12月6日に、二子玉川にあるカタリストBAで、ライブトークイベントEDGE TOKYO DRINKS 02(エッジトーキョードリンクス)が開催。第二回の今回は、テーマが「MAKERS」でした。
3Dプリンタやレーザーカッターなどのデジタルファブリケーションが、近年安価で誰でも使える状況が出てきています。さらに、インターネットの普及などによってオンデマンドでの注文など、様々なインフラ環境も整ってきたこともあり、ファブリケーションが誰でも(パーソナル)なものになりつつある流れになっています。まさに、コンピュータがパーソナルコンピュータとなってきたような、新しい産業革命が起きつつあるのでは?と、元WIRED編集長のクリス・アンダーソンが著者『MAKERS』で言及しているような流れが、本当に起きているのか、そして、そうした時代になってくる中が、僕らが考えなければいけないことはなにか。
世界を変える、産業革命という言葉ではなく、実際に現実に起きている現象をしっかりと見極め、分析することが求められており、今回のエッジトーキョードリンクスは、かなりの盛況さを見せていた。そこで、イベントの様子など、覚えている限りでまとめようと思う。今回は、カタリストBAでの開催ということで、Co-labまわりの人達がゲストとして登壇。ゲストの話したことなどは、多少要約してるので、すべてを網羅していませんがなにかの参考になればと思います。
●イベント概要
【ゲスト】
【モデレーター】
・松島倫明(書籍編集者/NHK出版)『フリー』『シェア』『パブリック』『Think Simple』などの翻訳編集者。『MAKERS』の編集者でもある。
【プレゼンター】
・田村英男(編集者/オライリー・ジャパン「Make日本語版」編集)
雑誌「Make」日本語版や技術書などを出版しているオライリージャパンの編集者。
・飯野健一(ファブリケーションプロデューサー/Ag Ltd./co-lab渋谷メンバー)
エージーリミテッドという、iPhoneアプリなどを開発しているものづくり会社を運営。
・伊藤聡一(CMFデザイナー/rolo. Concept/co-lab二子玉川メンバー)
モノとコトをつなぐCMFデザイナーとして活動。色と素材によるデザインをしている。http://www.roloconcept.com/
・小杉博俊(System Creates Chief Officer/システムクリエイツ/co-lab渋谷メンバー)
40数年間「紙の仕事人」として仕事に従事。新しくものづくりをはじめようとco-lab渋谷に入居した。http://www.systemcreates.co.jp/
・久保田晃弘(ファブリケーター/Fablab Shibuya/co-lab渋谷メンバー)
・梅澤陽明(ファブリケーター/Fablab Shibuya/co-lab渋谷メンバー)
世界的な市民工房のネットワークfablab のfablab Shibuyaメンバーhttp://www.fablabshibuya.org/
まず最初にモデレーターの松島さんから今回のトークの趣旨などを説明。クリスはそれまでWIRED編集長を務め、『ロングテール』『フリー』『シェア』などを書籍を書き、社会の現象についてまとめてきた。今回の書籍はそこから視点を変え、「いままでの10年はデジタル革命の時代であり、これからの10年はリアルなアトムな世界、物の世界に同じような革命が起きるのがこれからの10年とクリスの考えを述べた。
そうした中、今日のテーマでもある「MAKERムーブメント」は、サブタイトルとして21世紀の産業革命、新産業革命とクリスが語るが、その中でも4つポイントがあるとする。
①デジタルファブリケーション
デジタル工作、工作機器がデスクトップサイズになってきた中で、コンピュータががPCになってきたように、ファブリケーションもパーソナルになってきている
②オープンオーガナイゼーション
ネットの世界でもクラウドソーシングやネットでのオンデマンド発注などがおこなわれている。MAKEの現場でも、世界の工場とインターネットでつながり、受発注をおこなうことができる。それによって、いままでと違うものづくりのサイクルになってきている。
③ファンドレイジング
これまで、製造業は資材や工場など、多くの資金が必要としていた。しかし、Kickstarterなど、ネットで資金を調達する方法が多くなり、試作の段階でも資金の調達をおこなうことができる。ファンドレイジングができる環境が、一つの革命のきっかけにもなっている。
④オープンソース
