2014/11/26

雑誌『WIRED』 vol.14にて、企画・編集・執筆を担当しました

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コントリビューティングエディターとして企画や編集をしている雑誌『WIRED』。11月25日発売のvol.14 では、STARTというコーナーで、イスラエルでなぜイノベーションが起きるのかを、さまざまな視点から切り取った8Pの特集を担当しました。

他にも、WIRED Conference 2014に関連した記事、10月下旬にオーストリアで開催されたRed Bull Air Raceの取材で、オーストラリアのザルツブルグに行き、生でAir Raceを観戦してきました。

Red Bull Air Raceは、2015年5月に日本・千葉で初開催されるので、日本人パイロットの室屋さんの活躍にも期待したいところです。





2014/11/19

GLOCOMが出版している『智場#119特集号オープンデータ』特集記事の構成執筆を担当しました

特集のインタビュー原稿の執筆を担当した、GLOCOMの「智場」が出版されました。特集では国立社会保障・人口問題研究所の森田朗さんと庄司さんとインタビュー。オープンデータ、オープンガバメントの話から、情報技術と社会の関係について、多岐にわかる内容になりました。


国際大学GLOCOMが定期的に発行している機関誌の『智場』。毎号テーマを変えながら、研究者らによる国際情勢や経済効果といった社会動向についてまとめている書籍です。その特集記事として、国立社会保障・人口問題研究所所長の森田朗氏へのインタビュー原稿(インタビューワは国際大学GLOCOM主任研究員の庄司昌彦氏)の構成執筆を担当しました。今回、テーマがオープンデータということで普段の活動に通じる内容をきちんとインタビューを通じてまとめることができる良い機会だったと考えています。内容も、医療や社会保障制度、さらには人口減少問題に対してどう取り組むか、また日本のオープンデータとオープンガバメントにおける現状とこれからについてなど、多岐にわたる話題についてお話いただきました。インタビュー、ありがとうございました。

お話では、森田氏とは以前に私も企画をお手伝いし、森田氏も有識者メンバーとして参加されていた「国・行政のあり方に関する懇談会」の取り組みなども事例として紹介をいただきました。会議の内容を外に発信するだけでなく、会議のメンバー同士が有機的にコミュニケーションを行うためのデジタルツールの活用は、会議の回を増すごとにブラッシュアップされていっていました。この取り組みは、東海大学の富田誠氏らと一緒にやっていた(富田氏による会議の際に取り組んだグラフィックレコードの事例に関するインタビューはこちら)のですが、どこかのタイミングでこの取り組みも書籍なりできちんとまとめないといけないな、と考えています。

2010年代のこれからの考える上で、日本のオープンガバメントの今とこれからをまとめたい

普段からOpen Knowkedge JapanCode for Japanの企画ディレクションや広報PRまわり、コピーライティングやらワークショップなどに携わっており、オープンデータやオープンガバメントを推進するための活動している身として、こうして研究者や実践者、デザイナーや経営者らと一緒に市民社会のあり方を考える取り組みをしっかりと外に発信する機会は意外と少ないのが現状です。

日本政府が電子行政オープンデータ実務者会議などを踏まえてCIOを設置したり、昨年には『日本最先端IT国家創造宣言』を行い、積極的にオープンデータやオープンガバメントを推進しようとする動きは見せてきています。企業や民間団体も、OKJやCode for Japanが動き出すなど、さまざまな活動が全国で活発化してきています。

アメリカでは、オバマ政権が誕生した2009年以降、積極的なデジタル施策やオープンガバメント施策を行ってきました。日本もそれを見ながら独自な動きを見せ始めようとしており、じょじょに成果も出始めています。しかし、そうした取り組みをまとめる機会が少ないすごくもったいないと感じています。

ネット選挙解禁の活動を行っていた2012年2013年、そしてネット選挙が解禁されたあとの7月の参議院選挙や2014年の2月には都知事選を経て、もはや当たり前にようにネットを使った選挙活動となってきました。その次は、選挙活動のみならず、普段の活動やネットもオフラインも含めて、よりオープンな政治、オープンな行政活動、その先にある創発的な市民社会を作るための動きを起こすことが必要だと感じます。OKJの活動や全国の草の根で活動しているさまざまな団体へのインタビュー、Code for Japanの取り組みや浪江町での先進的な取り組みは、今後の日本社会のおいても大きな意味をもつものだと思っています。

日本におけるオープンデータの推進とオープンガバメントの未来についてどう向き合い、どう行動していくか。それに対して市民側ができること、企業や民間団体ができること、そして政治や行政の側としてすべきことを、しっかりとまとめ、2010年台の後半への展望や提案をできるような書籍かなにかを、執筆できたらと最近ふつふつと考えている今日このごろです。






お金ってなんだろう、を気づかせてくれるクラウドファンディングというサービス

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スタートアップやテックなど起業に関する情報を発信しているTHE BRIDE。編集として携わっており、企画としてクラウドファンディングに関する情報をまとめていました。そのひとつに、クラウドファンディング法案(ネット経由で小口投資を募ることができるようにする金融法改正)について取材などをしていました。

それにあわせて、クラウドファンディングに関して体系的にまとめたり、クラウドファンディング法案成立後にどういった動きが起きるのかなどについて、クラウドバンクの大前さんに取材を行いながら、大前さんとやりとりをしながら寄稿していただき、編集していく、ということを行ってきました。

クラウドファンディングの歴史と日本のポテンシャルについて【ゲスト寄稿】 - THE BRIDGE(ザ・ブリッジ)
「2014年はクラウドファンディング元年」:多様化するクラウドファンディングと市場の動き【ゲスト寄稿】 - THE BRIDGE(ザ・ブリッジ)
株式型クラウドファンディングを通じて、企業とユーザの関係が再構築される【ゲスト寄稿】 - THE BRIDGE(ザ・ブリッジ)
クラウドファンディングが仕掛ける「金融の民主化」:個人を力づける新しい資金調達と資金活用のカタチ【ゲスト寄稿】 - THE BRIDGE(ザ・ブリッジ)

全4回、すべて足すと3万字くらいの内容をもとに、クラウドファンディングについての基本的な内容や融資型の海外事例、株式型クラウドファンディングや法案成立後の未来についてまとめていただきました。こうした一連の企画がきっかけで、大前さんが先日書籍『クラウドファンディングではじめる1万円投資』を出版したというご連絡をいただき、書籍をご恵投いただくこととなりました。

あとがきでは、嬉しいことに書籍のきっかけについてご紹介いただきました。

「本書では、私がこれまで行った講演や寄稿などが土台となっています。特にブログメディア『The Bridge』の平野武士さんと江口晋太郎さんには、今回クラウドファンディングについて包括的にまとめる機会をいただいたことが本書執筆の土台となっていることを考えると、生みの親みたいなものです。」(P188)

THE BRIDGEとしてご提案させていただいたことで、こうして書籍化につながったということで、企画提案をさせていただいた身としても大変嬉しく思っています。もちろん、今後もクラウドファンディングに関する情報や、法案についてなども追いかけていければと思います。

同時に、私もクラウドファンディングについて包括的にまとめることで仕組みとしてのクラウドファンディングと、大前さんとも話をしてまさにでてきた「金融の民主化」というところに改めて気付きを得ることができました。普段、何気なく使っているお金も、その値段が付いている商品の後ろには、流通や製造にさまざまな人が関わり、そして製品ができているということに、なかなか知る機会がありません。しかし、お金というのも交換のひとつの手段。それをどう活用するか、もっとお金について能動的に考えるべきだと実感します。

自分が共感した商品や応援したいと思うプロジェクトの製品を買ったり、自分が支払ったお金が何にどう使われているのか、というお金のトレーサビリティといった考えも近年ではでてきています。マイクロファンディングのKivaなどもまさにそういった活動といえます。クラウドファンディングも、まさにそうした個人のお金が何にどう使われているのかを知るひとつの機会として捉えることもできます。もちろん、プロジェクトを掲載する人にとってみれば、資金を調達する手段としてクラウドファンディングを捉えることができますが、お金を支払う側の意識も同時にあることにも気付かされます。

資金を調達し、プロジェクトを推進しようと思うプロジェクトオーナーも、ただクラウドファンディングのサイトに掲載すればお金が集まるわけではなく、そのプロジェクトにかける思いをきちんと整理し、それを映像や言語に落としこむことが必要です。さらに、随時情報を更新してプロジェクトに関しての情報を発信して透明性を高めることも必要です。そうした小さな取り組みや丁寧なコミュニケーションを通じて、自身のファンやサポーターを増やすことができるのです。それって、かなりの手間がかかるし、正直いえばコミュニケーションコストはかなりのものです。さらに、リターンも魅力的でなければなりません。もちろん、マーケティング的視点で、製品づくりのプロジェクトを掲載するということもあるし、ほかにもプロジェクトに関しての何かしたらの記念や限定イベントなどなど、ファンを増やすための施策も必要です。

そうした意味で、クラウドファンディングは単純にお金を集めるだけのことを考えると割にあわないかもしれません。しかし、そうした賛同が可視化され、みんなの応援が見えることで、より責任がましたり、プロジェクトをまわしながら自分自身を奮い立たせるような機能も兼ね備えてています。そのコミュニケーションのひとつのきっかけに、お金という交換ツールがあると考えると、お金の使い方もまた新しい視点が生まれてくるかもしれません。

お金は、ただそこにあるだけでは意味がありません。それをどう使うか、◯◯円という数字的なものではなく、その実数としての数字の裏にある、目に見えない価値をどう作り出すか、それは、お金には変えられないものでもあります。改めて、お金ってなんだろう、ということを問いなおすひとつのきっかけとして、クラウドファンディングを見つめるのもいいかもしれません。



2014/09/22

札幌国際芸術祭に行って感じた、都市の歴史とメタ的コミュニティのあり方

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先日、出張で札幌に行く用があり、ついでに現在開催中の札幌国際芸術祭2014もみてまわりました。

札幌国際芸術祭は、札幌初の国際的なアートフェスティバルとして、が7月19日(土)から9月28日(日)まで、開催されています。開催テーマは「都市と自然」。都市と自然の共生を考えるもので、札幌市内各所でプロジェクトなどが展開。札幌全体がこうして芸術祭の舞台のなるのは、札幌の歴史としては始めてのもので、行政もサポートしながら第一回目を大成功に導こうと取り組んでいます。

主な会場はm北海道立近代美術館や札幌芸術の森美術館、札幌駅前の地下歩行空間(チ・カ・ホ)やモエレ沼公園など、さまざまな場所で行われており、一日で回るのも結構大変なくらいの、作品数とそれぞれの開催場所の点在さが、逆に札幌市内の山や都市部をじっくり見て回る良い機会にもなりそうです。


札幌国際芸術祭の会場の、北海道立近代美術館へ。

札幌国際芸術祭の会場の一つである北海道立近代美術館は、札幌の中心部から西に少し移動した場所にあり、大通り公園から15分ほど歩いたところにあり、市内を散策しながら行くことをオススメします。展示では、

坂本龍一さん+YCAM InterLabによる「フォレスト・シンフォニー」。こちらは坂本さんと真鍋大度さんによる電磁波を可視化するインスタレーション #札幌国際芸術祭

札幌市内から北上したところにあるモエレ沼公園。そこにあるガラスのピラミッド内に展示してある坂本龍一氏と真鍋大度氏による共作。チ・カ・ホでセンシングした電波データを可視化・可聴化した作品で、手元にあるスイッチに周波数と表示されるグラフィックをいじることができます。無限に広がる電磁波とパターンを変えたグラフィックを見ていると、時間を忘れてしまいそうになります。



同じく、センシングによる作品として、札幌駅前の地下歩行空間(チ・カ・ホ)には菅野創+yang02によるドローイングモジュールもあり、地下を行き交う人の数を計測しながら絵を描き続けるという作品がありました。こちらも、札幌駅についてすぐに見ることができる作品です。

竹村真一さんの「触れる地球」で、地球規模の空と大地の動きを実感した #札幌国際芸術祭

また、ガラスのピラミッド内には竹村真一氏による「触れる地球」なども展示されています。地球を感じつつ、空と海と大地といった自然と都市のあり方を感じる札幌国際芸術祭ならではな展示と言えます。

モエレ沼公園で、大地の偉大さを感じた。

札幌国際芸術祭の舞台としてなっているモエレ沼公園は、彫刻家のイサムノグチ氏による遺作としても知られています。「地球を掘りたい」という考えのもと、広大なゴミ埋立地を自然公園にする壮大な計画をもとに、1979年から始まったプロジェクトは、プロジェクト中にノグチ氏が亡くなるもその意志を継いだ人たちによって2004年に完成した、という歴史があります。北海道ならでは、そして人と自然のあり方を考えさせられる作品であり、人々がくつろぐ憩いの場として、愛されています。


モエレ沼公園の様子も、動画のハイパーラプスで撮影していました。広大な土地は、まさに「北海道はでっかいどう」と言いたくなります。


大自然をバックに中谷芙二子さんの FOGSCAPE #47412 #札幌国際芸術祭

今度は札幌市内から南に移動した札幌芸術の森美術館。近代美術館と芸術の森美術館では、自然をテーマにしたさまざまな展示があります。そして、芸術の森美術館では、一時間に一回、中谷芙二子さんの FOGSCAPE #47412を見ることができます。霧をテーマにした作品は、霧という自然現象を、改めて見つめる機会になります。

他にも、今回札幌としても始めての芸術祭ということで、この機会に各地でさまざまな催しや企画が行われていますので、ぜひ足を運んでみるといいかもしれません。あと、札幌国際芸術祭をうまく回る方法として、友人の編集者である塚田有那がCBC.NETで「まだ間に合う!札幌国際芸術祭2014を3倍楽しむ旅案内」という記事を書いていますので、そちらを参考にしてもらえればと思います。

各地の美術館や展示会場は、距離もそこそこあり、見て回るコースなどもある程度事前に考えておくといいかもです。公共交通機関や無料バスなど、さまざまな手段があるので、それらを駆使して満喫することをオススメします。

都市の歴史、そこに住む人たちの意識とまちのありかた
実は、札幌に来たのは高校時代に修学旅行で来た以来なので、約12年ぶり?くらい。ほとんど初といっても過言ではありません。

そんなことで、札幌市内を見て回ってやはり気になったのは、都市がどう成長し、そこに住む人がそういう生活や意識を持っているのか、今回の芸術祭に対してどういった意識を持っているのか、といったものでした。実際に、札幌国際芸術祭に携わっているスタッフや、お会いした方々、取材した人たちなどに、札幌の印象や状況などを伺ってみました。

札幌は、かつてアイヌの人たちが住んでいた土地で、そこに明治時代に置かれた北海道開拓使らにとり、屯田兵などで都市づくりを行っていったという歴史があり、つまりは行政によるトップダウン型の都市づくりによって成長してきたといえます。そうした都市計画であったため、都市の区画もきれいな碁盤の目となっており、京都のような雰囲気や、アメリカのNYのマンハッタンに近い雰囲気を醸し出しています。

