2011/08/30

NYにオープンしたチャリティ専門店「treasure and bond」と、そこから見える事業との連携について

アメリカの老舗高級百貨店「ノードストローム」が、ニューヨークにお店を出店したのだが、そのお店のコンセプトが「利益の全額を寄付」という珍しいコンセプトだったので、実際にお店に行ってみました。

「ノードストローム」は、アメリカのシアトルが本店にある西海岸系の百貨店であり、そもそもニューヨークには、「ノードストロームRack」というアウトレット商品を扱った店舗のみであり、今後東海岸への進出を見越しての展開なのだろう。

そんな今後を見据えたノードストロームに取ってみても大きな仕掛けの一つになるであろうこの店舗、「treasure&bond」という名前を冠し、”ノードストローム””という名前を一切使っていない。同系列とは違う、という路線表示の表れなのかもしれない。店舗も、SOHO地区と呼ばれる高級ブランドなどが立ち並ぶブティック通りの地域に位置し、若者や女性たちで毎日賑わっている地域への進出からも、その意識が伺えます。

treasure & bond公式サイト:http://shop.nordstrom.com/c/treasure-and-bond/

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百貨店の店舗ですが、大通り沿いに店を構える「treasure&bond」はいわゆるセレクトショップな構えをしています。8月19日にオープンしたばかりのお店なのですごくキレイでした。

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店舗には、高級品などはなく、雑貨や小物、小さな家具や洋服などを取り揃えていました。

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店の壁には、
利益の100%を子供たちのためにニューヨークの国立図書館に寄付します。と掲げてあります。寄付先はローテーションで変わるようで、まずは8月〜10月までは図書館への寄付となるそうです。
寄付先などの情報は、こちらwww.treasureandbond.com/site/non-profit-partners に公表されています。

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お店全体としてもデザイン性があり、パッと見は東京などのセレクトショップと何ら変わらないくらいの中身です。
もちろん、商品自体も、厳選されたデザインやテーマやコンセプトをもとにセレクトされており、値段も通常のものと何ら変わらないものでした。

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ひと通り見たあと、僕も、お気に入りがいくつか見つかり購入してみました。

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特に真ん中にある「Table Topics」は、130枚以上あるカードをもとに質問が書かれていて、それらをテーブルにいつ人たちで話しあうというtable conversastionグッズ。質問の内容も面白く、ワークショップなどにも使えそうですごく面白かったので即買!

隣の本二冊も、世界のクリエーターのオフィスや部屋を紹介してインタビューした海外の書籍だったり、クリエイターのスケッチ本だったりと、デザイン、クリエイティブ寄りな書籍が全体として多くて、見ててすごく楽しかった。
他にも買いたい品がたくさんあったのですが、そこはぐっとこらえて3つにしぼりました。

コンセプトもいいし、置いてある商品のセレクトもなかなかぐっとくるものが多く、NYに来たらぜひ立ち寄ってみたいお店だと思います。
「決してノーと言わない」が企業理念のノードストローム。今後の動きに注目です。
treasure & bond 公式サイト:http://shop.nordstrom.com/c/treasure-and-bond/
Treasure&Bond on Facebook page:https://www.facebook.com/treasureandbond
Treasure & Bond (Treasure_Bond) on Twitter:https://twitter.com/Treasure_Bond

日本でも可能か?
よく、日本でも「売上の〜%を寄付」とかチャリティセールとかあるけど、それってすごく一過性のもので、いっときのノリや、とりあえず買っとくか、的なノリが多くなりがちであり、恒常的な寄付や活動に結びついていないのでは、と思う。

そうではなく、コンセプトに共感し、きちんと良質な商品を展開し、満足した買い物と寄付とか連携する試みは面白いと思うし、同じ商品ならここで買っていいかな、と思う。他店舗との連携で店全体の売上をキープし続けることが可能ならば、こういったコンセプト重視のお店を展開すれば、中途半端に各店舗数%の寄付をするよりも効果的なのでは。また、それらの店舗を新規参入する地域への足がかりとして展開するところに、若者に対するメッセージや店舗としての印象付けなどを含むのだったら、利益以外のものを手に入れることは可能なのだろう。

販売してある商品の多くをwebサイトやFacebook、Twitterなどのソーシャルメディアに投稿し、商品の良さや活動の素晴らしさ、そして、おそらくチャリティの金額が集まればその金額などの好評や図書館などの情報、子供たちへの教育的アプローチなどへの展開など、事業と慈善活動とをうまく連動することが今後うまくできれば、まだまだ東海岸では知名度が低いノードストロームとしての事業展開も軌道に乗ると察する。

日本でもCSRという言葉が流布してから数年たったが、いまいち成功事例や大きな話題になっているものが少ない印象である。ともすると、寄付した、環境を意識した、だけで終わっている企業も少なくないが、これらのように事業と慈善活動とをうまく連動してこそ、だと感じた。チャリティだからといって決して手を抜かず、クオリティや事業のコンセプトなどをしっかりもち、市民や商品を買ってくれる人へのメッセージを強く打ち出すことが鍵なんだろうと思う。


2011/08/29

NYのハリケーンにおける対応から学ぶべきこと

アメリカ東海岸を襲った大型ハリケーン「アイリーン(IRENE)」が、8月27日から28日にかけて接近し、甚大な被害を及ぼしてきました。
ニューヨーク史上初の大規模な天災に対して、行政などの迅速な対応から学ぶべきものがあるとかなり感じました。