ものづくりそのものもデジタルなってきたことで、フリーやシェアの中で、オープンソースファブリケーション、Co-Creationなどの現象がみられるようになった。一人ではなく、みんなでやっていくことでイノベーションが起きてくるのでは。
という4つのポイントについてまとめた。それらを踏まえつつ、今回のゲストの方々が日頃取り組んでいることや、それらを踏まて、今後どうなっていくか、トークセッションがおこなわれた。
オライリーの取り組みとMaker Faire
田村英男さんは、オライリージャパンの編集長 をつとめ、雑誌『Make;』日本語版やMAKEカンファレンスなどのイベントを手がけている。我々は、テクノロジーを消費するだけの存在ではなく、テクノロジーを創造する人間、「Maker」にもなれる。2005年に創刊したMake;創刊号を持参し、2006年に創刊したMake;日本語版について話をおこない、Make;創業者のデール・ダハティの言葉を引用し、誰しもが「Maker」になれる時代がくると語った。今の時代は、iPodやゲーム機などハッキングできるデバイスの登場によって、ソフトウェアだけでなくハードウエアにもハッキングな発想がもちこまれるようになったとし、電子部品が安く手に入る環境によって、企業だけではなく個人でも安く作れる時代がきたと語る。
デール・ダハティ(Make日本語版 Vol.1より
そうした中、オライリーメディアは、他にも、オープンソース系の技術のメディアを出版している。オープンソースのカルチャの中において、技術情報などをオープンにしていく思想が、その根底にはある。当初は、Arduinoなどの技術書は メディア・アートなどの分野から、教科書としても購入されるケースが多かった。他にも、日本語版独特の編集部『Made by Hand』『こどもが体験すべき50の危険なこと』『Cooking for geeks』など、考えさせる書籍も出版している。
ものをつくると、かならず失敗する。そこから学ぶことがある。もっと失敗しよう、ということを示すために、こうした書籍は出版している。先日科学未来館で開催されたMaker Faireでは、例年以上の盛り上がりをみせ、多くの来場者がメディアが取材をおこなった。イベントの来場者や参加者が伸びた理由として、①Makeは様々なコミュニティが参加しやすい環境であり、様々な分野の人が参加したこと②初期から参加者にOSS(オープンソースソフトウェア)コミュニティ関係者が多く、情報共有に積極であったこと③ウェブなどのエンジニアがモノをつくりやすい環境が整い、プログラミングの腕で作れるものやウェブと連動した作品などが多く登場したこと、④ブログやTwitter,ニコ動、Youtubeなどを通じた情報共有の普及とシンクロしたこと⑤来場者ー出展者ー出展者同士のコラボという流れなど、参加だけでなく、そこから一歩踏み込んだ巻き込みの仕方などがみられた、と語った。
AGが取り組むプロダクトの現場について
飯野健一さんは、AGという会社を運営している。その会社のコンセプトは“its more fun to iphone”。今回は、ファブリケーションプロダクトである光るイヤホンアクセサリー「pina」を紹介した。スライドをあげさげして、キャラの光量を調整するプロダクトで、光のコントロールなどを楽しむことができる。また、ただの製品ではなく、パーツを組み合わせ、自分で作る体験も特徴の一つ。「ぴかぴかPina Kit」として、組み立てるところから楽しめるデザイン。また、ユーザだけでなく飯野さんら開発者らも自分たちで一つ一つハンダ付けなどをして作っていく。colabでレーザーカッターでカッティングしたりと、まさにすべてがDIYなプロダクト。「いままでのものづくりと違う作る側もDIY買う側もDIY」と飯野さんが語るその理由は、企画し、製造し人々の手に届けるまで その全てをワンストップでおこない、開発者の思いや熱を純度高く保ち、全部自分たちでやっていくことが、一番プロダクトにとっていいのでは、という考えからだ。
プロダクト開発のアイディアも、単なる飾りではなく、アプリと連動し、何かの動きを表現できるようなものがあればというところからだ。iPhoneやiPadなどのマルチタッチインターフェイスは、たしかにタッチなどがおこなえるが、身体性に欠けるのでは、ということから自分で作り上げることの楽しさを知ってもらいたいという考えだ。しかし、もともとアプリ開発をおこなってきたがハードには携わっていなかった。そのため、ハード開発のためのチームビルディングをスタート。ハードウェア製造ができる人をTwitterで募集し2011年2月からスタート。