そのため、近代に入り急速な都市の発展とともにつくれれてきたという意味で、100年弱ほどしか都市の歴史をもたない、モダンであると同時に人が生きた空気や跡といったものが感じられにくい、ということも言えるのかもしれません。あまりにキレイに整備された都市、豪雪地帯でもあり、街にはホームレスなどの存在も少なく、行き交う人達も情報感度もそれなりにありハイソな匂いがある。しかし、そのまっしろさと純白さがありすぎるがゆえに、どこか物足りなさを感じなくもありません。

NYであれば、民族や人種の多様性などがあるのかもしれませんが、札幌ではもはやアイヌの人たち、という存在も次第に薄まっている状況。いわゆる「日本人」というくくりの中で、札幌にいる人達は住んでいます。また、住み着いている人たちも自発的に渡り歩いた、というよりも国策によって連れられた人が多く、目的別のコミュニティで分断された状態で過ごしてきた人たちが多いのです。そのため、札幌市民をつなぐ横串のコミュニティや、共通認識を持った文化や取り組み、時には多様な人達が集まるカフェやスペース、コミュニティ、といったものが少なく、もともと細分化されたコミュニティを通じて生活をしてきたという歴史なのかもしれません。

また、北海道といえば農業や酪農が盛んですが、そうした農業や酪農を感じる場が、札幌市内にはあまりなく、例えば都内などであるファーマーズマーケットなどといった取り組みも札幌ではあまり見受けられません。農業地域と都市部とが、まさに分断されている、と言えるかもしれません。そのため、それぞれのコミュニティ同士による交流も多くはなく、もともと広い土地でもある北海道において、それぞれの北海道のイメージがあり、それぞれを強固につなぐアイデンティティをもつことが、なかなか難しいのかもしれません。

あわせて、広い土地と農業の発展は高い自給率を作り上げており、都市全体としても保守的な動きにならざるをえません。政治の面において、北海道全体として保守が強いのも、そうした一次産業の強さから言えるかもしれません。しかし、急速な都市と経済の発展、綿密に計画されたトップダウン型の都市デザインは、卸や流通などの業界は発展するも、もともとその地域に根づき取り組んでいた町工場などの工業地域を作るには、あまりに短い時間だったと言えます。そのため、工業地域の少なさが、やはり北海道全域でも見受けられます。

それぞれに細かなコミュニティがあるが、急速な都市と経済の発展、綿密に計画されたトップダウン型の都市デザインによって、人々をつなぐメタ的なものの不足、ハード先行によるソフトの少なさ、という歴史が文化を醸成してきた地域だからこそ、札幌に住む人達のアイデンティティ、札幌に対する外からのイメージの良さの反面、ソフトに対する弱さや住んでいる人たちのおとなしい正確さ、積極的に外に出る必要性を感じない肥沃な土地のもとに、これまで過ごすことができた、という歴史があると言えます。

けれども、日本全体としては高齢化、少子化の問題が待ち構えていますが、まさに北海道、札幌もその痛手を大きく受ける地域でもあります。農業分野においては、後継者問題は深刻な問題であり、これ以上保守的に居続けることには、もはや限界があります。JA自体の改革や、農家によるIT化など、さまざまな取り組みを行う必要があり、農家自体の負担を増やすのではなく、それをバックアップする国や民間企業の取り組みが急務となってきます。これまで一次産業、農業が安泰だった、というある種の神話によって成り立ってきた札幌や北海道は、その神話が崩れ始めているという目下の課題をどうにかしなければいけない現状になっているのです。

そうした意味で、今回始めて芸術祭を開催したことは、市民全体を横串につなぐコミュニティであり、またアートという都市や人の生活の余白や余剰、新しい意識を作り出すものとして、大きな意味を持つといえます。今回の芸術祭をきっかけに、さまざまなコミュニティが協力し、互いに札幌のあるべき姿、札幌としての未来を考える一つのきっかけになっているのだと感じました。今回の芸術祭を踏まえて、もうすでに第二回目をどうするか、という動きもでているとか。動員数も、目標である30万人を超えるということで、道外からのお客さんもそうですが、道内、札幌市内に住んでいる人たちが、今回の芸術祭に足を踏み入れ、そこで感じた何かが、次につながっていくといいなと思います。

まさに、9月27日にマチノコトが企画する横浜トリエンナーレのツアー企画も、横浜という都市の課題と、トリエンナーレによって生み出されたもの、これからの都市のあり方をどう見つめていくか、ということを考えるきっかけになるのではないでしょうか。

アートプロジェクトだけではなく、都市のあり方、都市デザインをどう見据えていくか、ということは、札幌だけに限らず全国の都市にいえることです。そして、それぞれの都市には、それぞれの歴史や持っている文化、リソース、人の意識などさまざまです。だからこそ、その地域がもつ課題、その地域にいる人たちの意識をきちんと汲み取りつつ、新しい施策を考え続けることに意味があるのでないでしょうか。そこに、アーティストやクリエーター、アントレプレナー、政治家、行政、メディアの人たちといった、さまざまな人たちが協力していくことに意味があるのではないでしょうか。









2014/08/31

英国イノベーションの歴史から、日本の次のイノベーションの道を探る

色んなところでクリエイティブやイノベーションが謳われているものの、そうしたものは突然の思いつきやひらめきで生まれるのではなく、自分自身の見聞や経験といった過去の蓄積や社会がもつ歴史と密接に関わっていることは往々にしてあります。すでにあるもの、過去にあったものを違う視点に置き換えたり、現在のニーズやウォンツを研究してくる中で、そこに新しい視点やアイデアを持ち込むことによって生まれてきたりします。

天才的な大発明よりも、そうした積み重ねられたコンテクストを理解したり、視点を替えたり、あえて破ったりしている、ということが重要だったりします。歴史や伝統といった視点からみると、日本はアメリカよりもイギリスのイノベーションの歴史を調べたほうがいいのでは、ということで、仕事の関係もあってイギリスのことについて最近調べてみたら、面白い取り組みがなされていました。

Great British Innovation Vote http://www.topbritishinnovations.org/ という、2013年3月に行われたキャンペーンで、過去100年間でイギリス発祥で起きたイノベーションに対して、あなたが好きなもの、重要なものを投票する、というキャンペーンが行われ、その結果発表がリストアップされていました。中をみると、イギリス発祥、イギリス生まれなイノベーションの事例が、実は自分が知らなかっただけでかなりのものがあり、しかも色んな物事の基盤や基礎を作ったものが多い印象を受けました。

せっかくなので、いくつかリストアップしてみたいと思います。まずは、上位入賞のものから。

1位:Universal Machine
(発明者)アラン・チューリング - Wikipedia http://goo.gl/anUw8
チューリングマシンで「アルゴリズム」と「計算」の概念を定式化し、計算機科学の発展に大きな影響を及ぼし、コンピュータの誕生に重要な役割を果たした。

2位:Mini(BMC) http://goo.gl/nUPm
イギリスブリティッシュモーターコーポレーションが生んだ大衆車。自動車としての必要最小限を形にした設計は、登場当時(1959年)革命的とまで言われた。

3位:X-ray crystallography technique 
(発明者)ローレンス・ブラッグ - Wikipedia http://goo.gl/6X0Hmw
X線結晶学。物理学者。現代結晶学の創始者の一人。X線回析を用いて物質の構造を研究。父であるヘンリーブラッグとともにノーベル物理学賞を受賞。X線結晶学の研究に従事。結晶によるX線回析についての法則「ブラッグの法則」を発表してX線回析による構造解析に理論的な基礎を与える。結晶格子で回析したX線ビームから結晶内の原子の配置を計算することができ、さまざまな結晶分析が可能となる。

4位:Discovery of Pulsars 
(発見者:存命、オックスフォード大学客員教授、元イギリス天文学会会長、英国物理学会会長)ジョスリン・ベル・バーネル - Wikipedia http://goo.gl/YSuLYR
イギリスの女性天体物理学。1967年、アントニー・ヒユーイッシュとともにパルサーを発見。パルサーとは、パルス状の可視光線、電波、X線を発生する天体の総称。電波望遠鏡の観測データの中に規則的に変化する電波信号を発見し、それが高速で回転する中性子星「CP 1919」が電波源であることがわかった。超新星爆発後に残った中性子星がパルサーの正体であると考えられている。

5位:Mallard
LNERクラスA4蒸気機関車4468 マラード - Wikipedia http://goo.gl/uGzmp
ナンバー4468マラードは、London and North Eastern Railwayの蒸気機関車。ナイジェル・グリズリー卿による設計。風洞実験を利用して設計された空気力学的に優れた車体をもち、時速160km以上の速度で走る。マラード号は、時速203kmという蒸気機関車の世界最高速度記録ももつ。(1938年7月3日に樹立)。その後、この世界最高記録が蒸気機関車によって破られたことはない。現在のギネス認定世界記録。

というのが、今回のGreat British Innovation Voteの上位で、上位に入賞しなかったけれども、いくつか面白かった事例もご紹介。

◉World Wide Webの開発
(開発者)ティム・バーナーズ=リー http://goo.gl/NAlL
イギリスの計算機科学者。WWWを考案し、ハイパーテキストシステムを実装・開発した人。URL、HTTP、HTMLの最初の設計者。

◉コンコルドの開発 http://goo.gl/ZV9X

◉ARMアーキテクチャの開発 http://goo.gl/CXzNK
ARM Ltdにより開発されている、現在のスマホや組み込み機器や低電力アプリケーション向けに用いられている32ビット、64ビットRISC CPUのアーキテクチャ(市場の75%を占める。携帯電話、メディアプレイヤー、携帯型ゲーム、電卓、ハードディスクルータなど)。1983年にエイコーンコンピュータ(イギリス)によって設計が開始された。Appleのベースにもなっている。

◉DNAシークエンシングの手法の開発 http://goo.gl/Z7q8
開発者 ウォーター・ギルバード(アメリカ)とフレデリック・サンガー(イギリス http://goo.gl/VrcjsB
DNAを構成するヌクレオチドの結合順序を決定すること。DNAシークエンシングは遺伝子情報を解析するための基本手段。フレデリック・サンガーは、2013年現在で、ノーベル化学賞を二度受賞した唯一の人物。

◉ターボジェットエンジンの開発
フランク・ホイットル - Wikipedia http://goo.gl/dQZhg
ターボジェットエンジン開発装置は第二次世界大戦でも用いられ、その後の飛行機輸送技術に大きな影響を及ぼす。

◉MRIスキャナーの開発、MRI(核磁気共鳴画像法)の発見
ポール・ラウターバー(アメリカ)とピーター・マンスフィールド(イギリス)にノーベル生理学・医学賞が与えられる。

などが挙げられていました。また、これから期待されているイノベーションという項目もあり、それらはみると最先端な研究事例や、今まさに僕らが触れているものに含まれているものでもありました。

◉Raspberry Pi http://goo.gl/uUz7k
(Raspberry Pi発展の基礎に、ARMSアーキテクチャの開発に関わったエイコーン社によるARMプロセッサが搭載されている)

◉Organ printer
3Dプリンタによる臓器プリント。


などなど、医療から航空技術、工学、物理学などなど、さまざまな分野の最先端をイギリスが作り上げていたことが分かりました。

研究の分野では、ある一つの分野を追求し、その先に見つけた真理や原則といったルールや規則を見出すこともあります。技術的な視点だと、それまでなかったプロダクトやサービスを開発することもイノベーションです。人文社会学的な視点だと、人はさまざまなルールを作ったり変えたりする力があり、それはコンピュータではできないものです。同時に、常識やルール、慣習を変えるためには、そのルールがどう作らえ、どういった歴史をたどりながら運用されてきたか、そして時にそのルールを破るような視点を持つことが必要です。その根底にあるのは、人のニーズに対して愚直に応えること、もっとこうあるために何が必要か、と考える意識かもしれません。バラバラだったものを定式化し、形あるものにすること、形あるものを根底から壊し再構築する方法だったりします。

イノベーションは、その言葉の意味には、一つの現象ではなく変えた先の未来、変えた先の世界もその言葉に内包しているのではと思います。つまり、イノベーションが起きたことによって、元に戻ることを拒否したくなるだけの力、人の行動や習慣、価値観を後戻りにできないほどアイデアを普及させることなのかもしれません。ここにあげたどれもが、もはやなかった世界には戻れないことにおそらく気づいていると思います。

イノベーションを創発するヒントとして、やはり過去を振り返ることの重要性を考えたとき、海の向こうであるイギリスは、これだけのイノベーションを起こしていることを多くの市民が自覚し、次の新しい道を作る人達も、こうした事例や出来事を参照しながら次の道を作ろうとしていると思います。日本から新しいイノベーションを生み出すために、では、これまで日本はどういったイノベーションを起こしてきたのか。過去100年間のイノベーションの事例を調べてみることに、次の未来に対する道へのヒントがあるのかもしれない、と、イギリスを調べてて感じるものがありました。

未来は過去の積み重ねであり、そして「伝統から革新」を生み出すためにも、日本のこれまでのイノベーションの事例を体系立ててまとめたら、すごく価値があるのではないだろうか。興味が有る人は、一緒にやってみませんか?






