています。そうした方々から、何も知らないペーペーの時から、話をしたり教えていただきながら、色々な学びを得られたおかげだと感じています。同時に、自分が周りにどんな恩を返せているのか。まだまだ、多くの方々にご迷惑をかけているものを、早くお返しできるよう精進していきたいと思います。

20代も最後になってくると、若手やら若者とも言えないものになってきました。その中で、自分自身が一体何を人よりも誇れるものがあるだろうか、と日々考えて過ごしています。あまり勉強ができるわけでもなかった学生時代から、さらにインターネットのサービスに触れるのもここ最近の話でありまがら、ITやウェブの未来について考えるようになった今の自分が、時に信じられない時もあります。果たして自分が人に対して何ができるのか、まだまだ人よりも何倍も勉強し、何倍も努力し行動して知識や経験を積んでいかなければいけない、という焦りがずっとありました。そうした意識の中で、東京に来てからずっとがむしゃらにとりあえず突っ走ってきた感も否めませんが、だんだん自分がどう周りに必要とされているのか、どういった方向性で行くべきなのかということが、まだほんのうっすらですが見えてきた気がします。30歳という年齢に向けて、その自分の中でのうっすらと見えてきたものが確証と変わるようにこの1年間の過ごし、そして30歳からの未来に向けて進んでいきたいと思います。

誕生日というのは生きている上で一つの節目の日です。何気ない一日が、自分にとって特別な日になる。自分が生まれた意味を考えると同時に、今の自分がいることを再確認する日でもあります。色々とわがままや無茶を言っている一人息子を育ててくれた両親に感謝しつつ、今の自分を作ってくれている周りの友人たちに改めて感謝をし、そして「これからもよろしく!」と伝え、また今日からの一日を進んでいきたいと思います。

photo credit: Chris-Håvard Berge via photopin cc



2013/08/13

TOKYO DESIGNERS WEEK特別企画Creative Lab のゲストとして参加します





秋は様々なカンファレンスや展示が集中する季節。その中でも28年間続いている建築、インテリア、プロダクト、グラフィック、アート、生活デザインやアートが世界中から集まるインターナショナルなデザインイベントのTOKYO DESIGNERS WEEK(以下、TDW)

そのTDWの企画の1つとして、様々なジャンル、世代のクリエイター、企業、学生が共に「未来のスタンダード」を考える、参加型クリエイティブセッションCreative labが開催されます。イノベーティブなアイディアを持っている学生や公募で集まったクリエーターたちがアイディアをプレゼンし、一日かけてアイディアをブラッシュアップする企画のゲストとして参加することになりました。

公募で選ばれた3つのアイディア1. 公共空間を楽しくするデザイン、2. 世界を身近に感じるデザイン、3. 新しい学びのカタチのデザインをもとに、“発想の種”の提供者が、何故、どのようにして“発想の種”を見つけたのか、会場に集った人々に向けてプレゼンテーション。“発想の種”をもとに、参加者らがチームを組み、メンター(クリエイティブのアドバイザー)とファシリテーター(チームのセッション進行をする人)のフォローを受けながら、参加者が自ら主体となって“発想の種”を「未来のスタンダード」へと育てていきます。プレゼンテーション発表後、参加者全員でTDW ドームで開催しているMITメディアラボ スペシャルフォーラムのNIGHT PARTYに合流します。

そのCreative labのゲストとして参加しつつ、メンターと呼ばれるクリエーターたちと一緒にアイディアをよくしていく企画に参加します。他にも、テレビ番組TOKYO DESIGNERS WEEK.TvのMCを務めている脳科学者の茂木健一郎氏や、チームラボの猪子寿之氏らも参加されます。豪華なメンバーに囲まれつつですが、メディアや編集者の立場として、また、ソーシャルデザインの視点からアイディアにコメントなどできればと思います。


Creative Lab「発想の種」 | TOKYO DESIGNERS WEEK2013 東京デザイナーズウィーク2013 http://www.tdwa.com/tdw/special/forum/creativelab.html


【以下、概要】

Creative Labとは?
アイディアを持つ人(公募) テクノロジ―やサービスを持つ人 発想力を養いたい人が集まり、化学反応する場です。
朝の8時~夜10時までの14時間の参加型クリエイティブ・ラボラトリー。「未来のスタンダードをつくろう!」を旗印に、様々なジャンルの方々が参加します。

このラボは、テレビ番組TOKYO DESIGNERS WEEK . Tv(BS日テレ毎週月曜23:00-23:54 MC:茂木健一郎)との連動企画です。

■タイムスケジュール
オリエンテーション / 開会式
トークセッション
実行委員:林 信行/岡田 智博/岡島 康憲
3 つのテーマのプレゼンテーション
発想の種提供者によるショートプレゼン
「公共空間を楽しくするデザイン」狩野 明子
「世界の問題を身近に感じるデザイン」山田 実優
「新しい学びのカタチのデザイン」中島 孝介
チーム分け
3 テーマ × 6 チーム 計18 チーム

14:00
クリエイティブセッション
チーム毎にクリエイティブセッションを開始
ファシリテーター、メンターのフォローを受けつつ、チームは発想の種を「未来のスタンダード」へと育てていく。

19:00
プレゼンテーション発表
3 分間のプレゼンテーション
2 分間のメンターからのコメント

20:00
NIGHT PARTY @ TDW-DOME
Creative Lab × MITメディアラボ特別フォーラム
参加者合同パーティ
Performance MIT研究員生 Xiao Xiaoによるピアノパフォーマンス

NIGHT PARTY
MIT Media Lab 特別フォーラム × Creative Lab"発送の種"の合同パーティとの合同パーティーが行われます。

メンター、フォーラムの登壇者、MITメディアラボ研究生らと直接交流できる貴重な機会です。

茂木 健一郎/林 信行/猪子 寿之/江口 晋太朗/前田 紘典/伊坂 重春/石井 康之/石川 寛/岩田 翔/おやまめぐみ/川本 尚毅 Rodrigo Solorzano/渋谷 竜司/杉 千春+高橋 真奈美/高橋 枝里/谷 俊幸/手島 領/橋田 規子/平社 直樹/藤村 益生/藤原 敏嗣/古市 徹雄/松崎 元/水口 克夫/狩野 明子/山田 実優/中島 孝介/岡田 智博/岡島 康憲/greenz.jp/MITメディアラボ副所長 石井 裕 教授/隈 研吾/スプツニ子!/Amit Zoran/Dhairya Dand/Lining Yao/Jifei Ou/Xiao Xiao/(参加するゲスト、メンター)

