ちょうど昨日から、カンヌライオンズ国際クリエイティビティフェスティバルが始まり、広告関係者のツイートがカンヌ話で盛り上がってきました。
そんなカンヌが盛り上がる10日くらい前に、カンヌライオンズのプレ勉強会がおこなわれました。主催は、いつもお世話になっている銀河ライターの河尻亨一さんで、ゲストとして、今年で13回目のカンヌ参加のkiramekiの石井義樹さんをゲストに、今年のカンヌが何が受賞するか、どういった作品の傾向があるか、などについて参加者含めた集まりがありました。河尻さんにイベントの招待をいただいたので、普通に参加者として参加しようと思ったら、そこそこ人が来るということで30−40人くらい入る場所としてEDITORYを使っていただきました。
カンヌライオンズは、世界にある様々な広告・コミュニケーション関連のアワードやフェスティバルの中でも、世界最大級の規模を誇るのが「カンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバル」。日本語では「カンヌ国際広告祭」として知られており、最近名前が変わり「カンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバル」と呼ばれるようになったそうです。ちょうど昨日から開催したということで、参加者からのツイートや報告が楽しみです。
基本的に、広告畑の人たちにとって注目の広告祭であり、日頃そこまで広告の業務に深く携わっているわけではないものの、広告自体に対する興味や、今のトレンドを表現する1つのメディアとしての広告は、仕事で携わっていなくても気になるもので、毎年カンヌで授賞した作品などはある程度チェックはしています。
どういった作品が紹介されたか、ということや考察は参加されたtacrowさんのブログや、kiramekiの石井さんのブログでカンヌで授賞するかもしれない作品集は見て頂くとして、こっちは僕なりに見てた感想なんかを書こうかなと思います。
イギリスの公共テレビ局 チャンネル4によるパラリンピックのコマーシャルは、障がい者というネガティブな印象を変え、かっこいい一流のアスリートの姿を映しだしています。どんな人であっても、何かに勝負する時に顔というは、見ていて鳥肌が立つものばかりです。前を向き、1秒1センチを競う気持ちは、見た目ではない人間の輝かしい精神そのものを映しだしているようです。
第二次大戦による分裂以降、対立が続くインドとパキスタンを結ぶ。そんな両国をつなぐツールとしての製品、というメッセージ。世界をつなぎ、互いに笑顔になれるものを作り出したい、というのが企業としても大きな思いでもあると思います。
いつの日か、国を超えた人たちが、遠隔ではなく手と手で互いに握手する日が来ることを祈ります。
こちらは、Paul Harvey氏が1978年に演説をおこなった「So God Made a Farmer」の内容がひたすらバックに流れているだけ、というシンプルなものながら、とても重厚なメッセージに心を打たれます。
以下、演説の内容と日本語を掲載します。
And on the eighth day, God looked down on his planned paradise and said, "I need a caretaker." So God made a farmer.
そして8日目、神は自らつくりたもうた楽園を見下ろして言った。「世話人が要るな」。だから神は農夫をつくった。
God said, "I need somebody willing to get up before dawn, milk cows, work all day in the field, milk cows again, eat supper, then go to town and stay past midnight at a meeting of the school board." So God made a farmer.
神は言った。「夜明ける前に自分から起きて牛の乳を絞り、一日中畑で働き、牛の乳をまた絞って晩御飯を食べ、街に出て、学校役員会の会合で夜中過ぎまで起きている、そんな人が必要だ」。だから神は農夫をつくった。
God said, "I need somebody willing to sit up all night with a newborn colt and watch it die, then dry his eyes and say,'Maybe next year,' I need somebody who can shape an ax handle from an ash tree, shoe a horse with hunk of car tire, who can make a harness out hay wire, feed sacks and shoe scraps. Who, during planting time and harvest season will finish his 40-hour week by Tuesday noon and then, paining from tractor back, put in another 72 hours." So God made the farmer.
