2014/09/22

札幌国際芸術祭に行って感じた、都市の歴史とメタ的コミュニティのあり方

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先日、出張で札幌に行く用があり、ついでに現在開催中の札幌国際芸術祭2014もみてまわりました。

札幌国際芸術祭は、札幌初の国際的なアートフェスティバルとして、が7月19日(土)から9月28日(日)まで、開催されています。開催テーマは「都市と自然」。都市と自然の共生を考えるもので、札幌市内各所でプロジェクトなどが展開。札幌全体がこうして芸術祭の舞台のなるのは、札幌の歴史としては始めてのもので、行政もサポートしながら第一回目を大成功に導こうと取り組んでいます。

主な会場はm北海道立近代美術館や札幌芸術の森美術館、札幌駅前の地下歩行空間(チ・カ・ホ)やモエレ沼公園など、さまざまな場所で行われており、一日で回るのも結構大変なくらいの、作品数とそれぞれの開催場所の点在さが、逆に札幌市内の山や都市部をじっくり見て回る良い機会にもなりそうです。


札幌国際芸術祭の会場の、北海道立近代美術館へ。

札幌国際芸術祭の会場の一つである北海道立近代美術館は、札幌の中心部から西に少し移動した場所にあり、大通り公園から15分ほど歩いたところにあり、市内を散策しながら行くことをオススメします。展示では、

坂本龍一さん+YCAM InterLabによる「フォレスト・シンフォニー」。こちらは坂本さんと真鍋大度さんによる電磁波を可視化するインスタレーション #札幌国際芸術祭

札幌市内から北上したところにあるモエレ沼公園。そこにあるガラスのピラミッド内に展示してある坂本龍一氏と真鍋大度氏による共作。チ・カ・ホでセンシングした電波データを可視化・可聴化した作品で、手元にあるスイッチに周波数と表示されるグラフィックをいじることができます。無限に広がる電磁波とパターンを変えたグラフィックを見ていると、時間を忘れてしまいそうになります。



同じく、センシングによる作品として、札幌駅前の地下歩行空間(チ・カ・ホ)には菅野創+yang02によるドローイングモジュールもあり、地下を行き交う人の数を計測しながら絵を描き続けるという作品がありました。こちらも、札幌駅についてすぐに見ることができる作品です。

竹村真一さんの「触れる地球」で、地球規模の空と大地の動きを実感した #札幌国際芸術祭

また、ガラスのピラミッド内には竹村真一氏による「触れる地球」なども展示されています。地球を感じつつ、空と海と大地といった自然と都市のあり方を感じる札幌国際芸術祭ならではな展示と言えます。

モエレ沼公園で、大地の偉大さを感じた。

札幌国際芸術祭の舞台としてなっているモエレ沼公園は、彫刻家のイサムノグチ氏による遺作としても知られています。「地球を掘りたい」という考えのもと、広大なゴミ埋立地を自然公園にする壮大な計画をもとに、1979年から始まったプロジェクトは、プロジェクト中にノグチ氏が亡くなるもその意志を継いだ人たちによって2004年に完成した、という歴史があります。北海道ならでは、そして人と自然のあり方を考えさせられる作品であり、人々がくつろぐ憩いの場として、愛されています。


モエレ沼公園の様子も、動画のハイパーラプスで撮影していました。広大な土地は、まさに「北海道はでっかいどう」と言いたくなります。


大自然をバックに中谷芙二子さんの FOGSCAPE #47412 #札幌国際芸術祭

今度は札幌市内から南に移動した札幌芸術の森美術館。近代美術館と芸術の森美術館では、自然をテーマにしたさまざまな展示があります。そして、芸術の森美術館では、一時間に一回、中谷芙二子さんの FOGSCAPE #47412を見ることができます。霧をテーマにした作品は、霧という自然現象を、改めて見つめる機会になります。

他にも、今回札幌としても始めての芸術祭ということで、この機会に各地でさまざまな催しや企画が行われていますので、ぜひ足を運んでみるといいかもしれません。あと、札幌国際芸術祭をうまく回る方法として、友人の編集者である塚田有那がCBC.NETで「まだ間に合う!札幌国際芸術祭2014を3倍楽しむ旅案内」という記事を書いていますので、そちらを参考にしてもらえればと思います。

各地の美術館や展示会場は、距離もそこそこあり、見て回るコースなどもある程度事前に考えておくといいかもです。公共交通機関や無料バスなど、さまざまな手段があるので、それらを駆使して満喫することをオススメします。

都市の歴史、そこに住む人たちの意識とまちのありかた
実は、札幌に来たのは高校時代に修学旅行で来た以来なので、約12年ぶり?くらい。ほとんど初といっても過言ではありません。

そんなことで、札幌市内を見て回ってやはり気になったのは、都市がどう成長し、そこに住む人がそういう生活や意識を持っているのか、今回の芸術祭に対してどういった意識を持っているのか、といったものでした。実際に、札幌国際芸術祭に携わっているスタッフや、お会いした方々、取材した人たちなどに、札幌の印象や状況などを伺ってみました。

札幌は、かつてアイヌの人たちが住んでいた土地で、そこに明治時代に置かれた北海道開拓使らにとり、屯田兵などで都市づくりを行っていったという歴史があり、つまりは行政によるトップダウン型の都市づくりによって成長してきたといえます。そうした都市計画であったため、都市の区画もきれいな碁盤の目となっており、京都のような雰囲気や、アメリカのNYのマンハッタンに近い雰囲気を醸し出しています。