*10月26日修正
Creative Labの内容に若干の変更がありましたので、修正を行っています。

2013/08/12

NHK「スーパープレゼンテーション」のハングアウト企画に参加しました



先日、8月5日に放送されたNHK「スーパープレゼンテーション」の企画として、Googleハングアウトを使ったトークに参加しました。

NHK「スーパープレゼンテーション」とは、Technology、Entertainment、Designの頭文字を取り、世界中の様々な分野の最先端の技術者や研究者などのアイディアをシェアするTEDカンファレンスの動画を、MITメディア・ラボ所長の伊藤穣一氏が解説をしながら見るNHK月曜23時スタートの番組です。

番組の企画として、番組時間の前と後の30分ずつをGoogleハングアウトを使って動画の内容についてなどを議論する企画が定期的に行なわれています。

8月5日に放送されたTED動画は、クリエティブ・コモンズの理事を務め、『CODE』や『REMIX』などの著書で有名な法学者のローレンス・レッシグ(Lawrence Lessig)氏のプレゼンでした。プレゼンの内容は、レッシグ氏のこれまでの著作権関係からうってかわり、2010年代から彼が力を入れている、政治システムについての内容です。



「We the People, and the Republic we must reclaim 」と題されたこのプレゼンは、「私たちに共和国を取り戻そう」という彼の考えをまさに象徴しています。

アメリカの政治の仕組みが、政治献金という現状によって、本来であれば民主主義として機能しなければいけない状態が、ある一部の層によって歪められ、真の意味での民主共和制になっておらず、そうした意味で、私たちは共和制を失っていると話します。だからこそ、今こそ共和制を私たちは真に取り戻さなければいけない、と彼は18分という短い時間ながらその独特のしゃべりで一気に語り尽くします。

レッシグ氏独特の早回しのしゃべりながら、平易な例えと繰り返しの言葉を使いながら説明する彼のプレゼンは、プレゼンの内容共々にTEDカンファレンスでも歴史に残るプレゼンの1つとして絶賛されています。

この動画をうけ、スーパープレゼンテーションのナビゲーターである伊藤穣一氏、Googleスーパーエンジニアの及川卓也氏をファシリテーターとし、TEDxKyotoファウンダーのジェイ・クラパーキ氏と、私の4人でハングアウトを使って話をするという企画が行なわれました。

前半は、今回のレッシグ氏のトークの内容に期待するものを踏まえつつ、レッシグ氏がどういった人なのか、どういった功績を残している人なのかを話しつつ、なぜ元々著作権に取り組んでいた法学者のレッシグ氏が政治について語り出したのかについて話をしました。

後半は、伊藤氏も加わりながら、レッシグ氏のトークの感想をシェアしつつ、アメリカの政治の状況、そして日本の政治の状況について参加者と議論をしました。議論の様子は、ハングアウトで配信しつつ、視聴している人たちも私たちの声を聞きながらGoogle+のページにてコメントをしていき参加する形をとっていました。

後半のトークでは、アメリカもアメリカなりに政治の状況の中で不具合が起きていること、特に大統領選挙では期間の長さや費やされる予算のかけ方などから、多くのマーケティング的な施策やビックデータを用いてパーソナライズされたアプローチが取られていることなどについて語られました。日本でも、7月21日に行なわれた参議院選挙が開催され、また参議院選挙からネット選挙が実現したことによって、どのようなことがこれから求められてくるのか、またアメリカとの違いや日本独特の政治風習などについて議論されました。

アメリカでは、誰もが政治参加するために幼少期から政治文化を醸成するための教育的な機会や場が用いられ、政治参加することが日常化されています。しかし、日本では20歳以下の未成年に対する政治文化、政治教育の機会があまりないために、若年層の投票率の低下や政治参加意識の低下などが問題視されています。レッシグ氏が語るような民主主義を取り戻すためのアプローチを、アメリカとは違った問題を抱えた日本においてどのような対策をしていけばよいかを参加者と議論することができました。

短い議論ながら、多くの示唆に富んだやりとりができ、とても楽しい時間を過ごすことができました。そして、NHKがこうしてハングアウトなどを使い、番組のスピンオフな企画を立ち上げるというのは、テレビとネットによるやりとりの1つのチャレンジだと感じました。生でテレビを見つつ、そのテレビで話された内容についてリアルタイムで有識者が議論し、その様子を見聞きしながらコメントする。テレビだけで終わらせない企画としての1つの形ではないでしょうか。

1つ加えるならば、視聴している人たちのコメントがもっと見やすくするか、参加してコメントしやすい設計だといいかもです。参加している人たちのコメントももう少しハングアウトの中で取り上げると、よりインタラクティブになるのではと感じました。

他にも、NHKのスーパープレゼンテーションに流れている動画だけでなく、TEDには面白い動画ありますので、興味がある人はぜひ見てみてください。TEDカンファレンスでは、様々な分野の人たちのアイディアがシェアされており、見終わった後は誰かと話をしたくなる動画がたくさんあります。アイディアをシェアし、それを受け取った人たち同士で議論や対話をしていく。そんな企画が色々とできそうですね。

(8月19日追記)
ハングアウトの様子を、トークなどの様子をグラフィックでまとめていくTokyo Graphic Recoderの清水さんにまとめていただきました。内容をぎゅっとイラストで編集する、新しいライブ編集のメディアのあり方の一つだと思います。

(イラスト一部キャプチャ)
続きのイラストは、こちらから見ることができます。

参考リンク
第8回スーパーハングアウト - Google+ https://plus.google.com/u/0/events/c5rmhplla7l62293r5iv0qbr5ek?partnerid=gplp0

8月5日放送 |スーパープレゼンテーション|Eテレ NHKオンライン http://www.nhk.or.jp/superpresentation/backnumber/130805.html/



2013/08/03

僕たちは、自分たちの国の歴史のことを意外と知らない

7月も終わり、8月がやってきた。8月で思い出すのは、実は母方の祖母の命日だったりする。しかも、自分の誕生日の前日ということとあれば否が応にも思い出す。

そんな祖母は、戦争中に台湾に疎開し、ことあるごとに台湾の話をしていた。父方の祖父も戦争中には通信兵をしていたらしい(賞状が実家にあったが、戦争のことは一切話さなかった)。自分たちの祖父母世代が亡くなると、もはや日本には戦後生まれしかいなくなると、戦争が終わって60年以上たったの月日を、お盆や終戦記念日を迎える夏はいつも感じさせる。

