2013/02/26

シベリア抑留体験記『凍りの掌』は、今の時代だからこそ読むべき本



TwitterやFacebookのTL上で色んな人たちがメディア芸術祭に行っているのを横目に、気づいたらメディア芸術祭の会期が終了してしまい、結局行けなかったのが少し残念だったので、6月までやっている「デザインあ展」は、忘れないうちに行こうと思ってる。

ところで、今年のメディア芸術祭マンガ部門の新人賞を獲得した『 凍りの掌』は、授賞した作品全部の中でも個人的に惹かれるものがあったので、買って読んでみた。

『凍りの掌』は、作者であるおざわゆきさんが実父が経験したシベリア抑留体験を聞き取り、それを元に2年半ほどかけて描かれた同人誌を一冊にまとめた作品。シベリア抑留は、第二次世界大戦でソ連軍が侵攻・占領した満州で、終戦後武装解除し投降した日本軍の捕虜やソ連軍が逮捕した日本人らを、シベリアに労働力として移送隔離して過酷な環境の中で労働を強いられてきた奴隷的な強制労働のこと。

氷点下な世界の中、まともな衣服や食料も与えられないまま過酷な労働によって多くの人たちが死んでいった過去の歴史を、可愛らしいタッチの中で淡々とマンガで描かれている様子は、そこに紛れも無い事実なんだということを改めて気づかされる戦争マンガの1つと言える。

祖国にも帰れず、凍った大地の下で多くの仲間達が倒れ、死んでいき、埋まっていった。始めたくて戦争を始めたわけでも、行きたくてソ連に行きたかったわけじゃない。
日本に早く帰りたくて頑張ったのに、日本に結局変えれないまま人生が終わっていった人たちがそこにはいる。

生き残るために共産党員としての教育を受けさせられ、無事に日本に帰ってきたら帰ってきたで「アカ」とみなされ日本国民から揶揄され避けられる。また、抑留者は捕虜とは違うため、補償金もでない状況。忘れてしまいたい過去を背負い、どんなことにも悲観的に考えずただ淡々と生きていくことにだけに専念し、長かった抑留機関を忘れ去ろうとする人たちも多いからこそ、きちんとした資料などが残っていないのもそのためだ。もちろん、このマンガもある程度は脚色されている感も否めないは、それでも、ある程度事実に沿くしているからこそ、真実味も高い内容になっている。

彼らが経験してきたこと、時代の中に翻弄されながらも生きてきた歴史がそこにある。そうした過去の歴史を踏まえず、今を語ってはいけない。自分たちの国の歴史、自分たちが今生きているに至った過程などを、過去の経緯や出来事があったにせよ、過去から学び取るものが大きく、知ることはとても大事なことだ。

戦争から60年以上たち、次第に戦争を経験した人も語れる人も少なくなってきたものだからこそ、こうした体験記や歴史を紐解く文献や資料を残しておくことの重要性は高まっている。戦争という行為が起こす様々な結果や、それによって生まれる出来事を、特に施政者は知っておかないといけない。

『凍りの掌』は、戦争を知らない人たち、特に若い人たちにぜひ読んでもらいたい一冊だとお薦めする。

関連リンク
第16回文化庁メディア芸術祭マンガ部門新人賞一覧

凍りの掌:シベリア抑留を漫画に 漫画家・おざわゆきさん、父の過酷な体験聞き取り- 毎日jp(毎日新聞)

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