・NY市長の迅速な対応
ブルームバーグ市長公式サイト:Mike Bloomberg: MikeBloomberg.com – Home


NY市のブルームバーグ市長は、8月26日13時にNY市民に対して避難勧告を示す演説を行いました。


演説によると、27日お昼すぎには地下鉄、バスなどの公共機関すべてを停止。合わせて、避難指示と各エリアに応じ危険度合いに応じたマップを示すなどの指示をしました。

その後定期的に市長は演説を行い、住民に対して洪水などの被害の様子や避難のための指示、現在のハリケーンの様子などの公式発表を行っています。
市長のサイトには特設のページを用意し、随時情報を更新しています。
もちろん、各サイトにはFacebookやTwitterのシェアボタンもついており、情報の拡散などのソーシャル連携も全て行っており、演説の様子も公式Youtubeにすべてあがっている。
Video: Update on City Preparations for #Irene and Steps NYers Should Take Now to Prepare

・NYCのCDOによるソーシャルメディアの活用
合わせて、市長と連携してNYCにはCDO(Chief Digital Officer)のRachel Sterneが適宜Twitterで情報発信を行っている。
CDOとは、各デジタルのツールを使いNY市の行政改善のための活動や情報発受信のための役職であり、住民とのインタラクティブな関係によって行政をよりよくしていくための施策を講じる役職としてできた役職である。

就任したのは20代後半のRachel Sterneであり、市として今後の新しい時代に対する活動に適応していくために力をいれていくところに今回のハリケーンが起き、その重要性を改めて認識した。

就任時のニュース;New York’s Chief Digital Officer Seeks to Connect the City and the Public – NYTimes.com

CDOは、市長の避難指示の後に避難が必要な住民に対しての危険レベルを示した避難指示地図をTwitterで配布した。ゾーンA,B,Cに別れ、それぞれ危険度合いに応じており、資料はPDF化され誰でもダウンロード可能なものになっている。




CDO(Chief Digital Officer)による26日のTwitterの投稿。
Twitterのリンクには、避難地域住民を示した地図のPDFへのリンクが示されており、行政の公式の資料としてとてもわかりやすい地図を配布している。


避難指示マップのPDF(縮小)
www.nyc.gov/html/oem/downloads/pdf/hurricane_map_english.pdf
また、26日から27日中にかけて、NYCMeyersOffice(NY市の公式Twitterアカウント)やNYPD(NY警察のTwitterアカウント)などの連携し、避難のサポートや街の巡回、強風などによって倒れた大木などの除去などの作業にあたるなどの連携を行っている。

また、けが人や避難に遅れた人などを見つけた際には、911コール(日本で言う110が119に相当する)に電話してください、などの呼びかけを行っている。今も、随時情報を更新しており、行政や警察、消防などがすべて連携してハリケーンに対処している様子が伺える。

・メディアも即応的対応
各種大手メディアも、大規模なハリケーンに対して避難のためのサポートを行っている。

CNNはハリケーンのための情報をテレビで放送。ハリケーンのための特別番組として各地の様子などを中継している。NYTimesでは、NY市が発表した公式避難地図をもとにデータをマッシュアップ。26日夕方にアップしたサイトには、危険ゾーンの表示だけでなく、住所を入力すると自分がどのゾーンにいるかが検索できる機能を追加。

合わせて、地図上に避難センターも表示し、避難の誘導を促した。
New York City Hurricane Evacuation Zones – Interactive Map – NYTimes.com

また、リアルタイムでハリケーンの現在地と進路経路を示したトラッキングサイトも公開し、現在の状況を発信している。

Hurricane Irene Tracking Map – NYTimes.com

・4sqを使ったユーザーのマッシュアップ
また、NY市民も独自の方法でハリケーンの情報などを更新している。位置情報サービス「foursquare」には、”Hurricanepocalypse2011(Hurricane+apocalypseの造語?)”を作り、ハリケーンの様子などを写真やTipsで更新し、まさにマッシュアップによって住民同士が情報を共有しているものである。
ちなみにNYの最近のトレンドとして、リアルの建物や土地などへのチェックインではなく、こうした事象や物事などにチェックインするのが流行っているようであり、4sqの新しい活用法としても注目できるところです。
28日17時現在では、チェックインは3万を越え、500枚以上の写真やTipsが集まっている。
fouraquare-Hurricanepocalypse2011

もちろん、Twitterのハッシュタグ #NYC #IRENE などでも情報は更新されており、各自が情報を共有し合ってハリケーンの様子を発信している。

・ハリケーンの対応から見えてくるもの
今回のハリケーンでは、特に大きなものとしてNY市が初の26日時点で避難指示を行い、オバマ大統領自身も「これまでに最大規模の天災かもしれない」と表明し、避難の指示を大統領としても表明。
実際にNYに直撃するのは27日の夜中から28日の朝にかけてと予想されていたのだが、避難指示や公共機関の全面ストップ指示も26日昼時点、実際に公共機関が全停止するのは27日12時と、かなり時間的にも猶予をみた上で最大限の避難命令を行っている。

おそらく、どのくらいの被害が及ぶか予想もできないための過剰なくらいの前倒しでの対応策を講じていたと思われるが、実際にこれが想定内とし、避難指示もそこそこに時間的猶予もぎりぎりだったら、と考えると、実際に被害が起きたときにまったく意味がない。

行政は、市民の命を保護する立場として、最善の策と、常に最悪の状況を想定した上で行動しなければいけない。それらの思想に沿った考えがベースにあるからこそ、市民が行政を信頼することができる。