歴史の記憶というのは、その当時を経験した当事者の人たちしか分からないものは過分にある。けれども、少しでもその当時のことを理解しようと取り組むことはできる。今の自分達と違う慣習、文化、思想などを、自分たちと違うねと思うんじゃなくて、その当時にそうしたものになった経緯や、その思想が持つことの意味みたいなものを理解することで、歴史から学べるものは多くある。

えてして自分のことを案外と知らないように、自分の国のことをしっかりと知ってる人は多くはないんじゃないだろうか。特に、若い世代ほどそうかもしれない。それが戦争のことと言えば、すで終戦から68年近くが過ぎ、なおさら戦後生まれの人たちだらけになるからこそ、歴史を学ぶことの重要性は増してくる。

そんなことを、上映前に試写会に呼ばれて観てきた映画「終戦のエンペラー」を見ながらふと考えた。



「終戦のエンペラー」は、日本が第二次大戦で天皇が玉音放送をおこない、無条件降伏をしたあとのGHQであるマッカーサー最高司令官が日本に降り立つところから始まる。いかに日本を占領するか。そのためにはどのように戦争責任をとり、民主主義として独立させるかということを模索した時期でもあった。

欧米的な発想は、戦争責任を逮捕し連邦裁判にかけるという単純なロジックが働く。そのため、戦争を指揮した天皇をすぐさま逮捕し、戦争責任を取ってもらうことで片がつくと思っていたのかもしれない。しかし、果たして天皇を裁判にかけることができるのか。神格を有している天皇という日本独特の存在をどう扱えばいいか。そこで、マッカーサーの部下フェラーズ准将が東条英機、近衛文麿、木戸幸一、関屋貞三郎などの天皇の側近や近しい人たちに話を聞きながら、日本における天皇の存在と、天皇の戦争責任について紐解いていくストーリーだ。

この映画はハリウッドで制作されているが、プロデューサーは日本人である奈良橋陽子氏などが務めている。劇中にも登場する関屋貞三郎氏が奈良橋陽子氏の祖父ということで、まさに自身の家系と日本という国の歴史のアーカイブを試みた映画の1つと言えるものかもしれない。

この映画の主人公はフェラーズ准将という歴史の教科書にも載らない一軍人だ。その准将は、日本の文化に精通していたということから天皇についての調査の特命をうける。その主人公の目線のまま最後の最後まで続いていく。この欧米人の目線で続くという作りは、実は現代の欧米的な発想に浸っている僕達自身に対して、過去の日本の、戦後の日本における空気と、そして「天皇」というひたすらに謎で、それでいて絶対的な存在として存在していた人物へと迫り、次第に真実へとたどり着く作りになっている。

戦後生まれの人たちからすると、天皇は教科書で習うような「象徴天皇」という認識でしかなく、なぜにそこまで象徴となり、なぜにそうした独特な制度となっているのかをしっかりと理解できている人はいない。映画の中の天皇は、まさに当時のとしての絶対的な存在感を持ち、マッカーサーも最終的に天皇制は続けるべきと考え、いかに日本は天皇に対して深い考えと重きを置いていたのかを感じさせるものになっている。

多少のネタバレかもしれないが、タイトルでエンペラーとは付いてるものの、昭和天皇がでてくるのは本当に最後の最後の、マッカーサーが直接天皇と対面する有名なシーンのところだ。それまでの、第三者から見聞きする天皇の存在や有り様を聞き入ったあとに、昭和天皇を正面から見た瞬間は、まさに日本においていかに天皇がそこに存在し、それでいて、いかに戦争に対して受苦じたる思いを持ち責任を果たそうとしたかが伝わる瞬間であり、一番のクライマックスである感動の瞬間でもある。改めて、天皇や戦争について、日本について考えさせられる映画になっている。

もちろん、映画であるがゆえにエンターテイメントとしての多少の脚色や史実と違うところも一部ある。全体としてはフェラーズ准将のラブロマンスというフィクションと、日本の天皇に対する戦争責任追求というノンフィクションとがうまく折り重なった作品でもあり、この映画を見てすべてが真実だと思ってはいけないのは確かだが、ラストのクライマックスシーンの箇所や、当時の天皇の有り様などはしっかりと描かれていたように思える。

これまで日本では、こうして天皇について正面から切り取り、しっかりと総括した映画はあまりないのではないだろうか。そうした意味で、日本映画ではなくハリウッドで作られた意味も分かる。同時に、今の日本人の視点から見ても、過去の歴史を振り返る1つのいい機会となる。

改めて、僕たちは自分たちの国のことを意外と知らない。ぜひ、若い人たちに観てもらいたい映画だ。8月15日は終戦の日でもある。暑い夏の中、涼しい映画館の中ででもいいから、歴史を振り返る時間を取ってみるのも悪くない。



映画『終戦のエンペラー』公式サイト http://www.emperor-movie.jp/



2013/07/23

ネット選挙運動をきっかけに見直す、公職選挙法とコミュニケーションのあり方 −−普段の生活に政治文化を醸成していこう

*この記事は、「ネット選挙運動をきっかけに見直す、公職選挙法とコミュニケーションのあり方 (ハフィントン・ポスト)」の記事を加筆修正したものです。


7月21日に投開票が行なわれた参議院選挙。今回の選挙から、インターネットを活用した選挙運動が実施され、各政党・候補者がそれぞれに試行錯誤の中、取り組みを始めた。

NHKニュース(ネット選挙 候補者の9割が活用)でもあるように、候補者の9割がアカウントを作成して情報発信として活用した。TwitterやFacebookなどを使った発信があった中、今回大きく注目されたのがLINEだ。ユーザーローカルの調査(各政党のソーシャルメディア活用度調査を発表。ネット選挙解禁で政党のLINE利用が活発化)でも、各政党ともにLINEアカウントのフレンド数は多い。LINEはプッシュメディアとして手元にメッセージが送られるため、必然的に見る機会が増す。なんとなく政党の情報が欲しいと考えている有権者からしても、LINEで政党のフレンドになっておこうと考えた結果だろう。

TwitterやFacebookでは友達の投稿数も多く、政党や議員の投稿を確実に見てもらえる仕組みはなく、またLike数やフォロワー数が得票に結びつく保証もない。 TwitterやFacebookをコミュニケーションツールの1つとして認識し、 真摯に有権者と対話し政策をブラッシュアップするためにそれぞれのメディアに応じた運用ルールを作っていかなければいけない。