そして、テクノ手芸部吉田さん監修や、IAMASの学生などを巻き込み、ものづくりを開始。ソーシャルメディアの活用などで一年半で形になったと語る。そして、今年のYahoo! JAPANスマートデバイスAppで賞をとるなど、評価を得てきた。また、セールス自体も外部のサイトを使うのではなく、自社のECサイトを運営。今後はクリスマス用のデバイスの開発をおこなうなど、季節やオーダーにあわせた開発もおこなっていく、とのことだ。
CMFという視点からものづくりに取り組む
伊藤聡一さんは、CMF creatve kitchen rolo. Conceptを運営している。CMFとはカラー・マテリアル・フィニッシュの略で、プロダクトや建築、インテリアなど様々な商品の色や素材、質感などをデザインする存在。欧州では20年以上前から研究されてきているが、日本ではその存在がまだまだ浸透しきれていない。伊藤さんは、ものの内側を知りたくて、プロダクト・デザインを専攻した。その後、色などのデザインを追求するうちにCMFという概念と出会い、実感や体験を重視し、人々の不便や不都合の価値を提供する存在として、独立。
もともと日産のデザインをおこなっていた伊藤さん、メーカー視点とマーケット視点の両方からプロダクトについてデザインし、色彩(見る)、素材(触る)、そして仕立て(使う)という3つの観点から商品開発をおこなう。「モノとコトをつなぐ仕事」と語るように、商品に対してあらゆる視点から商品を分析していく。
伊藤さんは、クリス・アンダーソンが語るBit(情報)とアトム(物質)に、さらにPhoton(光)を付け加えたいと言う。ものの光の要素によって、情報や物の質が測れるのではと語り、デザインの重要性などが、これからのものづくりでも考えなければいけないと話した。
来年以降は、co-lab西麻布にて、Quration-United.Libというプロジェクトをスタート予定。素材メーカーやクリエイターの人たちと一緒に活動していくとのこと。
企業から個人へー50年のものづくりの人が取り組む新しい挑戦
小杉博俊さんは50年間「紙の仕事人」として働いており、紙素材を中心としてものづくりをやっていた。1942年生まれで65年にぺんてるに入社。その後、様々な紙製品のイノベーションをおこしてきた。幻の商品として紹介したのは、電子レンジ発紙。電子レンジでも耐えうる紙製品を作るも、お蔵入りになった製品だ。他にも、バッグナチュラルやCDを包むためのソフトビーズ加工紙、出雲大社神紙などを作成。MAKERという言葉が出来る前から、MAKERとして企画提案から製造請け負いまで実施していた人。ぺんてる時代には幼稚園の教材、車のボデイカラーを立体的にみせる製品などを制作。オムロンなどのデジタル温度計は、それまで水銀体温計だった体温計は、病気の時以外に使用する機会がなかったものを、常日頃のデータとして記録するもの、という視点から制作。また、体温計にけんおんくんというネーミングをつけるなど、製品開発における新しい視点をもたらした。
「世の中にでていないものを、日本初を作りたかった」と語るよ小杉さんは、いまやアプリを制作するなど、様々な分野での開発をおこなっている。70歳になる前に、とある方との話から気づきを経て、70歳すぎてから新しいことに挑戦したいと考え、先日からco-labに入居。これから、新しいものづくりの実験をしていきたいと語る。紙を3Dスキャンした3D紙見本帳を開発したりしたい、と語った。
前述の伊藤さんと一緒にQuration-United.Libに参画し、素材を活かした新しいものづくりに挑戦していきたいと語った。
世界の市民工房Fablabから生まれるコミュニケーション
久保田さんと梅澤さんは、Fablab渋谷で日頃働いている。梅澤さんは、もともともともとエンジニアとして活動していたが、町工場がこれからどうなっていくかということを研究するところから、Fablab JAPANの田中浩也さんのところに行き、そしてFablab渋谷をスタートした。Fablabは世界的な市民工房のネットワークで、3次元プリンタやカッティングマシーンを備え、あらゆるものをつくる市民工房として世界135箇所にあり、すべてのFablabとやりとりをおこなえる。世界中の人達、ものづくりに携わる人たちとコミュニケーションをおこなうことで、それまで知ることのなかったテクノロジーや気づきを得ることができると語った。「人の出会いの場としてFablabがある」と梅澤さんが語るように、人との出会うを通じ、新しいものづくりの体験を生み出す場だ。
