2013/12/31

始める一歩と終わるデザイン




「まずは始めろ」といった言説がある。ベンチャーの人たちの間では「リーンスタートアップ」のように、スモールスタートで始めながら仮説検証を踏まえて修正し、ニーズを把握しながら展開させていくようなこともまさにその一つだろう。普段の仕事でも、起業家や経営者に話を伺っていつも出る言葉の一つには「まず始めろ」といったものがある。

たしかに、何かを始めること、一歩を踏みしめることを評価することは私も大筋では賛成だし、やらない後悔よりも実践したことを通じて得られる経験は何事にも代えがたい。

しかし、始めたものが永続するということはなく、ほとんどの行為には終わりがあることに対して、果たしてどれだけの人が意識的になっているだろうか。もちろん、始める前から終わる時のことを知ることはできない。始めたことがきっかけで、自分が思ってもみなかった方向にシフトしたり、当初の予定から離れたことになることもしばしばあるだろう。起業もそうだし、プロジェクトや団体など、何かを立ち上げたり始めることが起きる影響は少なからずある。ようは、その結果生まれたものを踏まえつつ、ある程度の節目や区切りがついた時に、しっかりと終わりを迎えさせることができるかどうか、ということだ。

サービスであれば、技術の進歩といった時代の移り変わりによって、ユーザーにとっての役目を終えたものをたたむ準備をしたり、ある一定の目標に向かって走りだしたプロジェクトは、目標を達成したことをきっかけにきちんと終わりを迎えさせられるかどうかだ。

「終わりよければすべてよし」という言葉があるように、どんな終わり方をしたかをきちんと見届けることが大切だと最近感じる事が多い。後腐れなくしっかりと相手との関係に対してきれいにするという意味では、恋愛でも同じことが言えるだろう。始めたものの責任を、しっかりと全うするためにも、「終わるデザイン」をきちんと考えることに意識的にならなければいけない。

これは、けじめとも言われるようなものかもしれない。もちろん、終わるデザインをどう考えるは人それぞれかもしれない。ある意味、個人それぞれの美学にも関わってくるだろうが、僕はできれば大事にしていきたい。

今年あったイベントでも、象徴的なものがあった。あるイベントで、2003年から続く活動が10年を迎える中、10年という節目を踏まえてどう考えるかというトークのイベントだ。その中で、いまや全国的にも広がりを見せた活動を運営されている方が、「事務局は少しづつ縮小していて、最終的には事務局も無くしてWikipediaだけで動けるようなものになれたらと思う」といったことを言われていた。つまり、もともとの活動の概念が広がり、誰もが当たり前に広がってきた中で事務局として機能を集中させて活動するのではなく、活動の経緯や思いなどをアーカイブし、そして理念に共感した人はだれでも参加できるオープンソース型の活動として、事務局的組織から脱却したいということだった。10年を迎え、活動が全国に広がってくる中、組織としての有用性の判断の中で無くすことを決定したのだろう。

運営事務局を残すことが目的ではなく、本来の目的としてある程度達成したら、その組織があり続ける理由もない。特に、会社でなくNPOやキャンペーン的な活動であればなおのことだろう。こうした判断をできることが素晴らしいと思う。目的と手段をきちんと持ち、本来持っていた目的が達成されたならばきれいに終わりを迎えさせる。仮にその事務局の活動自体が終わっても、活動によって広がった考えは、さまざまなところに残っている。その息吹を感じた次の世代が、また新しい活動を始めるきっかけとなればよいのだ。

10年以上も継続している賞やイベントなんかは、時に形骸化を招いているものも多い。もちろん中身をしっかりと吟味し、時代の変化に対応するような意識を持ったものであれば別だ。しかし、権威だけが肥大し、内実と外身が乖離してしまうようでは意味がない。本来あるべき讃えられるものやイベントの冠として意義のあるゴール設定になっているのかどうかが、その賞やイベントを名誉なものとして保ちつづけることであり、その矜持を持つことこそが求められるものでもあるべきだ。

2013年という年自体が、そうしたさまざまな活動が節目を迎える年でもあった。インターネットが誕生して20年、携帯が普及し、デジタルの活動の認知が高まり、SNSやブログなどが登場したことで、この10年という中でさまざまな出来事が飛躍的に広がってきた。

このブログは、2013年大晦日に書いている。もちろん、2013年から2014年になっても前と何も変わらないし、同じようにまた朝日が上って日が沈むだけかもしれない。しかし、多くの人は2013年を総括し、新たな夜明けとともに2014年を迎え、新しい気持ちで次の行動へと移そうとしている。そういう意味でも、年月というのも一つの節目でありけじめをつけやすいものかもしれない。心機一転、始めの一歩を迎えると同時に、それまでの振り返りをしつつ締めるところは締める、そんな気持ちが働いているのだろう。

2013年は、私自身のことを列挙すると長くなるので割愛するが、さまざまな社会の動きの中で、自分自身の立ち位置を作る年でもあった気がする。同時に、個人だけでなく、チームや組織の重要性も改めて感じた一年でもあった。2014年は、その動きを踏まえながら転換の年になるかもしれない。2014年には、30歳を迎える年でもある。30歳というのも一つの節目。自分自身としての身の振り方も、見つめなおす年なのかもしれない。