行政が少しでも手を抜けば、それらは政治家本人に対して向かう。なぜなら、政治家は「市民が選んだ」人であり、市民の代わりに政治を行う代理人である、という意識があるから。そういった意識のもとに、行政と市民とか良好な関係によって保たれているからこそ、被害を最小限に食い止めることができるのだと感じ、改めて行政としてのあり方を実感した。

また、合わせて避難のための資料の見やすさ、そしてそれらをPDF化してダウンロードしやすい状況にしていること、そして、それらすべてお情報を Webサイトやソーシャルメディアを通じて行うところ、また、市としてCDOを就任させているところなど、現在の東京や日本という国と比べても対応の違いに驚かされるし、学ばなければいけないところだと実感。

各自治体、市長、警察、消防、地下鉄などは、そのほとんどがFacebook、Twitter、Flickr、4sqなどをアカウントを所持し、それぞれがDigital運用のための責任者を就任させ、リアルタイムでの情報発信やアーカイブとしての活動を行っており、現場と運用指揮系統などとの連携がきちんととられている。

対応の迅速さと準備の周到さ、そしてそれらの内包する環境の整備などによってNY市内においては浸水などの被害はでたものの、そこまで大きな被害はでていないと思われます。もちろん、まだ余談も許されない状況ではあり、雨は弱まってはいるものの、強風に煽られたり、木が飛んでくるなどの危険もあるため注意が必要である。

もちろん、ニュージャージーやノースカリフォルニアなどNYに比べてもっと被害の大きなところがあり一概に喜ばれるものではないが、できうるだけの対策を行ったであろう、という点では評価できるものだと思われる。地下鉄やバスなどが通常復旧するのには時間がかかると思われ、被害の大きなところでは死亡者や停電などでており、まだまだ時間のかかる作業が多い。被害のあった地域は大変だと思うが、少しでも早い復旧を祈りたい。

また、NY市内のハリケーン直前の様子などを撮影しました。写真はCC(クリエイティブ・コモンズ)なので、自由に使用することが可能ですのでよかったら使ってください。
https://www.flickr.com/photos/eguchishintaro/sets/72157627532989920/



2011/08/21

その”SHARE”は目的か手段か。

Shake

ここ最近「シェア」系のサービスの登場とともに、シェアする文化もじょじょに浸透してきました。

まわりで「シェアハウス」をする友人も増えてきたし、本などのものを人にあげたり売買するなど、これからの時代で、新しいモノを買う時代から、シェアして、合理的にそしてお金をかけずに生活する人や環境が整いつつあると思います。

そんな今だからこそ、ちょっと立ち止まって考えてみたいことがあります。
「その”シェア”は目的なのか手段なのか」

”シェア”と一言に言っても、その内実に違いがあると思うのですが、ここでは大枠で2つに分けてみたいと思います。サービスにより、その”シェア”が生み出す結果が違うと思います。一括りにシェアとするよりももっと深く考えてみると、新しいサービスの参考になるかもしれません。

例えば、目的の場合。
シェアすることで自分が当初の目的とする結果が得られること。つまり、シェアする行為によって完遂することです。具体例だと、Zipcarなどのシェアカー系のサービス。

これは、自分自身で車を所持することでのコストよりも、シェアし、自身が使いたいときだけ利用することで、コストを抑えつつ、環境にも優しい仕組みを作る、ということです。もちろん、環境にやさしい、経済的負担の軽減という目的のための手段、とも取れなくはないですが、ここでは利用する人からすると、「便利「財布にやさしい」などのポイントが重視され、「シェアする行為」によって目的が完遂されるため、シェアしたらそこで終わり、という意味では、目的に付随するのかなと思います。

他にも、フリマ、中古本の売買、物々交換などもこれに当たると思います。シェアする行為によって、意味をなすこと。ここが大事だと思います。

つまり、シェアしたい、というユーザーが増えることにより、シェアするものの選択肢など、シェアしたことで得られる利便性や経済的メリットが増すことになると思います。

次に、手段の場合。
シェアすることによって生まれる効果やシェアすることがきっかけになり相乗効果が生まれるようなこと、だと思います。例えば最近だとシェアオフィスやCoworkingなどのシェアはそれにあたるのかなと思います。

シェアする行為自体をきっかけに、業務のやりとりや、それらを通じた意見交換やアイディア交換、フィードバックなど、そこから生まれる新しい何か、が主眼におかれていると思います。シェアし、それによって生まれるコミュニティや創造性を目的とするため、シェアする行為それ自体は手段でしかないと言えると思います。

シェアが手段となる場合、ただ単にシェアする行為それ自体で完遂する目的的行為と違い、シェアする行為によって生まれる”何か”を引き出すための働きかけが必要になります。ただ人が会ったり同じ場所に居るだけでは意味がありません。

シェアをきっかけに相手とコミュニケーションをとったり、ときに自分自身がもっている何かを相手と相互交換したりするためには、個々にコミュニケーション能力や持っている知識やスキルなどが必要になるため、個人にその結果が依存されます。

もちろん、そのために何を目的にするか、それのために自身がどう行動すればいいかを考える、という意味で、自律性が求めれれると思います。また、そのシェアを促すサービス側(プラットフォーム側)での、何かしらのオーガナイズやキュレーションが必要になってきます。

つまり、シェアすることで生まれるコミュニティに相応しくない人物や事柄に対して、ときに排他的になることでそのコミュニティとしての機能を担保する必要性もでてきます。なので、シェアする人数などが増えれば増えるほど意味があるのかと言うとそうとも言えません。