有権者にも問われる政治意識

ネット選挙が解禁しても、どうやって政治の情報を入手すればいいのかを有権者は改めて考えたのではないだろうか。

産経ニュース(【参院選】ネット選挙、有権者冷ややか 「参考にした」わずか1割)によると、ネットの情報を参考にした人は1割程度しかおらず、ネットに流通している情報も有権者の投票行動に結びつくほどにはなっていない。

もちろん有権者側の課題も多い。たとえ情報が"得られる"環境にあっても、情報を"得よう"という意識になっていなければ意味は無い。選挙が始まっても、政策や立候補者の情報、現職であれば過去の実績、新人であれば現職との違いなどを比較しなければいけないが、これまでがそうした環境では無かった。ネット選挙になったからと言っても、すぐに能動的に政治の情報を得ようと意識が変わるとは言えない。

SNSやウェブサイトは「プルメディア」とも呼ばれ、Googleなどで検索しサイトにたどり着いたり、SNS内の投稿をクリックするなど、ある程度能動的な意識を持った人が情報にたどり着く仕組みだ。どんなにネットが発達しようにも、Googleの検索バーに入れる単語を思いつかなければ意味はないし、自身の興味のあるアカウントしかフォローしなければ、必然的に興味のある情報が集中する。そうしたネットの特性を考えた上で、情報設計を行なわなければいけない。

各種メディアが情報を分かりやすく届けようとしたり、政策と政党のマッチングサービスもいくつも出てきた。次は、そうしたメディアやサービスに触れる機会をどのように作り出すか。そのためには、政党や候補者側の努力ではなく家庭や教育の現場などで私たち自身で政治について話す場を日々設けることだ。これは、選挙権を持っていない未成年にも有効だ。20歳になった瞬間から政治について勉強するのではなく、20歳になる前から社会について議論していく場を大人は設けていく責任がある。

政治の世界におけるコミュニケーションデザインの再構築が必要

「選挙」と「政治」は違う。「選挙」でいかに当選しようと「政治」の現場で成果をしっかりと出せなければ意味がない。逆に、「政治」の現場でしっかりと活動をしていても、それが評価されるものであったり、きちんと成果を伝える努力をしていかなければ「選挙」では勝てないのだ。

そのため、選挙期間のみならず普段の政治活動にもネットを活用することで信頼を築きあげなければいけない。政治家が有権者の声を聞き、受け答えをしてくれるという実感と信用を得ること。同時に、有権者側もきちんと政策立案などで活動をしている議員を評価し、応援し可視化する責任を持つこと。選挙の投票だけが政治参加ではなく、普段の政治の時にこそ、何かしらの形で参加していかなければいけない。 政党や候補者と有権者が、ネットとリアルで相補関係を作るコミュニケーションデザインの再構築が今後の大きな課題だ。まだまだネット選挙運動は始まったばかりだ。これでネット選挙に対して評価を下すのは時期尚早と言える。これからの数年をかけてともに作り上げていくものだと認識してもらいたい。

今回の選挙の評価できる点として、有権者側から積極的に選挙運動に参加する動きがでてきたことだ。様々な個人が、誰を応援するという声明をSNSやブログに書くなどの動きが起きた。有権者側から政治に参加する意識を高め、選挙を促す行為が起きてくることで、政策議論や対話の場が出てくるのではないだろうか。そのためには、選挙の時のみならず、普段の時から、政治に参加するための場作りや意見を交わし合う文化を醸成していかなければいけない。

もちろん、ネガティブキャンペーンの問題もあるだろう。統計的にネガティブキャンペーンをすれば全体としての投票率も下がると言われている。足の引っ張り合いは、短期的な視点では仮に良くても、長期的な視点ではマイナスの効果を生み出す。ネガティブキャンペーンを行うということは、それはブーメランのように自身や応援している候補者に返ってくるということを忘れてはいけない。

普段の生活に政治文化を

改めて、今回のネット選挙運動をきっかけに公職選挙法の抜本的な改革の必要性を痛感しただろう。「選挙期間」と「政治期間」という区分け自体が、もはや通用しなくなっている。選挙期間と政治期間を撤廃し一体化することで、新人候補にも大きなチャンスがでてくる。期日前投票に対する認識も高まってきたため、選挙期間ではなく投票期間、そして最終日を投開票日とし、政治と選挙の壁を無くしていくことを筆者は考える。本来であれば一体化しておくべきな「政治期間」と「選挙期間」が別れている仕組みを見直し、普段の政治の状況を評価する場として選挙が機能するものになってもらいたい。他にも細かな箇所での修正はいくつも挙げられる。ぜひ、みなさんと公職選挙法そもそもを見直す場を継続的に設けていきたい。

次の世代に対する政治教育含めた情報環境を作ることは必須条件だ。今回の選挙は、政治家のみならず私たち有権者自身も成長し、行動することでしか社会は変えられないと実感した選挙かもしれない。こうした反省と学びをもとに、次の選挙や日々の政治への見方を見直し、社会のために何ができるのかを考えていきたい。普段の中にどう政治文化を作っていくか。ネット選挙だけではなく、ネット政治を作る取り組みはまだまだ始まったばかりかもしれない。



2013/07/22

参議院議員選挙の結果をうけて

2013年7月21日に行なわれた参議院議員通常選挙。結果としては、前回の衆議院選で与党となった自民党が65議席を獲得した結果となった。

今回の選挙の結果は、どんな結果であってもそれが民主主義の世界で決まったことに対しては一定の正当性があるため、受け入れなければいけない。それぞれ候補者として立候補した方々には賛辞の言葉を述べたい。当選した議員は、これからの6年間を、しっかりと有権者のための政策を立案し、しっかりと形にしていく政治活動を行なって欲しい。

こうした現実を受け入れつつも、これからも数年、これからの未来を私たちはどう考えていかなければいけないのかを思案していく必要がある。

かつて、民主党が政権と取った09年の政権交代から数年での自民党への政権交代。東日本大震災もあり、民主党への政権運営能力に対してはたしかに多くの反省すべき点が多かったことは否めない。それは、民主党自体がいくつもの党が寄せ集まってできた党であり一枚岩でなかったこと、今の民主党になってからの若手議員が多くはなかったこと、そしてしっかりと党内のコミュニケーションが統制されてなかったことなどあるだろう。しっかりとしたチームビルディングができてなかったことは、企業において考えても経営状況として良くない対応が見受けられたからだ。