そのため、近代に入り急速な都市の発展とともにつくれれてきたという意味で、100年弱ほどしか都市の歴史をもたない、モダンであると同時に人が生きた空気や跡といったものが感じられにくい、ということも言えるのかもしれません。あまりにキレイに整備された都市、豪雪地帯でもあり、街にはホームレスなどの存在も少なく、行き交う人達も情報感度もそれなりにありハイソな匂いがある。しかし、そのまっしろさと純白さがありすぎるがゆえに、どこか物足りなさを感じなくもありません。

NYであれば、民族や人種の多様性などがあるのかもしれませんが、札幌ではもはやアイヌの人たち、という存在も次第に薄まっている状況。いわゆる「日本人」というくくりの中で、札幌にいる人達は住んでいます。また、住み着いている人たちも自発的に渡り歩いた、というよりも国策によって連れられた人が多く、目的別のコミュニティで分断された状態で過ごしてきた人たちが多いのです。そのため、札幌市民をつなぐ横串のコミュニティや、共通認識を持った文化や取り組み、時には多様な人達が集まるカフェやスペース、コミュニティ、といったものが少なく、もともと細分化されたコミュニティを通じて生活をしてきたという歴史なのかもしれません。

また、北海道といえば農業や酪農が盛んですが、そうした農業や酪農を感じる場が、札幌市内にはあまりなく、例えば都内などであるファーマーズマーケットなどといった取り組みも札幌ではあまり見受けられません。農業地域と都市部とが、まさに分断されている、と言えるかもしれません。そのため、それぞれのコミュニティ同士による交流も多くはなく、もともと広い土地でもある北海道において、それぞれの北海道のイメージがあり、それぞれを強固につなぐアイデンティティをもつことが、なかなか難しいのかもしれません。

あわせて、広い土地と農業の発展は高い自給率を作り上げており、都市全体としても保守的な動きにならざるをえません。政治の面において、北海道全体として保守が強いのも、そうした一次産業の強さから言えるかもしれません。しかし、急速な都市と経済の発展、綿密に計画されたトップダウン型の都市デザインは、卸や流通などの業界は発展するも、もともとその地域に根づき取り組んでいた町工場などの工業地域を作るには、あまりに短い時間だったと言えます。そのため、工業地域の少なさが、やはり北海道全域でも見受けられます。

それぞれに細かなコミュニティがあるが、急速な都市と経済の発展、綿密に計画されたトップダウン型の都市デザインによって、人々をつなぐメタ的なものの不足、ハード先行によるソフトの少なさ、という歴史が文化を醸成してきた地域だからこそ、札幌に住む人達のアイデンティティ、札幌に対する外からのイメージの良さの反面、ソフトに対する弱さや住んでいる人たちのおとなしい正確さ、積極的に外に出る必要性を感じない肥沃な土地のもとに、これまで過ごすことができた、という歴史があると言えます。

けれども、日本全体としては高齢化、少子化の問題が待ち構えていますが、まさに北海道、札幌もその痛手を大きく受ける地域でもあります。農業分野においては、後継者問題は深刻な問題であり、これ以上保守的に居続けることには、もはや限界があります。JA自体の改革や、農家によるIT化など、さまざまな取り組みを行う必要があり、農家自体の負担を増やすのではなく、それをバックアップする国や民間企業の取り組みが急務となってきます。これまで一次産業、農業が安泰だった、というある種の神話によって成り立ってきた札幌や北海道は、その神話が崩れ始めているという目下の課題をどうにかしなければいけない現状になっているのです。

そうした意味で、今回始めて芸術祭を開催したことは、市民全体を横串につなぐコミュニティであり、またアートという都市や人の生活の余白や余剰、新しい意識を作り出すものとして、大きな意味を持つといえます。今回の芸術祭をきっかけに、さまざまなコミュニティが協力し、互いに札幌のあるべき姿、札幌としての未来を考える一つのきっかけになっているのだと感じました。今回の芸術祭を踏まえて、もうすでに第二回目をどうするか、という動きもでているとか。動員数も、目標である30万人を超えるということで、道外からのお客さんもそうですが、道内、札幌市内に住んでいる人たちが、今回の芸術祭に足を踏み入れ、そこで感じた何かが、次につながっていくといいなと思います。

まさに、9月27日にマチノコトが企画する横浜トリエンナーレのツアー企画も、横浜という都市の課題と、トリエンナーレによって生み出されたもの、これからの都市のあり方をどう見つめていくか、ということを考えるきっかけになるのではないでしょうか。

アートプロジェクトだけではなく、都市のあり方、都市デザインをどう見据えていくか、ということは、札幌だけに限らず全国の都市にいえることです。そして、それぞれの都市には、それぞれの歴史や持っている文化、リソース、人の意識などさまざまです。だからこそ、その地域がもつ課題、その地域にいる人たちの意識をきちんと汲み取りつつ、新しい施策を考え続けることに意味があるのでないでしょうか。そこに、アーティストやクリエーター、アントレプレナー、政治家、行政、メディアの人たちといった、さまざまな人たちが協力していくことに意味があるのではないでしょうか。









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