2013/11/18

ウェブマガジン「マチノコト」を立ち上げて2ヶ月が経ったことやイベント登壇、最近考えていることなど

以前、社会を私たちごと化するために。まちづくり・コミュニティデザインをテーマにしたウェブマガジン「マチノコト」をリリースしました という記事の通り、マチノコトというメディアで日々、全国各地の地域づくりの取り組みなどを紹介しています。毎日、全国のローカルのメディアを調査したり、実際に地域で活動しているNPOや個人の方々からの情報をもとに編集し、コミュニティデザインの事例や活動の詳細、行政などと活動している最新の動きについての記事を書いています。



そんな中、ソトコトの2013年12月号が「コミュニティデザイン術」という特集で、studio-Lの山崎亮さんやリトルトーキョーの中村健太さんなど、コミュニティデザインやまちのプロデュースを行っている人たちについての話が紹介されていました。そのソトコトで毎号掲載されているコーナーのひとつ、「まちのプロデューサー論」で、「マチノコト」が紹介されており、マチノコトの編集を担当している僕とモリくんとが、マチノコトを作った経緯やまちづくりに対して二人が考えていること、そしてマチノコトの編集で大事にしていることについて話をさせていただきました。

ソトコトのテーマもコミュニティデザインですし、マチノコトとすごくリンクしていると思うので、近くの書店で見かけたら読んでみてください。




また、発行人である横尾さんと僕とのインタビューが、greenz.jpにて掲載されました。

行政が横展開できる情報発信を!横尾俊成さん&江口晋太朗さんに聞くウェブマガジン「マチノコト」が目指すこと [政治のつかいかた] | greenz.jp グリーンズ

こちらは、当初立ち上げたスタンバイからマチノコトへとシフトした理由や、マチノコトに対する二人の思いについて書かれています。僕自身の話としても、ネット選挙解禁の活動のOne Voice Campaignからのマチノコト、そして、Code for Japanの立ち上げといった活動など、「地域と主体性をもった自治意識、そして市民と行政との協働の可能性とこれから」という今の僕のテーマについても話をさせていただきました。

江口 「政治をもっと身近に」というときに、国や世界といった大きなものごとを考えてしまいがちですが、それだと概念的ではなかなかイメージが沸きません。そこで大事になるのが、目の前のことに目を向けることだと思うんです。
道端にゴミが落ちていたり、標識が壊れていたり地元の子育て問題を考えたりといったところから、社会や政治との関わり方が見えてきます。また、そうした課題があることを認識するだけではなく、課題を課題だと広く共有することも一つの政治参加です。例えば、ひとつのツイートで、オピニオンが広がっていくこともありえます。
小さくてもいいから、具体的なアクションを積み重ねていくことでしか、社会は良くならない。そのためには、自身の住んでいる地域や暮らしを見つめなおすことが大切です。(グリーンズインタビューより抜粋)


地域づくりには、個人や民間だけでなく政治や行政も大きく関わってきます。そうした上で、マチノコトでできること、Code for Japanでできること、そして、僕個人としてできることなどを、これから模索していければと思っています。

「テクノロジー」は一つのツールであり、それをどのように使うかを考えることが大切となってきます。そして、情報もただ情報としてあるだけでなく、情報が情報としてきちんと伝わるための場作りや情報のインターフェイス、そしてそれらをトータルで考えるUXといった「デザイン」の側面からも、社会全体を考えなければいけません。政治や行政の問題だけでなく、広い意味でのソーシャルデザインを考える意味でも、今後ますますテクノロジーとの関わりも必要となってきます。

こうした、テクノロジーとデザイン、ソーシャルといったそれぞれの面を、メディアや編集といういったコンテキストを作りコンテンツの場を提供する動きが、これから自分としても本格的になっていくのではないかと考えています。また、都心や地方といったくくりではなく、「地域」というそれぞれが持つ文脈をいかし、これからの時代に再構築する、という意味で、地域や社会全体をアップデートすることが求められてきています。こうした、「アップデート」という意識を持ちながら、さまざまな企画や提案などをしていきたいと考えています。