09年の政権交代以前の自民党における長期政権は、それまでの高度経済成長期においては、ある程度の経済成長の見通しがあった上での長期戦略に意味があったかもしれないが、
これからは10年後に何が起きるかも分からない。だからこそ、10年20年計画を立てつつも、それらを完遂するために躍起になるのではなく、随時修正をかけていきながら開発していく発想も求められるのかもしれない。そのためには、それまで官や公のみが担ってきたものを、民や私と協働する共創的社会を作りだしていかなければいけない。

その中で、多様なライフスタイル多様な生き方をしている人たちを認識し、しっかりと受け止め、彼らの立場を尊重するための多様な社会のあり方を模索しながら、市民からの意見を集約して判断し、実行していく政治家や政党を作っていかなければいけない。

今回の結果を受けて、民主党自体の抜本的な改革が必要だ。いわゆるな旧来的な左翼などではなく、新しいリベラルな存在の人たちによって民主党を構成させる必要があるのかもしれない。民主党が終わったという意見が一部あるかもしれない。しかし、ここから新しい政党を作っていこうと思うほうがハードゲームだ。新しいリベラルを作っていくためには、既存の民主党を中から壊していく存在が必要かもしれない。かつての自民党において小泉純一郎氏が掲げたように、「民主党をぶっこわして、新しい民主党を作っていく」若い存在により、革新と民主主義を掲げる政党の存在がなければ、現状の与党自由民主党の勢力がひたすら続いていくものとなる。それでいいと思う人が多いのならばそれが民意かもしれないが、やはりアンチテーゼとなる存在がしっかりと機能し、バランスの取れた環境を作ることは、政策をブラッシュアップしていくという意味において有権者にとっては自民党側にとって意味があることだ。

時代を生きていくためには、強いものでも賢いものでもなく、変化に対応していく人たちというダーウィンの言葉にもあるように、未来が誰にも予想されない時代だからこそ、変化に柔軟に対応しながら、長期的グランド・デザインを作り上げ、そのためにどういった施策が必要なのかを継続的に思考していくことだ。

今回の選挙では、シングルイシューを強く掲げた候補が当選したかもしれない。しかし、政治家として当選することと実際に国会の中においての政策立案能力はまた違う。しっかりと国会で役割を果しているか、有権者自身が政治家を日々ウォッチし続けなければいけない。議員の評価は、マニフェストという公約ではなく、その中での実績をしっかりと評価していかなけばいけない。そのためにも、国会にて真面目に活動している政治家に対して、私たち自身もきちんと評価をする仕組みを作っていかなければいけない。そうでなければ、政治家自身も日々のモチベーションを保つことはとても難しい。改めて、政治は政治家のものではなく、私たち有権者が作っていくという意識を持たなければいけない。

国会議員は、国のあり方や社会のあり方を調整し、形にしていく存在だ。私たち有権者が、政治のあり方がどうあるべきかを考える必要がある。今までが、政治の話などを家庭や学校で話すことがタブーとされた時代だったかもしれないが、政治はもっと身近な、地域の問題からでも政治に触れることはできる。自分がどうしたいか、どういった社会でありたいかを考える。その中で、結果として政策や法律に対して意識を持てるようになる。そのための、政治に対する情報環境を再設計するための仕組みや教育改革を行なわなければいけない。

今回から始まったネットを活用した選挙運動では、結局はポピュリズムの増幅装置でしかないと決めつけるのは時期尚早だ。政治や選挙の世界にインターネットがしっかりと根付くのはまだまだ時間がかかるかもしれない。これからに向けて、今回のネット選挙によって生まれた良い効果をきちんと分析することが大事だ。実際に、投票先をネット上で公開する人も一部にいた。政治に中立中庸であるべきというものではなく、しっかりと応援する政治家を個人として応援する姿勢を取ることは、政治家本人にとっても大きな力だし、有権者側にとっても1つの指標になる。もちろん、誰々が入れたから自分もというものではなく、そうした情報はすべて判断材料の1つという認識の中で、自分が誰に入れるのかとしっかりと考えなければいけない。選挙や政治や、政治家のものでははなく、有権者である私たちのものだ。選挙運動も、私たち自身がどんなことでもいいので自分の意見を発信していくことだ。有権者ができることは今回の改正で大幅にできた。その中で、私たちがどんな行動をするのか。一緒に考えていかなければいけない。同時に、改めて公職選挙法自体の抜本的な見直しが必要だ。今回の選挙をうけてそれぞれが色んな思いや矛盾を考えたかもしれない。その中で、どういった公職選挙法がいいのか。有権者にとって真の意味にふさわしい選挙のルールを作っていかなければいけない。

そして、結果もそうだが選挙期間中の様々なポジティブ、ネガティブな動きが見受けられたが、こうした現状を作っているのは有権者である私たちだ。あらゆる形で私たち有権者の意識が反映されるのが選挙だ。ネット選挙が解禁したからダメになったという言説はロジックとして少しおかしいものがある。ネット選挙は1つのハードとしての存在だが、そのハードをしっかりと使いこなすためにはソフトの部分が重要だ。結果として、選挙はソフトの部分が反映される世界。ルールが変わったならばそのルールの中で戦うことに対してルールを責めてはいけない。

もちろん、結果に対して思うところはあるかもしれない。しかし、過去は変えられないかもしれないが、未来は変えることはできる。未来を変えていくという希望を持って行動する以外に選択肢はない。どんなに絶望的だと思っていても、社会で生きていく限り目を逸らすわけにはいかない。

当たり前だが、今回の選挙で何かが大きく変わったわけじゃない。今回の選挙運動や選挙のことだけでネットの可能性を閉ざすのではなく、日頃の政治活動にもネットをしっかりと活用してもらいたい。日々の活動の1つ1つが未来につながり、しっかりと議員としての成果を可視化し、未来の候補者は、候補者としての信頼性を持ちうるだけの成果のストックができるのだから。

引き続き、国政以外にも地方選なども選挙が控えている。選挙のたびに、自分がなぜその人に入れたか、どうして入れたかということを、それぞれの個人の判断意識でいいから考え、入れたことに対して納得を持って投票出来るようにして欲しい。そのための情報を、常日頃から少しづつとっていくための情報環境が必要だ。

投票は、政治家を決める1つの結節行為だ。しかし、政治に参加できるのは投票だけではない。身近な行政問題に対して声をあげたり街づくり会議などに参加し意見を発することからでも政治は始まる。そうした行為の1つ1つが社会を変える動きになりうるのだ。