神は言った。「子馬が産まれると自分から徹夜で世話し、死に目を看取って、涙を拭き、『また来年がんばろう』と言える人、薪木のまさかりの把手をつくり、タイヤの塊で馬に蹄鉄をつけ、干し草の金具から馬具、ずだ袋、シュースクラップをこしらえられる人が要る。種まき、収穫の季節には火曜の昼まで週40時間働き、トラクターで腰を痛め、それでもまた72時間働く、そんな人が要る」。だから神は農夫をつくった。
God said, "I need somebody strong enough to clear trees and heave bales, yet gentle enough to yean lambs and wean pigs and tend the pink-comb pullets, who will stop his mower for an hour to splint the leg of a meadowlark."
神は言った。「木を倒し、俵を担ぐほど力持ちで、そのくせ羊の出産、豚の乳離れ、ピンクの若鶏の世話をし、怪我したマキバドリを見れば芝刈り機を1時間とめて脚に添え木を当ててやる心の優しい人が要る」
It had to be somebody who'd plow deep and straight and not cut corners. Somebody to seed, weed, feed, breed, and brake, and disk, and plow, and plant, and tie the fleece and strain the milk. Somebody who'd bale a family together with the soft, strong bonds of sharing, who would laugh, and then sigh and then reply with smiling eyes when his son says that he wants to spend his life doing what Dad does. "So God made a farmer."
「深く真っ直ぐ耕し、四角い隅を丸く履くような真似はしない人。種を撒き、草を抜き、餌を与え、繁殖させ、ブレーキを踏み、耕うん機を回し、耕し、苗を植え、羊毛を束ね、乳を裏ごす人。ひとつのものをみんなで分かち合う柔らかく強い絆で家族をひとつにまとめる人。笑い、ため息をつき、そして『自分も一生パパのような仕事をしたい』と言う息子に目を細めて答える人が要る」。だから神は農夫をつくった。
演説内容と日本語参照:Long Tail World: スーパーボウルCM 2013ベスト:God made a Farmer - Best Super Bowl ad
内容は、農家を称える内容とともに、私たちの大地を作り、耕し、そして日々に食料を作りだす、人間の根幹となるものを作り出す、素晴らしい仕事をしている人たちへの賛歌にも近いものです。どんなにテクノロジーが進化しようとも、私たちの生活には絶対に欠かせないものを、改めて考えさせられる内容でした。
人は、自分に対する評価というものは高くない傾向があります。「自分なんか…」「あの人のほうがもっと…」しかし、その思いは自分以外の人も思っています。つまり、自分はダメだと思っているものも、他者からみたらいいものだと思われるものだってあるんです。
自分の可能性に気づき、自分に対するポジティブな気持ちを作り出す。何かで作られたメッセージではなく、他者からの純粋なメッセージで自身の自尊心を高める方法は、見ていて感動を呼ぶものです。
“You are more beautiful than you think. ―あなたはあなたが思っている以上に美しい。”
この一言は、まさにこれまで他人の目を気にしながら、自分を貶めてきたから脱却させるメッセージに違いありません。
今回のカンヌにかぎらず、広告の中のメッセージにはこうした人間賛歌、人間賛美な内容のものが次第に増えてきたようにも思えます。消費の時代から物語の時代へ。そんなことが言われてきている中、河尻さん的には今回のテーマでもある「メーカーズ」などの工作系がでてきている時代は、DIYという自分自身で何かを作ったり創造性を発揮していくことが求められている時代でもあります。
それは、これまでの「作られたもの」ではなく、菅付雅信氏が著書でも述べている「中身化」というものが求められている時代でもあるのだと思います。
「中身化」が求められている時代、つまりは、人間とは、人間の美しさとは、人間として私たちはどう生きていくか、ということを自問自答しながら生きていくこともつながっていきます。
自分と社会を向き合い、自分がどう生きていきたいのかを考える、そのためには、私たち自身が自分や他者も含めた「人間」について考える時代とも言えます。
その人間個人の力を信じ、Empowermentを働きかけるメッセージこそ、これからの広告としての1つのあり方なのかもしれません。
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