そして、先のグリーンズの取材の流れの中で、先日行なわれたgreen drinks Tokyoにて、横尾さんと「政治のつかいかた」というテーマでお話させていただきました。横尾さんの著書『「社会を変える」のはじめかた 』、そして拙著『社会をパブリックシフトするために』などの話を踏まえつつ、マチノコトについてや、これからどう私たちが政治について関わりを持っていくか、といったことについてお話させていただきました。

マチノコト » green drinks Tokyo「政治のつかいかた」にマチノコトの2人がゲストで登壇しました

政治と考えると、とかく選挙とか政局みたいなものだと考えがちですが、しかし実は政治というのは私たちの日常にあるものだと私は考えています。政治家は、私たちの社会の仕組みを作る代理人です。つまり、政治家を選ぶという主権をもち、社会をどのようにしていくかを左右しているのは私たちなのです。だからこそ、自分たちが居心地の良い地域を作るかどうかは、私たちが日頃から地域をどうしていきたいかを考えることなのです。そのために、社会をどう「私たちごと」していくか。そのためのマインドシフトを起こすことが大切なのだと考えています。

他人任せではなく、自分たちで作るという意識、そのために社会をDIYしていく精神、その先にあるDIWOという協働の精神を持つことが、これから求められていると考えています。







【イベント】新しい働き方について考えるTOKYO WORK DEISIN WEEKのプログラム「U-30の働き方」に登壇します #twdw2013

ここ数年、「新しい働き方」というものが議論されたりしています。そもそも、なにをもって「新しい」のでしょうか。よく言われているのは終身雇用制が崩壊し、経済も低迷化してくるなかで、またインターネットなどの登場などにとって社会インフラが変化し、それにともない働き方や生き方などが見直されようとしている、と言われています。

そうした中で、「働き方」について、改めて考えるような動きに対して、どう私たちが向きあえばいいのだろうか。

そもそも、「働く」とはなんなのか。僕は、働くの先にある「生き方」について、もっと模索していきたい。働くというのも、突き詰めていけば「生き方」の一つの手段でもある。それにともない、会社員という肩書や個人事業、起業といった手法自体にも特定の人達だけのものではなく、誰もが選択することができるような時代の中で、会社員とフリーランスを分けること自体にも意味がなくなってくるのではないかと思うのです。

会社員から個人事業、そしてまた会社員となったり、起業してそこから会社員となったり、またそこから起業したりなど、いわゆる大企業とフリーランスという二項対立と考えてられているもの自体も意味をなさなくなるのではないか。その人がどう生き、どう暮らしたいかという観点において、もっと色んな視点やあり方があることを認識し、働くということになんか正解なんかなくて、社会全体がもっと流動性を高めてもいいのではないか、と思うわけです。

だからこそ、「働き方」の議論の先の「生き方」の議論を僕はもっとしたい、そんなことを最近は考えています。



さて、そんな中、いいかげん「働き方」関連のイベントってどうなんだろうね、と思っている時に、11月20日から26日の間、渋谷のヒカリエなどで開催される「TOKYO WORK DESIGN WEEK 2013」(以下、TWDW)のプログラムである「U-30 の働き方」に登壇することとなりました。先日には、こんな感じで東急沿線の中吊りにも広告を出すくらいの大々的なイベントになっています。

TWDWでは、「新しい働き方」や「未来の会社」にまつわるアイデアやヒントを交換して、多様な交わりから新しい未来をつくっていく、ひらかれた場、というのがコンセプトだそうです。20日から始まるさまざまなセッションでは、行政や企業・NPO・個人で活躍する30組以上の人たちがトークセッションをしたりワークショップをしたりするイベント、だそうです。働き方系のイベントが一過性のもので終わるのか、それとも、生き方を模索するものとなるのか。参加者がどういったモチベーションで参加しようとしているのかが気になったりします。よければ、ぜひヒアリングさせてください。