2014/08/18

ALSの認知向上や寄付を促すALS Ice Bucket Challenge #IceBucketChallenge にチャレンジしました

いま世界で広がっているALS Ice Bucket Challenge #IceBucketChallenge
http://www.alsa.org/
に、School Withの太田くんから指名をいただきまして、僕も挑戦したいと思います。

このチャレンジは、筋萎縮性側索硬化症(きんいしゅくせいそくさくこうかしょう)、通称ALSの認知度向上、治療法発見や寄付促進をサポートするためのキャンペーン活動です。極めて進行が速く、半数ほどが発症後3年から5年で呼吸筋麻痺により死亡するとされる難病で、治癒のための有効な治療法は確立されていない現状なのです。

前の人から指名を受けた人は、24時間以内に氷水を被る or 寄付をする という選択をしなければいけません。氷水を被る人は、次にチャレンジする人を3人指名することが出来ます。

ALSに関しての日本語での詳しい情報はこちら:http://www.nanbyou.or.jp/entry/52
寄付を含む今回の活動の詳しい情報はこちら:http://www.alsa.org/ Facebookページはこちら: https://www.facebook.com/alsassociation

海外のセレブは、氷水をかぶりつつ寄付もするというノブレス・オブリージュを全うしているということで、僕もそれに倣って寄付をしつつ、氷水を被って次のチャレンジの人にバトンを渡したいと思います。

次のチャレンジは、IT業界から元ミクシィ社長の Yusuke Asakura さん、メディア業界からバイラル企画ということでハフィントン・ポスト日本版の編集長の Shigeki Matsuura さん、NPO業界からは、寄付活動ということで JustGivingの Daigo Sato さんにチャレンジしてもらえたらと思います。

海外から始まったバイラル企画ですが、日本にも広がってきたということで、できたばかりの虎ノ門ヒルズの前で撮影しました。自分が被る氷水の氷を自分で割って準備するというパプニングもありつつ、夏の暑さを吹っ飛ばす企画でした。このキャンペーンを通して、少しでもALSの認知向上や寄付が集まり、難病解決につながることを祈っています。



2014/07/04

7月26日、UX Tokyo主催の「UX TOKYO JAM 2014 」に登壇します



UXという言葉が業界的にも浸透してきた。そして、それらの多くがウェブ業界やIT関連の中で語られる事が多い。しかし、本来、人間が経験する領域は、ウェブの中だけにとどまらず、実世界やリアルでも起こりうるはず。インターネットが誕生して20年以上がたち、ネットでけで完結することなく、オンラインとオフラインがシームレスになっていくこれからの時代において、どのようなUXを提供すべきかということを再考していかないといけない。

そうした意味で、今回のUX Tokyoが主催するUX Tokyo JamでもそうしたUXを捉え直し、デジタルインフラのあり方の価値転換を起こすためのヒントとなるかもしれない。これからの時代において、サービスやデザインがどのようにあるべきか。

今回、UX TokyoメンバーでBEENOS戦略ディレクターの山本郁也氏に呼んでいただき、セッションゲストとして登壇します。テーマは「UXデザインのためのマテリアリズム」。手法やツール論になりがちな議論ではなく、そのツールを使う私たち人間がどうあるべきか、情報が溢れ、オンラインにおける情報環境が豊かになってきた時代だからこそ、人間の身体性や五感というものを捉え直し、そこからUXというものを見つめなおしていくための考えをみなさんと共有できたらと思う。

他のセッションでも、多彩なゲストがUXとはなにかを考えるセッションや議論が満載。当日を楽しみにしたい。

【イベント概要】
UX TOKYO JAM 2014
ーBREAKING NEW GROUND OF UX IN TOKYOー
日程: 2014/7/26(sat)
会場: グリー株式会社 9F
東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー
定員: 最大120名
参加費:2000円
公式ハッシュタグ:#UXTokyo
公式twitterアカウント:@UXTokyo

ウェブサイト
http://uxtokyo.jp/post/90022036064/ux-tokyo-jam-2014



7月5日放送のフジテレビ「ワカモノガタリ」に出演します #ワカモノガタリ



7月5日に生放送される、フジテレビの「ワカモノガタリ」という番組に出演します。時間帯が、土曜の26時半〜29時という深夜の番組です。

「若者がニュースについて語る」というテーマのもとに、多種多少な立場の人が話す、というもので、ほぼ同世代な人たちが集まるものです。

司会は、ニッポンのジレンマとか国・行政のあり方懇談会などでご一緒している古市くん。生放送のため、Twitterとか番組にメッセージを送ったら、それが番組にも反映されたりというインタラクティブな要素もあるみたいです。

お時間ある人は、深夜ですが生放送という面白さをいかして楽しいものにできればと思います。

番組ウェブサイト
http://www.fujitv.co.jp/wakamonogatari/index.html

【出演者】 
古市憲寿
佐々木恭子(フジテレビアナウンサー)
【ゲスト】
江口晋太朗(29)編集者/ジャーナリスト
加藤千恵(30)歌人/小説家
SHIROSE(27)音楽ユニット WHITE JAM(Vo)
瀬尾拡史(29)サイエンスCGクリエーター/医師
ハリス鈴木絵美(30)Change.org日本代表
松居大悟(28)映画監督/脚本家

【スペシャル対談】
満島ひかり



2014/06/09

東京都主催、NPO法人ETIC.が運営する次世代アントレプレナー育成プログラム事業「Tokyo Startup Gateway2014」にメンターとして参加することになりました


東京都主催で、NPO法人ETIC.が運営する次世代アントレプレナー育成プログラム事業の「TOKYO STARTUP GATEWAY 2014」。この事業の、メンターとして、参加することになりました。

「TOKYO STARTUP GATEWAY 2014」は、ウェブ・テック、ソーシャルビジネス、地域課題解決、グローバルなどの分野を超えて「世界」を変える起業家を輩出するブラッシュアップ型コンテストです。

コンテストは、First Stage、Second Stageを踏まえてビジネススクールや起業家などによるメンタリングを通じたブラッシュアップを行ない、Final Stageではプレゼンを磨き上げ、11月にあるDemo Dayでプレゼンを行ない、賞金やその後のシードアクセラレータプログラムへの参加をすることができます。(開催概要はこちら

7月6日締め切りで、8月から始まるこのプログラム。東京都主催ですが、ETIC.が運営し、民間企業やスタートアップ、VCなどさまざまな人たちを巻き込んだプログラムになっています。私はメンターとして参加することになりましたが、他のメンターの方々も豪華な方ばかりです。(詳細はこちら

40歳未満なら誰でも応募可能な条件です。ぜひ、興味がある人は応募してみませんか。


東京発・世界を変える起業家とビジネスを輩出するスタートアップコンテスト | TOKYO STARTUP GATEWAY 2014 http://tokyo-startup.jp/


2014/05/25

ものづくりコンテストプログラム「GUGEN 2014」のコピーワークを担当しました


GUGEN 2014
http://gugen.jp/

GUGENとは | GUGEN2014
http://gugen.jp/aboutgugen

「未来のふつう」となるデバイスやアイデアを評価する、という趣旨で2013年からスタートしたものづくりコンテストや支援プログラムの「GUGEN」。

ものづくりの盛り上がりと同時に、いかに社会課題解決を図るプロダクトを作るかを、一人ではなくみんなで考え、かたちにしていこうという思いをもとに、コピーと説明文を作りました。

アイデアソンやハッカソン、メンタリングなどを通した年間のイベントを通じて、12月に展示会や授賞式を行ないます。未来をワクワクさせるものづくりがここから誕生することを期待しています。





2014/05/15

メディアやジャーナリズムの可能性をもっと議論する場であってほしかった #未来メディア

来たよ #未来メディア

5月12日に、朝日新聞主催の「MITメディアラボ×朝日新聞シンポジウム メディアが未来を変えるには〜伝える技術、伝わる力〜」が開催された。

すでに、いくつかのメディアやブロガーの方々がシンポジウムの内容については触れているように、デジタルにおける表現技術やデジタルにおける手法、データ分析の重要性など、メディアに関する技術の進歩と、それらの環境においてメディアやジャーナリズムがどのように機能していくべきかといった内容を、プレゼンやパネルディスカッションの中で議論するシンポジウムだった。

ニューヨーク・タイムズのグラフィックエディターのアマンダ・コックス氏は、マリアノ・リベラ投手の全球種データをもとに球筋のビジュアライズ化をした記事や、ストーリーをもとにビジュアライズ化し、体験を伝えるためにインタラクティブなデザインを活用したThe Soaring cost of a simple breath という記事、インタラクティブなコミュニケーションを通じて情報をスケールさせたIntaractive Map:Your Biking Wisdom in 10 Wordsといった記事を紹介した。

他にも、Upshotというデータとグラフィック、テクノロジーを活用することに特化したニュースサイトや、情報を集約し、パーソナライズ化した情報を届けるNYTNowを開発するなど、さまざまな試みを通じてメディアのあり方を示す取り組みを行っていることを、伝統あるメディア企業としての誇りとクオリティをもとに作り上げようとしているのが実感できたプレゼンだった。

2005年に設立し、先日9周年を迎えたザ・ハフィントン・ポストのプロダクト部門統括責任者であるニコ・ピットニー氏は、ウェブを中心としたオンラインメディアのニュースアグリゲーターとしてさまざまな分野を横断して情報を発信している取り組みと、メディアとしてのマネタイズやメディアベンチャーらしいアジャイルな開発をもとにしたメディア事業のあり方についてのプレゼンがなされた。

ニコ氏は、編集者は新しい技術をもとに読者にコンテンツを届けることの重要性や、アルゴリズムと人的編集によるミックスを通じてコンテンツの質を向上させることを話した。読者の参加を促し、コメントやSNSのコメントなどをもとにコンテンツを作り上げることや、パーマリンクをもとに情報の元ソースへの誘導を図り、自前主義ではなく積極的に外部と関わりながらユーザーに情報を届けていくことが大切だと語った。

こうした、プレゼンを踏まえたのちに、パネルトークへと移り、モデレーターに朝日新聞の西村陽一氏が登壇し、参加者やSNSでシンポジウムに参加している人たちからもTwitterのハッシュタグを通じて質疑応答の時間を長めにとった場となった。

パネルトークの内容は、
「MIT×朝日新聞」で語られたメディアの未来その1 #未来メディア - Togetterまとめ
上記のツイートまとめや
スター記者の独立、データジャーナリズム、アドボカシー、エンゲージメント、モバイル・・・「未来を変えるメディア」への道しるべとは?  | デジタル・エディターズ・ノート | 現代ビジネス [講談社]
現代ビジネスのこの記事などが網羅しているのでそちらを読んでもらいたい。

また、伊藤穰一氏のプレゼンは、
データジャーナリズム最新事例とこれからの民主主義 MITメディアラボ所長・伊藤穰一氏が語る【全文】
ハフィントン・ポストが内容をまとめている。

社会におけるメディア、ジャーナリズムのあり方を再考する
さて、シンポジウムの概要を踏まえた上で感じたことなのだが、朝日新聞が今後どういったジャーナリズムを目指したいのか、タイトルにある“メディアが未来を変えるには”ということが、あまりつかめなかったイベントであったように思える。

社会が変化してくる中で、ジャーナリズムが社会においてどのような機能を果たすのか、そうした変化において、朝日新聞はどのようなスタンスにおいて行動してくのか、それらも含めてメディアの振舞い、ジャーナリズムのあるべき姿は、ということを議論して欲しかった、と考えている。正直言えば、事例の紹介などは、ブログや記事などである程度網羅できるものであって、それよりも思想や哲学を議論しながら、未来はどうあるべきか、を参加者も踏まえて考えてほしかったと思っている。

たしかに、サブタイトルである“伝える技術、伝わる力”というもののとおり、データを活用したりビジュアライズ化をすることで、読者に情報を伝えやすくすることはあるかもしれない。しかし、データやビジュアライズというのは伝えるための手段であり、技術という名の通りである。その先に、伝えたことによって、読者にどのような感動や共感、アクション、考え方の変化などを促すか、ということをどれだけ考えられるのかを常に考えなければならない。

伊藤穰一氏のプレゼンの中で、「ソーシャルメディアの発達や双方向性が生まれてきたことで、Network Public Sphere(ネットワーク化された公共圏)が生まれてきており、メディアと国民が一緒になって参加型民主主義が生まれてくる」というような言及をしていた。伊藤氏のプレゼンは、SafeCastの活動を例にあげるように、個人から発信した取り組みが、社会に対して大きな影響を与えるようなものになっており、誰もが社会に参画できる環境とツールが整っていることを示した。

これから社会において、民主主義をどのように機能させるか、そのためにジャーナリズムが何ができるか、情報を伝えるということの先に、読者に社会における発見や感動を伝え、民主主義を豊かにする手段として、データジャーナリズムを捉えていくべきでは、という話こそが、伊藤氏が伝えたいものではなかったか。

いきすぎた扇動は、アクティビズムになる可能性もあるからこそ、ジャーナリズムはできるだけ中立的な立場をもとうと努力することは大切だ。しかし、当たり前だが人が介入してる時点ですべてを網羅することも、客観性を完全に担保することはできない、時にデマゴーグにもかる可能性はある、という認識を持った上で、努力していこうとする姿勢をもちながら、国民に対して社会で起きている出来事やその経緯を伝え、それによって国民が自発的に考え行動するきっかけや情報を与えていく。そのために、ジャーナリズムとしての挟持を持って行動し続ける、ということがメディアに求められるはずだ。

パネルディスカッションにおいても、「読者とのエンゲージメントをどう考えていくか」という問いがあったが、まさに、そこをもっと深堀りした議論を聞きたかった。アマンダ女史も、「ニュースを読んだ読者の人生にどう影響を与えるか、友人とシェアしたり会話のネタになったりしながら、媒体を購読したいと思ってもらえるか」ということを言及していた。普段の会話の中で、ニュースの情報をもとに社会課題や時事問題が気軽にコミュニケーションでき、それをもとに自分たちで社会に対してどう関与していくか、ということを促すことを示唆している。

情報を伝えたあとのことを朝日新聞社がどこまで考えているのか、朝日新聞としてどういったエンゲージメントを目指したいのかが明らかにならないままであった。いや、もしかしたらそのあたりはすでに朝日新聞の方々のほとんどはわかっており、朝日新聞としてのジャーナリズムが目指すべき方向というのは理解された前提でのイベントだったのかもしれない。そうであれば、僕個人の理解不足でしかないので、不勉強極まりない。


質な言論空間、を示す指標とは何か
エンゲージメントを考えた時に、PVやUUだけが指標とはいえない。ハフィントン・ポスト日本版を立ち上げた時に、ウェブ上における上質な言論空間を作っていく、ということを目標に掲げていたはずだ。編集主幹として就任した長野智子氏も、ネット上における言論空間や、米国と日本のニュースメディアに対しての接し方の違いからくる、メディアリテラシーについて言及していたことも記憶に新しい。

シンポジウム冒頭で、代表の木村伊量氏がこの1年間で取り組んでいた事例として、データジャーナリズムの取り組みとしてソチオリンピックの浅田真央選手の「ラストダンス」や、データジャーナリズムハッカソンを企画した、ということなどと並行して、ハフィントン・ポスト日本版の開設にも言及していた。しかし、「一年でUUが1000万になりました」といったことしか言及されなかったのはなんとも言いがたいものだ。

当初掲げていた「良質な言論空間」というものを見出すために、日々のハフィントン・ポストでこんなコメントが行われている、言論空間を作りあげ、新しいジャーナリズムが生まれ始めている、といったことも言及してほしかった、と個人的には思っている。これからの言論空間のあり方などにも、木村氏やパネルディスカッションでハフィントン・ポストジャパンの代表取締役を務めている西村陽一氏がもっと言及してほしいところでもあった。


「最先端のメディア」というものはあるのだろうか
メディアのあり方ということも考えた時に、ニューヨーク・タイムズやハフィントン・ポストが取り組んでいることはたしかに新しいかもしれないし、次のメディアの可能性を占める形かもしれない。しかし、それは選択肢の1つであり、必ずしもこれがすべて、これが絶対的な解、ではないはずだ。

それぞれの国の事情、国におけるメディアとの関係、民主主義の醸成具合、国民のメディアリテラシーなどに応じて、メディアのあり方は変わってくるはずだ。しかし、パネルディスカッションにおける西村氏が節々で語る「最先端のメディアであるニューヨーク・タイムズやハフィントン・ポスト〜」といった表現を聞くと、彼らこそがメディアという業界におけるトップランナーとして、まさに最先端を走っているものだ、という認識だというように聞こえるが、果たして「最先端」と言い切れるほどメディアは単一的なものなのだろうか。メディアやジャーナリズムという形は、もっと多様なものであるという可能性を自分たちで狭めたり、自分たちは遅れている、という意識がどこかにあるのだろうか。

それこそ、新しい単語、特に海外から考えられたであろう概念や取り組みをさも新しいものとして飛びつき、すべての関係者はその新しいものを覚えなければいけない、とった盲目的な意識としての発言にすら聞こえる。もちろん、手段の1つとして、そしてそれがその国々おいてどれだけの効果やそれまでにない意味を持っているのかを知るかは大事だし、学ぶことは必要だ。しかし、それを「最先端」だと断言する論理はないはずだが、朝日新聞はどのように考えているのだろうか。