同時に、2013年は多くの諸先輩方が故人となった年でもあった。まだ逝くには早すぎた年齢の方々ばかりだった。私自身がまだお会いしたことなく、いつかお会いしてそのお考えを伺いたいと思った人たちも多かった。身近な方で、素晴らしい活躍をされた方々も多かった。もうお会いする機会がなくなることを知るたびに、彼らから何を引き継げたのかを考えている。彼らがまだやり残したこと、そして伝えたかったことを残った私たちが考え、そして次につなげていくようにしていかなければいけない。そして、彼らが安心して見届けられる様になった時、きちんとその終わりを迎えさせるためのデザインをしていくことも考えないといけない。

時代というのは、常に創造と破壊の繰り返しだ。新しいものが常に生まれ続けていくからこそ、時代が作られていく。しかし、時代を作る人も世代が交代されていく。かつて時代を作った人も、常に時代を作る人間にはなれない。次の作り手に対してバトンに渡すべきだ。そのバトンをきれいに渡し、自分の身をきれいに引くデザインができるかどうか。引き際の美学こそ、かつての日本人は持っていたはずだ。そして、バトンを受けたものは、きちんとそのバトンをゴールまで辿り着けさせるための努力をしていかないといけない。それこそが、バトンを継いだものの責任でもあるのだ。

国や社会も、常に前進し成長していくだけがすべてではない。ダウンサイジングしていくべきものを真っ向から受け入れ、急降下ではなく軟着陸していくためのデザインが求められている。数年後、そして数十年後を見越しながら、そうした中長期的視点の中でどう終わらせるためのデザインをしていくかは、成長や拡大とは違った視点でものを見ていかなくてはいけない。もちろん、新しい息吹や活動も同時に動き出している。その新しい動きを疎阻害させないためにも、一つの時代に対して区切りをつけ、次の時代への仕組みのアップデートをすることが求められているということを、きちんと認められるようにならなければいけない。

始める一歩だけではなく、終わるデザインにこそ今こそ目を向けるべきなのではないか。これを2014年を考える一つの考えということを記して、2013年を締めたい。




2013/12/24

Creative Labに参加して感じた、思考実験を行うためのアイディアソンに必要なこと

11月1日2日に行われた、Tokyo Designers Week内で企画されたCreative Labの様子が動画がアップされたようです。



Creative labは、来場者参加型の企画で、テーマに合わせたアイディアを作り出す、いわばアイディアソンみたいなもの。参加者は「公共空間を楽しくするデザイン」「世界の問題を身近に感じるデザイン」「新しい学びのカタチ」というテーマに沿ってグループ分けを行ない、各グループ毎に最終的に5分間のプレゼンを行う、というものでした。



ゲストで茂木健一郎さんや猪子寿之さん、前田紘典さん、僕という並びなのですが、茂木さんと猪子さんはMITのセッションが終わってからの参加なので、後半のプレゼンのみの参加で、僕と前田さんはセッションの通しで参加していました。

各グループ毎にファシリテーターがおり、ゲストは最後の講評時にコメントをする、というものだったのですが、せっかくなのでグループワークの間ずっと各テーブルをまわりながら、それぞれのグループに対してコメントしたり質問をしてみたりしながら過ごしていました。ちなみに、イベント自体は2日間の開催で、一日毎に参加者、司会、ファシリテーターは1日目と2日目で入れ替えだったのですが、ゲストだけは通しの参加だったので3テーマ4グループの12グループが2日間、合計24グループに対してコメントなどをする、というなかなかハードな参加となりました。

各グループともに、初めて顔を合わす人たち同士が、時間をかけてアイディアを練る場だったのですが、やはり面白いアイディアとそうでないアイディアに別れるもので、2日間で多くのグループの内容を聞いて感じたことを踏まえつつ、アイデアを出す場で重要な要素についてまとめてみたいと思います。



・思ったことを、まずは言ってみる
当たり前かもしれませんが、会話を続けることがこうした場では大切です。また、「相手の発言を否定しない」にもつながりますが、自分がなんとなく当たり前だと思っていることやふと口にしたことから議論が発展したり思いがけないヒントがでてくるかもしれません。アイデアを出す場は、なんでもいいから思ったことを言っている、まずはそこからです。

・メモ代わりに目の前の模造紙やふせんに書いてみる
こうしたワークショップでは、模造紙やふせんを使ってワークすることが多いのですが、普段ワークショップに慣れていない人からしたらふせんや模造紙の使い方がいまいちよく分からないのも事実です。もちろん、使い方などは最初に指示されたりするのですが、書いていいよと言われても初めての人はなかなか手が動きにくかったりします。場によって多少変わるかもしれませんが、思ったことを言ってみると同じくらい、思ったこと発言したことをメモに残すというのは重要なことです。そうしないと、議論が発展した時に前の発言を振り返ったり、ふせんに各人のアイデアを書き込んだものを、あとで再整理したりすることができなくなるかもしれません。

口を動かすと同時に手を動かし、発言したこと思ったこと、思考の断片をふせんやメモに書いていくこと。そして、最も重要なものは書いたものをみんなにもシェアすることです。そうすることで、議論が発展しやすくなります。

・相手の発言を否定しない
アイデアを出す場は、いわば思考実験の場です。そこでは、正しいとか正しくないといったことはありません。とことんアイデアを出し、そして、誰かが発言した内容が自分と似てることから自分の話が発展したり、相手の発言をうけて閃いたアイデアがでてくるかもしれません。そのためには、相手の発言を否定するのではなく「なるほど、そういう考えもあるな」とまずは受け止めることが大事です。