Fablab渋谷は、Co-factoryとして機材がある工房スペースを持っており、Colabの入居者スペースが利用できるようになっている。レーザーカッター、3Dプリンタ、ソーイングマシーン、ペーパカッターなど、機材をこれからもっと用意していくとのこと。そうした、市民工房からものづくりをはじめ、そこから本格的な製品を行いたい人たちに向けて、企業と連携し、より精度の高い製品づくりができる人たちを紹介し、そこから新しい造形がうまれていく可能性を示唆した。
梅澤さんは、今の時代だからこそ、「なぜつくるのか、どうしてつくるのか、ということを考えてもらいたい」と、ものづくりの原点の発想をもってもらいたい、と語る。人は、ほしいものと必要なものという2つの欲求があり、必要なものは、その人にとって課題を解決するものである、とする。かつて途上国である東ティモールでも活動していたときに、途上国の人たちと一緒に活動していく中で、本当に必要なものを必要とする人に届けていくことの大切さを感じたと言う。MAKERSは、これを改善するものとしてあってほしいとし、課題のシェアをしていき、じっくりと課題に向き合うことで社会にとってインパクトが与えられるのでは、話した。
また、イベント中には、3Dプリンタの実践もおこなった。開発しているアプリで、オリジナルのアクセサリーがつくれる、というものだ。その日の惑星の位置を算出し、その形のイヤリングがつくれる、ということで、会場から一名の希望のプロダクトをライブで制作するなどした。
トークセッションー個人、企業がこれから考えなければいけないこと
ゲストのプレゼンが終わり、パネルトークへと移った。日本のものづくりについて、いまや様々なところで声があがっている。そうした中、ビジネスの視点からは3Dプリンタだけで革命はおきないと話もある。また、ものづくりをこれまでやってきた人たちからしても、自分たちのDIYで進めていくことが主であるからスタートアップな発想ではないという意見があるなど、MAKERSムーブメントと一言で言っても幅があるのではという疑問からスタートした。
fablab久保田さん
「3Dプリンタ自体は20年前から存在しており、なんら新しい技術ではない。当時、ポスト大量生産の製造に関する研究をおこなっており、その頃からプリンタを使用していた。当時は一台2000万円程度はかかり、大量生産以降のモノづくりについて、あらゆるところであらゆる人が研究していた。そこから、200万円台にまでスキャナも進化し、またその頃からウェブで共有する文化が登場し、ウェブの進化とテクノロジーの進化がクロスし、コストダウンが図れたことによって、こうした時代になったのでは。まさに、パーソナルコンピュータが広がったのと同じ現象で、3Dプリンタにもおこるのでは。だからこそ、僕らがどうしていくかをしっかりと考える必要があり、まだまだいまの状態は一過性なものにすぎない。
松島さん
「技術が新しいのではなく、誰でも活用できることで生まれる変化が大きいのだと思います。社会がどう変わっていくか。プロトタイプのやりやすさについて飯野さんはどう思いますか」。
飯野さん
「pinaのデザインなど、いままでは紙の上でやっていたものが、レーザーカッターで切り出しできるようになった。そうすることで、デジタルじゃなくものとして提示できることはすごく大きい。プロトタイプを繰り返しつくっていくことで、より精度をあげられられる。また基盤やキットなどは香港に発注をかけており、まさにクラウドファクトリー。ネット経由で注文し、基板用の入稿データを送ったら、あとは来るのを待つだけ」。
松島さん
「バズっている3Dプリンタも、まだまだ進化している途中であり、問題もあることにも気づかないといけないと感じる。そうした意味で、MAKERムーブメントの一端でしかないのでは。ネットワークやネットで発注、一緒にコミュニティで開発などおこなうことで、個人やユニットでも世界の工場を動かせるようになった。小杉さんは、もともと大企業にいた人がなぜ個人で?企業としてのやりにくさ、個人のやりやすさはありますか」。
小杉さん
「もともと、紙は自分で何回も作り直しができ加工しやすいということから魅力にはまった。他の成形品だと試作が難しい。世の中に無いものがコンセプトでやってきたが、いままでそれができなかった。メーカーに提案しても1000に一つくらいで提案が通るようなもの。いろんな物がでてきた中で、いまはできなくても、できる時代がくるのではと思っていた。そうしたときに、家庭用インクジェットをつなぎあわせて製本する機材をつくった人がいて、それによって何千万かかっていたものが何百万になった。知恵を使うと、安い機材でも生産できるようになることを垣間見た。そこで、独立し頑張っていこうと思った」。
技術とニーズのマッチングのこれから
松島さん