データ、ビジュアライズ、プログラミングを活用することは1つのツールであり、木村氏がメディアがどうあるべきか、ということで、データジャーナリズムをやっています、というような目的が手段化するようなことではなく、もっと本質的なことを考えてもらいたいものだ。

なんのために情報発信するのか、昨日今日のことを追いかけるようなものではなく、なぜ、いまこのような現象になっているのかを、過去からひも解きながら国民にどのような情報を伝え、どのような判断を行うべきかという知識を伝え、どのような未来を迎えようとするのかを議論するようにしないといけない。

民主主義を活かす呼び水として、伝え、考えを促すこと。そのために、多様性を享受する意識をもたないと、批評も生み出しにくいのではないだろうか。

メディアの人材流動化を促進させるために
質疑応答の時の、特に最後の質問で「朝日新聞社の社員が振興メディアに移る可能性があるかもしれない」という質問があったが、これまでがあまりに人材の流動性はほとんどなく、マスメディアの業界全体に見受けられるものだ。

外部の人たちともっと連携したり関わりを増やしたりしながら一緒にやっていきたいと木村氏が言及していたが、アマンダ女史などのように、インターンから統計学などを専攻してる学生を引き込んだり、外部のネットメディアで活躍した人を積極的に取り込んだり、逆に社員を積極的に外のメディア、場合によってはメディア以外の業界などへ積極的に人を促したりするような、というものを考えたりするほうがより意味のある戦略ではないだろうか。ある程度外の経験をしてきたプレイヤーを、出戻りで朝日新聞社内の主要ポストに就かせることで、新しい外の知見を組織に活かすことができる可能性もあるはずだ。

多くの企業も、そうした外部交流や人材流動を図りながら、組織のイノベーションを推進しようとしているだから、それらをもっと参考にしてもいい気がする。まだどこかメディアは自前主義な考えがあるのかもしれないが、自前主義からの脱却をしない限り、新聞社やメディアの限界の中でイノベーションは生み出されないのではないかと考える。

質疑応答を担当した津田大介氏が「この質問はクリティカルだ」といって上記の質問を紹介していたが、こうした質問がでてくること自体、この質問がクリティカルな質問だ、と言われるくらい閉塞感がまだまだ存在する現状のマスメディアの状態こそが、「クリティカルな状態だ」ということに気づかなければならない。


朝日新聞が目指す未来のメディアのあり方は何か
朝日新聞社主催のイベントであるにも関わらず、結果として朝日新聞社としてのあり方や意見があまりつかめないものだった。もしも、朝日新聞としての意見を十分にだしていた、と考えていたのであれば、その考えは改めたほうがよいのではないだろうか。もっと、朝日新聞社全社としての組織内の意識を変えていくことに注力していくことが必要かもしれない。

今回のシンポジウムは、言うなれば「外タレで最先端をいっているイケてる人たちを呼び、彼らがやっていることを参考にしながら、自分たちもそれになりたい、それに近づきたいということで追いかけ、自分たちのメディアとして、一ジャーナリズムを持った組織としてのプリンシプルもなしに行動している」という印象を受けてしまうのは僕だけだろうか。

どんなに外部の素晴らしい人たちと提携したり一緒にやったりしても、結果として組織の中に何も還元できないのでは意味がない。普段から、朝日新聞社の方々とはやりとりをさせてもらい、エース級な記者さんや行動力のある方々を知っているだけに、現場で活躍している記者の人たちが、もっと活躍できる場を組織として作ってもらいたい。もっと、朝日新聞社がどのようなものを目指し、どのようなことにこれからもっとチャレンジしていきたいのかを知りたいし、新しいことを取り組む姿勢の中で、一緒に何かやれないかと思っている者の一人として、切に願うところだ。







2014/05/13

データが都市をアップデートするときに、未来都市を生きる僕らは、改めて「民主主義」について考えていかないといけない

データの議論は、ビジネスやマーケティングだけではなく、僕達の都市生活のあり方を考える1つの視点でもある。行政の情報を公開するオープンデータという議論も、透明性だけだけではなく、僕達の生活を豊かにする、という視点の中でもっと議論がされてほしい。

テクノロジーの進化の先には、僕達がどのように暮らすか、どのような都市にしていくか、という都市づくりへの関与の余地が広がっていく。直接民主主義的な動きが広がっていく中、日本において改めて民主主義とはなにか、という議論もしていかないといけないのではと思う。

WIREDで今回書いた内容(データが都市をアップデートする:2020年の「未来都市」に必要なイノヴェイション « WIRED.jp http://wired.jp/2014/05/13/citynext2014/)は、プロモーション企画ではあるものの、MSが取り組もうとしているのは、都市のあり方と僕達に普段の生活を見つめなおすための1つの試みでもあると思う。

事例の中にでてくるバルセロナの「The City Protocol Society」や、先日FabLab を取材した http://engineer.typemag.jp/article/civicdesign-fablab にも書いた Smart Citizen もそうだけど、市民自らがシビックプライドを持って都市に関わろうとすることがこれからますます起きてくる。

こういう時代の中で、僕達はテクノロジーの話だけではなく、戦後からずっと続いている民主主義について、やはりみんながしっかりと向き合っていかなければいけないのだと実感する。

データが都市をアップデートする:2020年の「未来都市」に必要なイノヴェイション « WIRED.jp http://wired.jp/2014/05/13/citynext2014/


2014/05/06

年を取ることは、自分自身に対して自覚的になることだ



最近、前に比べて朝に走るようになった。体を鍛えたいという目的もあるが、それよりも、改めて自分の体をどう動かすのか、ということにより自覚的になってきた、というほうがいいかもしれない。

昔取った杵柄よろしく、自分の体は自分がよく知ってて、体力とかこれくらいは走れるだろう、と思っていたものが、なぜか思ったように動かせない。それよりも、自分の体が昔に比べて明らかに変わっているということに気づくようになった。それは、体力的なものもそうだし、体の関節とか動かし方とかそういったものすべてだ。

普段の生活をしていると、周りの変化には敏感になってくるけど、自分の体の変化には気づきにくい世の中になっているのではないだろうか。特に、年齢による変化は、他者とつながることが当たり前になってきている時代の中で、自分と他者との比較性を持ちづらくなっており、年他者と自分との変化の違いに鈍感になりつつある。

いわんや、年齢による変化なんて、普段の仕事や同じ世代やコミュニティの人たちとばかりやりとりしていて、ついつい自分は若いと思っていたり、昔と同じような感覚に陥りがちになっていないだろうか。

人間は、誰もが年をとり、その年とともに人それぞれでさまざまな経験をし、その経験の積み重ねによって成長を促すことができる。年齢を重ねているということは、自己の成長と変化の証拠であり、人生におけるステージの変化に気づくことでもある。

体力でいえば、20歳の時と30歳の時では、回復力でも筋肉の付き方、成長速度なども違う。特に、若い時には無自覚に体を動かしていてもある程度こなしてしまうくらいの有り余るものを持っていた。しかし、30歳、40歳になっていけばいくほど、そうはいってられない。だからこそ、自分の体のクセや状態をよく知り、どのように駆動させ、どのようにメンテナンスすればいいか、1つ1つの動作に意識的になることで、持ってるものを効率的に活かそうとすることができる。

人間誰しも、最後を迎える。それは逆らうことはできない。時間には誰もが逆らえないのだから。だからこそ、自分自身が年を取り、年齢を重ねているということにより自覚的になる必要がある。自分は今はまだ若い、と思っている人ほど、年を取っている自分の体に無自覚なっていることは往々にしてあり、年を取った後になって色々と振り返っても手遅れになってしまうことがある。人生という流れの中で、人間はみんな最後を迎えること、時間を経過することによって心身ともに変化していく、ということへの気づきをもたなければいけない。

若作りや若い感覚でいるということは、過去を引きずり、未来への意識を延長しているだけにすぎない。そうではなく、年をとるということを受け止めること。年を取るということをもっと好意的に受け止め、受け入れること。それを踏まえた上で、体の変化に敏感になり、生きていくことが必要かもしれない。

そのためには、他者と比較してばかりだったり、つながってばかりではなく、自分自身を見つめなおす時間が必要かもしれない。

最近、生活スタイルを改め、朝に走ったり座禅を組んだり、自分の体の一つ一つを確認しながら日々を過ごすようになってきたなかで、こんなことを考えるようになってきた。自分ももうすぐ30歳になる。昔の自分と今の自分は違うこと。だからこそ、未来の自分にとって、今の自分の選択によって、いかようにでも変わるという可能性も大きく秘めているんだということを考えていくことは大切だ。




2014/04/25

「シビックデザイン」というテーマでエンジニアtypeで連載を始めることになりました。

Urban Gypsy Band: Canadian subway musicians.


オープンデータやオープンガバメントのみならず、3Dプリンタなどのものづくりのあり方、IoTなどのテックの進化を踏まえて、僕達の暮らし方や働き方、生き方にも大きな変化が訪れつつあります。併せて、震災などを契機とした地域コミュニティのあり方や地域課題をどのように解決していくか、といった取り組みを行うことも増えてきました。

改めて、自分たちが住んでいる地域、自分が持っているモノ、自分の身の回りにあるサービスやプロダクトを見つめなおし、自分自身でデザインしていくような時代が訪れてくるかもしれません。

そうした考えから、持続可能な社会を目指すためのヒントとして、「シビックデザイン」という言葉を軸に、さまざまな人たちに話を伺っていくような連載を始めました。

月一程度でやっていく予定ですので、みなさんよろしくお願いいたします。

初回はFabLab Kamakuraの渡辺ゆうかさんを取材しました。ファブというものが、ただのものづくりではなく、地域コミュニティを作ったり、他世代をつなぐものだったり、自分の暮らしを見つめ、作り上げていくための場所だと感じます。

21世紀は素材の時代。FabLab Kamakura渡辺ゆうかさんが描く「ファブタウン構想」【連載:みんなのシビックデザイン】 - エンジニアtype
http://engineer.typemag.jp/article/civicdesign-fablab


photo by kaybee07 on Flickr

2014/04/24

震災の教訓を、未来に活かすために何が必要か。普段の生活で、防災意識を保つ環境設計とデザインが今問われる

2011年3月11日に起きた東日本大震災から、3年が過ぎました。初めは防災に対して高い意識を持っていた人も、次第に普段の仕事や生活に追われ意識が薄らいできているのではないでしょうか。

常に意識を高く持ち続けることは困難です。だからこそ、普段から無意識で行動できるような習慣にしなければなりません。東日本大震災で得た教訓や学びをもとに、次の災害に備えた活動をする団体はこの3年でいくつも立ち上がりました。「次の災害に備える企画実行委員会」は、まさにそうした取り組みを行う団体の1つでもあります。

避難所から被災者支援拠点へ:震災で得た教訓


次の災害に備える企画実行委員会」(以下、つぎプロ)は、震災の経験をもとに次の災害に備える活動に取り組んでいる団体で、2012年10月から活動を行っており、2014年3月に活動報告会を開催しました。

活動報告会には、委員会のメンバーによる取り組みと経過報告、港区や三重県の避難訓練実施地域による報告、企業委員会参加企業によるプレゼンテーションとして富士通や凸版印刷、一般社団法人全国ロードサービス協会、日本セイフティー、ソフトバンクモバイルなどの震災に向けて取り組んだ活動が紹介されました。

つぎプロは、大規模災害時に災害関連死や状況悪化を最小限にとどめる「減災」を目的とした活動として、「あるべき避難所」のモデルの確立と普及、さらに避難所を「被災者支援拠点」として機能させるための訓練を行っています。

なぜ、避難所ではなく「被災者支援拠点」なのか。それは、ただ避難するだけではなく、被災者が日常に立ち戻るための支援が必要だということが、今回の震災の経験で得た学びだからです。

東日本大震災では岩手、宮城、福島の3県で最大40万人以上の被災者が、行政の指定した避難所だけではなく、集会所などの公共施設や民家、宿泊施設やショッピングセンターに避難しました。そこでは、ライフラインの未回復や食料や水不足といった問題だけでなく、子どもからお年寄り、体の不自由な人たちなどからの多様なニーズに避難所は応えなければいけません。

大規模災害時には初期の大量避難者への対応だけでなく、長期的な避難者ケアが現場では求められます。時間の経過とともに、避難した人たちの状況も刻一刻と変化していきます。ただ単純に避難するだけでな く、被災した人たちが少しでも早く立ち直り、通常の生活に移行するためのサポートも必要となります。

避難所という「点」で物事を考えるのではなく、地域全体を「面」で捉え、避難所とその周辺のニーズを把握し、住民のニーズに対応しながらサポートを行う拠点となることが大切なのです。



さらに、避難所で命を落とす人も少なくないという現実も、そこにはあります。インフルエンザなどの感染症の問題、被災に伴う精神的な問題へのケア、避難所の中での起きるちょっとしたコミュニケーションのズレや衛生問題などに対するストレスがあります。震災関連死に関する報告によれば、約3割の人たちが「避難所における肉体的・精神的疲労」が原因だという報告がなされました。

そこで、「被災者支援拠点」と言葉の再定義を行い、意識づけを転換して被災者を支援するための取り組みを考えていこうといった趣旨なのです。震災関連死からの脱却を行い、迅速に住民の安心安全を確保し、できるだけ早く日常に戻るための施策を取るために自治体と連携することが求められます。

避難所の役割の拡充などを踏まえて、東京都港区で「被災者支援拠点」運営訓練を実践。その訓練を踏まえてつぎプロは港区長へ「『被災者支援拠点』の整備・運営に向けた8つの提案」を骨子にまとめ、提言を行いました。

提言1:すべての避難施設の現状確認
提言2:多様な避難者への配慮という視点から、施設・設備の見直し
提言3:地域組織の「備災力」の可視化
提言4:「備災力」向上のための地域円卓会議の開催
提言5:学校・施設も地域ネットワークの一員に
提言6:在宅被災者を支援する体制づくり
提言7:多様な住民が参加する実践的な「被災者支援拠点運営訓練」の実施
提言8:24時間、72時間、1周間の3段階で具体的な想定を
さらに、広域での被災者ニーズを把握し、専門性の高いNPOとの連携を図るための運営訓練を、三重県と連携して行い、事前研修や避難訓練、報告会をもとにこれらの提言をブラッシュアップしました。この提言をもとに、港区などを 中心とした震災関連の対策の形として今後反映されていくことになるでしょう。

改めて求められるデザインの重要性



参加企業らには、防災計画の見直しや防災訓練の内容、非常時における体制づくりについての説明がなされました。日本セイフティーが開発している自動ラップ式トイレ「ラップポン」の活用事例報告は、画期的な商品だと個人的には感じました。被災現場での活躍はめざましく、簡易的でトイレの衛生面などを考慮した製品であり、ある意味でイノベーションを起こしている1つと言えるでしょう。

しかし、これらの製品もいざという事態を考えた時、災害が起きてから企業が被災地に配置し、その都度使用方法を説明するという手間が発生します。普段の生活に製品が溶け込んでいないがために、便利でもその製品の存在自体を認知する手立てが少なく、いざという時に新しく学習したりツールに適応するための時間や労力をかけなければいけなません。