ある意味で自身が考える目的や結果のために必要な量と質との両立が求められるため、一概に数に比例するとは限らないということです。Coworkingするところに、10人程度だとみんなと会話することが可能になるけど、30人とかに増えてしまうとただの名刺を交換して終わり、ということもおこりえますからね。つまり、結果のための最適値と結果を得るにいたる個々の能力などに依存されるということです。

対してシェアが目的の場合、その行為をすることによって得られる効果やメリットが明確になっているなど、個人の能力や差異にあまり依存することなく意味をなすことが多いと思います。
それでいて、ユーザーやシェアできる環境が整うことで、よりその効果やメリットが増加していく可能性が高くなるため、シェアする人が増えることで意味をなすといえると思います。

シェアを目的的と捉えるか手段的と捉えるか。それによって得られるメリットや結果が違ってくると思います。そして、この目的と手段とを見誤ることで、齟齬が生まれてくるのだと思います。

例えばカウチサーフィン。https://www.couchsurfing.org/
このサービスは、バックパッカーなど旅をしている人を自身の家に無料で泊まらせる(バックパッカー側からだと泊まれる)ためのマッチングサービスなのですが、ここでバックパッカー側が、「タダで泊まれる」という目的のために利用してしまうと意味を成さなくなります。

このサービスの本来的な意味は、「旅をしているバックパッカー同士のコミュニケーションを図り、互いに相互補完し合う」ことをサービスの根底におき、また哲学としているサービスです。つまり、「カウチ(ソファー)で泊まる」ことをきっかけに、旅人がその宿主と出会うきっかけを作り、旅の話や自分自身の国の話、その人自身がもっている興味関心などを交換するなどのコミュニケーションし、それによって生まれる「カウチサーフィン」というコミュニティの醸成が真の目的となっています。

そのあたりは、いま旅をしている太田くんがコメントしてるので参照までに。

Togetter – 「旅好きの必須ウェブサービス、Couch Surfing(カウチサーフィン)とAirbnbの違いについて等。」http://togetter.com/li/173257

ここでは、カウチサーフィンは”共有”(シェア)をベースにおいているのと対照に、Airbnbは金銭関係による契約的関係という違いのもとに説明しています。
相手と共有し、コミュニケーションをとることを前提とすること、相手と友達になったり話をすることを目的とするならCS(カウチサーフィン)が選択肢としていいと彼は説明しています。

これらの踏まえると、自分自身がシェアすることをどう考えているか、ということを改めて考える必要があります。何をシェアするのか、シェアによって何を目的とするのか。これらを踏まえて”シェア”しなくてはいけません。

また、ちょっと蛇足ですが、シェアハウスをしている人も、この目的的と手段的とおそらく分かれる、もしくは緩やかにグラデーションしているときもあると思います。単純に金銭的に安いから、とか、家具買わなくていいから、という理由でシェアハウスを利用する人もいれば、シェアしている人同士でコミュニケーションしたり、何か特定の意識のもとに仲間を募り同じ空間を共有することが目的な人もいます。(Colishというサービスは、特定のテーマや意義をもとにメンバーを募る、という意味で手段的シェアハウスの形だと思います。)

そして、この手段的な意識の人と目的的な人がシェアハウスで同じ空間を共有したりしたら、けっこう大変なことになります。コミュニケーションとりたい人ととりたくない人が同居することほど、大変なことはないと思います。同じ「シェアハウス」と言っても、人によって「何を、どのように」意識しているか、事前の共有が必要だと思います。

同じ言葉の中にも、人によって捉え方が違うため、そのあたり意識してみるといいかもしれません。

あなたは、”SHARE”をどのように考えていますか。

2011/08/18

「コミュニティをつくりあげていくこと」LAにあるCoworkingSpace「NextSpace」に行ってきた

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アメリカに滞在して各地をまわっていた理由の一つとして、各地のワークスペースやベンチャーの人たちとお会いして、話をすることも理由の一つでした。そして、Los Angelesに行ったときに、紹介してもらったCoworkigSpaceの一つとして、NextSpaceという場所を紹介してもらいました。

http://nextspace.us/

Coworking + Innovation | The (r)evolution of Work
というテーマのもとに、
デザイナー、プログラマー、マーケティング、ベンチャーやスタートアップ、フリーランスの人たちなどが集う場所として、2009年にスタートし、現在では、
NextSpace Santa Cruz
NextSpace San Francisco
NextSpace Los Angeles
NextSpace San Jose
などの場所が存在する。

僕がお邪魔したのは、LAのNextSpaceで、オープンしたのが2011年の5月頃だったので、まさにできてまもなくというときに案内してもらいました。

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LAのNextSpaceを運営しているのは、(左)Jonathan Lane(右)Sara Vainer で、中を色々と紹介していただきました。

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スペースがあるビルの正面玄関の様子。しっかりと看板が据え置かれており、スペースはビルの二階だったのだが、きちんとわかりやすいようにしている。このあたり、ビルの中などで看板がわかりにくい、ということに対して注意を払っています。

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ここは、フロア中央の様子。机一つからスペースは利用でき、みんなそれぞれ思い思いに作業などをしていました。

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ここはワークスペース。机一つの利用ではなく、もっと広いスペースを利用することもでき、もっと奥に行くと、個人用のデスクやスペースが設けられていて、数人で使っているデザイナーやベンチャーの人たちがいた。

