2013/06/12

政治主体の選挙から有権者主体の選挙に



1年間One Voice Campaignの活動をし、そして2013年4月19日に参議院本会議でネット選挙解禁を含む公職選挙法の改正法案が可決しました。それによって、7月から実施される参議院選挙から、メールなどの一部の規制はあるものの、SNSなどを使ったネット選挙が本格的に日本でもスタートします。

もちろん、ネット選挙が解禁されたからと言って、投票率が上がるわけでも、みんながすぐに政策議論をおこなうかと言うとそうではないかもしれません。しかし、ツールが増え、情報環境に変化が起きている今という時期だからこそ、日本社会が今後どうなるか、日本で生活している私たちがどうすべきかを考えるいい機会になると思います。

しかし、この1,2ヶ月報道などでネット選挙などに関する報道を見ていると、主に政治家や政党主体の内容が多く感じてしまいます。

インターネット選挙運動解禁で、政党の戦略はどう変わる? - GREE ニュース
ネット選挙運動解禁に伴う電子メール環境への取り組みについてYahoo! JAPAN - プレスリリース

もちろん、選挙の結果によって政治家の進退や政党の議会内のシェアは変わってきます。しかし、その政治家や政党を選ぶのは私たち有権者であり、間接民主制をとっている日本においては、私たちの意見の代弁者としての存在として政治家が存在します。つまり、私たち有権者主体の政治が本来であれば反映されていなければいけないはずなのです。

私たち有権者も、政治家に頼ってばかりではいけません。政治家にすべてを任せるのではなく、何かおかしいものがあれば意見を発し、改善案や代案を出したり、みんなで議論するだけの環境を整えるよう情報を整理していく必要があります。

荻上チキさんが書かれた『僕らはいつまで「ダメ出し社会」を続けるのか 絶望から抜け出す「ポジ出し」の思想 (幻冬舎新書)』でも、政治の側が国民益を追求しているか、そして、その政治の現場を監視し、国民側からも政治家に対して「これをやるべき!」という圧力や議論を増やす「ポジだし」(ダメだしの反対語)をすべき、という記述がありました。

政治がこれまで身近に感じられなかったとしても、どんな状況であれ今の政治の世界を作り出しているのは有権者である私たちにも責任があります。何かおかしい、と思ったことに対しては、積極的に声をあげるなり、問題を問題だと周りに発信したり、情報を整理しなければいけません。そうした普段の積み重ねによって社会は作られていきます。

「自由」というものは、私たちに与えられた権利であると同時に、私たちの不断の努力によって保持しなければならないと憲法にあるように、私たちが生活している社会も与えられたものではなく、私たちの不断の努力で作り上げていくものなのだと思います。そして、作り上げるだけの環境や、意見を発信する情報環境は、今の時代はSNSを含めたソーシャルメディアなどの盛り上がりにより、そのハードルは下がってきています。

先日MITと朝日新聞が行ったシンポジウムでも、伊藤穣一氏は「テクノロジーによる民主主義化」によって、よりボトムアップでの社会になっていくと語っています。

「ネットやSNSを通じて誰もがアジャイルに情報をPullできる今の時代は、ボトムアップでの変化が生まれやすい。先の3.11後の動きしかり、国民が現場レベルのコラボレーションで公的な問題を解決できるという片鱗を見せた日本人は、世界に先駆けて新しいメディアや民主主義の形を示せるかもしれない」(上記、リンク先本文抜粋)


もはや、政治の現場も含めた社会全般の動きは、政治家という人たちだけで統制できるほど単純なものではなく、また先行きがどうなるか誰も予想できない時代だからこそ、各々がアジャイルで課題に取組み、修正と改善を重ねながら漸進的改善を図ることが大事になってきます。オープンデータしかり、オープンガバメントによる政治の世界のプラットフォーム化により、より市民への権利譲渡を図ることで、より時代の動きに沿った迅速な活動がおこなわれてきます。

そうした状況を作り上げるためにも、選挙というものは私たち有権者主体の、有権者のUXを踏まえたものとして作られていくべきなのではと考えます。トップダウン型の社会ではなく、ボトムアップ型の社会の中でどのような社会を作っていきたいかということを私たち自身が考え、社会を「自分ごと化」していく意識を持たなければいけません。

私たちが作り上げる社会、私たちが作る政治という意識をもつためには、有権者である私たちが政治家にすべてを一任せず、何か問題があれば自分たちで作ってしまうくらいの意識を持たなければいけません。政治に文句を言うんじゃなく、問題ならまず先に手を動かしましょう。そして、そうした私たちの動きを支援していく政治家をきちんと私たちで評価していきましょう。互いに応援しあえる関係性になることで、互いに社会を作るプライヤーという意識が芽生えてきます。そうした政治の形を決める選挙の情報も、私たちにとって何が大事なのか、私たちがどう行動すればいいか、投票であれば、政策に関する話を分かりやすくまとめたり、これまでの議員の活動を分かりやすくまとめるなどの情報環境を作っていき、投票行動に必要な情報をメディアの方たちも揃えていきましょう。

このような有権者主体の選挙にしていく動きを、今回のネット選挙の流れの中で、改めて見直していくべきだと思います。





photo credit: JosephGilbert.org via photopin cc


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