・相手の話に乗っかってみる
議論を発展させるためには、相手を否定しないだけではなく、相手の話に乗っかってみることも大いにありです。「それのアイデアだったら、もっとこうすると良くなるかも」「それがありなら、こっちもありじゃね?」などなど、話を広げていくことでアイデアが思いがけない方向におき、予想しなかった形になるかもしれません。どんな意見もありだと思い、発展させるよう心がけることが、こうした場では大切だったりします。

・そもそも論(WHY)を考えてみる
ファシリテーターにも必要かもしれませんが、議論の中で「これが問題だ、ボトルネックだ」といった内容が出た時、その問題が生まれた原因を考えたり、なぜそれが発生するのか、無意識的に行動していることみんなが常識だと思っているものを疑う意識、つまりWHYを考えることから、本質的な課題が見えてくることがあるかもしれません。場合によっては、そのボトルネックを解消することが、素晴らしいイノベーションや新しいアイデアの種になりうるのだから。

・現実論はしない
WHYを考えるときにも通じますが、現実論が議論の時にネックになることがしばしばあります。アイデアを出したはいいが、そのアイデアが本当に意味があるかどうかという話の中で、法律の問題や現実の仕組みの話をしがちな人がいます。もちろん、ビジネスモデルとして考える時はそれは必要な要素ですが、この短い時間で法律について議論する暇はないので、ここでは現実論は極力しないほうがよいと思います。アイデアを生み出すことが求められている場なので、思考実験だと思って色んな枠やしがらみを取っ払った発想を持って話をしてみましょう。

・その場をできるだけ楽しむ
いろんなことを言いましたが、一番大事なものはこれです。仕事でもない場ですし、数時間をお初な人たちと一緒に場を共有し、最後にアウトプットしなければいけない場だからこそ、その場をめいいっぱい楽しみ、色んな刺激や発想を見出す場だと思うことが一番です。その場にいることが楽しく感じられないのならば、せっかくのいいアイデアも出てきません。「それもありだね!じゃあこれはどう?」みたいな感じで、アイデアのキャッチボールをする楽しみを見出すことが、なによりも大切な意識なのではないでしょうか。


正しいことは正しくない、という意識を持つこと
こんなところでしょうか。もちろん、最終的にプレゼンされたアイデアを実現しようと思うのならば、ターゲットを精査したり、マネタイズを考えたり予算や技術論の話をしなければいけませんが、それは次のフェーズ。日ごろ自分が思っている不満や不思議だと思っていること、これってもう少しこうしたら良くなるのでは、といった普段の感覚を解放する場だと考え、思考を柔軟にする実験の場として捉えましょう。

Creative labの動画の中で、茂木健一郎さんが「いい人にはイノベーションは起こせない」といった言葉や、MIT副所長の石井裕さんの「正しいことは間違ってる。イレギュラーなものの発想で、考えること」といったことは、イノベーションは新しいものを生み出す源泉として、現実を否定してみるといった思考実験や、正しいということはすでに認められている、もしくはある程度予想できるようなものであるという考えをもち、現実にないものを考えてみることから、次の時代のヒントが生まれてくるのではないでしょうか。

そうした意味では、今回のCreative Labo参加者のアイディアを出すことの意識や思考実験の場に対する差が見られたのではと思います。例えば、満員電車を解消することを考えるときに、「満員電車をいかに楽しく」と考えるか、「そもそもとして、満員電車がなぜ発生するのか」といったことを考えるだけで、思考のベクトルは変わってきます。議論の途中で、僕があえて「公共空間って、そもそもなんなんだろうね?公共の反対を考えてみよう」と投げかけたことで、議論に幅ができたグループもありました。(そのチームは、最終的に喫煙スペースに関してのアイデアを発表しました)

時間も、13時スタートでオリエンが始まり、14時から19時終わりと、約4時間近い議論の時間がありました。なので、最初のメンバーとの議論として、思いっきり突拍子もないことを言いながら、そこからじょじょにブラッシュアップしていって、最後のプレゼンで形に持っていく、という時間配分も意識することだと思います。

参加者の発言を促すためにも、ファシリテーターはうまく相槌なり発言者の言葉に対して「それってどういうこと?」「そう思ったきっかけは?」など、うまく発言した人の内容を飛躍させたりすることで、議論や思考の幅を広げることができると思います。そうした意味でも、ファシリテーターの役割も大きく占めています。今回のCreative Labでは、ファシリテーターに対しての事前の共有や意識のすりあわせをする時間があまりなかったように思えたので、そこがもう少し事前にやりとりができたら、もっと良いものになったのではと思います。


アウトプットではなく、過程にこそ意味がある
少し話が逸れるかもしれませんが、ニューヨーク大学教授のクレイ・シャーキー氏が、あるキーノートプレゼンでこんな発言をしました。



”Hackathon doesn't make output.〜Social capital develop.〜Understanding problems”
「ハッカソンは、アウトプットを生み出す場じゃない。参加したメンバーとの関係性を深め、そこで提示された問題を深く理解することだ」
ハッカソンは、ハックとマラソンを合わせた言葉で、あるアイデアやテーマに関してのプロトタイプ作りや共同作業を行うイベント。最低でも1日から数日かけて行われるイベントで、時に実際にプログラミングをする前に、アイデアソンのようにアイデアを話し合い、ソリューションを導き出すための時間があったりします。