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ここはカンファレンスルーム。時間あたりで利用でき、スペース利用者は契約の形態によって一ヶ月に無料で利用できる時間が決まっており、それ以上利用する場合などはお金が発生する。

しかし、これくらいの大人数でルームを使うことはそこまで多くはなく、普通は個別の打ち合わせ程度なら中央のスペースや外のカフェを利用するだろう。つまり、カンファレンスルームを使うときは、きちんと時間を決めてしっかり、それでいて大人数のプロジェクトなどでの打ち合わせにぴったりだろう。なので、日本みたいにだらだらとミーティングすることもないのだろう。

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フロアの玄関に入ってすぐのところにある壁紙です。利用している人たちのプロフィールや好きなこと、趣味、自分の得意分野やみんなに提供できるもの(これは仕事だけとは限らない。ギター教えるよ、などといったものもあるので、基本なんでもいい)を掲示して、それぞれの参加者の人たちとの交流のきっかけとしている。
(まだ、スタートしてそんなに時間がたっていなかったのでカードや書き込みは少なかったが、徐々にみんなカードを作成しているので、いまはもっとあると思う)

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こちらもフロア入り口入ってすぐのところに掲げてあるイベントスケジュール。定期的にメンバー同士のイベントを開催しており、勉強会やお互いのスキルのシェアなどを行っている。

また、お固い勉強会などのイベントだけでなく、写真にあるように一番上のイベントは「ワインテイスティング」のイベントで、聞いてみると、毎週水曜はワインテイスティングな週だそうです。他にも、ちょっとした気軽にできるパーティなども定期的に開催されており、仕事の面だけでなく、コミュニティの機能としても働いている。

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NextSpaceの裏の通りでは、毎日夕方になるとファーマーズマーケットが開催されており、新鮮や野菜やフルーツジャムなどが売られ、気分転換としてちょっとうろうろしてもいいし、買ってきた食材を軽く調理して、みんなに振る舞うこともできる。もちろん、キッチンやフリーコーヒーは常備設置してあり、Jonathanに話を聞くと、コーヒーにはこだわりがあるらしいです。


LAのNextSpaceがオープンする際に作成された動画で、スペースの説明をしています。CEOのJeremy Neuner自身も動画に登場し説明をしていますが、やはり最後にコーヒーがでてきます。いい仕事にはおいしいコーヒーが大事ですよね。

動画にもでてきますが、案内をしてもらったJonathanの肩書きは
Community Curator +Co-founder
とあります。
つまり、「NextSpace@LA」というコミュニティが、ただそこに存在するだけがコミュニティではく、きちんと運営者Jonathanの意思のもとにマネージメントされており、それに基づいて場が創られている。
なので、サンフランシスコにいけばサンフランシスコのCommunity Curatorがいて、そこの運営者の色や個性によって同じNextSpaceという場所にもかかわらずまったく違う場所として存在しているのだ。

また、運営をサポートするSaraの肩書きも、Community Builderという肩書きであり、場所を創りだして、中にいる人たちへの相乗効果を促すという意味合いがこめらえている。

だから、Jonathanなりの場がここにはあり、彼自身がどうこの場所をやりとりしていきたいか、というものがそこにはあり、それにそって運営されているのだ。

これは、様々なところで主催や運営をされているスペースにとっても考えさせられるものだと思う。”このコミュニティをどうしていきたいのか”という意識を常に考え、それに沿って場所を運営し、キュレーションしていくものであり、そこには特定のメッセージや思想、意識などがあるはずだと思うし、なくてはならないものなのだ。

それなくして、Coworkingスペースというものも、ただ集まればいい、というような意識であってはならないと僕自身も考えるし、NextSpaceの話を聞いて、さらに痛感させられた。

ひと通り中を案内してもらったが、案内してくれたJonathanはとてもフランクな人で、終始会話をしていて楽しかったし、質問したことに対して事細かに教えてくれた。こういうHospitalityあふれる人によって、コミュニティがきちんと運営されていくのだろう。

NextzSpaceの利用自体は、一ヶ月単位、三ヶ月、半年などの契約で利用でき、24H/7Dayで利用できる。もちろん、ONE DAYでの利用でも可能だが、8;30−17;30のみの利用である。

また、イベントやパーティなどの多くが18時からだが、参加も強制ではなく、人によってはそれぞれ自分の家に帰って家族と団欒するなどの時間を積極的に設けており、自由でお互いの個性や生き方を尊重している。

家族や仲間を大事にしつつ、オンの時間に、充実した時間を過ごしつつ、コミュニティの仲間とときに団欒する。自由で楽しく、それでいてクリエイティブな場所なのだと思う。

もちろん、毎日ここに来る必要性もない。それではただの遠隔オフィスになるだけである。Coworkingにいる人達は仲間であり、場所であり、そこで語らうこと、議論や情報を共有することが大切なのだろう。お邪魔させていただいた時間だけだったが、楽しい時間を過ごせました。

Jonathan、Sara,ありがとう!