僕は、11月23日(土)の夕方から、「U-30 の働き方」というセッションに登壇するのですが、人生やはり30歳というのは一つの節目だったりします。結婚をする同世代も増え、会社員であれば会社員5年目くらいから部下や大きなプロジェクトを任されるようになってきたりと、人生の岐路や今後の方向性として、転職したり起業したりという挑戦をするタイミングでもあったりします。僕自身、会社員となったことはないですが、23歳から大学進学という変わった経歴の中、その後大学在学中からなんやかんやで活動してきたりしたら今のような感じで、色々とやらせてもらっているのですが、僕自身がどんな思いで日々行動しているのか、みたいなものが話せればいいかなと思うと同時に、30歳以降についてどう考えているか、過去、現在、そして未来をどう見据えて行動しているのかについて、話せればいいかな、と思っています。

興味のある方、なんか働き方とか生き方とかについて考えている人、とりあえず江口の話を聞いてみたい、という人はぜひ参加してみてください。ゲストや参加者を含めたワークショップみたいなコンテンツも用意しているみたいです。

イベント参加はこちら:U-30の働き方 | Peatix

以下、イベント概要です。
詳細
■新しい働き方を実践している同世代と「新しい働き方」について考えよう!!

「新しい働き方」
最近コワーキングスペース、ノマドワーカーという言葉とともに、新しい働き方という言葉もよく耳にするようになりました。
しかし「新しい働き方」という言葉.なんとなく意味は理解しているけど、実際どんな働き方をしている人が新しい働き方といわれているのでしょうか?
そんなぼんやりとした「新しい働き方」を、実際に新しい働き方をしているU-30世代をゲストスピーカーに迎え、TWDWでもテーマになっている
「新しい働き方って、そもそもどんな働き方?」をテーマにトークセッションをします。
今の働き方を変えたいと思っている方にはヒントが盛りだくさんのトークセッションになること間違いなしの会。
この機会に自分にとっての「働き方」を改めてみんなで考えてみませんか?
また会場には「U-30の仕事への想い」というテーマで、U-30世代の様々な職種の方の仕事への想いをパネルで展示します。
人生の中でもかなりの時間を占める仕事をしている時間。この時間をどういった想いで過ごしているのか?
いろいろな人の想いを見るだけでも、刺激を受ける内容となっておりますので、こちらも是非ご覧になってください!
-----------◯イベント概要◯------------
【日時】2013年11月23日(土) 
19:00〜 受付開始 
19:30〜 一部 「新しい働き方って、どんな働き方?」 トークセッション
20:50〜 二部 「自分にとっての働く、仕事って?」 グループワーク 
21:30 閉場
21:30〜 懇親会
【場所】渋谷電源カフェ beez
東京都渋谷区渋谷2-22-14 渋谷二丁目ビル 7F
【チケット代金】一般¥2,000 ※懇親会参加希望の方は+1000円
キャンセルにつきましては、払い戻しができませんのでご注意ください。
※21:30に会終了後、懇親会を行えることになりました。
軽食、ドリンクをご用意いたしますので、参加希望の方は受付時に懇親会参加費1000円も合わせてお支払いいただきますようよろしくお願いいたします。
【定員】先着40名
【ゲストスピーカー】
田村 篤史 (京都移住計画代表)
http://kyoto-iju.com/
江口 晋太朗 (編集者、ジャーナリスト)
http://eguchishintaro.blogspot.jp/
松本 健太郎 (エンジニア、作家)
https://www.facebook.com/daidora10000
松浦 伸也 (ヤッチャバ事務局統括)
https://www.facebook.com/yacchaba
【ご注意事項】
※本プログラムはネットライブ配信は行いません。
※本チケットでは、トークプログラムや仕事体験など他プログラムにはご参加頂けません。
※開始&終了時刻は、当日の都合により、延長などで変更になることもございます。
※本イベントは成人の方、未成年の方共にご入場頂けます。
※お席は全席「自由席」になります。お手荷物・貴重品等はお客様ご自身で管理をお願い致します。
※開催されるイベント内で新聞、テレビ、ラジオ、雑誌等が参加者を撮影、取材し、それを報道のために使用することがあります。
【問い合わせ先】
aane.pino@gmail.com


【参考書籍】
近年の「働き方」議論であげられる『ワークシフト』がありますが、個人的には星海社の『僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか?』もオススメだったりします。また、起業とかビジネスを考えている人には、『DIGITAL DISRUPTION』というデジタルが起こす創造的破壊について書かれている書籍がオススメだったります。