そんなハッカソンに対してクレイ・シャーキー氏が語っている内容は、今回のCreative Labにも通じるものがあります。つまり、その場で話されたことや最終的にプレゼンをしたアイデアそのものではなく、ある一定期間メンバーと思考をフル回転させながら議論し、アイデアを生み出してブラッシュアップしていくその過程にこそ意味があるのです。正直な話、実際に形になるだけの斬新なアイディアが、会って数時間で議論したメンバー同士では生まれにくいことがほとんどかもしれません。猪子さんが、動画で「社員と常に会話したり議論しながら、アイディアに対して研ぎしましていく。同じ人と長時間議論することで、行間が生まれ、新しい方法を見出すことがある」といったことを話しているように、ある程度気心がしている人同士で、本音で言い合ったりふとしたことがきっかけでソリューションを見出すこともあります。

グループで議論したことがきっかけで、メンバー同士が出会って数時間後には互いにある程度の本音で議論する関係性が築けることで、その後に一緒に会社を作ったり、何か別のプロジェクトを作る時のメンバーになったりすることがあるかもしれません。StartupWeekendのような場では、そこで出会った人たちと、プレゼンした内容を本当に事業化しようとイベントが終わったあとも議論し、さらなるブラッシュアップをして起業する人たちもいるほどです。

テーマとして設定されている問題に対して真剣に取り組むことで、問題をさらに深く理解することができます。今回であれば、「公共空間って?」「学びってなんだろう?」「世界との関係ってどうなるんだろう?」といった問題に対して考えるきっかけになったと思います。こうした場を通じてさまざまな問題をより身近な意識となることで、普段の生活においても何かのきっかけでふと考えてみたり、より深い考察ができるようになるかもしれません。イベントに参加して、最後にプレゼンして終わりではなく、こうしたワークショップの場を通じて経験したプロセスにこそ意味があり、そして何か次につながるものを見出すことが最も大切なことなのです。


思考実験をする場の重要性は、増してくる
閉塞感や新しいものを生み出すことが求められている今の時代、こうした思考実験をして議論する場の重要性は増してきているように思えます。今回Tokyo Designers Week内で参加型のイベントとして開催されたCreative Laboは、誰もが参加し、日ごろ思っている考えをシェアしたりするところから新しいデザインの種が生まれてくるきっかけを作ることを目的にしたという意味では、これも一つのデザインの実験の場だったかなと思います。来年は、もっと盛り上がっていけるようなものなればいいなと思うと同時に、また何かしらお手伝いしたいですね。

ワークショップという場やファシリテーターという役割の重要性自体も、考えをシェアしたりアイデアをだす場が増えてきていると同時に求められているのではないでしょうか。参加者の意見を吸い上げ、議論を発展させたりそれまでになかった形を生み出すサポートをするファシリテーターという存在も含めて、思考実験の場というものの場の重要性も含めて、今後考えていかなければいけないものではないでしょうか。

2013/12/10

出会いから2年半。友人であるグッドパッチのつっちーが、新しい一歩を踏み始めた。



今日CNETで記事を書いたが、友人である土屋尚史氏が、デジタルガレージから資金調達をしました。

UI設計に特化したグッドパッチ、デジタルガレージから1億円を調達 - CNET Japan http://japan.cnet.com/news/business/35041091/

土屋氏、いや、ここではいつも呼んでるつっちーと書きたいと思います。ここからは、つっちーとの出会いなど個人的な経緯や感想の内容です。


そもそもの出会いは、2011年6月に僕がアメリカを旅してた時のこと。サンフランシスコにいた時に、現地で活躍している日本人や日本人起業家に会いにいきたいと思って目についたのが、ウェブデザインやマーケティングを手掛けているbtraxでした。当時は、日本でもスタートアップが盛り上がりを見せており、サンフランシスコやシリコンバレーで起きているスタートアップの動きなどをブログで発信していたりしていて、面白そうだなと思っていました。そこで、思い立ったら吉日ということで、btrax社に訪問(しかも突アポ!)で行き、最初は受付の人しかその日はおらず、連絡するから、ということで追い返されました。次の日、いぜん連絡もなかったけど暇だったので懲りずに再度訪問!

その時に、当時インターンをしていたつっちーと遭遇しました。ただ、いかんせん中身がよくわからない若造が、しかも突アポで一度追い返されたのにまた来たということで、つっちーたちは「なんか、変なやつが来た」と思ったのか、早々に追い返そうかなと思っていたそうです(笑)。そこで、自己紹介兼ねて色々と話をすると、当時運営していた84ismのことをつっちーが知ってて、そこから日本のスタートアップのことやベンチャーのことで一気に話が弾み、ちょうどbtraxがイベントをもうすぐやるということで、インタビューをさせてもらうことになったのが始まりでした。その時のインタビューはこちら。

日本とSan Franciscoをつなぐ、btraxさんにお邪魔して日本人インターンの方に話を聞いてきた@サンフランシスコ / ハチヨンイズム http://84ism.jp/13436