「2010年代から、アメリカではKickstaterでのクラウドファンディングが盛んで、そこではプロダクト系が多く、賛同して、ファンドレイジングして作られる。Kickstarerが顕在化させてのは、欲しがっているという欲求。そうした欲求に対してすぐにお金が集まった。みんな、欲しいと思ったものに対して、欲しいと言える環境ができた。逆に、なぜいままでそれらができなかったのか。特許をもっている人や企業はなぜ、つくらなかったのか。そうした意味で、技術とニーズのある意味でのミスマッチが顕在化したのではとも思います」。
伊藤さん
「独立する前は大企業にいた。会社のなかで求められる表現や形あるが、そこで語られる中身は事業の内容に限定された範囲になってしまう。それはもちろん仕方ないことでもある。自動車だったら自動車の言語。しかし、外にでると幅は無限にでてくるようになった。MAKERSムーブメントにおいても、様々な幅があり、玉石あると思うが、3Dプリンタみたいなものがでてくるもので、頭の中にあるものが具現化できるようになったのはいい動きだと思う」。
久保田さん
「3Dプリンタの多くはABS樹脂。しかし機材によっては金属や、材料をハイブリッドさせたものもでてきている。まだまだ技術革新の途中。また、ベルギーにあるプリンタなら人体サイズの大きさも作れる。逆にナノテクノロジー的に小さいものを作るバイオプリンタなど、プリンタができる幅も、次第に進化してきている」。
伊藤さん
「コモディティ化ではなく、どこか特化したものをつくりたいですね。荒削りなものでもいいので、自然的なものを求めるようなものに携わりたい。いま、山梨県の宝飾品をつくられている人たちのお手伝いしているが、直接石を削るとお金かかり時間もかかるが、そこにプリンタが利用されたりしている。まさに、伝統産業が使って検討している現場もある。効率化と、オンリーワンなものが交差している時代の印象を感じます」。
ものづくりとビジネスの関係について
松島さん
「ネットを最後に出口にすることで個人で販売できる時代になった。お店でなくても、自分たちで作って自分たちで販売していく。Etsyなどの登場も大きい」。
飯野さん
「pinaはAmazonでも売っている。確かに販路はEtsyなど色々出てきています。そうした意味で、販売の障壁は低くなってきてる。Pinaは最初はメーカーにもっていったが企画決まらなかった。メーカーの予算や社内事情、販売ロットの関係など、考えることが多かった。そうした意味で、意思決定のスピードにおいて、自分たちでつくったほうが早いのでは、ということだった」。
松島さん
「Maker Faireがすごく盛況だった。出店の人にこれ、売ってる?って聞くと、売っていないことも多かったが、商売っけがある人とない人で、ない人が多い印象だったけど、出店する人の意識やビジネスとしての距離感などをどう感じているのでしょうか」。
田村さん
「できるだけ売って欲しいとは思っている。今回、それまで出店料無料だったがレギュレーションを変えた。企業やメーカーは、専用に場を設けていたが、個人と事業主の違いがあいまいになってきたので、売るか売らないか、ということで分けた。ひと通り見ていたが、ほとんど高い金額で売る人はいなかった。それでも、販売は、増えてきている。企業はもちろんだが、趣味で作っている人が、販売している人もいて、徐々には変わってきている」。
松島さん
「Kickstarterを見ると、お金を集めるだけでなく達成するかどうか、人気があるかという事前のマーケにも使われていて、ニーズの顕在化が測れる。また面白いプロジェクトは拡散され、お祭りなものになっていく、そうしたダイナミズムを感じるが、日本ではどうでしょう」。
田村さん
それらを促進する動きが起きてもらいたいです。しかし、あまり無理がないよう、自然に売りやすい環境を作っていければ。イベントとしてはしっかりとつくっていくことで、それらは自然にまわっていくのではと感じます」。
松島さん
「Fablabには、ビジネスを見越した人も来ますか?」
梅澤さん
「来るときあるが、やはり多くは本業ある人が空いている時間で、というのがほとんど。開発については、ニーズのマッチングをはかり、マーケットインになってファンがついて、いずれ本業になっていくということは起こると思う。そうした卵な人はいる。1000個ではなく50個などでつくったりして徐々に作っている。企業も、外注せずに自分たちで作ったり切ったりして、新しい素材の活かし方などを模索するなど、企業としても、自分たちで考えようとしている動きが起きている」。
松島さん
「そうした意味で、インキュベーションの部分も今後大事になってくると感じる。co-labなどでつくるように、同じ場にいることでビジネスができるダイナミズムもおこる?]