今回のネット選挙も踏まえて、改めて政治の世界全般のコミュニケーションデザインを見直さなければいけない。瞬間的な盛り上がりではなく、継続的なコミュニケーションのあり方を見直すことだ。日々の政治活動の1つ1つ、リアルとネットを踏めえた有権者とのコミュニケーション含めたやりとりを作り、政策に対する意見をともに考え、対話をしていくためのコミュニティを作っていくこと。それでしか、政治は変えられないし、まだまだ変えることができる可能性は残っている。そのためには、若い人たちからの議員をだす必要性がある。未来に対して希望と思いを持ち、それでいて新しいテクノロジーや技術に明るく、積極的に取り入れようとする前のめりな姿勢を持つこと。先生と呼ばれているのではなく、地道に様々な可能性を吟味し、泥臭く様々な分野の人たちとコミュニケーションを取っていく存在にならなければいけない。そこから、未来に希望を持っていきたい。その中で、入れたいと思う人を見出し、若い世代も含めた、本当に未来を考えて行動する人をしっかりと応援していかなければいけない。

今後、ITの分野がまだまだ成長を図れる可能性を持っている中、今回の結果でIT業界へ精通する人が減り、またNPOや教育の分野に対しての人材が減ったことに対しては打開策を見出さなければいけない。日本のデジタル化を推進する上で、ITの力や多様性をもった人たちに対する認知やアプローチは必要だ。オープンデータやオープンガバメントのような、政治行政からの一方的なものではなく、市民からの積極的な参加を促す仕掛けを作るためにも、コミュニケーションの分野やデジタルの分野において精通している人材が政治の世界に入らなければ、今後の未来の可能性の1つを無くしてしまう。

今回与党になった自民党に対しても、賛成するところと反対するところもある。野党である民主党でも、賛成と反対がある、個々の政策に関しては、各党それぞれの意見もあるだろうし、各論毎に是々非々で考える必要がある。私個人としては中国や韓国などとのアジア圏における経済圏を作り出し、その中でアメリカとも協働できるものを見出す。原発も最終的に撤廃していくべきだが、そのための段階的なステップを踏み、確実なKPIをもとに段階的な撤廃を目指すことが現実的だ。TPPに関しては、まだまだ議論の余地があるが現状として議論がされつくされていない中での採択では、あまり良い結果を生まないのではないだろうか。

ネット選挙の価値は、地方にこそチャンスはあると考えている。政治家や候補者と有権者との距離が近く、リアルとしての接点をネットが補てんする、現実の拡張されたリアルの延長線としてのフィールドとして機能し、継続したコミュニケーションを行なっていくことだ。地方では千葉や横浜、福井の鯖江などでオープンデータに関してなど、様々なケーススタディが起こっている様子をしっかりと成功事例とし、全国に広めていく可能性は大いに秘めている。地方から変えていくことで、日本は良くなっていくだろう。

東京も、オリンピック誘致もそうだが、様々な分野において世界におけるプレゼンス不足は否めない。そのために必要なコミュニケーションデザインのための役職を作るのもありだ。例えばCCO(Chief Communication Officer)の設置。これは従来の広報やPRというような狭義ではなく、組織内のコミュニケーション体制や情報管理、市民から意見を集約し、そして市民参加を促すためのコミュニティ作りを行えるという広い意味でのコミュニケーションを担うCCOという存在だ。若しくは、NY同様にデジタルへの強化を強め、デジタルの分野におけるイノベーションを創発するCDO(Chif Digital Officer)の設置も大いに可能性を秘めている。事実、NYのCDOは私と同世代のレイチェル女史が担っており、NYのデジタル化の推進によって、様々なベンチャー企業もNYに集約し日々新たな動きを起こしている。こうした分野には、やはり私たちくらいの年代の若手を抜擢し、多様な世代にアプローチして、市民からの意見やを集め、市民の活動を支援しいてく立場として東京自体の活性化や全国それぞれの自治体の次のフェーズにいくために必要な存在かもしれない。

様々な局面において、日本の政治行政はアップデートを図っていかなければいけない。次の時代、これからの時代に対応するためには、未来を見据え、その中でこれからすべきことを導き出し、アクションプランを考え、少しづつ実行していくことが必要だ。旧来の思考のフレームを一度外し、新たな視点を持って政治行政を作っていかなければいけない。

これまで、昨年の衆議院選や今回の参議院選挙などで、10代の若い人たち、20代の同世代の人たちの政治に対する意識を持とうとアプローチするムーブメントが起きてきた。やっと、若い人たちから政治への活動が盛り上がってきた昨今において、こうした動きを止めてはいけない。これまでの動きを一時のブームにしてはいけない。未来を担うこれからの世代や、政治や社会に対して希望を持てるようにすること。未来に対して積極的に声をあげ、意見を持てる社会にしていかなければいけないのだ。

そのためには、ネットの世界だけではなく、リアルの世界における対話を充実させ、多様な人たちと意見を交わし、自身の考えをブラッシュアップしていく必要がある。そこには、意識の高い人たちだけが集まっても意味はない。あらゆる人たちが同じラウンドテーブルに座り、相手の意見をまずは聞き、そこから自身の意見と相手の意見とを交わしていく。それは、ディベートで相手の意見を負かすことでも、自身の意見を相手に押し付けるようなものではない。互いの意見の違いを認識し、認め、そこから妥協点を見出すために何ができるか、互いの意見とは違った考えや発想はないか、そこから新しいソリューションやイノベーションが起きるものないかを模索することが大事だ。

次は、2015年の統一地方選挙や、次の衆議院選、参議院選挙が1つのマイルストーンかもしれない。それまでに、今回の反省点や改善ポイントを洗い出し、そこから次への新たなステップを、私は踏んでいきたい。


2013/07/19

上原にあるNo12 Galleryで、デザイナーやイラストレーターらによる「投票へ行こう」をテーマにした『投票 / VOTE』展が21日まで開催



参議院選挙の投票日が21日を迎える中、投票率を少しでもあげようと、今日、7月19日(金)から21日(日曜)までグラフィックデザイナーやイラストレーターらが「投票へ行こう」をテーマにした『投票 / VOTE』展を行なっています。