2013/11/11

WIRED CONFERENCEの開催と、WIREDにてオープンガバメント特集記事を執筆しました


10月31日に、WIRED CONFERENCE2013が開催されました。こちらのイベントを、先日設立したCode for Japanが運営やゲスト選定などに協力して開催しました。当日は、300名以上の人たちにお越しいただき、盛況なイベントとなりました。イベントの概要やまとめは、Code for Japanのブログにて掲載されています。



また、カンファレンスに合わせて、WIREDのウェブサイトにて、「オープンガバメント」についての特集記事を書かせていただきました。読者に、オープンガバメントとは何かを考えてもらうために、オープンガバメントに関わる取り組みをされている3名の政治家を取材しました。

未来の政治家のあり方とは? 港区議、横尾俊成が描く市民をエンパワーメントする力 « WIRED.jp http://wired.jp/2013/10/16/toshinari-yokoo/

これからの政治に必要な対話の場とは? 横浜市議、伊藤大貴が実践する未来のまちづくり « WIRED.jp http://wired.jp/2013/10/18/hirotaka-itoh/

オープン化の先にある社会とは? 熊谷俊人千葉市長が見据える未来の都市とガヴァメント « WIRED.jp http://wired.jp/2013/10/28/kumagai-toshihito/

3名それぞれ、港区議、横浜市議、そして千葉市長と、レイヤーの違うそれぞれの立場において、おのおのが実践している取り組みを紹介しながら、オープンガバメントが持つ「透明性」「参加性」「協働性」という3つの軸を中心とした活動を浮き彫りにしたようなものとなっています。

そもそも、オープンガバメントというものが明確に定義されていない状況の中で、オープンガバメントはこれだ!と言いたいのではなく、政治家や議員とひとくくりにされている人たちであっても、それぞれの立場やポジションによって、考えていることや行動すること、実行することは違うことを知り、そして、どういったレイヤーの人たちがどのような判断を行っているのかを感じることが大切です。そして、それらを踏まえて上で、私たち市民もどのように行動すればいいのか、自分が住んでいる地域やコミュニティについて、どう自分が関わっていくのかを考えることが大切なのです。

港区の横尾さんは、自身の区内の有権者の一人ひとりと顔を合わせながら、距離の近いやりとりを通じて声を拾いながら地域と密着した活動をしています。横浜市議の伊藤さんは、横浜市というある程度広いエリアで活動している中、自身が地域に開いた存在として、地域の人たちの声をできるだけ集めるプラットフォームのような立ち振舞をしながら、地域全体をどのようにしていくかを考えています。千葉市長の熊谷さんは、市長という市全体の判断を預かる身として、市の長期的なビジョンを持ちながら、市役所という大きな組織をどのように改革していき、市の20年後30年後を見据えていくかを考えながら行動しています。そうした、それぞれの見ているスコープの違いなどを、記事でもうまく書き分けられたと思っています。なので、ぜひ3つの記事を連続して読むことで、よりその違いが明確に読み解くことができます。

政治家それぞれにはそれぞれの役割があり、その中でできること、やらなければいけないこと、そして未来をどのように考えて行動するかを意識しながら日々を過ごしています。「オープンガバメント」という言葉そのものよりも、それぞれの政治家が、どのようにしてこれからの社会を良くしていこうと考えているか、そして、そこに市民との対話を通じて、試行錯誤しながら取り組んでいる姿がそこにあります。立場が違っていても、誰が偉いということはありません。多様な動き方の中で、それぞれがやらなければならないことを考え、判断し、行動しているのです。

オープンガバメント、「開かれた政府」と呼ばれているものの、その内実は上から何か与えられるものではなく、私たち市民がどのように暮らし、どのように未来の社会を考えて行動し、そして政治をどのように使っていくかを考えることです。そこに、公共財となる公共データやガバメントデータなどを活用し、より豊かな暮らしとなるようなツールやサービスを、私たち自身の手で作って行かなければなりません。データがオープン化されることは手段であり、その前提としてはオープンガバメントの考えである行政と市民や民間との協働、そのための私たち自身のマインドシフトを起こすことが大事なのです。このあたりは、拙著『パブリックシフト』で書いていることとリンクしてきます。