2011/08/16

これからの政治を語る材料としての玉音放送

8月15日は、日本においては終戦記念日です。

毎年この時期になると、戦争に関して深く考えてしまうものです。

なぜ終戦記念日であったかというと、1945年、当時の昭和天皇が戦争終結の放送、いわゆる玉音放送を全国民に対して行った日なのは、おそらく教科書などで知ってると思います。
そして、この放送によって、日本人は初めて天皇の肉声を聞くことになりました。

玉音放送。おそらくきちんと聴いたこと、読んだことがある人はそこまで多くないのかもしれない。しかし、この放送こと、これほど人々のことを思い、そして戦争を行った責任に対して、ここまで自分の声で、自分の意思で表明した人は多くないのかもしれない。

’戦争’という、もうあとにも引けない状況において、戦争の全責任を痛感し、あとにひけない物事にけじめをつけること。これこそ、ここから学ぶべきことだと思います。

もちろん、戦争を始めること自体が、天皇自身の手でないことであったとしても、最高責任者として責任をまっとうしようという意識をもっていることは素晴らしいと思います。

物事は、始めるは易し止めるは難し、という言葉を、その社会的立場と責任をもって全うするということを、今一度考えていくべきなのではないでしょうか。

この文章、この内容こと、いまの時代に政治に必要なものではないかと考え、全文を書いてみました。よければ読んでみてもらえればと思います。

先に現代語訳を書いております。後半に原文も載せてます。動画でも、当時の音声と映像を交えてありますのでそちらもどうぞ。



<現代語訳>

私(昭和天皇)は、今の戦争の状況と日本の現状を深く考えた結果、この戦争を収拾しようと思い、忠義をもった日本国民にお話します。
私は帝国政府に、アメリカ、イギリス、中国、ソビエトの四国に対し、共同宣言(ポツダム宣言)を受諾することを通告させました。
もともと日本の平和及び、世界の国々の発展を共存していくことは我が歴代の天皇先祖達の残してきた教えであり、私も大切にしているところであります。
アメリカ、イギリスと戦争を行ったのも、日本の自立および東アジア全体の平和を願うためであり、他国の主権を犯し領土を侵略するようなことは、もとより私の意志ではありませんでした。
開戦から4年がたち、我が日本軍は勇敢に戦い、我が一億の国民も身を捧げ、各々最善を尽くしたのにもかかわらず戦局は決して好転せず、また世界情勢も我々に有利にはなりませんでした。
そして敵は新たに残虐な爆弾(原子爆弾)を使用してむやみに罪なき者を殺傷し、その被害の及んだところは本当に計り知れません。
そしてなおもこのまま戦争を継続するならば、最後には日本民族の滅亡を招くのみならず、全人類の文明を破壊することになりかねません。
もしこのようなことになったら、一億もの日本国民をあずかっている私としては、歴代先祖達にどうあやまればいいのでしょう。このことが、私が政府より共同宣言を応じるに至った理由です。
私は日本帝国と共に、終始東アジアの解放に協力してきた諸国に対し大変申し訳ないと感じずにはいられない。
戦地で死に、あるいは殉職したものやその遺族のことを思うと身が張り裂けそうな思いです。
また、戦争でケガをしたり、家、仕事を失った者の保証については私の心を深く痛め、心配しているところです。
思うに、今後日本の受けるであろう苦難は大変なものであり、日本国民の口惜しい気持ちは私にもよくわかります。
しかし、私は時代の流れに従い、堪え難きを堪えて、忍び難きを忍び、このようにして今後の永遠の平和をもたらしたいと思います。
私は、我が日本という国を守ることができ、私に忠実であったあなた達の真心を信頼し、常にあなた達と共にありました。
しかし、感情にかられて、みだりに事を荒立てたり国民同士が争い、互いに時局を乱して、それによって人の守るべき道を誤り、世界の信用を失うことは私が最も戒めるところです。
これらを我が国の子孫に伝えていき、日本は不滅であると信じ、今後の道のりは重く遠いけれど、全員の力で日本の将来の再建に傾け、道義を守り、固い信念を持ち、我が国のよいところをさらに発展させ、世界の流れに遅れようにしていきましょう。
わが日本国民よ、この私の言葉をよく心にとどめて行動してください。

<原文>
朕深ク世界ノ大勢ト帝国ノ現状トニ鑑ミ非常ノ措置ヲ以テ時局ヲ収拾セムト欲シ茲ニ忠良ナル爾臣民ニ告ク
朕ハ帝国政府ヲシテ米英支蘇四国ニ対シ其ノ共同宣言ヲ受諾スル旨通告セシメタリ
抑々帝国臣民ノ康寧ヲ図リ万邦共栄ノ楽ヲ偕ニスルハ皇祖皇宗ノ遺範ニシテ朕ノ拳々措カサル所
曩ニ米英二国ニ宣戦セル所以モ亦実ニ帝国ノ自存ト東亜ノ安定トヲ庶幾スルニ出テ他国ノ主権ヲ排シ領土ヲ侵スカ如キハ固ヨリ朕カ志ニアラス
然ルニ交戦已ニ四歳ヲ閲シ朕カ陸海将兵ノ勇戦朕カ百僚有司ノ励精朕カ一億衆庶ノ奉公各々最善ヲ尽セルニ拘ラス戦局必スシモ好転セス世界ノ大勢亦我ニ利アラス
加之敵ハ新ニ残虐ナル爆弾ヲ使用シテ頻ニ無辜ヲ殺傷シ惨害ノ及フ所真ニ測ルヘカラサルニ至ル
而モ尚交戦ヲ継続セムカ終ニ我カ民族ノ滅亡ヲ招来スルノミナラス延テ人類ノ文明ヲモ破却スヘシ
斯ノ如クムハ朕何ヲ以テカ億兆ノ赤子ヲ保シ皇祖皇宗ノ神霊ニ謝セムヤ是レ朕カ帝国政府ヲシテ共同宣言ニ応セシムルニ至レル所以ナリ
朕ハ帝国ト共ニ終始東亜ノ解放ニ協力セル諸盟邦ニ対シ遺憾ノ意ヲ表セサルヲ得ス帝国臣民ニシテ戦陣ニ死シ職域ニ殉シ非命ニ斃レタル者及其ノ遺族ニ想ヲ致セハ五内為ニ裂ク
且戦傷ヲ負ヒ災禍ヲ蒙リ家業ヲ失ヒタル者ノ厚生ニ至リテハ朕ノ深ク軫念スル所ナリ
惟フニ今後帝国ノ受クヘキ苦難ハ固ヨリ尋常ニアラス
爾臣民ノ衷情モ朕善ク之ヲ知ル
然レトモ朕ハ時運ノ趨ク所堪ヘ難キヲ堪ヘ忍ヒ難キヲ忍ヒ以テ万世ノ為ニ太平ヲ開カムト欲ス
朕ハ茲ニ国体ヲ護持シ得テ忠良ナル爾臣民ノ赤誠ニ信倚シ常ニ爾臣民ト共ニ在リ
若シ夫レ情ノ激スル所濫ニ事端ヲ滋クシ或ハ同胞排擠互ニ時局ヲ乱リ為ニ大道ヲ誤リ信義ヲ世界ニ失フカ如キハ朕最モ之ヲ戒ム
宜シク挙国一家子孫相伝ヘ確ク神州ノ不滅ヲ信シ任重クシテ道遠キヲ念ヒ総力ヲ将来ノ建設ニ傾ケ道義ヲ篤クシ志操ヲ鞏クシ誓テ国体ノ精華ヲ発揚シ世界ノ進運ニ後レサラムコトヲ期スヘシ爾臣民其レ克ク朕カ意ヲ体セヨ