そのあとは、意気投合してサンフランシスコにあるコワーキングスペースでinstagramなどが誕生した「Dogpatch labs」(現在は、サンフランシスコから移転)やTwitterを案内してもらったりして、「今度日本に帰ったら、一緒にコワーキングスペース作ろうぜ!」と盛り上がりました。

その後、2011年9月11日にNYにいたいという思いから6月からアメリカやカナダの各地を一人でうろうろとする旅も終え、9月末に帰国した時、つっちーがちょうどGoodpatchを立ち上げた時でした。(ちなみに、Goodpatchの名前の由来は、案内してもらったDogpatch labsを由来にしているそうです)その後、僕自身がもともとHUBを知っていて、HUBを東京で作りたいという思いを持って、そのためにアメリカ各地のコワーキングスペースやスタートアップを取材したりしていました。アメリカのさまざまなカルチャーを学んで帰国したこともあり、つっちーと一緒に、HUB Tokyoを立ち上げよう!ということで、始めはGoodpatchの一事業として進めることとなりました。同じ時期に、HUBを作りたいという思いから帰国していた槌屋詩野さんや片口美保子さんとも出会い、2011年の12月くらいから、みんなで一緒に事業を作っていこうということでMTGをしたりワークショップをやったりと、それぞれの思いを共有しながらHUBを作っていこうという動きとなりました。

さまざまな人との出会いや別れ、驚きや発見、HUBを作るという思いに共感した人たちとのつながりなど、色々なことが続きながらHUBを進めていくための議論を重ねてきました。それぞれの考えている方向性についてなど、まさに腹を割って時に涙を流すこともありました。その中で、つっちーは共同創業者と別路を迎え、一人でGoodpatchという事業を進めるにあたり、事業に集中し新しいステージに動いていこうという決断をしました。僕も編集者、ジャーナリストとしての活動や、ちょうどネット選挙解禁に向けた動きがこのタイミングだからこそやらなければいけない!という切実な思いからOne Voice Campaignを立ち上げるなどし、HUBを作るために離職までした詩野さんと片口さんが選任で取り組み、僕たちはサポートに回るような体制を迎え、各人それぞれの歩むべき道を突き進んでいきました。HUB Tokyoは、その後詩野さん片口さんを含めた素晴らしいチームが、アントレプレナーを生み出す世界に誇るグローバルコミュニティを作り上げ、設立から1年が過ぎようとしています。それぞれの道を歩みつつも、互いに腹を割って議論した仲間として、陰ながら今も時折HUBには足を運んだりしています。

帰国してすぐにStartupDating(現、THE BRIDGE)やCNET Japanで記事を書くライターとして活動するようになった僕は、改めてつっちーと、同じITスタートアップ界隈の中でのそれぞれの立場の中で活動することとなりました。2012年の春から約1年半弱、つっちーとの出会いを含めるとちょうど2年半。その後、つっちーは一人から今では20人を超える社員を抱えるくらいの企業へと成長させました。今回の調達に関してTHE BRIDGEのインタビューで、つっちはこう語っています。「設立当初は受注を増やすのに苦労しましたが、昨年6月に江口さんに書いてもらった記事によって、Gunosy のデザインをグッドパッチが担当していると広く知れ渡り、それ以来、受けきれないくらいの仕事が舞い込むようになりました。」

ここで言う記事とは、僕が書いたGunosyリニューアルの記事のことです。

[インタビュー]情報の新しい流れをつくりたい–東大のエンジニア集団が立ち上げた次世代マガジンサービスGunosy - THE BRIDGE http://thebridge.jp/2012/06/interview_gunosy

これは、つっちーがGoodpatchを立ち上げてすぐに「面白い大学院生が面白いサービス作ったんだけど、UIがもったいなら手伝ってる」という話を聞いたことがきっかけでした。その後、Gunosyの関くんとも別のイベントで会い、話が盛り上がったことがきっかけで、ぜひ話を聞かせて欲しいということで当時はほとんどGunosyについて書かれている記事が皆無だった時に、Gunosy立ち上げからサービスに対する思い、今後について話を伺い、記事にしました。おかげさまで、記事は多くの人たちに読まれ、記事のおかげか、Gunosyもユーザー数が1万人以上になり、つっちーにもGunosyのサービスリニューアルに携わったことがきっかけで仕事が舞い込んだ、という意味では、僕が書いた記事が何かしたらの意味をなしたのかなと思います。しかし、たしかに僕は記事を書いたかもしれませんが、それはたまたまの結果論であり、その前提にはつっちーがシリコンバレーで関くんと出会い、Goodpatchを立ち上げてGunosyのデザインを引き受け素晴らしいデザインへと仕上げたことです。そして、たまたまサンフランシスコで僕とつっちーが出会ったことが、偶然つながった結果なのです。その結果を作ったのは、他でもないつっちーやGunosyのメンバーの人たちの行動力や実力があったからこそだと僕は思います。

人の運命やきっかけは、何が起きるか分かりません。しかし、人との一期一会の出会いの中で、懸命にコミュニケーションしたことが1年後、2年後、いや10年後に意味をなすことは大いにありえます。大事なのは、その中で生まれる人との出会いやつながりをしっかりと大事にしていくことです。それは、常に一緒にいろとかソーシャル上で日々コミュニケーションしたり相手の行動をチェックする、ということでありません。腹を割り、互いに持っている考えを真に共有することで、後は相手がどんなことをやっているかよりも、どんな思いでそれに取り組んでいるか、ということを尊重することだと思います。実際、つっちーとは、サンフランシスコで一度会っただけなのに、東京に帰国したら一緒に事業やっていこう!と意気投合したりしたのも、サンフランシスコという場所で互いに持っている思いを腹を割って共有したからこそであり、そしてその後に実際に事業に向けて手を動かし、結果的に別路になっても、それまでの共有体験があるからこそ、離れていても仲間であるということだけをもとに応援し、やりとりをしてきただけなのです。