同時に、政治家は市民との対話を通じ、ファシリテーター的な役割を通じて議論やアイデアを吸い上げ、実践していく存在にならなければなりません。政治家や行政府は、そのインフラや基盤作りといった、私たちがすべきことを代理で行っているという機能を忘れてはいけません。自分たちの暮らし、自分たちの生活をどのようにしていくか。一人ひとりが考え、行動する社会にこれからなっていく一つのヒントとして、今回のオープンガバメント特集記事や、こうした一連の活動が参考になればと思います。

カンファレンスも終了し、日本で次第に盛り上がっているオープンガバメントという考えに対して、もっと情報や世界で起きているオープンガバメントの潮流を調べてみたいなと思っています。ちょうど、江原さんがクラウドファンディングサービス「CAMPFIRE」で出しているプロジェクト「シリコンバレーに次ぐNYで今最もホットなスタートアップへの1ヶ月単独突撃取材」のように、NYやサンフランシスコ、ロンドンやエストニアなどのヨーロッパ全体で、どういったオープンガバメント政策が取られているのかを1ヶ月や2ヶ月くらいかけて取材するのはありかなと考えています。特に、オープンデータの活用などはヨーロッパがけっこう先進的な取り組みもやっていますし、きちんと取材して、書籍でまとめるというのもありなんじゃないかと思っています。企画、作ってみようかな。誰か協力してくれる人いれば、ぜひやりましょう!

また、Code for Japanの活動に興味のある方、また、Open Knowledge Foundation Japanでも、月一での勉強会なども開催しています。それ以外でも、オープンデータの活用だけでなく、どのようにオープンガバメントを取り組んでいくか、行政と市民とのコミュニケーションをデザインすべきか、といったことについても、ぜひ一緒に考えていければと思いますので、気軽に僕に連絡ください。


【関連書籍】







ダイヤモンドの自衛隊記事と、自分の生き方

少し前ですが、縁あってダイヤモンド・オンラインで、かつて所属していた自衛隊の部隊について書かせていただきました。

「領土を守る」とき、何が起こるのか 西部方面普通科連隊元隊員の証言|どう中国と付き合うか 反日暴動から1年、平和友好条約締結から35年|ダイヤモンド・オンライン http://diamond.jp/articles/-/43705

内容は、日中関係に関する連載の一記事で、僕以外の書き手の方々は、防衛省の方や日中関係の専門家などが記事を書いています。そうした中、現場で勤務していた隊員としての証言ということで、たまたま別の仕事でご紹介いただいたダイヤモンド・オンラインの編集部の方からお話がきて、書くこととなりました。実際に自衛隊が動くということがどういったことか、また、現場で勤務している人たちの考え方や思考について、経験したことをもとに書いてほしい、ということでした。かつて所属していた部隊が、自衛隊の中でもたまたま特殊な場所でもあったため、その部隊のことも踏まえながら書いています。

自衛隊という存在自体は知っていても、実際にどういう仕事をしているのかを知る機会ってなかなかありませんし、いろんな方々がそれぞれに固定概念を持っていこともしばしばあります。けれども、記事の中にも書いていますが、自衛隊に所属している人もただの人で、たまたま自衛隊という職場に入った人も多いのが現実です。もちろん、書いた内容は書ける範囲の中でしか書けないため、詳細などは省いています。また、文字数の関係などから端折っている部分もありますが、大きな狙いや伝えたいことは、自衛隊に所属している人が、どのような思いで過ごしているのか、ということを知ってもらいたいというものですので、そのあたりはご了承いただければと思います。

こんな記事を書いていますが、もともと自衛隊は就職の滑り止めで入ったというのが正直な話です。もっと言えば、高校時代はほとんど学校に通っておらず、うろうろしてばかりでした。公立の進学校に通っていたのですが、周りが勉強ばかりしていることに対して違和感を覚え、大学行くくらいから早く働きたいなと考えていました。その中で、なんとなくですが社会の役に立てる仕事がいいな(高校生なのに自分の人生をまったく考えていない典型的なダメ人間ですね)というある意味で安直な考えから、警察や消防に入ろうと決意し、すべり止めというか公務員試験を勉強してる時にそこで始めて自衛隊の試験の存在を知り、願書を出してみたら試験に合格した、という流れなのです。