2011/08/01

「独裁者」チャップリンの演説から、もう一度世の中について考えてみる



1940年10月15日にアメリカ合衆国で初公開され、未だに伝説になっている映画「独裁者」のラストの名シーン。この動画を見るたびに、社会について考えさせられます。

いまの日本や世界の情勢に対して、はたして僕達は考えているのだろうか。

昔よりも今のほうが良い社会だと胸をはって言えるのだろうか。

1940年当時、まだまだサイレント映画とトーキー映画(映像に音声を重ねた、いまの映画の原型)とが入り乱れている時代。

今の時代に比べて、映像表現や映像技術が発達していなかった時代。それでも、この映像から伝わっているものは、当時の時代を反映し、社会情勢を批判するメディアとして、ここまで確立したものはないと思うと同時に、まさにいまの時代でさえも当てはまる普遍なのだと思う。

当時の権力者を批判することがどれだけ大きなことか。そしてそれを笑いと言葉で痛切に批判していることが、はたして今の時代の私たちが行えていることだろうか。はたして、ここで述べれている言葉を、私たちも、考え、表現できるのだろうか。今一度考えてみようと思う。

動画とは別に、セリフと翻訳をまとめた文章を以下に記載しておきます。

I’m sorry, but I don’t want to be an emperor. That’s not my business. I don’t want to rule or conquer anyone. I should like to help everyone if possible – Jew, Gentile – black man – white.

申し訳ないが、私は皇帝などなりたくない。それは私のやりたいことではない。誰に対しても支配や征服などしたくない。ただ、できれば皆を助けたいのだ。ユダヤ人、キリスト教徒、黒人や白人の皆を。

We all want to help one another. Human beings are like that. We want to live by each other’s happiness – not by each other’s misery. We don’t want to hate and despise one another. In this world there’s room for everyone and the good earth is rich and can provide for everyone.

私たちは皆、お互い助けたいと思っている。人間とはそういうものだ。他人の不幸ではなく、お互いの幸せで生きたい。私たちはお互い憎みあったり、軽蔑したりなんかしたくない。この世界には一人一人場所がある。大地は豊かで、皆に恵みを与えてくれるものだ。

The way of life can be free and beautiful, but we have lost the way. Greed has poisoned men’s souls – has barricaded the world with hate – has goose-stepped us into misery and bloodshed. We have developed speed, but we have shut ourselves in.

人は美しく自由に生きられるはずなのに、私たちは道を失ってしまった。貪欲が人の魂を毒し、憎しみをこめて世界をバリケードで封鎖してしまったのだ。貪欲が私たちを悲劇と殺戮へと軍隊歩調で追いやったのだ。私たち人間はスピードを開発してきたが、自分自身を閉じ込める結果となってしまった。

Machinery that gives abundance has left us in want. Our knowledge has made us cynical; our cleverness, hard and unkind. We think too much and feel too little. More than machinery we need humanity. More than cleverness, we need kindness and gentleness. Without these qualities, life will be violent and all will be lost.

富を生み出すはずの機械が、私たちをどんどん貧乏にしてきた。知識は私たちを皮肉屋にした。知恵は私たちを非情で冷酷にした。私たちは考えてばかりで、感じることが出来なくなってしまった。機械が増えれば増えるほど、私たちには人類愛がより必要なのだ。知識が増えれば増えるほど、優しさや思いやりが必要なのだ。そうでなければ、人生は暴力で満ち、すべてを失ってしまう。

The aeroplane and the radio have brought us closer together. The very nature of these inventions cries out for the goodness in man – cries for universal brotherhood – for the unity of us all. Even now my voice is reaching millions throughout the world – millions of despairing men, women, and little children – victims of a system that makes men torture and imprison innocent people.