たしかに便利です。しかし、いざという時の備えだけでは意識が向きにくいのが現状です。企業も、普段のコミュニケーションにおいて非常時のトイレの状況をどのように体験してもらうかを考えるなど、商品だけではない別のコミュニケーションを取る必要があると考えられます。

委員会のメンバーは、こういった製品を企業の努力だけではなく、日常に浸透させ、いざ何かが起きた時にスムーズに震災の現場に配置させるためのアイデアを募る場を作ることが大切かもしれません。

つぎプロの方々が、避難訓練や災害支援拠点としての運営を行おうとする取り組みは私もよく知っていますが、個人的にはどこか日常とは違ったものとして見据えているように感じます。そのため、明日何かがあった時に行動を起こせるかというと、まだまだ難しい状況です。

人間の行動はそう簡単に変えることはできません。だからこそ、さまざまな出来事を自分ごと化するためにデザインの力を必要とするべきなのでは、と私は考えます。


例えば、阪神・淡路大震災での教訓をもとにしたソーシャルデザインを行っている「issue+design」では、震災復興とデザインのコンペや、神戸の経験をもとにボランティアのスキルを可視化する「ボランティアぜっけん」の開発など、デザインの発想を取り入れた取り組みを行っています。

日立は、サービスデザインの発想をもとに、人間工学の観点で震災直後から被災地の方々がどのように動き、どういった意識をもっていたのかを調査し、それらについて対処する取り組みをもとにして教訓と次の災害に向けた取り組みを行っています(詳細はこちら)。

多くの被災者は「被助」、つまり誰かが助けてくれる、誰かがなんとかしてくれるといった意識になりがちです。だからこそ、自分たちでなんとかするための仕組みをつくり、そのために普段からどのような体制づくりをしていくか考え、自治体らと協働して取り組もうと日立は考えているのです。


防災に関しても、既存の非常食や携帯備品のリデザインも必要とされています。非常食の定期購入サービスを運営している「Yamory」は、普段なかなか意識しずらい非常食を定期的に配達してくれるサービスです。

これによって、一度買って放置されることの多い非常食を定期的に見直す機会になります。さらに、更新された非常食を普段の料理に活用するレシピを提案することで、素材を無駄にすることもなく日常の中で非常食を意識することができます。こうした防災を身近に感じる取り組みを実践していくことで、普段から災害に備えるデザインができていきます。


Code for Japan」では、今年から行うエンジニアやデザイナーを派遣するフェローシッププログラムとして、福島県の浪江町への派遣プログラムを始めました。災害に備えるためには、自治体や企業との連携だけでなく、民間技術者などの力、起業家による防災スタートアップを支援し、防災に関連したビジネスの創発を通じた災害対策の機運を高める取り組みなどが考えられるかもしれません。

次の災害に備えるためには、より大きな活動体としてスケールさせたり、各地の NPOや自治体との連携を強める取り組みを行わなければいけません。こうした、さまざまな企業や団体の取り組みをきちんと網羅、互いに連携しなが ら日常の中での防災意識の醸成を生み出すための取り組みがますます求められているという時代の流れをきちんと掴み、新しい取り組みを実践していくことが大切です。

防災・減災に取り組むためのフレームワークをもとに多面的に考えてみる

防災については、避難訓練や被災者支援拠点の拡充といった一面だけではなく、多面的な視点で考えなければいけません。そこで、一度フレームワークに落としこんで考えてみてはいかがでしょうか。

まずは、被災前、被災中、被災後といった時間軸のフェーズです。ここに自助、共助、公助といった社会全体での防災や減災に対する軸が加わることで、震災に対して多面的な視点をもとにした対策を考えることができます。これらのフレームワークの中に当てはめた上で、何ができるか、何が足りていないかを具体的なアイデアを導き出すことができます。

震災が起きてから対処しようとしていてはすべてが手遅れになることは否めません。上記のフェーズに応じた取り組みを、人間工学や心理学、防災学などの考えをもとにしたデザインとユーザーファーストの視点から考えていくことが大切です。

フレームワークをもとに震災に関して長期的な視点で研究分析したものとして、阪神・淡路大震災の復興プロセスについて科学的な視点から研究した『復興の教科書』は参考になります。震災に関する基礎知識、被災者視点、行政視点といった3つの視点から、震災から復興までのプロセスにおける変化と取り組みについてまとまっており、これをバイブルに取り組みの充実さを図ってみてはいかがでしょうか。

無理なく普段の生活に防災意識を持ちやすい環境設計を

そうはいっても、防災や震災の備えることは大変で、なぜそれをしなければならないのか、取り組みに対する物語と当事者性をどう作り出すかといった、根本的な意識の転換が求められます。

過去から学び、未来へとつなげるためにも、未来をもっと良くしようと少しでも多くの人たちが意識をもち、行動するためには、そこにストーリー性と人が自然と参加できるデザインを作り上げることが、これからさらに必要とされてきます。

未来を想像し、シミュレーションをもとに人がどう動くか、それに対してどのような対策が必要なのか。常にリスクヘッジを考え、想定外が起きないように常に想定内となる意識をもつための想像力が求められます。

つぎプロの正式名称は「次の災害に備える実行委員会」という名前ですが、次の災害に備える、その「次」とはいったい何をさすのでしょうか。抽象的な目標では、参加している人たちにとっても危機意識や当事者意識はなかなか生まれにくいでしょう。

言葉は時に重要な要素です。「次」の災害という他人ごとではなく、違う名称を付けることが望ましいのではないだろうかと個人的には思ってしまいます。実際、報告会や避難訓練のほとんども、若い人たちは参加しておらず、自治体関係者たちや参加している企業の人たちばかりが中心となっていました。

避難所を被災者支援拠点と言い換え、ただ避難するだけではなく「支援拠点」とすることで、意識の視点が向くように、防災に取り組もうと思えば思うほど難しくなるからこそ、「防災」という言葉を使わずに、普段から意識が向くデザインにするべきかもしれません。言葉で私たちの社会は支配されているからこそ、「言葉のデザイン」から考えなおしてみてはどうでしょう。

つながりや絆、気合や精神力、根性論ではなく、自然と防災意識が醸成される情報環境、そして防災に関連した取り組みに対してのマイルストーンやKPIを設定し、目標に向かって取り組むことが必要です。そうでなければ、どんなに避難訓練を行ったり備蓄品を貯めても、継続性と防災に関する意識が醸成されたという実感がなければ、いつまでたっても取り組みは空虚なままで終わってしまいます。

非日常的な行いは、いざという時に機能しません。防災、避難訓練が大事なことは言うまでもありませんが、それが日常化できていないことが根本的な問題なのです。災害に備えるためには、いかに日常との融和を図る施策を考えるか。小さい子であれば、かっこいい、かわいい、大人であれば防災意識を持つことが大人としての嗜みであるということや教養と結びつけたりすることだって考えられます。

被災前、被災中、被災後という時間軸、自助、共助、公助という各フェーズ毎に 起きる現象を分析し、人間が行動しやすくするためのデザインや、それに向けた取り組みや対策を考え、実践していく。行政や自治体だけでなく、民間企業や個人などのそれぞれのレイヤーの人たちすべての人たちにとって当事者意識を持った取り組みと、無理なく普段の生活に防災意識を持ちやすい環境設計を作っていくことを、改めて考えていかなければ、「次」の災害に向かって行動はできないのです。

(取材協力:日本財団)
BLOGOSに寄稿した原稿を、加筆修正したものです)


2014/04/06

コーヒーで生まれる地域とのつながり:目黒にできたサードウェーブスタンドコーヒーショップのSwitch Coffee Tokyo

代々木で打合せのあと、その足で目黒川沿いの桜を見ながらの散歩。途中に寄ったSwitch Coffee Tokyoにて休憩。 http://bit.ly/Pvpc0k 去年にできたサードウェーブコーヒーのスタンドショップで、家から1分という近さに、毎日通いたくなる場所。

昨日は、代々木で「テクノロジーのファッションの未来について」といった企画について話し合う打ち合わせがありました。ネット環境の充実や3Dプリンタやスキャナの登場、さらにオープンデザインという考えをもとに、ファッションをどうアップデートできるのか、といったことを議論しながら、何か企画を作っていこうといったことを話し合っていました。

ファッションショーという形からのアップデート、ユーザーとのコミュニケーションのあり方1つとっても、リアル店舗以外にもウェブ上で見せることも可能になっています。そうした時のリアル店舗のあり方の再構築もまだまだ考える余地が多い分野かもしれません。かたやファストファッションという流れもある中で、オートクチュールで服を作ることが、おそらく限られた人だけじゃなくより広い人たちが可能になってくる中で、服をどのように着るか、何を着るか、その先にある自分自身の暮らしを見つめなおしたりするといったことを考える必要性があるかもしれません。


そんなことを話し合った後、自転車で家まで帰る途中に目黒川があるので川沿いを歩きながら帰っていた時、ちょうど家の裏側にあるスタンドコーヒーショップを発見。Switch Coffee Tokyoといういわゆるサードウェーブコーヒーのお店です。

SWITCH COFFEE TOKYO http://www.switchcoffeetokyo.com/

こんな目黒川から道に一本中に入った住宅街の真ん中にあるお店ってあったっけ?と思っていたら、2013年の10月にできたばかりのお店だそうで。Switch Coffee Tokyoのオーナーである大西正紘さんは、福岡にある有名なコーヒー店のハニー珈琲で修行した方。さらに、大西正紘さんはブレンズラテアート選手権2009で優勝したバリスタした人物。ということで、大西さんが入れるラテには期待して間違いのではないでしょうか。お店は、コーヒースタンド&豆売りが専業で、持ち帰りかその場でちょっと休憩してさくっと飲むのにピッタリの場所。住宅街の中にひっそりとあるけど人が集まりやすい雰囲気がありました。地域密着だけにあって、バリスタ教室なども定期的に開催したりしています。

最近、色々なところで独自色のあるコーヒーショップの登場と、それを紹介する動きがでてきました。「サードウェーブコーヒー」というのも、ハンドドリップで一杯ずつを丁寧に淹れていくスタイルで、地域密着型の店作りが特徴的。単一種の苗木から収穫した豆だけを使用する「シングルオリジン」と呼ばれるスタイルにこだわり、さらにお店が生産者とダイレクトトレードを行っています。こだわりの豆について、原産地のことなど、さまざまな知識を知っておくことで、より美味しいコーヒーを楽しめることは間違いありません。

しかし、それ以上に大切なのは、コーヒーを通じて得られる落ち着いた時間や友人とのおしゃべりや地域の人たちとのつながり、といったものは大切になってきます。アメリカのポートランドでは人間らしく生きるために食、飲、住、思考、作る、といったものに対して1つ1つ丁寧に作りこんだお店はたくさんあります。そのあたりは、メディアサーフの人たちが出版した『TRUE PORTLAND the unofficial guide for creative people 創造都市ポートランドガイド』に、ポートランドのお店をそれぞれの特徴を抑えた内容で紹介しています。ポートランドでは、スターバックスのような大手コーヒーショップではなく、地域の人たちが丹精込めて作った製品を愛し、地域への誇りや愛着(シビックプライド)をもっています。

ちょっとしたスタンドドリンクのお店を通じて、都市という空間の間にあるちょっとしたすき間や余白といった、ほっとする場所や地域に住む人たちが集えるコミュニティといった機能であることが大事になってきます。そうした意味で、「サードウェーブコーヒー」の本当の大切な部分は、コーヒーそのものよりも、コーヒーを通じて語らうアナログな体験に意味があるんだと思います。ネットやSNSでどこでも誰とでもつながったり情報があふれたりする今だからこそ、思いにふけったり何もない時間を過ごすために、一杯のコーヒーを片手にゆっくりしてみるのもいいかもしれません。

目黒の住宅街にできたSwitch Coffee Tokyo。家のすぐ近所のお店なので、毎日通いたくなります。




2014/04/02

4月15日開催:「オープンデータがTV、メディア、広告・コンテンツを激変させる ~欧米・日本の先進事例からデータ利活用と次なるビジネスチャンスを探る~」に登壇します

情報通信総合研究所の志村一隆さんとは、TBS総研の「あやとりブログ」でご一緒した中で、編集者の河尻亨一さんや、コミュニケーションデザインの仕事をしている境治さんなど、諸先輩方に混じりながら僕も末席で寄稿をさせてもらっています。(最近、寄稿ができていないのが大変申し訳ない)

志村さんとは、テクノロジーやデザインがこれからの未来をどう作るか、そこに広告やメディアがどう変わっていくのか、といった議論を普段からさせてもらっている。「あやとりブログ」でも、テレビとソーシャルメディアの関係の未来についてなどの言論をしており、僕も時折意見などを交わしている間柄です。

僕のテーマの一つでもあるインターネットやテクノロジーを通じた都市や政治の未来について何ができるか、といったことを考える中、ご一緒にイベントに登壇させていただくことも増えてきました。今回、4月15日にも志村さんや編集者の河尻亨一さん、TV局の編成担当をされている那須惠太朗さんや独自の番組製作をされている宮城テレビの小野寺悠記さんらと、イベントに登壇させていただくこととなりました。

テーマは「オープンデータがTVやメディア、広告・コンテンツをどう変えるか」といった内容で、経営者や広告プランナーの人たちなどが参加するセミナーの一席として位置づけていています。少人数なセミナーですが、広告関係者やTV局関係者に、現状のオープンデータを通じた地域で起きている出来事や、テクノロジーがどう政治や行政とか変わっていくのか、オンラインやオフラインといったものは次第になくなってきている中で、ビジネスのあり方もこれからますます変わってくる中で、コンテンツ製作や企画プランニングに何ができるのか、といったことを、事例などをもとに参加する方々と意見交換ができればと思っています。

以下から、申し込みができます。お時間のある方はぜひご参加ください。

オープンデータがTV、メディア、広告・コンテンツを激変させる セミナー https://www.ssk21.co.jp/seminar/S_14106.html

<以下、概要>
セミナー要項
開催日時:2014年4月15日(火)午後2時~午後4時
会場 :AP秋葉原
東京都台東区秋葉原1-1 秋葉原ビジネスセンター
(03)5289-9109
受講料:1名につき 32,400円(税込)
同一団体より複数ご参加の場合、2人目以降 27,000円(税込)
備考:
重点講義内容
オープンデータは、新たなビジネス創造のツールであり、またメディアの在り方が問われる動きでもある。インターネットにより、メディアは情報を運ぶプラットフォーム化された。また、オープンデータにより、政府までもがプラットフォーム化する。
こうした行政、政治の透明性を強化するオープンデータは、『宝の山』と言われているが、TV・メディア・広告・コンテンツ業界においてはどんなビジネスチャンスがあるのか?
本講演では、豊富な海外、国内の事例から、既存の業界動向や現状を踏まえた上で、より現実的・建設的な議論を通して、次なるビジネスチャンスを探る。