そもそも、どういう組織なのかとかあまり調べずに入ったので、当初は全然よく分からないまま未知の領域に放り投げられたような感じでした。けれども、最初に入る前期教育隊での生活を通じて、また面白い同期と過ごしながらまずは目の前で自分が求められていることを懸命にやろう、同期たちには負けたくないという負けず嫌い根性も発揮して、前期教育時代には筆記試験や体力試験、服務面や射撃試験やその他総合面の判断の結果、西普連という部隊に配属になった、という経緯でした。


時代の流れの中で、ちょうど東ティモールのPKO派遣やイラクへの派遣などがまさに行なわれる時に所属していたこともあり、そこで始めて「社会」と「自分」という動きを明確に感じることが今の自分の大きな出来事でもありました。それまで、漠然と「社会とは〜」みたいなことを考えていたのが、世界的にも大きな規模で動く社会情勢の当事者として自分が立った時に、始めて自分がどのように社会にとって意味のある存在なのか、ということを考えるようになったのです。災害派遣やイラク派遣、そして自分がいた部隊の特性上、日々の過酷な訓練の中で見出す自衛隊というものの存在の意義などを深く考える中、本当に自分が世の中において意味のある存在なのか、自分はどのように社会に役に立てる人間になれるのだろうかと考えた結果、自分の実力の無さ、そして始めてそこで自分の無知を知り、「考えるということ」「学ぶということ」の重要性を認識したのです。


そこで、自衛隊を辞め、裸一貫で何もない自分としてリセットした上で、大学という場所で勉学を学び、そしてそこから社会の中における自分と社会の関係を見つめなおし、どう生きていくのかを決めていきたいという思いで約半年くらいの短い時間の中で、予備校に通い中学校レベルの知識だったのをセンター受験までできるようにがむしゃらに勉強し、そして東京の大学に進学することができ、そしていまに至る流れへとなっていくのです。東京に来てからの流れは、最近ではインタビューなどでも話をしていますが、このあたりの詳細もいつかブログに書きたいと思います。


そうした意味で、自衛隊に入ったあとにそこで経験したことや考えたことがきっかけで、今の自分の生き方を決める大きな原体験を経験することができたのは大きなことでした。だからこそ、こうして書く機会があったこのタイミングで、色々と当時のことを振り返りながらしっかりと書こうと決めて書かせてもらいました。おそらく、初めてこうしてきちんと自衛隊のことについて書きましたし、書いたことでいろんな方からもコメントやメッセージをいただきました。自分の経験を通じて、自衛隊のことなどを考えるきっかけに少しでもなったのからいいな、と思っています。


やはり、自分がかつて所属していた職場というのは今でも愛着がありますし、今もなお働いている同期や先輩、後輩たちにはリスペクトしています。日々、黙々と任務をこなしている人たちがいるということ、自分たちが普段意識しないところで国や社会について考え、行動している人たちが陰でいるということを知ってももらいたいですね。


社会の中で、自分が生きているという実感を持つことって、なかなかありません。それが、会社に入ったり結婚したり選挙に行ったり自分で会社を作ったりすることで、初めて社会というものの存在、国というもののあり方などを考えるようになってくると思います。僕は、本当にたまたま自衛隊という一つの職場に入ったことがきっかけで、社会と自分との関係性を肌で感じ、そして、自分がどう社会にとって意味のある行動をすることができるのか、ということを考えるようになりました。


この、ちょうど22歳での自衛隊を辞めた時から大学受験、そして進学という時期において、自分という存在は、ある種の断絶が起きていると考えています。それまで生きてきた経験がまったく通じない、場合によっては社会に必要な知識やスキル、考え方というものをまさにゼロから積み重ねてくその第一歩の時期でした。つまり、22歳のから、僕の人生が始まったといっても過言ではありません。今の自分を構築している考え方や知識のほとんどは、この数年で培ったり経験したものです。考えてみれば、自分の人生において人生がほとんどつながっていない状態があるということは、ある意味で生まれ変わったものと同義です。過去の友人やつながりがほとんどないからこそ、自分が見聞きするものすべてが新鮮に感じられ、研ぎ澄まされた感覚と好奇心から、すべてを吸収しようと行動するようになっていたのでした。