飛行機やラジオのおかげで、私たちはお互いの距離を縮めることができるようになった。こういった発明品の本質は、人間の良心や、国境を越えた兄弟愛や、私たちが団結することを強く訴えかけることにある。今でさえも、私の声は世界中の何百万人もの人々のもとに届いている。絶望している男女や子供たちのもとに。罪のない人たちを拷問し投獄する組織の犠牲者のもとに。

To those who can hear me, I say: ‘Do not despair.’ The misery that is now upon us is but the passing of greed – the bitterness of men who fear the way of human progress. The hate of men will pass, and dictators die, and the power they took from the people will return to the people. And so long as men die, liberty will never perish.

いま、私の声が届いている人達に言おう。「絶望してはいけない」と。いま私たちの上に覆いかぶさっている不幸というのは、貪欲がただ通過しているだけにすぎない。人間の進歩を恐れている人たちの敵意にすぎないのだ。憎しみは消え去り、独裁者たちは死に絶えるだろう。民衆から奪いとった権力は、また民衆のもとに戻るだろう。人間は永遠に生きることはできないのだから、自由は決して滅びることはないのだ。

Soldiers! Don’t give yourselves to brutes – men who despise you and enslave you – who regiment your lives – tell you what to do – what to think and what to feel! Who drill you – diet you – treat you like cattle, use you as cannon fodder.

兵士たちよ!獣に身をまかせてはいけない!奴らは、君たちを軽蔑し、奴隷にし、生活を管理する。君たちが何をすべきか口を出してくる。考え方や感情にまで指図する!思想を叩きこみ、決められた食事を与え、家畜のように君たちを扱い、砲弾の餌食として使うだけだ。

Don’t give yourselves to these unnatural men – machine men with machine minds and machine hearts! You are not machines! You are not cattle! You are men! You have the love of humanity in your hearts. You don’t hate, only the unloved hate – the unloved and the unnatural!

こんな自然に反する人間たちに身をあずけてはいけない!こんな機械の頭と機械の心を持った機械人間に!君たちは機械じゃない!君たちは家畜じゃない!君たちは人間なのだ!君たちは心に人類愛を持った人間だ。憎んではいけない。愛を知らない者だけが憎むのだ。

Soldiers! Don’t fight for slavery! Fight for liberty! In the seventeenth chapter of St Luke, it is written the kingdom of God is within man not one man nor a group of men, but in all men! In you! You, the people, have the power – the power to create machines. The power to create happiness!

兵士よ!奴隷になるために闘うな!自由のために闘え!『ルカによる福音書』の17章に、「神の国はあなたがたの中にある」と書かれている。神の国は一人の人間や特定の人たちの中にあるのではない。一人一人、君たちのなかにあるのだ。君たち民衆は力を持っているのだ。機械を作り、幸せを生み出す力が!

You, the people, have the power to make this life free and beautiful – to make this life a wonderful adventure. Then in the name of democracy – let us use that power – let us all unite. Let us fight for a new world – a decent world that will give men a chance to work – that will give youth a future and old age a security.

君たちには力がある。人生を自由で美しくする力が!人生を素晴らしい冒険にする力が!だから、民主主義の名のもとに、この力を使おうではないか!みんなで団結しよう!新しい世界のために闘おう!皆に雇用の機会を与えよう。若者に未来を与え、老人に保障を与えよう。そんなまともな世界のために闘おう!

By the promise of these things, brutes have risen to power. But they lie! They do not fulfil that promise. They never will! Dictators free themselves but they enslave the people. Now let us fight to fulfil that promise!

獣たちもこういった公約をかかげて権力を手にしたのだ。だが、嘘だった。奴らは公約を守らなかった。これからも実現させることはない!独裁者たちは自分だけを自由にし、民衆を奴隷にしたのだ。さあ、この約束を実現させるために闘おうではないか!

Let us fight to free the world – to do away with national barriers – to do away with greed, with hate and intolerance. Let us fight for a world of reason – a world where science and progress will lead to all men’s happiness. Soldiers, in the name of democracy, let us unite!

闘おう、世界を解放するために。国境を取り除くために。貪欲と憎しみと不寛容をなくすために。闘おう、分別ある世界のために。科学と進歩がすべての人たちの幸福へと導くような世界のために。兵士たちよ!民主主義の名のもとに、団結しよう!

Hannah, can you hear me? Wherever you are, look up Hannah. The clouds are lifting! The sun is breaking through! We are coming out of the darkness into the light. We are coming into a new world – a kindlier world, where men will rise above their hate, their greed and their brutality. Look up, Hannah!

ハンナ、聴こえるかい?君がどこへいようと、ほら見上げてごらん、ハンナ。雲が消えて、太陽の光が差し込んできただろう?僕たちは暗闇から抜け出て、光のなかへいくんだ。新しい世界に。心やさしい世界に。憎しみも強欲も残忍もないそんな世界に。だから見上げてごらん、ハンナ。

The soul of man has been given wings and at last he is beginning to fly. He is flying into the rainbow – into the light of hope, into the future, the glorious future that belongs to you, to me, and to all of us. Look up, Hannah… look up!

人間の魂には翼が与えられていたんだ。そしてついに人間は飛び始めたんだよ。虹に向かって。希望のに向かって。未来に向かって。輝かしい未来に向かって。君や僕、みんながそこで暮らすんだ。だから見上げてごらん、ハンナ、見上げてごらんよ。


参考
高校英語教科書レビュー : Lesson 20 チャップリンの演説~『チャップリンの独裁者』より~
http://blog.livedoor.jp/eigokyoukashoreview/archives/51770153.html

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