<1>オープンデータとビジネスインキュベーション、欧米メディアの先端
(株)情報通信総合研究所 グローバル研究グループ 主任研究員
志村 一隆 (しむら かずたか)氏
【14:00~14:20】
1.リニューアルされた電子行政、eGovernment
2.米英のオープンデータ憲章
3.メディア側の反発 -FREEかOPENか-
4.プラットフォームとしての政府
5.透明性とメディアの役割の変化
6.オープンデータ時代にVine、Youtuber、ソーシャルなコンテンツを
  メディアはどう取り入れるか?
7.ソーシャルTV、スマートTVの次なる進化

<2>オープンデータとローカルメディア
TOKYObeta編集者・ジャーナリスト
江口 晋太朗 (えぐち しんたろう)氏
【14:20~14:35】
1.日本で広がるシビックハッカー
2.CODE for JAPANの活動
3.行政とデジタルエンジニアの新たな関係性

<3>オープンデータと変わる視聴率、広告・コミュニケーション
銀河ライター・東北芸工大客員教授
河尻 亨一 (かわじり こういち)氏
【14:35~14:50】
1.コミュニケーションの方法が変わる
2.ワークショップ、場作りの重要性とマネタイズ
3.リアルなコンテンツ、表現の変化
4.動画広告の台頭

<4>サンテレビ独自の取組みと今後の展望
(株)サンテレビジョン 編成局編成部 部次長 東京担当 兼 経営企画室
那須 惠太朗 (なす けいたろう)氏
【14:50~15:05】
1.「マスコミ」から「マチコミ」へ
2.阪神・淡路大震災で学んだミドルメディア領域への挑戦
3.メディアが提供する災害・復興情報について
4.ローカルメディアとしてのテレビ局の在り方と次なるビジネスチャンス

<5>宮城テレビ放送独自の取組みと今後の展望
(株)宮城テレビ放送 営業局 事業部 担当部長
小野寺 悠記 (おのでら ゆうき)氏
【15:05~15:20】
1.ローカルテレビマンはブルーズマンである
2.ローカルテレビ局の経営課題
3.ローカルに根差すメディアとしての強みとビジネスチャンス
4.東日本大震災からの学び

<ディスカッション>
【15:20~16:00】
≪パネリスト≫
江口 晋太朗 氏/河尻 亨一 氏/那須 惠太朗 氏/小野寺 悠記 氏
≪モデレーター≫ 
志村 一隆 氏
<質疑応答/名刺交換>

講師プロフィール
志村 一隆(しむら かずたか)氏
1991年 早稲田大学卒業、第1期生としてWOWOWに入社。2001年 モバイルコミュニティを広告ビジネスで運営するケータイWOWOWを設立、代表取締役就任、業界の先駆けとなる。2007年より情報通信総合研究所で、メディア、インターネットの海外動向の研究に従事。2000年 エモリー大学でMBA、2005年 高知工科大学で博士号。
『明日のテレビ-チャンネルが消える日-(朝日新書)』、『ネットテレビの衝撃(東洋経済新報社)』『明日のメディア(ディスカヴァー21)』が絶賛発売中。ツイッターはzutaka

江口 晋太朗(えぐち しんたろう)氏
1984年生まれ、福岡県出身。編集者、ジャーナリスト、コンテンツディレクター。執筆活動や、情報設計や情報環境デザインをもとにしたコンテンツ企画制作、プロデュース等を手がける。オープンデータやオープンガバメントの推進による市民と政治・行政の新しい形を模索するOpen Knowledge Foundation Japanや、行政サービスの刷新とシビックハッカーコミュニティを作るCode for Japanなどに所属。著書に『パブリックシフト ネット選挙から始まる「私たち」の政治』(ミニッツブック)、『社会をパブリックシフトするために2013参院選 ネット選挙の課題と未来』(ミニッツブック)など。

河尻 亨一(かわじり こういち)氏
1974年生まれ、大阪市出身。早稲田大学政治経済学部卒業。雑誌「広告批評」在籍中には、広告を中心にファッションや映画、写真、漫画、ウェブ、デザイン、エコなど多様なカルチャー領域とメディア、社会事象を横断する様々な特集企画を手がけ、約700人に及ぶ世界のクリエイター、タレントにインタビューする。現在は雑誌・書籍・ウェブサイトの編集執筆から、企業の戦略立案およびコンテンツの企画・制作まで、「編集」「ジャーナリズム」「広告」の垣根を超えた活動を行う。

那須 惠太朗(なす けいたろう)氏
1968年生まれ、兵庫・西宮市出身。1991年 (株)サンテレビジョン入社。2008年 神戸大学大学院経営学研究科MBAプログラム修了。阪神・淡路大震災時は報道サブデスクを担当し、ライフライン報道の企画開発に係わる。現在は東京支社編成部にて編成戦略の立案、コンテンツ・ライツビジネス、番組制作、放送業界のリサーチ、経営企画を担当。バラエティ番組「戦国鍋TV」、アニメ「AKB0048」など独立放送局共同制作番組のプロデュースも行う。2013年1月に担当プロデューサーとして自社制作したコメディ時代劇「よってこ てんてこ め江戸かふぇ」は、平成25年度文化庁芸術祭ノミネート作品となる。

小野寺 悠記(おのでら ゆうき)氏
1990年 早稲田大学商学部卒業、(株)宮城テレビ放送入社。営業部、東京支社営業部、制作部、業務推進部、営業部、事業部、現在に至る。

参加申し込みはこちら。
https://www.ssk21.co.jp/seminar/S_14106.html


2014/03/25

インターネットを使った選挙運動解禁に関する各党協議会に登壇しました




3月19日にインターネットを使った選挙運動解禁に関する各党協議会に、有識者として、ツイッタージャパンの谷本さんと一緒に登壇させていただきました。

谷本さんからは、ネット選挙が解禁したことでのソーシャルメディアの可能性や実状、Twitterがどのように取り組んだかといった視点をもとに、ソーシャルメディアを活用して有権者と政治家との距離をつなぐ方法についてやTwitterを通じた選挙の効果や可能性、今後を見据えた提言などをされました。

僕のほうは、ネット選挙のみならず、ネットをいかに政治の世界の中に組み込むか、インターネットが誕生して20年以上がたち、もはや「ネット前提社会」の中でこれから生きていくことになるなかで、公職選挙法自体の抜本的見直しを含めた情報社会の中における制度設計のあり方として、政府なども取り組んでいるオープンガバメントの考え方などをお話させていただきながら、改めて選挙だけにとどまらないネット政治をどう考え、そこを踏まえての制度設計をしていくか、といった内容をさせていただきました。

日本における民主主義を考える中で、選挙以外の普段の政治活動をどのように考えていくか。根底にある価値観自体を、今現在やこれからの社会を見据えたものにしていくために、政治だけでなく行政や民間企業などが協働して、社会のあり方を一緒に考えていく世の中になればと思います。








2014/03/10

3月10日発売のWIRED vol.11 「イノヴェイションは世界を救う」の企画執筆に携わりました。

3月10日発売のWIRED vol.11 「イノヴェイションは世界を救う」の企画執筆に携わりました。  「日本発のビックアイディア25」では、テクノロジーとサイエンスを組み合わせた研究者たちを取材し、未来をのあり方をじっくり考えるいい機会になりました。 Uber特集では、Uber Tokyo取材に、サービスの方向性などについて話を伺いました。 書店などで見かけた方は、ぜひ読んでもられると嬉しいです。 http://wired.jp/magazine/?id=11

3月10日発売のWIRED vol.11 「イノヴェイションは世界を救う」の企画執筆に携わりました。「日本発のビックアイディア25」では、テクノロジーとサイエンスを組み合わせた研究者たちを取材し、未来のあり方をじっくり考えるいい機会になりました。 「スケルトニクス」や「ジーンクエスト」といった20代の若い人たちによる次世代に向けた新しい取り組みを行っている人たち。しかも、ウェブ上ではなく、リアルの空間や生活とも密接に関わる取り組みを聞きながら、これからの20年30年をどうしていくかを一緒に考えていきたい人たちだと感じました。
Uber特集では、Uber Tokyoを取材させていただき、サービスの方向性などについて話を伺いました。

書店などで見かけた方は、ぜひ読んでもられると嬉しいです。




資生堂さんのウェブメディア「こちら、銀座 資生堂 センデン部」の対談記事の執筆をさせていただきました。


ハナシ | こちら、銀座 資生堂 センデン部 | 資生堂

資生堂さんのクリエイティブを発信するウェブメディア「こちら、銀座 資生堂 センデン部」の3月に更新された記事の執筆を担当しました。製作・編集を担当しているCINRAさんにお声がけいただき、執筆させていただきました。

このメディアは、資生堂さんのクリエーターが各業界で活躍されている方々をゲストに迎えて、「美」についてやデザインのあり方などについて対談する内容です。今回は、資生堂の宣伝制作部クリエイティブ・ディレクター、コピーライターの鐘ヶ江哲郎さんと、公益社団法人日本フィランソロピー協会の桑名隆滋さんの対談でした。

記事の中でもあるように、お二人は東日本大震災における震災支援をご一緒にされた方です。資生堂が行ったラジオ放送支援では、一社ではなく他社と協働して支援に取り組んだり新聞では従来の広告とは違った、「買わない広告」を打ち出すなど、震災をきっかけにクリエイティブの考え自体も大きく転換を迎えた出来事でもありました。

2時間近くも話が盛り上がり、記事の中に盛り込めなかったことも含めて、大変有意義な話をすることができました。企業の広告に対する考え方や、個人がもつ「美」の感覚、企業と社会の関係性や向き合い方は、CSRや近年ではCSVといった考え方が生まれてきているものと連動してきています。

さらに、個人の熱が大きなうねりとなって企業を動かしていくという考え方は、企業のあり方や組織の柔軟性もこれから求められてくる時代でもあります。大企業でありながら、そうした新しい取り組みを行っている話はとても貴重なものでもありました。

こうした、企業と社会の関わり方の変容とそこにあるクリエイティブやデザインのあり方といったテーマも、まだまだ色々な方に話を伺ってみたいですね。

記事はこちらから読むことができます。
http://group.shiseido.co.jp/advertising/#/talk/05


2014/02/28

インプレスR&Dが発刊している『インターネット白書2013−2014』に寄稿させていただきました



インプレスR&Dさんが毎年出版している『インターネット白書』。その、2014年度版の『インターネット白書2013−2014』の第5部:社会動向の「オープンガバメントの動向」について、寄稿させていただきました。発売は1月31日に電子版の発行、印刷版の予約受付が開始したそうです。

そうそうたる方々の中の一人として寄稿させていただき、大変ありがたく思います。また、今回はオープンデータの動向やネット選挙解禁の意味、オープンガバメントといった、ネットと政治、ネットと行政など、インターネットが誕生して20年以上がたったいまだからこそ、ビジネスだけでなくこうした公共の部分との関係性が強くでているのも特徴的かなと思います。

インプレスとしても、初めてネット選挙やオープンデータ、オープンガバメントに関してまとまったものを書いたという意味でも、一つの転換点だと感じます。他にも、IoT、ウエアラブル、ビックデータなどなど、これから考えるべきキーワードが盛り込まれた一冊になっているのではないでしょうか。

目次は、いかのようになっています。

<<目次>>
10大キーワードで読む2014年のインターネット
第1部 ネットビジネス動向
第2部 クラウド・データセンター事業者動向
第3部 通信事業者・インフラ動向
第4部 製品・技術動向
第5部 社会動向
付録 インターネットの主な出来事2012.04→2013.10

今回から、これまでの印刷された書籍を書店に並べるのではなく、電子書籍とオンデマンド印刷による次世代出版のNextPublishingによる発行形式ということ。こうした業界誌は、一般の人ではなく関係者が購入するのがほとんであるため、書店に並べるよりも事前注文を行うほうが、コスト化もできるし効率化できるのでしょう。



価格をみるとわかりますが、2013年版は電子書籍版が1,800円(税別)、印刷書籍版が2,800円(税別)と、これまでと比べると半額以下となっています。電子書籍と出版という視点からみても、新しい取り組みなのではないでしょうか。

さらに、1996年からこれまで10年以上もの間続けてきた『インターネット白書』の内容を、すべてネット上に公開する「インターネット白書アーカイブ」という取り組みも、同時にスタートしました。

インターネット白書ARCHIVES http://iwparchives.jp/


インターネットのこれまでの歴史を俯瞰するだけではなく、過去にもっている情報をきちんと公開し、誰もが自由に閲覧できるようにするという、自身が持っている情報をいかに多くの人に読んでもらうかという情報の媒体としてのメディアの本来の位置づけを、こうして白書を公開するということで表現しているのではと思います。

1996年から毎年欠かさずに継続してこられた歴史と、そこに詰まっているこれまで書かれた寄稿者それぞれが描く現代と未来予想の分析をきちんと知るという歴史を踏まえることが、これからの未来をつくる一つの重要なリソースになるのではないでしょうか。

インターネット白書のように、研究し、レポートすることの重要性と、それらをアーカイブしていくことは、とても重要です。同時に、これからはインターネット白書というネットに留まること無く、都市計画やデザイン、テクノロジーと社会との関わり方を考え、分析することが必要です。

真のイノベーションとは、たんなる技術革新だけではなく、科学の進歩と、それによって社会課題を解決するという、科学と技術と社会の間には円環的な関係を持つことが大切です。過去に書かれた方々の内容を改めて読み返しながら、これからのインターネット含めた社会のあり方をしっかりと考え、分析し、アクションへと結びつけていければと思います。


2014/02/15

記録的大雪の時、東京都は何をして、これからどのように対策していけばいいか

2014年2月7日から9日にかけて、全国的に大雪にみまわれたかと思ったら、その翌週の2月14日から15日にかけてはさらに記録的な大雪となった東京。


出典:タイムラプスby ヒマナイヌ

帰宅時間と重なったこともあり、交通機関の乱れや列車事故なども多発し、帰宅が難しかった友人が何人もいました。

大雪の状況や各種交通機関の様子などは、TwitterなどのSNSを通じて多くの人たちが投稿しており、ほぼリアルタイムで状況を把握することができる時代にもなりました。情報があふれる今だからこそ、重要な情報や正確な情報を公的機関が発表したり、避難や迅速な天候に対する対処を発表したりすることは、行政としても大きな役割と言えます。

都市のインフラを支えている組織だからこそ、普段のどのようなメンテナンスを行っていくか、平時の際の意識がこうした大雪などの状況に対しての姿勢が現れてきます。数十年ぶりの積雪となった東京では、東京都はどのような対策を行ったのか気になります。

東京都の大雪に対する対策と情報発信を比較




これは、2月15日早朝にキャプチャした様子です。東京都のウェブサイトを見ると、サイトでは雪に関する情報や対処方法などが記載されている様子は見当たりませんでした。かわりに、東京都総合防災部のTwitterの公式アカウントへの誘導があり、そちらに雪に対する情報発信がされていました。






Twitterのアカウント先にある東京都防災というアカウントでは、積極的に情報発信を行ないながら、警戒や注意を呼びかけていました。独自の投稿だけではなく、NHKニュースやtenki.jp、京王電鉄運行状況や小田急線運行状況のTwitterを公式RTするなど、交通機関の様子などをつぶさに発信している様子が伺えました。