今の自分の大きな生き方は、「社会をいかに良くし、アップデートさせる仕組み作りをするか」がテーマです。その中において、テクノロジーやデザイン、メディアといったさまざまなツールや場を通じて、それらを複合的に、有機的に、そして立体的に組み合わせながら、新しい価値観や未来の社会にとって必要となりうる原石を作り出すか、ということを実験したり方向性を示したりという意識を持って歩んでいます。

すべてが遅咲き、遅いスタートな自分にとって、今から何かの専門家になろうとしても勝てるわけもない、という意味では日々劣等感を持って過ごしています。なぜから、周りを見れば自分よりも優秀な人間なんて山ほどいるのだから。だからこそ、自分しかできない新しいポジションや動き方を作るために、ある種のジェネラリスト的な動き方になっているのかもしれません。あらゆる分野を知り、本質を掴んだ上でどう再構築するか。さまざまな分野のプロフェッショナルな人たちの一挙手一投足を見ながら、良いものを貪欲に盗んでいこうという気概を持ってやっています。


肩書なども表現も、なかなか難しいものだとは思っていますが、コンテンツやコミュニティ、大きな意味では社会全体を編集し、再構築したり再定義する、というようなことだと思っています。だからこそ、そうした専門家やスペシャリスト、才能を持った人たちとともに、いかにこれからの社会を作り上げ、誰もがよりよい生活や暮らしを送ることができるのか、を探求していきたい、ただそれだけなのです。自分がどんな仕事やどんなポジションになろうとも、あまり関係ありません。大事なのは、いかに周りの人たちや社会がより良いものになっているかという飽くなき探究心だけなのです。だからこそ、必要であれば自分が前にも出るし、後ろに下がってマネージメントなことも、雑用もすべてやれる。誰もが率先してやらないこと、でもそれは必要なことや存在があるのであれば、僕は喜んでそこに行きましょう。


今の活動でも、政治や行政の人たちとコミュニケーションをし、仕組みから変えていこうとするプレイヤーは多くはありません。しかし、誰かがやらないといけないのです。テクノロジーとデザインをどう組み合わせるか、テクノロジーやデザインを、どうソーシャルデザインに組み込んでいくかなどを、領域を横断しながらそれぞれの良いものを引き出し、組み合わせることこそが、僕なりの編集でもあるし、それが社会にとって価値のあるものだと信じています。行為すべては手段であり、アウトプットの方法も時と場合によって変わっていくものです。だからこそ、今自分がいる領域からすぐに違った領域へと行動することもできるし、イノベーションを起こそうと動くことが大切だと常に考えています。自分の足元や中途半端なポジションやプライドなんかを持つことよりも、いかに自分が活かせる場を作るかのほうが大事なのです。


問題解決の手助けをし、そしてこれからの未来を一緒に考えていく仲間とともに日々を過ごしていく。そんなことが、やっと少しづつできていけるようになってきました。東京に来て6年くらいがたち、やっと物事や社会について少しづつ知ってきたような気がします。6年前には友だち一人、何も知識も経験のなかった若造が、こうして色々な活動ができるもの、これまでお世話になったみなさんのおかげでもあります。これまでの出会いに感謝しつつ、これからもともに頑張っていきましょう。


また、今回のダイヤモンド・オンラインの記事の機会を作ってくださった方にも、色々とこれまでを振り返りながら書かせてもらうことができました。ありがとうございます。こうした自衛隊話というのは、普段は防衛の専門家ではないため、機会がない限りは書くことも話すこともないかもですが、もし何か必要な方は、気軽にお声がけください。

最後に、記事内でも書いている西部方面普通科連隊のことを描いた書籍があります。杉山隆男さんというノンフィクション作家の方が書かれた本です。この本がちょうど取材されている時に僕は在籍していたので、僕の先輩や上司の名前がでてきたります。記事で興味もった人は、読むとさらに理解できるんじゃないかなと思います。



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