実際、つっちーが秋葉原にオフィスを構えてからは、オフィス移転や一周年パーティ以外ではほとんどつっちーとは会っていませんし、TwitterやFacebook上でも時折コミュニケーションを交わすくらいでした。しかし、なんとなく活躍の声は風の便りでうかがい知れるし、僕の活動もつっちーは会った時に話をしたりとなんとなく知っていたみたいでした。そんなもんです。けど、そんなもんでも、分かり合えるものはあると思うんです。

もちろん、だからといってGoodpatchに肩入れしようとしてるわけではありません。一メディアの人間としての職業の矜持は持った上で話をし、仕事の話以外では友人であり仲間として接しています。もちろん、彼もそのことは理解していることでしょう。友人であるからこそ、ビジネスとプライベートはきっちりと分けなければいけません。

創業してからの苦難は、どんなに友人であってもその苦労や苦難は計り知ることはできませんし、それは絶対に分かることはできません。しかし、成果を出したことに対しては公平に評価をし、応援していくことは大事です。改めて、今回のニュースは、つっちーの、そしてGoodpatchとしての新しいステージへと歩もうとする一つの結節点になるのだと個人的に思います。今後の活動や新しいサービスも含めて、友人が活躍してくれることを陰ながら応援していければと思います。

こうして、仲間が活躍するのを見ることで、自分も頑張らなきゃとという発破をかけながら、次は自分の番だと思いながら、日々歩んでいこうと改めて決心しました。

2013/12/04

「僕らが描くこの国のカタチ2014」というテーマで、元日スペシャル「ニッポンのジレンマ」に出演します



(写真は、2013年元日スペシャルのもの)

元日放送予定の、NHKEテレの討論番組「ニッポンのジレンマ」(http://www.nhk.or.jp/jirenma/)に登壇することとなりました。

テーマは「僕らが描くこの国のカタチ2014」

ネット選挙解禁の動きやオープンガバメントといった動きに携わってきている中、国や社会のあり方をどう考えていくか、そして、前回のテーマで「新TOKYO論」ということが話され、これからの東京も含めた都市のあり方や未来、暮らし方や生き方について議論するような場ともつながっていくのかなと思います。

自分自身のテーマとしても、どのように社会の仕組みをアップデートしていくか、という大きなテーマの中で、テクノロジーもデザインも、メディアもスタートアップも、さまざまものを融合させ、新しい価値やこれからの社会にとって必要なものをこれからも作っていきたいと思っています。

そんなことが、話せたらなと思っています。収録はこれからですが、なにかこんなこと話してほしい、という人とかいれば、ぜひ、コメントください。

また、登壇者も豪華で、ビジネス、テクノロジー視点では、Wantedlyの仲さんやChange.orgの絵美、はあちゅうさんに家入さんというメンツ。そんでもって学者、研究者側では、『中国化する日本』の與那覇先生や『永続敗戦論』の白井先生、先崎先生に施先生、そして建築家の藤村さんと、お会いしてみたかった方々との一緒のテーブルということで、どんな話ができるか楽しみです。

お時間ある人は、ぜひ視聴してもらえると嬉しいです。


NHK 新世代が解く!ニッポンのジレンマ http://www.nhk.or.jp/jirenma/form_ga.html

概要
恒例の元日SP!
「僕らが描く この国のカタチ2014」

恒例となった元日の大討論。今回は2時間半にわたり、
70年代以降生まれのジレンマ世代の論客が「この国のかたち」を考える。
「内向き」「保守化」など、大人たちが貼ったレッテルなんて、大きな勘違い!
ジレンマ世代は、この国が抱えた様々な問題を、これまでにない発想で書き換えようとしている。
僕たちの前に広がる、新たな未来地図。 徹底討論で、その姿が浮かび上がってくる。


ゲストパネラー
◇家入一真(起業家・投資家・クリエイター /1978年生まれ)
◇伊藤春香(会社員・週末作家 /1986年生まれ)
◇江口晋太朗(編集者・ジャーナリスト /1984年生まれ)
◇白井聡(文化学園大学助教 /1977年生まれ)
◇施 光恒(九州大学大学院比較社会文化研究院准教授 /1971年生まれ)
◇先崎彰容(東日本国際大学准教授 /1975年生まれ)
◇仲 暁子(ウォンテッドリー株式会社代表取締役CEO /1984年生まれ)
◇ハリス鈴木絵美(Change.org 日本代表 /1983年生まれ)
◇藤村 龍至(建築家・ソーシャルアーキテクト /1976年生まれ)
◇與那覇 潤(日本史研究者・愛知県立大学准教授 /1979年生まれ)


M C
◆古市 憲寿(社会学者 1985年生まれ)
◆青井 実 (NHKアナウンサー 1981年生まれ)
◆橋本奈穂子(NHKアナウンサー 1980年生まれ)