小杉さん
「まだco-lab渋谷に来て2週間程度だが、その中で見ていても商売っけがいない、だろうなという人多い。そのかわり、自分がつくりたいものをつくりたい、と言う人が多い。そうした意味では、デジタルファブリケーションをうまく使うのは、街の発明家が盛り上げていくのではと思う。たまに、アイディアマンや試作をもってくる人がいるが、まだまだ荒削りな人がほとんど。でも、ものの作り方を教えることで、商品化の形の持っていける可能性は大いにあると感じる。だからこそ、アドバイスだけでなく、一緒につくっていくようにしていきたいと思う。発明家は、商売っけが多い人たちが多い。だから、ネットで新しいことを配信して、世の中にでてくるのでは。もしかしたら、クリエイターが負ける時代にるかもしれない」。
渋谷という街から、新しいものづくりを見つめ直す
飯野さん
「渋谷でやっている意味を考えていることがある。渋谷という意味。すでに、デジタルファブリケーションの建物いくつかあるし、コワーキングスペースなど、渋谷に多い。それはなぜか。僕はらのような世代は、1980年代んp渋谷のサブカルを経験している世代。だからこそ。渋谷という年の文化の発信力を経験している人たちで、それが原体験になっている。2000年代になってファストファッションが多くなったりしてつまらない街になってきたのではと感じるからこそ、今の時代においてものづくりの軸で渋谷の発信力を高められるのではと思っている。ちょうど先日タワレコがリニューアルし渋谷の場所からなにを発信していくか、タワレコ考えている。放送局のDIYのスタジオをつくり、渋谷から世界に発信し、パッケージとしてCDを買ってもらう経済性をつくり、循環をつくろうという実験をDOMMUNEと一緒につくっている。一方、MAKERSも、Co-fablicationの文化の中で、どういうムーブメントをつくっていけるのか。まさに課題」。
梅澤さん
アイディアからアイディエーション。そしてオブザベーション、ファブリケーションへとつながっている。ますます、自分たちの描いているものを形にできる時代。渋谷にいろんなものが集まっているからこそ、頭のものを具現化し、形にできる様々なポテンシャルにがある。だから渋谷にあるのではと思う。Fablabも、来年から街(渋谷)のプロトタイピングの実験プロジェクトをおこなっていく。みなさんが思う渋谷をプロトタイピングしよう、というイベント。そうした意味で、ますます街が面白くなっていく時代にも重なる」。
松島さん
「MAKERブームの中で、日本中の固有の場からカルチャーでてきている。渋谷から、メーカーブームとあわさって新しいものがくる予感がする」。
企業と個人のものづくりの新しい可能性
ここで、会場からの質問。質問は、メーカーに勤めている人からの意見があり、大企業が、こうしたMAKERの動きとどうコラボしていくか、ということが論点になった。
Q)消費者だと思っていた人たちが作り手になってきた。そうなってきたときに、ユーザは企業になにを求めてくるのか?
田村さん
「オライリーとしては、企業に対しては製品の情報を公開し、改良しやすいものを作って欲しいと思っている。もっとMAKERフレンドリーな製品をつくってほしい」。
久保田さん
「当たり前だが個人のMAKERがつくれないものもある。例えば冷蔵庫などはまさに。だから。企業は製品の情報を公開し、あらゆるユーザが中が見れて、自分で直したり改良したりする動きが起きて欲しい。争うのではなくお互いが仲良く、つながっていけるようなもの。まだまだ製造業は技術をもっているため、そこに個人のアイディアなどと融合することでの可能性はあるのでは」。
Q2)企業のデザインで働いているが、デザイナーはどういった仕事になっていくか?デザインは必要か?
伊藤さん
ものをつくれる形だけだと、誰でもできるが、そこから先がデザイナーの仕事。つまり、コンテキスト。なぜその製品を作ったか。ストーリーをつくらないとただのモノになってしまう。自分のものづくりは、それらを提供していく。それを考えないとデザイナーは一般化してくる」。
松島さん
「大量生産はストーリーがない。そこにコンテキストがあったり、作り手の顔が見えたり。そこにデザイナーの余地はある。なぜつくるのか、ということを考えないといけない」。
大手企業も、まさに変わろうとしている動きも起こっている。もちろん、すべての情報を公開することは難しくても、出しても問題情報、出してはいけない情報を精査しつつ、できるだけオープンであることによって、新しい可能性が開かれるのでだろう。今回のトークでも、個人のものづくり、そして、企業としてのものづくりのあり方を考えさせられるセッションで、大いに盛り上がった。
今後、ますます盛り上がるだろうMAKEの動きを、しっかりじっくり分析していきたいと思う。
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また、当日の様子は、USTREAMで動画で録画されている。こちらも御覧ください。
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