ちなみに、先日2月11日に東京都知事に就任した舛添要一氏のFacebookページも、就任してすぐに開設されましたが、最新の更新は2月14日に行った定例記者会見の様子で、再生可能エネルギーに特化した官民連携ファンドの創設、ソチ五輪への出張についてなどを言及した投稿のみとなっていました。


あわせて、東京都庁広報課のFacebookアカウントも見てみると、最新の更新は2月13日で、恵比寿映画祭に関するお知らせでした。

広報課の運用ルールが設けてありましたが、そちらを覗くと(1)都民生活に密接に関連する情報(2)東京都の実施するイベント等の情報(3)広報東京都・東京都提供広報番組等のお知らせ などの情報を積極的にお知らせしていく、とのこと。(1)のと都民生活に関連する情報として、こうした大雪などの災害情報が広報課としては最適ではない、といった考えなのでしょうか。

ちなみに、先日の東京都知事選に関する情報も、こちらのFacebookページではお知らせされていないですね。運用ルールの中身をどのような選定にしているのか、とても気になります。



次は、警視庁のウェブサイトを見てみると、雪に関するお知らせをサイトで見つけることはできませんでした。東京都のサイトでは、雪の情報はこちら、とTwitterのアカウントへの誘導がありましたが、警視庁のサイトからはそれすらもありませんでした。



しかし、警視庁広報課の公式Twitterアカウントからは、こちらの1投稿がされていたので、警視庁なりに雪への警戒を促す情報は出しているといえばだしているのでしょう。





別のアカウントをみてみましょう。警視庁警備部災害対策課の公式Twtiterアカウントをみると、13日から大雪への警戒の情報を発信し、その後も定期的な雪への警戒などを呼びかけており、災害課としてしっかりと任務に取り組んでいる様子が伺えます。

きめ細かな情報は、さすがだと感じさせますが、こちらの災害対策課へのTwitterアカウントへの誘導を、警視庁のウェブサイトや広報課のTwitterアカウントが積極的に呼びかけてもいいものだと思うのですが、警視庁内部であっても、横のつながりはうすいのでしょうか。せっかくのウェブサイトやSNSのアカウント運用も、互いにきちんと連携して市民に対して情報発信をしなければなんの意味ももたない、ということを考えた横断的な運用をしてもらいものです。



警察をみたので、次は東京消防庁をみてみましょう。東京消防庁も、警視庁と同様に、サイト内に雪に対する対策を呼びかけるお知らせは特にありませんでした。



東京消防庁の公式Twitterアカウントをみてみると、警視庁の災害対策課と同様に、積極的に雪に対する警戒を呼びかけています。雪による交通事故や怪我なども多発するため、消防庁の方々もこの雪の中苦労しながら任務にとりかかっていたのだと思います。Twitterでも呼びかけていますが、少しでも多くの人たちの命を救うためにも、本当に緊急の方が消防車を利用できるようにみんなが考えて消防車を呼ぶことが大事になってきます。



また、東京消防庁のみならず、総務省消防庁の公式Twitterアカウントでも大雪に対する警戒を呼びかけていました。しかし、【全般気象情報】と題し、おそらくまとめて投稿したであろう投稿以外には、特に積極的な情報発信をしている様子はありませんでした。
Twitterの活用法一つとっても、総務省消防庁と東京消防庁とがもっと連携した情報発信を行うことで、より市民に届きやすい発信の仕方があるのではと感じます。

有事の時のために平時になにができるか

今回のように記録的な大雪だけでなく、大雨や台風などの災害に見舞われる可能性は大きくあります。また、首都直下型地震の可能性もあると言われている中、東京の有事の際の対処法と、それに必要な情報発信をどのようにしていくかは、都政としても大きな課題ではないでしょうか。



例えば、今回のように大雪によって消防車の活動に大きな影響を及ぼすことがあります。参考になる例として、会津若松市では防災に関する情報をオープンデータにする取り組みを行なっています。その中で、会津若松市にある「消火栓マップ」をオープンデータ化し、どこに消火栓があるかをマッピングする、という取り組みを行っています。大雪が降る会津だからこそ、雪が降っても消防活動が円滑にするために必要なサービス、ということでこうした取り組みを行っているのは、その地域ならではの課題解決の方法の一つです。

震災のみならず、台風や大雨、大雪などの気象に対してどのような対処法を行うか。その時に、行政が持っている情報をどのように活用するかが都政としても問われてきます。同時に、災害に関する情報発信一つとっても、Twitterでただ投稿するだけでは意味がありません。警察や消防、電力や水道関係各局との連携、河川や降雨情報による対策などを、予想外のことがあってはいけないように前もって準備し、広報し人々の生活を守ることが大切です。そのために、有事の時ではなく平時にどのような対策を行うかを都政は考えるべきではないでしょうか。

よく比較されるNYでは、ソーシャルメディアを普段からきちんと活用し、災害のみならずさまざまな分野にデジタルやテクノロジーを活用しています。(このあたりは、以前のブログに記載しているのでそちら参照)また、災害などに対応するために「ARE YOU READY NEW YORK?」という災害対策本部を置き、各種イベントの企画やガイドラインの設置などを行なっています。またガイドラインなどもウェブを通じてオープンデータ化することで、避難場所の可視化などができ、それらのデータをもとに民間がマッシュアップしてより市民に届きやすい形で加工することもできます。

情報を「届ける」ことの重要性

あらゆるコンテンツや情報は、「つくる」だけではなくてきちんと「届ける」ことがこれからますます重要になってきます。公式に発表している、という建前だけでわかりにくくどこにあるのかもすぐにわからないような情報発信ではなく、きちんと私たち市民に届き、そして活用でき、安心安全で暮らせる生活を送るためのサポートを考えて、どういった情報発信やデータの運用をしていくかを考えなければいけません。

今回の雪の教訓とすべきことを踏まえながら、今後の東京都としての災害対策や情報発信の参考にしてもらえればと思います。東日本大震災も経験した日本において、「想定外」といったことが起きないよう、最新の注意を払った対策を普段から考えていかなければいけません。

みなさんも、改めて自分が住んでいる都市や地域が、どういったクオリティで普段からメンテナンスされているか、突発的な出来事が起きた時にどのような対処をしているのかをきちんと見ることも、自分の普段の生活や暮らしを考える上で大きな指標になるのではないでしょうか。




2014/01/27

28日にせんきょCAMPでトーク、31日にスクーで授業やります−−都知事選をきっかけに、東京の未来について考えよう



1月28日に、せんきょCAMPで都知事選を踏まえながら東京の未来について考えよう、といった話をさせていただきます。

■YouthCreate: 【1月28日緊急開催】世界の中の東京・日本~せんきょCAMP【東京】FESTIVAL×YouthCreate ~ http://youthcreate.blogspot.jp/2014/01/128campfestivalyouthcreate.html

また、31日にはオンラインの授業サービス「schoo(スクー)」で建築家の藤村龍至さんと一緒に授業をします。

■2014年東京都知事選から、東京と日本の目指すべき姿を考える http://schoo.jp/class/402

藤村龍至さんとは、元日に放送されたNHK Eテレ「ニッポンのジレンマ」でもご一緒したのですが、そこで話があまりできなかった都市の課題や未来についてどこかで話ができたらいいなと思っていたら、ふとしたことからスクーで話をさせてもらうことになったので、色々と楽しみです。授業では、参加者のみなさんとのディスカッションも多くとって、参加者と一緒に東京について考えるきっかけとできればと思っています。

どちらも、都知事選そのものよりも、都知事選をきっかけに東京の未来や目指すべき姿について考えよう、という趣旨のイベントです。選挙前のブログ(eguchishintaro.blogspot.jp/2014/01/tokyo-tochiji.html)でも書いたのですが、東京という都市がどうあるべきか、そのための議論が足りないと最近感じるところです。

家入さんの立候補者で一部では盛り上がりを見せていますが、たしかに政策をボトムアップで吸い上げていくこと、選挙期間中でのネットを通じた盛り上がりはものすごく良いことです。しかし、同時に選挙の時にだけ盛り上がっても意味がありません。選挙期間以外でも、どれだけ議論ができるかが大事です。

もちろん、僕らが声をあげ意見を出していくという意味では、ネット選挙において今回の形は面白い取り組みだと言えますし、その点はものすごく評価できると同時に、今後のやりとりにも注目していければと思っています。注意すべきは、ボランティアで活動されている人たちが公職選挙法に引っかからないように、注意して活動してもらえたらと思います。

政策について市民が意見を言えるようになってきた社会という意味では、大きな意味を持ってきています。その次のフェーズとしては、ただ意見を発信して終わりではなく、それらをきちんとまとめ、実際の政策として反映させ社会の仕組みを最適化させていくことが必要です。そのための手法としてのオープンガバメントであり、目的としてはその政策が実現されて、始めて意味がでてくるものです。最終的に誰が知事になっても、みなさんが出した意見というのをきちんと政策やその後の都政に反映させることが重要なのです。

そのためには、実現可能性を高めるための根拠をもとにした政策提言もしていかなければいけません。そのための議論を、広く多くの人たちとともに行なって形作っていき、意見を届けるだけでなく実現へと推し進めるための地道な活動が必要なのです。私も関わっている、オープンデータを推進するOpen Konwledge Foundation Japanも、内閣府や各種官公庁の方々とやりとりをしながら、全国各地の自治体らと連携しながらオープンデータ化を進めています。

もちろん、地道な活動だけでは普段はなかなかフォーカスされにくいため、こうした選挙時や著名な人たちによる協力や発信に意味がでてきます。海外では、セレブリティこそ政治的な発言をする人も多く、自分の主義主張をきちんと発信している姿を見ることができます。

原発などのエネルギー問題も、高齢者問題、医療や介護といった福祉、教育やインフラ整備など、さまざまな政策論点が選挙では言われていますが、都市計画においてはそれらは個々の問題でしかなく、それらを包括した大きなビジョンとしての都市のあり方そのものを議論することが、圧倒的に足りていないのは確かです。

2016年に開催されるブラジルのリオデジャネイロでは、オリンピックをきっかけに都市計画を大きくたて、スマートフォンやインターネットなどのテクノロジーを活用し、政策決定に対して市民を積極的に巻き込むオープンガバメント施策を行ったりしています。(このあたりは、最新号のWIREDvol10 に詳細が載っています)

都市がどうありたいか、その中で自分たちの生活や暮らしがどうあるべきか。そして、そのために必要なテクノロジー開発も推し進めていかなければいけません。市民の意識を創発させ、新しいアイディアを生み出すための場作りも必要です。フューチャーセンターコミュニティオーガナイジングのような動きも近年日本でも注目されるようになってきました。そうした場を通じて、広く多くの人たちと対話をする場がこれからもっと重要になってきます。こうした都市の未来を考える「Urban Future」という取り組みが世界でも起きているように、東京の未来を考える「Tokyo Urban Future」といった取り組みを起こそうと、いま実は構想しています。もし、興味がある人はご連絡ください。

今回の都知事選をきっかけに、都市の未来を考える意識を多くの人がもってもらえることが、未来を作る一歩かもしれません。




2014/01/22

日本、世界から見た東京としてのあるべき姿、未来のあり方について議論する場としての都知事選であるべき




都知事選が面白くなった、などと言われているが、面白いと感じた後になにが待っているのかをみんなは理解しているのだろうか。

わたしたち都民の意見はさまざまだ。少子化、高齢化問題、医療や福祉、教育、介護、労働環境や環境問題、インフラ整備などさまざまなものがあり、その中の争点の一つとしてエネルギー問題がある、という位置づけである。

だからこそ、現在言われているような「脱原発」というワン・イシューだけが争点であることはあってはならない。もちろん、政策の訴えるポイントとして、一番有権者に対してリーチできる課題としてのエネルギー問題であることはあってよいが、それ以外の争点がおざなりでは元も子もない。

インターネットを活用した選挙や、メディアの接触時間の増加における選挙情報に対する入手の容易さやその情報の多さの中で、一つの政策だけで訴えていくことはそもそも難しい。ネット選挙の時代においては、多様化したイシューに対してどのように対処し、そうした上で、都知事という行政のトップとして、東京の未来をどうしていくか、という考えを示さなければいけない。


日本、そして世界からみたときの都知事という存在
参議院や衆議院の一議員を選ぶのとは違い、いわば大統領選挙の仕組みに近い都知事選挙は、東京という都市の方向性を定めそれを実行する人を選ぶための選挙であり、そこで選ばれる人は大きな影響力を持つ。

これまで、地方選挙は国政に比べてないがしろにされつつある傾向にあった。しかし、自分たちの日々の暮らしや生活に最も影響するのは、地方選挙であり、知事や地方議会の議員を選ぶことで、地域の生活に影響を及ぼすということを、きちんと認識すべきだ。

国政とはいわば予算配分を考えることであり、全国各地の地方の代表者としての国会議員であり、それを調整していくのが本来の仕事である。だからこそ、もともと大選挙区や中選挙区をもとに多様な意見を取り入れようとしたものが、一人しか当選できない小選挙区制度では、得票が見込みやすい世襲議員やタレントに偏りがちであり、また議員そのものがその地場とのつながりがあまりにも強くなりすぎて、大局的な国政の運営ができる存在から離れていく、という問題もあった。

そうしたものを補填として、全国各地の都道府県知事の存在は大きいと考える。地域全体の意見の集約の形として知事や各議会の存在があり、法令などに対して議会と知事がやりとりをしながら利害調整を行い、地域の総意としての意見をその地域の代表として、国会に対しても影響力を及ぼすことができるのが知事なのではないか。

ましては、東京都知事は日本の現在の首都の地域としてのトップであり、そして世界のTOKYOのトップでもあるのだ。現代のように、世界各地がグローバルにつながっている時代の中においては、日本国内だけでなく、世界から見た時の都市のあり方についても考えないといけない。

東京オリンピック、そしてその後を考えた都市計画
今回の都知事選は、たしかに原発などのエネルギー問題が争点としてあることは私は問題ないが、脱原発というただそれだけを政策イシューとすることはおかしいと感じる。電力消費の多い地域である東京から脱原発を争点に争い、日本の中でも先駆けて脱原発に対して声をあげることは間違ってはいない。だが、同時に代替案として、オルタナティブなエネルギー問題解決のための取り組みも示さないといけない。

多くの人たちも言うように、2020年の東京オリンピックに向けた施策を考えること、同時に、オリンピックとは言っても数週間のお祭りであり、2020年を踏まえたあとの2030年や2050年の東京、といったことまで考える一つの礎としての方向性やビジョンを示すことが求められるのが、都知事という存在だと考えている。6年後のみならず、それ以降を踏まえた都市計画において、以前ブログにも書いた(http://eguchishintaro.blogspot.jp/2013/09/NYC-CDO-digital-Tokyo.html)が世界におけるデジタル都市としての東京という存在に、私は未来があるのではと思う。

日本が誇るクリエイティビティやデザイン、カルチャーといったものは、いまや世界に発信できる一つのコンテンツとして昇華されている。コンテンツを支える一つのインフラとしてのインターネット、そしてものづくりも含めたデジタル技術による新しい価値創造やコンテンツづくりは、日本は世界に誇れるものだ。

ますます重要になるインターネット、デジタル技術だからこそ、そうした技術を活用してより効率的な行政運営や公共サービスの展開を行うためにも、NYのデジタル都市計画のロードマップのような中長期計画を作ることは、東京にとっても大きな意味がある。