21世紀型の都市が持つべき7つの戦略とCivic Hackerへのマインドシフト

この記事は、Civic Tech (シビックテック)をテーマにした、「Civic Tech Advent Calendar」企画の3日目のための記事です。他の記事はhttp://qiita.com/advent-calendar/2013/civictechの一覧から見れるようになっており、日ごとに記事が増えていく予定です。

(この記事は、Qiitaに書いたブログ21世紀型の都市が持つべき7つの戦略とCivic Hackerへのマインドシフトに加筆修正したものです)





21世紀型の都市が持つべき7つの戦略
Advent Calenderということなので、色んな視点からCivic Techについてみなさんと書き紡いでいければと思っています。

海外でCivic Techに関連したウェブメディアとして、Goverment Technologyというサイトがあります。海外のCivic Techの事例やオープンデータの動き、オープンガバメントの事例など、さまざまなものが紹介されたりしています。その中で、Code for AmericaのAbhi Nemani氏(co-director)が10月に寄稿したものがありました。詳細は、原文を読んでもらえればと思うのですが、「7 Tactics for 21st-Century Cities(21世紀型の都市が持つべき7つの戦略)」と題した内容でした。5年目を迎えるCode for Americaが活動してきた中で、これまで10以上の自治体と関わりながら、地域課題と向き合ってきた彼らが考える、これからの都市のあり方についての提言、といった内容でした。

見出しを中心に紹介しつつ、内容についてのコメントをしていきながら、ブログを書いていってみたいと思います。


1. CREATE A SPACE TO EXPERIMENT. (実験ができる空間を作れ)
さまざまな人が集まる場所でトライ・アンド・エラーをし、そこから新しいチャレンジをしていくための場所が、都市には必要です。東京を例にすると、都市の余白が存在せず、ほとんどの人はお店やカフェといった既成の場所に収まりがちです。しかし、公園といった誰の所有でもない公共的な場所を通じて、色んな人が集える場所があることから、新しいものは生まれるのかもしれません。そういう意味では、東京はあまりにニューヨークなどと比べてふらっと立ち寄れる公園はたしかに少ない。ちょっとした憩いの空間や、多用な人たちが集まれる場所から、クリエイティブなものは生まれてくるのではないでしょうか。

2. USE GOOD DATA FOR BETTER DECISIONS.(最適な決定のために、良いデータを使おう)
オープンガバメントの流れの中には、オープンデータも含まれています。オープンデータとは、広く公開し誰でも自由に使えるようにし、営利非営利問わずに使えるデータのことを指します。気象データや人口統計などの統計情報、行政期間が保有する地理空間情報や防災・減災情報などの公共データを、利用しやすい形で公開することがまさにそれでしょう。

そうした膨大なデータが、行政府の中には多く眠っています。そうしたデータを有効活用することで、ビジネス創発が見込まれるという研究発表も生まれています。しかし、ビジネスだけではなく、普段の生活においてデータを活用することで生活が豊かになったりすることも大切な視点です。さらには、行政府の政治的判断においても、こうした統計データを活用し、より効率的で効果の高い行政判断をすることが求められます。

地域の資源を活用し、市民や民間企業主導で地域の問題を解決していくボトムアップ型の社会を目指すためにも、どのようにデータを活用するのかを市民や民間企業自らが見出すことで、より地域を良くする判断材料として、データを使うことを前提とした社会にしていくことだと考えられます。

3. DESIGN FOR/WITH CITIZENS.(市民のために、市民とともにデザインすること)
イギリス政府は、オープンデータの活用としても有名ですが、同時にデザインの視点でも有名な国です。その中でも、「サービスデザイン」という視点が求められています。サービスデザインとは、製品やサービス単体だけに注力するのではなく、サービス全体のデザイン設計を行ない、デザイナーがクリエイティブとイノベイティブを組み合わせていき、デザインシンキングなどのデザインの手法を取り入れながら、ユーザー視点からサービスを便利で欲しいと思うものにすることです。さらに、企業や行政府も、ユーザー視点での便利だけではなく、利益を出す仕組みを構築し多くの価値を生み出す方法と考えられています。(サービスデザインの具体的な話は、『THIS IS SERVICE DESIGN THINKING. Basics - Tools - Cases ー 領域横断的アプローチによるビジネスモデルの設計』に詳しい)

実際、イギリスではサービスデザインを使った教育の質向上や糖尿病や失業減少のためのプロジェクトがあり、イギリス政府は、すべてのデジタルサービスをサービスデザインにもとづいたマニュアルの基準を満たすべきという指針を発表するような動きも見せています。(詳細はGovernment Digital Service Design Principlesを参照)どんなサービスも、それを使う人の視点にたち、よりよいユーザ体験を作ることが求められています。そして、それは公共サービスであっても同様です。そのためにも、サービスの設計段階からさまざまなUXの手法を通じたサービス設計を行うことが、企業だけでなく行政府も考えないといけない時代になっているのだと思います。

4. DON’T BE AN ISLAND.(ガラパゴス化に陥るな!)
インターネットも含めて、いまや世界のさまざまな都市や地域が情報インフラによってネットワーク化されています。また、日本も含めて行政府はどこもベースの仕組みは同じであり、効率化を求める意味でもできるだけ仕組みはシェアしながら、細部をローカライズする意識を持つことが大切なのではと思います。