場所は、上原にあるNo 12 Gallery。たまたま渋谷に行く予定があったので、そのついでにのぞいてきました。

同展には、大原大次郎、Noritake、三上数馬、小辻雅史、田中貴志、373、藤川コウ、中村穣二、峯崎ノリテル、守矢努、長谷川有里、STOMACHACHE、上山悠二、鈴木裕之、宇賀田直人、高木耕一郎、竹内俊太郎、神山隆二、東海林巨樹、RESTAURANT 、横須賀拓らが参加。それぞれのフィールドで活躍している方々が、今回の選挙をうけて急きょ開催しよう、ということになったそうです。

インターネットによる選挙運動が行なわれるようになった今回の参議院選挙。ネットを使って政党、候補者、そして有権者側からも様々な手法を使って選挙運動を運動を行ったり、選挙を盛り上げたり投票へ行こうと促す活動が盛んになってきました。2011年の震災以降、ソーシャルメディアなどを通じて、クリエーターやエンジニアなど、様々な人たちも自発的に政治に参加する動きがおきてくるようになりました。

今回の展示は、ギリギリでの開催ながらも、デザインやクリエイティブに携わっている人たちもこうして声をあげ、政治に参加する動きがこうして展示なりで動きをし始めたことに対して評価できるものだと思っています。

個人的な意見としては、せっかくのポスターやデザインを、もっと多くの人たちに見てもらうような仕掛けでもよかったのでは、と思っています。Gallery展という従来と同じような動きではなく、ウェブにそれぞれがアップして、統一したハッシュタグなりCGM的にみんなが「投票へ行こう」をテーマにしたデザインを投稿できるような、Tumblrなどに投げられるような仕組みにすることで、それらをSNSで発信することでより多くの人たちに見てもらえる仕掛けができたのかな、と思っています。

けれども、試行錯誤しつつももっと多くのデザイナーが社会問題に対して声をあげ、活動することに対して賛成しています。デザインの力は、人を魅了し、時に人を行動に移したり意識を変えたり感動させられるだけの力を持っています。ぜひ、デザインの力をもっと社会に活かすような取り組みをしていってもらいたいと思います。

もちろん、僕自身も何かお手伝いできるものがあればしたいなと思います。

『投票 / VOTE』展は、上原にあるNo 12 Gallery でやっています。最寄りは駒場東大前駅です。

今回の展示、Vineでも撮影してみました。最近、instagramの動画撮影やVineにはまってるんですが、手軽に撮影できてアップできる仕掛けは、色々と使いようがある気がします。実験してみたいと思います。




参考記事
「投票へいこう」がテーマのポスター展、大原大次郎、Noritake、STOMACHACHEら参加 -art-designニュース:CINRA.NET http://www.cinra.net/news/2013/07/11/123615.php



2013/07/18

【レポート】6/21 OpenCUイベント−−身の回りの問題に気づき、小さなアクションを起こすことが大きな一歩となる



少し前の話題ですが、6月21日にロフトワークが主宰するOpenCUというワークショップイベント「身の周りの気づきをアクションに変える 〜ソーシャルムーブメントの実践者と学ぶパブリックシフト」を行ないました。

これは、6月27日に出版させていただいた(イベント時は出版前)拙著『パブリックシフト』の中身に沿いつつ、身近な社会問題を解決するために一般の人たちが周りの問題に意識を向け、そこから解決策を見出すためのワークショップを行いたいという思いから開催へと至りました。

ゲストには、ハフィントン・ポスト日本版編集長の松浦茂樹さん、オンライン署名サービスのChange.org日本代表のハリス鈴木絵美さんをお呼びしました。

「身近な問題に意識を向け、小さなものでもアクションを起こす」
「アクションを起こすためのデザイン思考フレームワークで体感する」

という軸のもと、社会の問題を「自分ごと」化し、小さなアクションへと目を向けるためのイベントにしたい、というのがイベントのゴールでした。

そのため、ゲストのお二人をお呼びしているものの、ゲストが話をしトークセッションを行うというよくあるようなイベントの内容は冒頭の40分程度で終わり、その後のワークショップに1時間以上もの時間を割く時間構成しました。

One Voice Campaign、そしてパブリックシフト

とは言うものの、まずは今回のワークの呼び水となるために、私と絵美さん松浦さんでそれぞれ話をしました。

photo by OpenCU CC BY 2.0

まずは、私の話ですが、ネット選挙解禁に向けた活動に取り組んでいたOne Voice Campaignに至った個人の経緯や、One Voice Campaignを通じて、One Voice Campaignの活動では主にSNSで共感を集め、多くの人たちの賛同などを通じて大きな活動へと広がった経緯を話しました。その後、ネット選挙の先にある、オープンデータやオープンガバメントなどの話をし、社会の担い手は政治行政側からの一方的なものではなく、私たち市民が担っていく社会になっていく時代がくる、そのために今回のようなイベントを企画し、市民の側から社会問題に対して意識を向け、小さなアクションから始めることで社会は変わっていくのだ、というお話をさせていただきました。このあたりの話は、『パブリックシフト』にて色々と触れておりますので、ご一読いただければと思います。

「変えたい」を形にするために必要な3つの要素

次に、Change.org日本代表のハリス鈴木絵美さんより、Change.orgの説明や実際に成功したキャンペーンの話、そしてキャンペーンを考える時に必要なポイントについて話をしていただきました。

photo by OpenCU CC BY 2.0

Change.orgは、すでに世界3500万人以上のユーザが集まり、日々数百件以上ものキャンペーンが世界で立ち上がっています。日本でも、W杯における男女サッカーにおける処遇の違いの是正キャンペーンが立ち上がりニュースとなったり、ドイツの関税に押収されたバイオリニストのバイオリンの返却のためのキャンペーンなど、すでにいくつもの成功事例が出てきています。

キャンペーンを立ち上げる際に気をつけるヒントとして、絵美さんは3つのポイントを説明しました。
①Crisitunity 
ピンチの時こそ、注目が浴びているから変化を起こせる大きな機会であること
②目標の具体性 
大臣や法律を変えるという大きな目標ではなく、すぐにできる小さなアクションから始めること
③Theory of Change 
変化を起こすためのロジックを作ること。例えば、変えたい事例と同様の事例を探し、その事例をもとに変化を促すなどを指す。

こうしたヒントをもとに、日々Change.orgではいくつものキャンペーンが起きている。「変えたい」思いを形にするという、Change.orgの哲学を感じさせる話でした。