デジタル都市としての東京の可能性
2013年にG8首脳会談で批准したオープンデータ憲章の動きは、2014年以降ますます世界的にも活発化していくトピックの一つとしてオープンデータが位置づけることができる。しかし、東京は、日本のなかでもオープンデータに関する取り組みがあまり行われていない自治体の一つだ。世界に誇る都市であるにもかかわらず、なにもしなくても人やモノ、お金が集まることに対する怠慢と、あまりに保守的な自治体運営では、日本をリードする自治体としての存在価値を見出しきれていない。

現時点において、インターネット人口やデジタル技術に携わる人口がもっとも多い東京においてこそ、デジタルを活用した環境構築は、東京こそが最も効果的に取り組める施策だ。オリンピックをきっかけに、外国から多くの人たちが押し寄せる。その時に、かつての東京オリンピックとは違うのは、デジタル技術の発達は大きい。

コミュニケーションのあり方や通信環境もそうだ。オリンピックの情報をどのように仕入れ、そして参加している人たちそれぞれが思い思いにオリンピックの様子や東京の町並みについて発信するか、という一つの大きな東京を世界にアピールするチャンスの中、Wi-Fiなどの設備面といった小さいものだけでなく、東京という都市全体のリブランディングをする絶好の機会なのだ。なにも、スポーツをやるお祭りだけが勝負じゃない。お祭りを盛り上げ、そしてお祭りをきちんと記録し、オリンピック前の期待感の醸成からオリンピック後のアフターケアまでをしっかりやることは、マーケティング視点で考えても必要な要素なはず。

ITを活用した起業促進といった側面からも、経済効果に大きな期待を寄せることができる。行政が起業支援のためのコミュニティ支援や場作りをし、世界との橋渡しをする存在として行政ができることはまだまだあるはずだ。

デジタルは海を超える。つまり、オリンピックをきっかけとした外国人観光客や外資系企業などのインバウンド施策にも通じる。デジタルを基板としたさまざまな取り組みに対して、行政自体が民間をバックアップするだけでなく、次世代の教育や日本全体のITリテラシーの向上のための取り組みを行うことで、東京での成果をもとに全国各地に展開することができる。東京起点とした日本全国への波及効果は大きい。

全国各地の自治体と連携した取り組みを行うべき
あわせて、デジタルと同時に交通網や生活基盤のインフラの整備も必要だ。人口3000万人を超える人口密集地域である東京は、それまでのコミュニケーションインフラの問題から、一極集中にならざるをえないものだった。しかし、いまや新幹線などの交通網、豊富なインター環境、IP電話、メール、SNSなどのコミュニケーション手段によって、必ずしも東京の、しかもオフィスビルで作業することだけが働く環境でないことは、誰もが実感していることだ。働き方の変容の中で、個人のモビリティを促進することは、きたる関東大震災における被害を最小限にするという意味でも、東京に一極集中している都市機能の分散というリスクヘッジにも効果がある。

日本全国に対して機能分散を行うために、東京が持っている機能の一部を地方へ移したりすることは、長期的には日本にとって大きな意味があある。福岡がシリコンバレー的な存在を目指そうとするのではれば、福岡は起業しやすい場所としての存在、京都や岐阜、金沢や福井などの地方は、近年は技術開発やアートなどでも盛んだ。大阪も、ものづくりの街として力を入れている。東京は、経済やメディアの中心としての機能を持つような場所へと特化し、機能分散を通じて全国各地の地域が活性化するための支援をしてはどうだろうか。

そのためにも、東京のみならず、全国各地の都道府県知事と連携し、各自治体との提携を行うことも視野にいれなければならない。一つあげるとすると、東京から、地方都市への移住や行き来を推進することだ。いきなり東京にオフィスを構えている企業が地方へ移転することはなかなか難しい。そこで、ある一定期間を地方都市にオフィスを構え、機能の一部を分散するための共同事業を、横断した行政同士が支援することも良いだろう。

中小企業レベルの企業であれば、3ヶ月や半年の間、東京以外の地方への会社ごとのショートステイや半移住をおこないながら、地方で働くことに慣れていってもらう。地方にショートステイしている企業は、行政などは補助金などの負担を行うことで、移動コストや移住にともなうリスクも補填できる。かわりに、その企業がもっているスキルを一定程度の時間、現地のNPOや社団法人、現地の大学などに対して還元するなどし、ネットやテキストの情報だけでは得られない最新の技術やスキルを提供することで、その地域の自治を促したり、次世代への育成や、場合によって企業のリクルーティングにも効果が得られる。同時にこれは、日本でいまだ不足しているIT技術者を増やす施策にもなり、日本の起業促進や、IT技術、ITリテラシー促進を支援する形にもなっている。

そうした活動を踏まえた上で、企業がどんな地域で居を構えても大丈夫なような心理的ハードルや文化的なハードルを下げた上で、企業活動がもっとも最適化される地域へと移りすむことが、結果として日本経済への活性化にも結びつく。それらの活動を通じて、全国各地へのネットワークが強化され、同時に地方における起業家の育成といった起業支援としてのスキームも構築しやすい。

東京という都市のリザイン、リブランディングを図る
こうした施策を通じて、東京という場所にいることが一つのブランド構築として居続ける企業や個人など、東京にいることの意味を見出すことができる。同時に、東京の法人税や住民税などを割高にすることで、そうした企業や個人は、東京というブランドを高める活動に対して積極的に寄与しやすくなり、東京というブランド価値をさらに高めることもできる。

いることのコストが上がっても、デジタルを取り入れてオープンデータを推進した公共サービスは、費用対効果の高いサービスも次第にでてくる。東京に滞在する人口が最適化されると、教育や子育てのサービスの質もあがる。場合によっては、住むことのコストが上がる、と先ほど書いたが、やりようによっては同じくらいのコストで完結できるかもしれない。

データを活用した公共サービスを通じて、医療マッチングや子育てや介護情報などの円滑になり、医療費問題の削減やゴミ処理問題の対策ができる。このあたりの事例は、すでに横浜や千葉や鯖江などでも取り組まれているものもあり、まだ一部でしか利用されていないサービスを、東京がしっかりと採用し、日本で進んだ公共サービスを提供出来るようになることは、住む人にとっても価値があり、東京に住みたいと考える人に対する吸引力も生まれる。

1960年代に建てられてたインフラの再整備や、人口減少などによるダウンサイジング化する社会において、より効果的効率的な仕組みの再構築をおこなうと同時に、全国各地の自治体と連携し、日本全体のグランドデザインを考えていく、いわば「日本列島再改造」くらいの気概をもっていくことが必要だ。もちろん、当たり前だが都知事にそこまでの権限はないため、すべてが都知事でできるわけではないが、国政が最終的には判断し、どう日本を再構築していくかを議論しなければいけない。東京都知事という存在は、国政選挙の前哨戦でもなんでもなく、日本が世界に誇る東京という自治体の未来をどう考えていくか、それらを踏まえて日本全体の再構築を考える一つの場といったものへとつながっていくものだと感がている。

都知事選というものの重要さを認識すべき
都知事がそうした存在であって欲しいという個人の考えとは逆に、すでに引退したような人たちがここぞとばかりにでてきたり、どこまでビジョンを持っているか分からないくらい勢いで出馬しようとする人たちの多くは、僕個人は賛同できない。東京という地域をどうしていくかといったビジョンが見えない立候補たち、そしてそれを見ている多くの人たちが一種のエンターテインメントかのごとく盛り上がりをみせようとする動きに対して、本当にみんなが社会という現実に対して目を逸そうとしているようにしか思えない。

世代交代という事実から目をそむけ、それでいて有権者の声を聞こうとしない旧来型の選挙や政治活動では、誰に託していいかまったくわからない。まったくもって政治が開かれていない状況では、ネット選挙以前の問題だ。

ネット選挙の根底にあるのは、有権者の声を聞き、その声を政治に反映するというオープンガバメントな要素があるからこそ意味があるものだ。同時に、未来を見据えた議論、未来に向けたアクションを行政だけでなく民間と協働して行うためのプラットフォームとしての政治であるべきなのに、その多くが有権者の意見や行動を受け止めようともしない。

東京のトップを決める選挙がこれでいいのか、と落胆してしまう。と、どんなに声をあげても、都知事選の投票権は持っていても、被選挙権が30歳であるという法律で立候補する要件を満たしていないため、自分の意見を主張する場がまだ持てずにいる。

批判は誰でもできる。しかし、代案をだす人は少ない。若い人たちが、これまでの国政や今回の都知事選で何も意見を言わない、と思っている人がいるかもしれないが、それは違う。みんなそれぞれに憤りや意見を持っている。しかし、その発信の仕方は人それぞれなのだ。もちろん、意見を言わないようにしようとか、言ってもどうせ意味ないね、と思う人もいるだろう。しかし、しっかりと現実を見ながら、着実に道を作ろうと試みている人もいるということは知ってほしい。

僕のような人間以外にも、それぞれのフィールドで声をあげたり、行動したりしている人はたくさんいるし、僕もよく知っている。そうした人達の存在を認識するためにも、若い人たちの意見にじっくりと耳を向けてみることから始めてみてはどうでしょうか。多くの人が思っている以上に、若い人たちは未来に対して考えを持っている人も多いはずだ。

先の参議院を踏まえて、今回がネット選挙としても大きな位置づけとなる都知事選に対する現在の状況の中、東京都知事も含めた、日本の政治に対する期待感がこれだけ低いという現状をどうにか変えないといけない。まだまだ何ができるかは議論する必要があるが、若い人も含めた多くの人たちが社会に対して声をあげ、行動し、自分事として世の中を感じてもらえる社会となれるよう、少しでも良いから行動していけたらと考えている。

photo by yuukin on Flickr

2014/01/13

思い出深い六本木ヒルズにあるBAR HERATLANDが閉店したことは、六本木の一つの歴史の節目だと個人的に感じる



2014年1月6日、六本木ヒルズの1階にあるBAR HEARTLAND (ハートランド)が閉店しました。

BAR HEARTLANDは、2003年4月25日に六本木ヒルズが開業すると同時に「Neighborhood Bar」というコンセプトでオープンしました。ニューヨークなどの店舗を参考に、気軽に立ち寄れるスタンディングバーで、毎日DJやVJが音楽や映像を流すバーでした。支払いもキャッシュオンデリバリーを採用し、特徴的な扇型のカウンターのどこでも注文できるスタイルは、独特のコンセプトと場の雰囲気を持った場所として、多くの人たちが毎日来るお店でした。また、店内には大画面のスクリーンを3面があり、スポーツ観戦やVJによるプロジェクションの場所としても、大掛かりな表現ができる場所として人気の場所でもありました。テレビ朝日が近いせいか、よく有名人が貸し切りで打ち上げやパーティーなどを開催したり、週末にはDJが音楽を流しながらクラブさながらな様子で賑わうなど、六本木らしさを最も感じる場所の一つでもありました。



このBAR HEARTLANDに、ちょうど東京に出てきてすぐの2007年5月から2008年の12月まで、当時まだ23歳で大学生だった私は、アルバイトとして働いていました。

東京に上京して、とりあえず面白そうなところでバイトをしてみたい、と思った時に、始めて六本木に行った時に入ったお店がこのお店でした。スタンディングスタイルでエントランスもとらず、誰もが自由に出入りしてコミュニケーションを取る海外スタイルの場所にものすごく惹かれ、同時にお客の6割近くが外国人という場所といった面白さから、すぐにバイトをしてみようと飛び込んだのが最初でした。東京に来てすぐに飛び込んだこの御店は、東京の色んな顔を知るとても良い機会だったと同時に、東京に来てすぐに色々なことを学ばせていただいた、自分にとっても思い出深い場所の一つでした。ホールにカウンターの中のバーテンダーの仕事を通じて、飲食店におけるホスピタリティを知れる良い場所でもありました。バイトを辞めてからも、定期的に足を運んでビールをちょっと飲んで帰ったり、映画を見る前に軽く一杯飲んだりする場所として通っていました。時には、お店を貸しきってイベントをやるなど、思い出深い場所でもありました。




店名でもあるハートランドビールは、キリンビールが提供していたテレビ朝日の番組がきっかけで醸造が始まり、当初はテレビ朝日直営のレストランでしか飲めないビールとして、開発されたものだったそうです。その後、1986年に六本木6丁目(今の六本木ヒルズができる前)にビアホール「ハートランド・穴ぐら」がオープンし、そこでしか飲めないビールで提供していたとのこと。



大樹をイメージした透明でエメラルドグリーンの瓶に、ラベルをなくし、瓶そのものに意匠をするといった独特のデザインでもありました。国産のキリンビールであるにも関わらず、海外のビールの雰囲気をまとったデザインで、外国人の人からも好評のようでした。いまや、全国のさまざまなバーやカフェでも飲めるくらいにポピュラーなビールとして多くの人たちに飲まれていているビールの一つだと思います。

「ハートランド・穴ぐら」の後には「つた館」といった大正時代の洋館でまさに蔦が絡まっているつた館ができました。1952年から存在するニッカウヰスキーの工場とその跡地に作られたウィスキー原酒貯蔵庫跡の「穴ぐら」と「つた館」の様子は、今や写真やブログにしかその軌跡は残っていませんが、まだヒルズができる前の六本木の文化を作った場所として、六本木の文化を担っていたのではと感じます。

ハートランド 穴ぐら + つた館の様子 http://workshop-www.com/?p=6

そこから、港区六本木6丁目の再開発を通じて完成した六本木ヒルズ開業と同時にできたBAR HEARTLANDは、まさにその前身の穴ぐらやつた館といった文化を継承しながら、2000年代の六本木の10年を担ってきた存在だったと感じます。一バイトではあったものの、六本木の文化を知るいい機会であったと同時に、ちょうどリーマン・ショックの前後の時に働いていたことを通じて、飲食店という社会情勢との関係性を一番痛感する場所で経験しました。




併せて、六本木ヒルズができてからのこの10年の軌跡を見守ってきた場所であるハートランドは、森ビルやキリンといった企業の影響を受けながら、紆余曲折がありながらも六本木の片隅に佇んていた場所でもありました。約11年という歴史の幕を閉じるということが、六本木のこれまでの10年、そして六本木そのものの文化を担った場所の終わりを迎えることに対して、一つの節目を感じずにはいられません。



86年からの穴ぐらやつた館、そして17年という歳月を通じて完成した港区六本木6丁目の再開発と六本木ヒルズの歴史を含む六本木の約30年間の歴史から見る、社会と文化の歴史を紐解くという意味でも、ハートランドという場所が持っていた磁場とその魅力は、調べてみるといろいろと歴史的にも文化的にも面白い場所なのかもしれません。そして、私自身も東京に来てから色々と学ばせてもらったという意味でも、まさに私自身の今を作る一部にもなっている場所でもあります。

今回の閉店は確かに寂しい思いですが、ハートランドビールはいまやどこでも飲めるビールとして親しまれていますし、六本木には今でも仕事上よく通う場所の一つです。かつて、こんなバーがあった、ということを忘れずに、また新しい場所ができることを期待しています。







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