実は、自治体で一つの事例を作ればオープンマインドになれば一気にヨコ展開できる可能性が大きいとも言えます。だからこそ、オープンマインドをもち、できるだけ隣の自治体の良い所や仕組みを共有することで、よりスピーディに仕組みをアップデートすることができるのです。だからこそ、自治体はガラパゴス化するのではなく、ベースの仕組みやノウハウをもっと共有し、その余ったリソースの上で、ローカライズや独自の課題解決などのユニークさに力を入れるべきなのです。


5. TAP INTO THE COMMUNITY’S CAPACITY.(コミュニティの力を借りよう)
ライフスタイルの多様化などによって、もはや行政府だけですべてを賄うことができない時代となっています。私たち市民は、これまでは行政府にお任せにしていればなんとか地域の問題解決ができたかもしれませんが、そうは言えない時代とも言えます。そして、そのことは私たち市民が自覚するだけではなく、行政府の中の人たちも、自分たちですべてを賄おうという意識から脱却しなければいけません。

往々にして、行政府の人たちはマジメな人たちが多く、そして使命感や責任感に駆られています。私もかつて公務員でしたが、公務員の多くはそうした意識を持った人は少なくありません。しかし、その責任感から、なかなか助けを求めることが苦手だったりして、すべてを抱え込もうとしがちです。そうした重荷を開放し、一緒になって地域の解決のために働きかけようとするマインドシフトが大事だったります。

強いリーダーシップを持って行政府を担おうとするのではなく、広く市民の力を借りながら、市民の力を120%引き出すようなファシリテーターのような役割が、政治家や自治体の人たちにも求められています。そして、最後の形の仕上げや決定を行い、協働意識を持って地域を良くしていく。そうした、コミュニティの力を借りながら動くことが大切なのです。


6. BIAS TOWARD OPEN.(オープンであることを受け入れること)
これまで、行政府がどのように動いているのかが見えづらいものでした。しかし、これからの時代に対応した変革を作っていくためには、オープンイノベーションを促進していかなければいけません。そのためには、オープンにできるものは積極的にオープンにし、そしてデジタルをベースにデータ活用を前提とした社会へと移行することが大切です。そのために、何をオープンにしていくかという「オープンポリシー」をしっかりと制定し、市民に対して納得のいく仕組みづくりをすることによって、協働を図ることができます。そして、オープンデータ化を促進したオープンガバメントであることが当たり前な意識になるように、動いていくことが必要なのです。


7. TAKE TECH SERIOUSLY.(テクノロジーについて真剣に考え、活用していくこと)
これまで、テクノロジーやIT業界などの一部のものしか必要のないものだと考えてきました。しかし、PCが普及し、そしてスマートフォンが一般化してきている現在、そして5年後には今以上に一般化する社会を迎えているいま、もはや「テクノロジー」という言葉自体が誰もがテクノロジーだと気づかないくらいに当たり前なものとなってきます。

同時に、テクノロジーは一つのツールであり、手段なのです。そして、ツールを良くも悪くも使うのは、私たち次第なのです。一般化したものがどのように使われるか、それは、その地域やその国自体の民度が問われているとも言えると私は思います。

だからこそ、「テクノロジー」という言葉やツールを敬遠するのではなく、使うことを前提とした社会であると認識し、どういう風に活用し社会に活かしていくかを誰もが考えていくことが大切なのです。これこそが、まさにCivic Techの本質であり、改めてテクノロジーというものではなく、私たちの暮らしや地域、そして社会や国全体に対して、どのようにテクノロジーを使っていくのかを、真剣に考えていく時代なのです。

さまざまなITスタートアップが生まれてきている中、日本でも今後はCivic Startup、Civic Entrepreneursが生まれてくるような仕組みづくりをしていくことが、必要なのではないでしょうか。

Civic Hackerへとマインドシフトすること
Civic Tech を使う人たちのことを、Civic Hacker(シビックハッカー)とも呼ばれています。しかし、「Hacker」という名前がついていますが、必ずしもコードやプログラミングができる必要性もないと、私は思います。

ツールをどのように活用していくかを考えるアイディアを持っていたり、よりそのツールが使われやすいようにデザインしたり、サービス設計を行うサービスデザインの視点を持ったデザイナーも、ある意味でCivic Hackerと呼べると思います。

そして、ガバメントと呼ばれる言葉は、もともとは行政府は私たち市民が作った仕組みであり、私たちの権利を拡張した仕組みであると考えるとすると、私たちそのものが仕組みを作る存在とも言えます。つまり、ガバメントという言葉の中には、「セルフガバメント(自治)」という言葉が内包されているとも言えるのです。

そして、地域や社会というのは、自分も含めたさまざまな人たちと協働していくことが求められるものでもあります。つまり、Civic Hackerという存在は、私たち自身で、私たち同士で地域に対して働きかけることが大事なのです。そのためには、DIWO(Do It With Others)やDIO(Do It Ourself)の精神、つまり、協働の精神を持ち、クリエイティブな考えの中で、社会に対してアップデートしていくように働きかけることなのかもしれません。

根底にあるのは、私たちがどのように暮らしていき、どのように地域に対して行動していくかを持つようなマインドを持つかなのです。そうした意味では、21世紀型の都市づくりにおいては、いかに協働の精神を持つかというマインドシフトが求められてる時代とも言えるのかもしれません。






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