読み手と書き手で作り上げる言論空間

最後に、ハフィントン・ポスト日本版編集長の松浦茂樹さんより、ハフィントン・ポストの成り立ちやメディアとしてのあり方について話をしてもらった。

photo by OpenCU CC BY 2.0

ハフィントン・ポストは、アリアナ・ハフィントン氏が2005年に創設したメディアだ。事実報道は、各種メディアサイトからのアグリゲートをもとに記事にし、編集部が独自に取材をする独自記事や、寄稿していただくブロガーなどの記事によってなりたっています。(私も、ハフィントン・ポストで記事を書いています。次書かなきゃ…

また、ハフィントン・ポストの特徴的なものとして、コメント機能の充実だ。誹謗中傷などのものなどを除き、基本的には誰でもコメントを書くことができ、そのコメントで議論されたことがきっかけでさらに次の記事が投稿されるという、ボトムアップ型のメディアと言えます。

これまでの事実報道中心の情報発信ではなく、コメントやブロガーによる寄稿などを通じ読み手と書き手が双方向に対話をし、そこから新しい議論を生み出すというソーシャルメディア時代のメディアのあり方を模索している媒体だと話しました。そのため、編集部からの記事などは読者からのコメントなどを誘発するような書き方となっている。その特徴的な例として小平市の住民投票が不成立 「35%の人々の声はどうなるのか」の意見も などのようなものが挙げられます。小平市の話は、それまでニッチな話題だとみなされていたものが、書き手が呼び水となりそこから議論が深まった事例と言えます。こうした、読み手と書き手が、ともに社会問題について議論する言論プラットフォームとしての存在だと話してくれました。

photo by OpenCU CC BY 2.0

Change.orgもハフィントン・ポストも、ともにプラットフォーム型としての形を示しており、市民の側からの問題提起や意見によって社会問題を可視化し、そこから解決策や議論を深めていく、まさにボトムアップ型の社会に必要なサービスやメディアと言えるかもしれません。『パブリックシフト』の中においても、こうしたボトムアップ型の社会の到来に向けて、私たち市民が政治や社会を担っていく、そのための意識をどう向けていくかが課題だと書かせてもらったこととリンクしてきます。


普段、意識をしない問題の解決策を考える

トーク終了後は、参加者によるワークショップを行ないました。ワークショップの手順として、今回はまずは自身が日頃感じている身近な問題を2から3つほど紙に書いていただきました。その後、参加者が書いた紙を一覧し、参加者全員がどういった問題を持っているのかを可視化しました。



問題意識を共有した後、一覧された問題の中から、関心のある問題(共感するもの)と、関心があまりない問題(問題かもしれないが、自分にとってはまだあまり身近に感じられないもの)の2つを直感で選んでいただく作業をしてもらいました。

そして、ここが今回のワークショップのポイントなのですが、今回は「関心のあまりない問題」をみなさんで議論する、という流れに設計しました。

よくあるワークショップだと、往々にして自身が興味や意識のある問題に対するグループを作りがちですが、既知の問題は収束地点をグループの参加者の多くが把握しており、予想外な解決策などが出にくくなっている、という問題もはらんでいます。また、そうした状態は日頃の生活の意識を変えるような体験になることはとても少なく、期待や予想を超えるような体験になりにくい傾向があります。そのため、今回のワークショップでは普段自分がなかなか意識しない、もしくは普段関心を抱かないような問題に対して、常識などの枠を外した状態で解決策を考えてもらい、それによって普段の生活の視点の幅を広げてもらおう、という試みでした。

photo by OpenCUCC BY 2.0

5グループに分かれていただき、基本的にどのグループも自分があまり問題意識を持っていない議題に分かれていただき、今までにない新しい解決策を見つけてください、ということでワークがスタートしました。参加者も、今回のワークの中身をこの場の直前で知り、始めは自分に興味のあるものを話すつもりでいたのか戸惑う人もいましたが、始めると意外と参加者も今まで考えたことがなかった問題に対して真剣に考えるようになってきました。もちろん、私やゲストも時折グループに参加して議論などに対するヒントやアイデアを促し、より効果的に解決策を見出す手助けをする役割をしていました。

おかげで、各グループとも思ってもみないような面白いアイデアで議論が次第に盛り上がってきました。もちろん、 今回のワークの内容が本当の意味での解決策になるかどうかはわかりませんが、普段意識しない問題を考える30分によって、日頃の生活の意識ががらっと変わってもらうことが大事だと考えています。



ワークの時間が終わり、各グループともにチームで出したアイデアをもとにした解決策について、ショートプレゼンを行なっていただきました。
・チーム名
・解決方法の名前
・キーワード
・ターゲット
・解決に必要な要素
・アクション
・達成イメージ
などの項目を埋めていただき、話し合った課題と、それに対する解決策を話していただきました。

最初はなかなかアイデアがでなかったチームも、最後の最後でアイデアを見出し、予想外の解決方法でプレゼンの時には参加者から笑いや拍手をもらうなどしていました。全グループごとに、僕やゲストの絵美さんや松浦さんも、それぞれのチームに対してアイデアの良さや解決策の切り口の面白さについてコメントをしていただきました。

多様な生き方の人たちが集まり、新しい何かを生む場を作っていく

今回のワークは、冒頭のイベントの目的でも述べたように、ボトムアップ型の社会のための1つの場のあり方だったのではと考えます。

これまでのゲストや偉い人がしゃべり、「解決方法はこうです!」と答えを決めて言うのではなく、みんなと一緒になって問題解決を考え、時には思考のフレームを外し、新しい発想でアイデアを生み出し、そこから新しいソリューションを提示しイノベーションが創発する可能性の場を導き出す。そうした場に、それぞれに活動をしている方々がファシリテーターとして議論を促し、参加者に対して思考の新しいタネを生み出すようにすること。それによって、自分が考える方法とは違った新しい解決策が出てきやすくなってきます。それをもとにさらにみんなで議論を重ねていくという、まさにこれからの時代におけるファシリテーターの役割に重要性も認識したワークショップでもありました。

多様な生き方をしている人たち同士が集い、そこから新しい”何か”を生み出す場を作っていくこと。そうした場を今後も実践していきたいと考えると同時に、ぜひ多くの人たちも、こうした場を通じて様々なアイデアのタネを生む機会を作ってもらえたらと思います。

僕個人でもよければ、全国どこでもお話やワークショップのお手伝いをさせていただければと思います。ゲストとして参加していただいたChange.orgの絵美さん、ハフィントン・ポストの松浦さんも、ありがとうございました。引き続きよろしくお願いいたします。




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